第四話 部活見学(後編)
そんなわけで二階に昇り・・・ガラス越しにオペルームを覗いたのですが・・・医師の中に一人程、病人がいるじゃねぇかよ!!
忙しなくオペをしている3人の医師の中に、一人ほど、点滴台と一緒に行動している、ミイラみたいな奴がそこにはいた。
「あのミイラが、骨皮さんですか?」
「そうそう。名前通り骨と皮だけだろ。」
確かに・・・でも、骨と皮だけじゃないよね♪一応、目とか臓器も有るんだし♪ ←(屁理屈)
しかし、驚くべき所は、ミイラ男がオペをしている所ではない。
ミイラ男の手が患者の腹部に切開をしても無いのに埋まっている事である。
「骨皮さんのブレスって・・・物質通過ですか?」
「おっ、かっこいい呼び方をするじゃん。」
「僕のブレスにもかっこいい呼び方を付けてくれたまえ。」
電気びりびりとか言った日には明日を拝めそうに無いな・・・
っていうか、変な事言えないし・・・
「止めときます。」
「ケチだねぇ。さて、部長の顔も見た事だし、次行くよ。綾斗、化学部の方へ先に行くだろ。」
「そうだな。」
「あっ、私も行きたいです。」
「却下だ。」
「行きたい、行きたい、行きたいです!!」
床に大の字になって暴れ始める、このみ。
お前は欲しい物を強請るガキか!?
「分かった。条件付で許可する。」
このみは直ぐに暴れるのを止める。
「お前の親父ギャグで雪那を笑わす事ができたら連れて行ってやる。それでどうだ?」
えっ、またあの寒いギャグを俺に聞けと?
「ふふふ、受けて立とうじゃないか。私の取っておきを披露してあげよう。本来ならクリスマスパーティーで使う予定だった物を今ここで披露してあげよう。」
結構です・・・と言えない自分が悲しい。
「ゴホンッ。」
あえて空咳をし、間を作り・・・
「ニューヨークの叔母は入浴中か!!なんちって。雪那君、面白かった?」
やべぇ・・・ニューヨークじゃ無くて、北極が見えた・・・
「もしかして、面白く無かったの・・・」
目を涙で潤ませ、つぶらな瞳でこちらを見るのを止めてくれ・・・そんな事をされたら普通の人なら、面白くないって面と向かって言えなくなるぞ・・・
「「面白くない。却下だ。」」
言っちゃったよ、この二人!!
「がーん!!」
天を仰ぎつつ、その場に倒れ伏すこのみ。
って、お前もリアクション良いなぁ・・・
「じゃあ、次行くぞ。」
時間が押していると言う事も有り、綾斗さんのブレス、『超多時間理論の圧縮』で化学部前に一飛びをする。
化学部は医学部同様、他の部のように――といっても、保安部は見ていない――ドームではなく、いかにも研究所ですと言えるような、コンクリでできた建物である。
そして、化学部の入り口には一人の男が立っていた。
「どうも、化学部に見学に来られたそうですね。僕は化学部部長の御津甲斐 俊介と言います。中をご案内します。ついて来て下さい。」
無駄に丁寧な言葉だな。化学部か〜・・・俺はここに入部するんだっけ?なんか、優しそうな人だなぁ。
「そうそう、エデンの各部長、副部長は変人ばっかでな、こいつは唯一のまとも君。ちなみに変人街道を最もまっしぐらしてる馬鹿は尚紀だな。あいつは、天使に選ばれる前から変人だったしな。」
「知りあいだったんですか?」
「ああ。3年前つまりここに来るまえ、同じ中学だったんだよ。クラスも幼稚園の頃からずっと一緒。ちなみに、自宅のアパートの部屋も隣同士だ。」
へぇ〜・・・意外な接点。しかし、同じ中学で2名も選ばれてるって、凄い低い確率だよな・・・しかも、幼馴染って言うし・・・
「ところで、綾斗。僕はまともな方に入るのか?」
「入らんな。」
綾斗が否定すると同時に、綾斗の隣を何かが高速で走る。
「おっと、綾斗君。君の傍を蚊が飛んでいたので処分させて貰ったよ。ところで、僕はそっちの方に気が行ってて聞いて無かった。もう一度言ってくれたまえ。」
「入ります!!」
命が惜しいのか即肯定・・・
そして、それを見た俊介は・・・
「御二人さんは本当に何時見ても仲良いですね。」
仲良く見えますか?俺にはライオンとシマウマ――つまり、捕食者と餌――に見えますが・・・
「勿論だとも。保安部のもっとうは、仲良し小好しだからね♪」
「怪我と死と部長の暴力とな・・・」
ボソッと愚痴る綾斗。綾斗さん・・・本当に御疲れ様です。
この二人のせいで中々話が進まない事に俊介さんは怒ったのか、俺の所に近付いてくる。
「本当に面白い方々ですね。えっと、尚紀さんから坂野さんの事は多少お聞きしております。御名前の方は何とお呼びしたら好いでしょう?」
訂正・・・全く怒ってません。この人、かなり人ができてます。
「えっと、雪那で良いです。えっと・・・」
あなたって、言うのはちょっと失礼だよな・・・何て言えば言いんだ・・・
「俊介で良いですよ。親しい人は、シュンって呼んでます。」
やべぇ、この人やっぱり人ができてる。あそこの馬鹿と違って・・・
ちらっと馬鹿を見る。それに気付いた、馬鹿はニヤッと笑い・・・
「僕の魅力に惚れたか?」
科を作る・・・止めてくれ・・・お前に俺が惚れる事は、ノストラダムスの予言が当たる可能性より低い。
俺はあえて馬鹿を無視し、俊介さんと話しを続ける。
「俊介さん、で良いですか?」
「俊介で良いよ。さん付けって、ちょっとムズ痒いから。綾斗、部活の案内に使える時間はどれくらいだい?」
「ちょい待ち・・・ここまで、ブレスで飛んできた甲斐が有って、あと10分も有る。」
「そうかい。雪那君、ついておいで。部の仲間達を紹介するよ。」
「はい。」
俊介、俺、綾斗さん、朋来さんの順番に建物に入る。
「ここからは、他の組織等から機密保持の為通路が迷路っぽくなってるから、僕から絶対離れないでね。」
「はい。」「おう。」
・・・返事が二つ?
「「馬鹿は!?」」
同時に叫ぶ俺と綾斗さん。そして、後ろを向くと・・・馬鹿がいなかった・・・
「あらあら・・・まぁ、朋来君の事だし、きっと先に行って御茶でも飲んでると思うよ。化学部に向かう道は一つだけじゃないから。もしも来てなかったら、僕が、PDAサーチで探しに行くから。」
「以外と冷静ですね。やっぱり、映画でも漫画でも、こういう人が最後に生き残るんですよね。」
「いや、鈴音みたいな奴も、生き残りそうだぞ。宇宙人や幽霊と一緒に主人公達の撃退をしそうだ。」
「ありうる!!あと、尚紀さんもしそうです。」
「確かに。しそうな例を上げると切りがないぞ。」
「こらこら、人の悪口は言ってはなりません。彼女達も、きっとその様な自体に陥った時は、人として敵の方にはつかないと思います。」
あなたは聖人君子か!?
「いんや、あいつなら、やってくれるね。」
頑なに自分の意見を貫く綾斗。
「きっと、彼女は仲間になった振りをして・・・」
話がどんどん変な方に向かっているような気がするので、修正を施さねば。
「で、化学部についての話なんですが。」
「あっ、そうだったね。」
ほっ、脱線した話を元に戻せた様だ。
「化学部は合計17名。主な活動は、新薬の調合や新元素の発見、他にも世の中の皆さんの役に立つ事をしております。副部長は砂野 神楽さんです。」
漸く、まともな部活紹介である。これまでの方々の説明は何所か抜けてたし・・・いや、それ以前に部活紹介ですらない。
自分の入る部がまともな所で本当に良かった。部長が尚紀さんや朋来さんだったら、一体どうなる事やら・・・
雪那は想像をして身震いする。
「着いたよ。皆、この子が、今日からエデンに加わる僕達の新しい仲間だよ。雪那君、自己紹介。」
最後の方は雪那にだけ聞こえる様に小さな声で話す。
「えっと、坂野雪那です。今日から、皆さんと同じ部活で頑張る事になるのですが・・・」
「ストップ。雪那、お前ここじゃないぞ。」
「もしかして、綾斗達、カガク部としか言ってないの?」
何だ?
「やべぇ、カガク部としか言ってねぇ。」
やっちまったと自分の髪をわしゃわしゃする綾斗。
「どうやらカガク部違いだね。」
「みたいだな・・・」
雲行きが怪しくなってきたぞ・・・
「雪那・・・お前が入部するのは、化学部じゃなくてカガク部なんだ。」
「はいっ?」
「えっとね。日本支部にはカガク部が二つあるんだよ。カタカナでカガクと英語でケミストリーの化学とね。」
「つまり、俺が入部するのは、カタカナの方のカガク部ですか?」
「その通り。」
・・・せっかく、まともな人が自分の部の部長だと思ったのに・・・
「あっはっは、馬鹿だな。綾斗ぉ〜。」
某部長の様に何時の間にか綾斗の傍に現れ、肩を叩く。
「貴様・・・何時の間に?」
「さっきからいたよ。と言うことで、この事は時雨ちゃんに報告させてもらうよ♪勿論、責任は君オンリーで♪」
「そんな事できる訳ないだろ!!連帯責任だろうが!!」
「僕と時雨ちゃんは御風呂を供にする中だよ。僕の頼みなら、時雨ちゃんは分かってくれる筈。」
鬼かお前!!
「それより、次行かなくて良いの?もう、10分経ったけど・・・」
「げっ!!雪那、急ぐぞ!!ドリルは遅刻したらグチグチうるせぇからな!!」
ドリル・・・?もしかして、カガク部の部長ですか?掘削機のような人がカガク部の部長ですかよ!?
俺と綾斗さんは小走りで先来た道を戻りつつ、カガク部部長について話す。
「ドリルって、どんな人なんですか!?」
「髪型がな・・・」
ドリルな髪型・・・朝見たアレか・・・髪の毛が滅茶苦茶カールしてるアレか!?
「性格はまともですか?」
「一応な・・・でも、カガク部は面子も能力もかなり濃いいぞ。部員はお前を除き現在3名とエデンで最も小さな部活だが、ノーベル賞等の賞の受賞数は、今年1年で10近く取っていて、世界1位の実力を持つ集団だ。3人とも、各部の部長クラスのブレスを所有している。とくに部長は・・・」
俺が入って大丈夫な所かソレ・・・だって俺・・・理科は3科目とも2だぜ・・・
「まぁ、話しの続きは自分で確かめろ。それと、もしもカガク部でやっていくのが無理と思ったら言え。保安部で引き取ってやる。」
「それは結構です。アレが部長なので。」
隣を何故か逆立ちで爆走しているアレを指差す。
「ふっふっふ、少年よ、照れるな照れるな。本当は僕とみっちり放課後課外授業をしたいんだろ?うりうり。」
足のつま先で、俺の横腹でなく・・・顔面を突付く朋来さん・・・
「雪那・・・崩課後加害授業と聞き、ちょっぴり期待した保安部の後輩達の話を聞いてみたい?」
うん、聞かなくても分かります。その保安部の後輩の方々、マジでご愁傷様。それと、綾斗さん?今、崩課後加害授業って言いませんでした!?
「それと、もう1つ言いたい事が有るのだが?」
「下らない話しでないなら許可する。」
「うん、次回に続く。」
「「はぁーー!?」」
「3」
「2」
「1」
「どっかーん!!」
筋右衛門「なぜなにカガク部の時間です。あぁ、皆さん丸々太っておられて、元気そうで何よりです。」
綾斗「いい加減、その台詞は止めろ!!お前より痩せている奴って、白骨死体しかねぇだろ!!」
鈴音「身長164Cm、体重27Kgってどんなチートだね?」
筋右衛門「ええ、私は生まれつき、肥満抑制のホルモンが多量分泌されているせいで、常時満腹状態で食べ物を口にできないんです。だから、点滴で必要最低限の栄養を摂取し生きている状態なのです。だから、体重が軽いんです。」
綾斗「そうなんだ。ところで、今回は何について話す?」
鈴音「そうなんだよ。話題がないんだが・・・」
筋右衛門「では、今回はリサイクルについて話しましょうか?」
鈴音「リサイクルなら、僕も空き缶やペットボトルなどをちゃんとリサイクルしているぞ。」
筋右衛門「えっとですね。リサイクルはすればするほど、CO2が多く排出されるって知ってます?」
綾斗「マジで!?」
筋右衛門「では、ペットボトルを例えにあげますが。ペットボトルをリサイクルするのと燃やすのでは断然燃やした方がCO2の排出量は少ないです。理由を述べますと、リサイクルするペットボトルを集めるのに車を走らせるので、それでまずCO2が出ますし、今度は砕いたり、溶かしたりする時にも機械を使うのでCO2が更に出ますね。っていうか、リサイクルボックスに入れたもの全てがリサイクルされてるわけではありません。大半は普通に燃やされちゃってたりしてます。」
鈴音「なら、リサイクルボックスなんて置く必要はないのでは?」
筋右衛門「ええ、ぶっちゃけそうです。でも、一応リサイクルした方が良い物もあります。それはお忘れなく。」
綾斗「再生紙ってのが、環境に優しいって良く聞くけど・・・まさか、これも・・・」
筋右衛門「OUTです。寧ろ、再生紙じゃないほうが環境に優しいです。日本が再生紙なんかするから、一部の国では困ってたりするのです。日本の紙の為に栽培した木の一部が輸出できずに腐ってしまってますから。インドネシアとかの森林が減ってきてるのは、どっちかというと、焼畑とか海外輸出向けの海老の養殖地を作る為に破壊された物の方が遥かに多いです。」
綾斗「質問、再生紙は何で安いんだ?リサイクルするのに沢山の燃料を使うのに?」
筋右衛門「それはですね。国が値段の一部を負担してますから。」
綾斗「へぇ〜・・・」
鈴音「要約すると、リサイクルなんかするな。と言う事か?」
筋右衛門「まぁ、そんな感じですね。それに、環境団体はリサイクルについては反対してますから。」
鈴音「ふむ。意外と勉強になったな。」
綾斗「あぁ、確かに。」
筋右衛門「では、今回のなぜなにカガク部はこれで幕引きです。」