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第二話 部活見学(前編)

それからは時間の流れが早かった。先程まではゆっくりだったのが、今度は超特急の速度で時間が過ぎていく。

そして、気付いたら放課後。俺はゆっくり家に帰ろうと思って、学校の外に出ると一台の黒塗りのベンツが俺の前に止まる。

ベンツの中から、見た事も無いほどの美人と俺と同い年くらいの丸眼鏡をつけた少女が出てくる。


「坂野雪那さんですね。私、日本錬金術師協会部長、鳳凰寺ほうおうじ 時雨しぐれと申します。御家までお送りしましょう。」


「時雨ちゃん真面目にやってるねぇ〜。雪那君よ、支部に来て時雨ちゃんのダメダメさに失望しないでくれよ。エデンの外限定で何時も真面目なんだよ。あっ、僕は朋来ほうらい 鈴音すずね。階級は座天使スローンズ、天名は『ラミエル』だ。」


ラミエル・・・?天使の名前?


「ああ、ラミエルというのは、七人の天使の一人で神の雷霆を意味する雷の天使だ。つまり、この様に・・・」


鈴音は、メダルのような物をポケットから取りだす。それと同時に、指先に紫電が走り、メダルが宙に浮かぶ。

そして、硬貨を撃ち出した。


んなっ!!超電磁砲レールガンか!?


硬貨は民家の屋根の上にいて此方を覗っていた不審者を的確に撃ち抜く。

打ち抜かれた不審者は、数メートル吹き飛び屋根から落ちて、見えなくなった。


「電気を操れるわけだ。時雨さん、拙いですよ。かなりの数に囲まれてます。一先ず車の中に。」


急いで車の中に三人は乗り込む。時雨の合図と共に運転主――高校生くらいの青年、しかも黒スーツを着ている――が車を出す。


「ところで・・・雪那君、もしかして、教室で錬金術を皆に見せた?」


先程まではさん付けだったのに、何時の間にかフレンドリーに君付けである。


「見せました。」


「どんな力?」


「生き物を復活させる力です。」


「あんら〜・・・そんな力聞いた事無いわよ。でも、それならここまで集まるのは納得ね。」


人差指を顎に当てて笑う時雨。


「軍事関係、葬儀関係に狙われまくりですね。」


「何故に葬儀関係!?」


「死者が復活したら葬式いらずだろ。」


成るほど・・・以外にがめついな、葬儀屋業界。


「しかし、これでは親族への挨拶は難しいですね・・・どうします?」


青年が口を開く。


「大丈夫よ。テレビ電話を持ってきてるから。はい。」


俺に手渡されたのは、A4サイズのPCのような物。


「そこの小さいボタンを押してみて。」


指示通りボタンを押すと、画面に御母さんと親父が映る。


『雪那、頑張りなさいよ。御母さんと御父さんは全然寂しくなんか無いから気にせず行って来なさい。』


「散々な事を言うなぁ・・・ま、あんたからまともな台詞を聞ける事は期待して無かったがな。で、雨美の奴は何て?」


『モコがいるから御兄ちゃんは居なくても良いって。』


ああ・・・俺の存在はハムスター以下ですか・・・こら、そこの3人笑うではない!!


『まぁ、風邪とかに気を付けて頑張りなさい。次こっちに帰って来る日が分かったら直ぐに連絡しなさいよ。町内奥様ーズ全員で出迎えてあげるから♪』


町内奥様ーズ!?何だそれ!?


「あぁ、切るぞ。」


『ええ。』


『あれ、御父さんのお話は!?おい、雪那!!御父さんの話しを――――プチッ。プープープー♪


親父の話しは長いから却下だ。


「さて、お話は終わった様ね。今から、エデンに飛ぶわよ。綾斗、能力を使いなさい。」


「へいへい・・・部長は人遣いが荒いですね。」


綾斗と呼ばれる青年の手が赤く輝く。それと同時に車の前方に黒い歪みが発生。

車は止まる事も無く、前方の歪みの中に入って行く。そして、歪みを抜けるとそこは・・・巨大な街だった。


「エデンにようこそ。坂野雪那君。我々は貴方を歓迎します。」


時雨は雪那に手を出す。


「此方こそ宜しくお願いします。」


雪那は握り返した。


「さて、先ずは部署案内ね。雪那君の能力はどうみても・・・」


「「カガク部だな。」」


「そうねぇ・・・あそこしかないわね。」


科学部?


「はあ・・・それより質問を宜しいでしょうか?」


「良いわよ。」


「先程の御二人のは本当に錬金術なんですか?電気を放ったりとか、時空に穴を開けたりとか。」


それを聞いて、時雨は笑い出す。


「何で、笑うんすか!!」


「御免御免。ちょっと雪那君面白すぎ。あなたは政府の流している偽りの情報を本当に信じているのね。」


偽りの情報だと・・・


「どう言う事ですか?」


「教えてあげるわ。ここ最近まで頻繁に発生していた自然災害は『堕天使』と呼ばれる、未確認生命体の起こしていた物なの。しかし政府はそれらの生物を公開するのを恐れたの。そして、運の良い事にそれと同時に各地で異能の力に目覚めた子供達が出現したの。政府はこれらの子を集めて、対未確認生命体用の軍隊を作ったの。それが世界錬金術協会。子供を徴兵したとばれたら洒落にならないから、一部の異能の力を化学や医学幅広い分野に使用し、発明機関と言う名の隠れ蓑を手にしたの。」


「つまり、世界を良くする為に創られたと言うのは嘘で・・・」


「そう、錬金術、正確には『恩恵ブレス』と呼ばれるこれらの力は、化け物を倒す為に存在する力。そして、この機関は軍隊なの。」


「つまり、俺は軍に入れられて、良いように使われるって事か?」


「いいえ。戦闘に参加するかどうかは自由意思よ。最近出没してるのは、貴方達が発明した兵器で十分倒せてるから。戦いの大半は大人達がやってるわ。」


ふ〜ん・・・しかし、未確認生命体ねぇ〜。こんな異能の力が有るんだから居ても可笑しくは無いか。


「じゃあ、俺はこの力を戦争に役立てなくても良いと言う事か。」


「戦争って言い方は好きじゃないわ。まぁ、貴方が役立てたいと思うなら使いなさい。こちらは強制はしないわ。」


なら良いか。もし、自分の力で蘇った人達が戦いでまた死ぬってのは嫌だしな。


「あとね、ブレスについて少し話しておこうかしら。ブレスには『干渉型』、『変異型』の2種類が有るの。大抵の人は干渉型と呼ばれる、物質や理に干渉しそれらを書き換える力を持っているの。でも、稀に変異型と呼ばれる、体の仕組みその物を神の使いとして目覚めた時に書き換えられた人も居るの。鈴音ちゃんが良い例ね。」


干渉型、変異型ねぇ・・・あれ、何で朋来さんは変異型なんだ?


「朋来さんは、どうして変異型なんですか?」


「それに付いては僕自身が話そう。僕の体には『発電柱』と呼ばれる物が体中に存在している。発電柱とは電気鯰とか電気鰻の持ってる発電器官のことだ。これを振動させ私は発電を起こしているのだ。」


「へぇ〜・・・体の方は大丈夫なのか?体内発電してるんだし。」


「馬鹿かね。電気鯰や電気鰻が自分の発電した電気で感電死なんて聞いた事無いぞ。つまり、僕の体全てが創り変えられているのだ。」


成る程・・・これが、変異型か。・・・でも、何故公表しないんだ?


「質問二つ目。何故、世間には変異型は公表しないんだ?」


「あのねぇ、少し考えれば分かるでしょ。体の大半を創り変えられた子供達は人間と呼べると思う?それでなくても、ハンセン病患者ですらあの扱いよ。変異型の中には体をゲル状にしたり、姿を変えれたりと明らかに人間離れした人も居るのよ。そんな人達も居ると公開してみなさい・・・」


「成る程・・・世間から迫害を受けそうですね。」 


「そういう事。さて、私は貴方の発見報告などをしないといけないから・・・鈴音と綾斗、せっちゃんの部署案内御願いね。」


せっちゃん・・・名前ぐらいまともに呼んでよ・・・


「「了解。」」


時雨は車に積んでいる書類等を手に持ち、車から降りて近くのビルに入っていく。


「さて、ここから一番近い所と言えば・・・」


「生物部だな。俺、朝倉の奴とあんまり話したくないんだけどな・・・」


「僕も少しパスかな・・・でも、案内は必要だしね・・・」


二人の話しから推測すると、朝倉と言う人は厄介な人なのだろう。どの方面で厄介なのかは知らないが・・・


「そんじゃ、車出すよ。」


綾斗は再度車を発進させる。


「注意事項な。生物部部長、朝倉あさくら 尚紀なおきには気を付けろよ。直ぐにあいつのペースに持って行かれるから。」


「はあ・・・」


「まぁ、百聞は一見にしかず。見たら分かるよ。」


それきり、会話が途絶えたので、俺は周りの景色を見る事にした。ビルなどの建造物も多いが、以外と自然も多い。自然が多い所には虫などが飛んでいるのが見える。

景色を楽しむ事3分。車は一際大きなドームの前で止まった。


「でかぁ〜・・・」


雪那は巨大なドームを見上げ感嘆の声を漏らす。


「ここが、生物部だ。部室の大きさは東京ドーム二個分に相当する。部員は七名。部長はさっきも言ったが朝倉尚紀、副部長は大海おおみ 紫苑しおん。」


綾斗はカードのような物をポッケから取りだし、タッチペンでカードの表面を弄りつつ説明を始める。


「あの〜、そのカードみたいな物は何ですか?」


「ああ、これか。これはPDA(個人用形態端末)と言ってな。これ1枚で、本部及び支部の情報端末にアクセスしたり、内部の者との通信ができる。他にも給料が振りこまれ、これで御買い物ができる。」


「給料?ここって、給料が貰えるんですか?」


「当たり前だ。君は時雨ちゃんの言ってた事を既に忘れたのかね。ここは、一応は軍だ。給料が出て当たり前だろ。」


成る程・・・防大みたいだな。


「さてと、中に入るぞ。」


入り口は鋼鉄の引き戸で、ドアを開けると奥には更にドアがある。入り口のドアを閉めて、奥のドアを開けると、更に奥にドアがある。


「ここは、実験動物とかが逃げ出したらいけないから、厳重なんだよ。」


確かに。実験動物に逃げられた日にはどうなるか分かったもんじゃない。その動物が強暴なら、怪我人が出るし。空を飛ぶ場合はエデン外に出られ、生態を崩す可能性がある。


5度目のドアを開けると、辺り一面が緑に包まれていた。一言で言うとジャングル。上を見ると見た事も無いような美味しそうな果物がぶら下がっていたりする。


「尚紀!!新しい天使が見つかったから見学させに連れて来たぞ!!」


綾斗は両手をメガホンの様に型作り口に当て、叫ぶ。


「ほーい!!今行く!!」


ジャングルの奥から声が返って来る。そして、白衣を身に纏い、モノクル――片眼鏡のこと――を付けた少年が小走りにやってくる。

そして、尚紀は雪那の前に立ち、実験動物を見るかのようにまじまじと雪那を見る。


「この子が新しい天使かな。僕の名前は朝倉尚紀。智天使で『ザフキエル』っていう通り名を持ってるんだ。あっ、ザフキエルって言うのは神の知恵って意味だよ。で、この子は何所に配属なの?」


「あぁ、あっちのカガク部だ。」


「成る程・・・僕達の方にも階級の高い天使が欲しいよ。カガク部ばっかずるいよ、本当に。」


「いや・・・生物部はお前と紫苑が居るから十分だろ。七人しかいないのに智天使と座天使が居るじゃないか。保安部よりマシだぞ。」


「でもねぇ・・・欲しい物は欲しいんだよ。ところで君、名前は?」


「坂野雪那。その、階級とかはまだ不明です。って言うか、そのシステムすら教えてもらっていませんので・・・教えていただけますか?」


「そう言えばそうだったねぇ・・・と言うか、これくらい自分で分かって欲しい物だ。」


鈴音の言葉に賛同する綾斗と尚紀。


「階級とは読んで字の如く、能力者の能力の強さを表している。無印、大、権、能、力、主、座、智、熾の順に階級は高くなっていくんだ。階級が高いと給料も多い。天名とは通り名と思ってくれ。分かったかね?」


「ああ。」


「それは良いとして、綾斗。面白い生物を創ったんだけど見る?」


目を輝かして綾斗に詰め寄る尚紀。


「今度は何を創ったんだ?この間みたいに、ハリネズミに毒を持たせたような危険生物じゃないよな?この間みたいに、迂闊に触って危うく他界しかけたくないぞ・・・俺は・・・」


・・・ハリネズミに毒ですか・・・って言うか他界って・・・相当危なかったんですね・・・綾斗さんが尚紀さんに会いたくない理由が少しどころかかなり分かりました・・・


「大丈夫だって。今度のはゴリラの手の数を二本増やして、その先にドリルを付けただけだから♪ゴリラ+ドリルでドリラかな。やっぱりドリルと自爆装置とレーザーは男のロマンだよね。」


ドリラ・・・悪趣味な生物だな・・・


「おい!!そのゴリラって・・・アフリカの大使が絶滅しかけてるから繁殖を手伝ってくれって連れてきた・・・あいつか・・・」


「勿論♪遺伝子は組替えてないから、子供はちゃんとしたのが生まれてくるよ・・・多分。」


滅茶苦茶だ!!この人!!国際問題だろそれ!!


「さっさと元に戻せ!!大使が見たら卒倒するぞ!!」


「えぇ〜・・・折角、これから軍事部の開発した自爆装置やレーザーを取り付けようと思ってたのに。」


そんな物を取りつけたら、最早ゴリラじゃないぞ!!いや、既にゴリラじゃないけど・・・


口先を尖らせ不平を述べる尚紀。


「自爆装置って・・・君はそんな物を付けて何する気なんだね?ゴリラを連れ帰る大使を爆殺する気かい?」


呆れ半分に尋ねる鈴音。その質問に尚紀はニッコリ笑い・・・


「いや、秘密裏にジャングルに返してあげるつもり。」


おいっ!!ジャングルで探検してたら、手にドリルを付けたゴリラに会ったらマジで恐怖物だぞ!!


雪那はゴリラがドリルをギュインギュイン回転させながら、ゴリラ特有の走り方で追いかけてくるのを想像し身震いをする。


「マジで止めろ!!マジで、お前にそんな能力を与えた神を俺は怨むぞ。」


「それ程でも。わっはっはっははは♪」


「誉めてねぇよ!!くそぉ、こいつと話してると、いつか脳の血管が切れてしまいそうだ。時間が押してるから次行くぞ。あと、お前はゴリラをちゃんと戻せよ!!」


行くぞと綾斗が手で合図をして、部屋から出ていく。雪那と鈴音は綾斗の後を追うように部屋から出て行く。

それを尚紀はニコニコ笑いながら眺めつつ・・・


「ど、ど、ドリル♪どどどど、ドリル♪」


謎の歌を口ずさみつつ、ジャングルの奥にスキップをしながら戻った。

ドリラがゴリラに戻った戻らなかったはまた別の話。




「3」


「2」


「1」


「どっかーん!!」


尚紀「わーい♪なぜなにカガク部!!」


鈴音「皆集まりたまえ。僕のレールガンで眉間を打ち抜かれたくなかったら。」


尚紀「なぜなにカガク部の時間です。これは、『戦え、日本錬金術協会カガク部』通称『カガク部』で使われた様々な用語を説明する小説のおまけみたいな物です。」


鈴音「今回は数名程作品中にてマダ出てないので、参加できなかったから、今回は僕と尚紀と後ろで縛られている綾斗の3人でさせてもらう。」


綾斗「ふがー!!ふふね!!ほへをほへ!!(うがー!!鈴音!!縄をとけ!!)」


鈴音「解いたら君が逃げるだろ?さて今回の用語は・・・」


尚紀「男のロマン『ドリル』だね♪」


鈴音「科学と一切関係ないな。」


尚紀「良いんじゃない?どうせこれと言った、難しい用語はないしね。」


鈴音「ふむ・・・許可しよう。」


尚紀「ドリルとはボール盤の穴あけ用切削工具のことで、刃部の形は主に『ねじれぎり(ツイストドリル)』『平ぎり』『特殊ぎり』の3種類が存在しているんだな。」


鈴音「私たちが普段漫画などで良く目にするのは、2本の溝が彫ってあるツイストドリルの方だ。」


尚紀「ドリル良いよねぇ♪男のロマンだよね♪」


鈴音「僕は女だぞ?」


尚紀「うん、そうだったね。まぁ、今回は1回目だし、これで終了。」


鈴音「うむ、そうだな。そろそろ、昼食の時間だし帰るとしようか。」


収録スタジオから出ていく2人・・・


綾斗「ほれほ、ふぁふふぇるなーーーーー!!(俺を、忘れるなーーーーー!!)」




今回からなぜなにカガク部というものをやらせてもらいました。聞きたい事とかあったら、コメントに書いてください。なぜなにカガク部で説明しますんで・・・

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