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第一話 覚醒

目覚し時計のムカツク電子音が目を覚ませと鳴り響く。

俺、坂野雪那さかのせつなは目覚し時計のボタンを殴って止め、朝食を取りに一階へ降りる。

階段を降りる時、今日は何時もには無い違和感を体に感じる。

右手が重い・・・頭が重い・・・全身がダルイ・・・

結論、風でも引いたのか?

一階に下りると居間のテレビではニュースが流れていた。

今年度のノーベル賞受賞者が映っていた。

ノーベル化学賞を貰ったのは子供。

銀髪でここ最近では絶対流行りそうに無いドリルな髪型。

化学と言わず、物理学賞、生理学賞、医学賞の受賞者が子供。その中、文学賞と平和賞だけが大人である。

これは、ここ最近では見なれた光景である。


「あなたも神の使いに選ばればれたら御母さん嬉しいのに。」


若作りかつ年齢を考えろと言いたくなるほどに、かわいいアニメキャラのプリントされたエプロンを着た母は無理な願望を宣う。


「はいはい、無理な願いを言わないの。俺が選ばれる訳無いだろ。」


『神の使い(アルケミスト)』に選ばれる子供は約一万人に一人と言われており、その上、選ばれる条件がまったく不明である。

国籍、人種、宗教、貧富、性格、性別を問わず選ばれており。普通に暮らしていて選ばれた者もいれば、怪我をした時に選ばれた者もいるし、挙句の果てには少年院の中で選ばれた輩もいる。唯一分かっている事といえば、選ばれた者には共通して、右手の甲に赤色の六芒星が突如刻まれるという事である。

そして、神の使いと呼ばれる子供達は、突如、『錬金術』と呼ばれる不可思議な力を行使出来るようになった。

錬金術と呼ばれるそれは、子供達に様々な力を与えた。

ある子供は、プロセスを無視して、化学薬品の精製をすることが出来て、またある者は、物質を熱エネルギー無しで液体や固体、気体に変える事が出来る。

何故神の使いと呼ばれるのかと言うと、三年前に地球温暖化の影響で、海面上昇、砂漠化問題、異常気象と数多くの問題が発生し、地球は後十年持つかどうかと言われている時に、能力に目覚めた子供達が、その能力を行使し、数多くの環境問題を解決したからである。それゆえに、神の使いと呼ばれるようになったのだ。

これが、政府の公表している数少ない神の使いの情報。

まぁ、情報によると、俺にも神の使いになる可能性が無いと言う訳ではないのだが、確立は商店街の籤引で一等を当てるより低い。ちなみにここ最近の戦績は、十回引いて、十回とも白玉。つまり、全部ポケットティッシュだ。


「そうよね。あなたが選ばれるなら、世の中の奥様方のお子様全員が選ばれるわよね。」


物凄いむかつく事をいけしゃあしゃあと宣ってくれやがる。この性格が無ければかなり良い母親だと思えるのだが・・・


「で、朝食は?」


「出来てるわよ。トーストと目玉焼きよ。冷めないうちに食べちゃいなさい。」


「ほい。」


雪那は朝食の乗った皿を受け取り、朝のニュースを見ながら食事を取り始める。

ノーベル賞受賞者の発表が終わると、今度は神の使いの誘拐といったニュースが始まる。

大手企業等からは神の使いの錬金術の力は喉から手が出るほど欲しい物である。この力があれば、新しい商品の開発、低コスト生産といった物が可能となり、ライバル会社により優位に立てるからである。だから、拉致し、薬漬け等にして洗脳するといった事をやらかす組織は少なくも無い。

その為過去に何度もこの様な事件が起きている。これに対し政府は『神の使い保護法』といった法を新たに設立したりと様々な対策を練っている。


うむ、拉致されたりするぐらいなら絶対成りたくないな。

そんな事を思っていると、朝の喉かな空気に妹の鳴き声が響き始め、階段を駆け下りる音がし始める。


「・・・どうしたんだ?」


「さぁ?」


ドタドタドタ!!


足音が接近し、居間の扉がバンと開かれ、少女が手にハムスターを乗せて部屋に入ってくる。


「モコが〜!!」


妹の雨美うみの手に乗っているハムスターはどうやら御臨終の様らしい・・・


参ったなぁ・・・この間から調子が悪いと思ってたら大霊界に旅立たれたか・・・この場を誤魔化して十代目モコこと、モコにそっくりなハムスターをまたペットショップに購入に行かないと。


俺は母さんとアイコンタクトでそれを伝達しあい、その場を誤魔化す事にした。


「雨美、落ち着くんだ。モコは今は冬眠をしているんだ。だから、死んでるんじゃないぞ。」


「今・・・夏だよ・・・」


雨美は泣き目を擦りながら突っ込みをいれる。さすがは、我妹、突っ込んでくれるじゃないか。

今は12月なのに何故夏なのかと聞かれたら、天変地異の爛発により、地軸にずれが発生した為である。そのせいで、オーストラリアと日本の季節が入れ替わってしまった。

そして、サンタさんの服装も入れ替わった。長袖のふかふかコートから、滅茶苦茶ラフな半袖のアロハシャツを着るようになった。乗り物もトナカイと橇の代わりに海豚とサーフィンボードになった。

だが、季語は変わってない為、以外と古典がややこしい。


「済まん間違えた。夏眠だった。ハムスターは暑い所に住んでるから、気温が暑くなると良く眠るようになるんだよ。ほら、御兄ちゃんがクーラーの無い部屋で勉強して、良く息絶えてる様に。」


「・・・うう・・・じゃあ、モコは大丈夫なの?」


「そうよ。ほら、モコは御兄ちゃんに押し付けて、早く着替えてらっしゃい。」


「うん!!御兄ちゃん、モコを預かってて。」


食事中の俺にハムスターの屍骸を押し付け二階の自分の部屋に駆け戻る雨美。食事中に屍骸を押し付けないで欲しい。食べる気が無くなるんだが・・・

それにしても、九代目モコよ、良く頑張った。3ヶ月も生き長らえたのは新記録だ。初代なんて、雨美の可愛がり過ぎで、ストレスによる発病で寿命(我が家に来てから)僅か3日だったなぁ・・・

それよりも・・・本当に死んでるのかこいつ?


雪那はモコの白毛の腹をつんつん突付く。しかし、まったく動こうとしない。


ああ・・・本当に亡くなられておられる・・・俺は大して可愛がっていないので、愛着とかは一切無いが、悲しいと言えば悲しい。一寸の虫にも五分の魂。

俺は、九代目モコの死体を優しく撫でる。すると俺の右手が赤く光り輝き始めた!!オイッ!!何だこりゃあああああ!?

皿洗いをしている御母さんもその光を見て、洗ってる皿を落としてしまう。


赤い光が収まると、手の中で数時間前に大霊界に旅立たれていたモコが動き出したではないか!!


んなにっ!!モコよ、生きておられるじゃないか!!


モコは自分の命の恩人のような目で雪那を見、雪那の手の中で丸くなりすやすやと寝始める。


「雪那、右手を見せなさい!!」


ゴキッ!!


御母さんは無理矢理右手を捻って甲を見ようとした為、不吉な音を立てる。

だが、それは今回無視しよう。

俺の右手の甲には今話題の赤い六芒星が何時の間にか掘り込まれていた。


「あらー!!雪那、凄いじゃない!!」


御母さんは何時もの三倍増しのお星様を眼の中で光らせていた。


「一先ず、日本錬金術師協会に電話しないと!!それと、今日の晩御飯は赤飯よ!!」


日本錬金術師協会とは、日本に存在する神の使いを管理する協会で、世界錬金術師協会の支部の一つである。このような機関は世界中に存在しており、世界中でこれらは神の使いの情報をリンクしている。

もしも、神の使いが発見された際は、これらの機関に報告する義務が国民には設けられている。理由は神の使いの保護である。


「はぁ・・・」


ふと、壁掛け時計に目を移すと時計の針は八時をまわっていた。


「やばっ!!遅刻になっちまう!!」


雪那は慌ててモコをテーブルの上に置き、トーストと目玉焼きを口に詰め込み、鞄を手に持ち家を出る。

駆け足気味に走りつつ、感慨深げに自分の右手の甲を見る。


う〜む・・・俺が神の使いに目覚めるとは・・・以外と言うか何と言うか・・・しかし、ついつい嬉笑いをしてしまう。神の使いはその名の通り、人々にとって、天使に等しい存在である。自分はその存在になったのだ。

周りの人が微笑を漏らす俺を気味悪げに俺を見るが、そんな事気にしない!!なんたって、今日は気分が良いからなぁ。


学校に到着し、俺は早く学校が終わり、日本錬金術協会の使者が来るのが待ち遠しかった。

拉致られるくらいなら神の使いに成りたくないとは思いつつも、自分も気高き力が欲しかった。これは人間としては普通だろう。

人とは高みを望む欲深い生き物である。だから気高く誇り高き力を欲するのは世の摂理である。


そう言えば、先程から周りが騒がしい。恐らくクリスマスパーティーの打ち合わせだろう。

と、そんな事を思っていると、俺の所にドドドっとクラスメイトが押し掛けてくる。


「雪那!!その刻印は本物なのか!?」


普段は余り話さないような奴までも中にはいた。


「ああ・・・」


俺が肯定すると、周りの奴らはざわめき始める。


「すげー!!生で錬金術ってのを見せてくれよ!!」


ここまで盛り上がると力を見せないと収拾は取れないであろう。

だから、俺は力を見せる事にした。


まず、屍骸を発見しなければ成らないので、教室をその場で見渡す。

教室の後ろの棚に生物の先生の持ってきた蝶の標本を発見。

俺は、蝶の標本として飾られている一匹(紋黄蝶)を優しく手に取る。

そして、『蘇れ』と念を込める。

手の甲が赤く輝き、光が収まると同時に手の中から、標本として飾られていた蝶が、元気良く羽ばたき教室の天井付近を飛びまわる。


それを見た生徒は歓声をあげる。


蝶はやがて飛び疲れたのか、俺の肩にゆっくりと止まる。


「これで、良いか?」


「すげー!!もっと見せてよ!!」


・・・標本の中全てを復活させろと?面倒臭い。


「悪いが、この力は12時間間を置かないと再度使えないんだ。」


嘘を吐き、この場を誤魔化す事に。


「なんだ〜。しかし、凄いな。人間も生き返らせる事出きるの?」


人間を・・・生き返らせる・・・できるのだろうか?でも・・・そんな事できたら・・・拙くない?


雪那は自分の力の可能性に恐ろしく思い始めた。


「分からん。一先ず、今日日本錬金術協会の使者が来るから、それでチェックしてもらう。」


「そうか・・・頑張れよ。」


何時も、良く話す友達達が、俺の肩に手を置き、口々にエールを送ってくれるのだが・・・中には「寂しくなる。」という輩もいる・・・

てっ!!


「ちょっと待て!!寂しくなるってどう言う事だ?」


「えっ、雪那知らないの?神の使いに選ばれた者は、監視を楽にする為に一箇所に集めるんだよ。」


友達の中でもかなり親しい森塚が説明しつつ、鞄から地図表を取り出す。

地図表のとあるページを捲り、日本列島から少し離れた所にある巨大な島を指差す。

その島にはEDENとローマ字で書かれていた。


「ここ、エデンに収容されるんだぞ。まぁ、日本国内に限り外出は可らしいぞ。色々制限を受けると思うが頑張れ。」


親指を立て哀れむような目で俺を見る・・・


「えっ・・・」


洒落にならん・・・今の生活を捨てて、収容されんの・・・


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