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2.今までと違う一日

「あの・・・・」

「?、どうしたの?」

「そろそろ離れてくださいよ。」

「えーどうしよっかなぁ・・・・って、うっわ!」

あたしに抱きついていた澄川さんが、急に大きな声をだす。

「??」

「もう、こんな時間だ!出掛けなきゃ!じゃあね。なつきさん。」

「あら、澄川さん。朝御飯は?」

「食べてる時間ない!すみません!いってきます!」

すごい勢いで、出ていった。


(嵐のような、変態だったなぁ・・・)



「さ、朝御飯たべよっかね。」

桃子さんが虎雄さんとあたしにいう。

朝御飯はトーストだった。


朝御飯を3人で食べたあと、虎雄さんは庭の手入れをしに行った。


「じゃあ、ここにすむに当たってのルールを話すわね。」

あたしは、桃子さんからこの家のルールを聞いているところだった。


「まず、1つめ起床は8時30分までに済ませること。2つめお洗濯ものは一斉に回すから早めにいれること。3つめお洗濯ものはじぶんで干すこと。4つめご飯はみんなで食べること。寝る時間は特に決めてないわ。5つめ居間でははぁはぁ言わないこと。6つめ仲良くすること。これらを守ってくれたら、基本は自由よ。」


(5つめは明らかに澄川さん用だな・・・・)

「わかりました。ちゃんと守ります。」


あたしは、念書みたいなのにサインする。


「はい。書きましたよ。」

「はい!これで、今日からあなたも正式にここの住人よ!あなたの部屋に案内するわね。」

「あ、はい。お願いします。」


あたしは桃子さんの後ろをついてあるく。

居間から廊下へ出て、その廊下に沿って歩いていくと部屋の扉がいくつかある。


(やっぱ、ひろっ!)

そんなことを思いながらどんどん奥へ入っていく。いや、実際ははじめての場所だから長く感じてるだけかもしれない。

まぁ、それはともかく長い廊下の行き止まりにあるお部屋があたしの部屋になった。


「ここがあなたの部屋よ。入って入って。」

「あ、は、はい。」

あたしは、桃子さんに促されるまま部屋にはいった。


「うわっ!ひろぉ・・・・」

部屋のなかは、和風の作りで七畳半、しかも布団も備え付けられてる・・・・ここってもしかして、誰かが使ってた部屋?


「この部屋はもともと娘の使ってた部屋なのよ。ごめんなさいねぇ、使い古してる布団で。」


娘さんの部屋かぁ。男が使ってたとかじゃなくて良かったぁ。


「いえいえ!久しぶりに布団にはいれるだけでも幸せです。ありがとうございます。」


後はあたしの仕事に使うパソコンをおけばあたしの生活スペース兼仕事部屋になる。


(机と座椅子欲しいなぁ・・・・)


「?、どうしたの?ボーッとしちゃって。」

桃子さんが心配そうに聞いてくる。

「あ、いえ。机と座椅子が欲しいなぁと思って・・・」

今日買いに行く。そう言う前に桃子さんが口を開く。

「なら、つくってもらいましょう!」

「へ?」

「うちの旦那さんはね、定年する前は大工やってたの。机とか座椅子なら家たてるより簡単でしょ。ちょっと待っててね。」

(へぇ、虎雄さんて大工さんだったんだ。)

桃子さんは早速虎雄さんをよぶ。

「あなたーー?あなたーー??」


しばらくしてから、

「おぉーー?どうしたー?」

虎雄さんが駆けつけてきた。


「実はね、この子のために机と座椅子をつくってほしいの。後、ついでにちゃぶ台も。」桃子さんはお願いのポーズをする。


「え゛?!め、めんどくさぃなぁ・・・」

虎雄さんはいかにもめんどくさいと言ったような顔をする。

「い、いやなの?」

桃子さんは目を潤ませる。

わかりやすいうそ泣きだなぁ。


「い、いやいやいや!いやなわけじゃねぇよ?!余裕過ぎて(?)困ってただけさ!やってやらぁ!」


こちらは、こちらですごくチョロい。


「うふふ。ありがとうね。」

桃子さんは満面の笑みでお礼を言う。


「お、おうよ!いいってことよ!」

対する虎雄さんは笑顔がひきつっている。


そして、あたしたちは虎雄さんの仕事部屋へ移動する。

「いいかい?まずは何をするにおいても設計図は必要だ。」

虎雄さんはそう言って、定規と鉛筆、白い紙(模造紙って言うのかな?)を用意する。


なんか、小学生の夏休みを思い出すなぁ・・・・ちょっとワクワクする・・・


「まずは机だなぁ、なつきちゃんはたしか、小説家だったな。仕事でノートパソコン使うだろ?大きさどのくらいだ?」

「えーと・・・15インチです。」


(15インチってなんセンチだろ?まあ、大工さんだからわかるかな。)


「・・・・15インチっていくつだい??」


あちゃーー・・・・大工でもわかんないのか・・・・いやっ、今の大工さんならわかるのかな?



・・・・と、言うわけで長さを図りました。

「えぇっと・・・幅が1尺2寸(36.4㎝)程度・・・・奥行きが8寸2分(24.9㎝)程度っと・・・これなら3尺9寸6分(120㎝)×2尺4寸7分5里(75㎝)位の大きさでいいかぁ。」


(尺?寸?里?分?なにそれ・・・・)


「あのぉ・・・」

あたしが恐る恐る『なんセンチですか?それ。』って聞こうとしたら、

「おっ!ワリィワリィ!1尺2寸てのは、36.4㎝でな―――――――――」

と、どや顔で説明を始めた。


(うわぁあ・・・・職人のめんどくささ全快・・・・)


あたしが小学生だった頃あたしの友達のお父さんが、刃物を研ぐ職人で、なんかすごい有名な人だったらしい。この人がまた仕事について話始めたら、もう止まらない。日がくれるまでしゃべっていた。

そのときあたしは職人がどれだけ仕事を愛しているか。ということと同時に職人のめんどくささを知ってしまったのだ。


(この人も、話始めたら止まらないんだろうなぁ・・・)

ちょっと憂鬱な気分になっていたら、桃子さんが隣で、ボソッとあたしに話しかけてきた。

「あの人、普段絶対に尺貫法なんて使わないのにねぇ・・・あの人『数字なんかだいっきらいだぁぁああ!!』何て叫ぶくらいなのに。かわいい子の前だから、張り切ってんのかしら?うふふふ。」


しばらくすると、気がすんだのか虎雄さんは紙に鉛筆を走らせていた。


この段階に入ると虎雄さんはご飯も食べなくなるくらい集中するらしいので、あたしは外へ出ることにした。

桃子さんは、もうちょっとだけ仕事に没頭する虎雄さんを見ていたい。とのことで部屋に残った。


(仲いいなぁ。)

そう思いながら長い廊下を歩く。

『じゃぁ、ここへ住みなよ。』たまに、虎雄さんの言葉を思い出して少しフフってなる。


あたしは居間へ行き、勝手にお茶を用意して、勝手にのんでいるところだった。そうしてうとうとしていると、インターホンが鳴るのが聞こえた。

居間は玄関に一番近い場所に位置している。

実は、あたしの部屋、というより居間とキッチン以外の場所ではインターホンが聞こえない。なんでかと言うと、答えは簡単。この家がめちゃくちゃ広いから。

とにかく広い。

そんなことを考えている間にインターホンの音は止まっていた。


(何だったんだろ?郵便とかだったら悪いことしちゃったな・・・)

そんなことを思いながらも、ポカポカと温かい太陽の光に眠気を誘われて再びうとうとしてきたので、あたしはこのままお昼まで寝ることにした。

(今までだったらこんなに広い居間でうたた寝するなんて、考えらんなかったなぁ・・・・そりゃそうか。家ないんだし。はぁぁ~・・・暖かいなぁ・・・・)

そこであたしの意識は夢の国へと旅立っていった・・・・




コト・・・・


夢の国から帰還して、最初に聞いた音は、居間の机の上にお皿か何かが置かれた音だった。

そして、居間にはいいにおいが広がっていた。

「はい。なっちゃん。お昼ご飯よぉ。」


(なっちゃん・・・いい響きだなぁ。)

そう思いながらあたしはノソリと起き上がる。

見るとあたしの前には紙皿と割り箸があった。

「ごめんねぇ、あなたのお茶碗とお箸まだないのよぉ。だから、今日はこれで我慢してちょうだいね。明日には買ってくるから。」

と桃子さんはすまなそうにする。

「あ、はい。全然大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

更に机を見ていると、何故か虎雄さんの分だけでなくもう一人分ご飯が並べられていることに気づいた。

(・・・・?なんでたろ。)

不思議に思いつつも、ご飯を食べ始める。

「いただきます。」「はい。どうぞ。」


ここでのはじめてのお昼ご飯のメニューは、ご飯、味噌汁、さばの塩焼き、キュウリのお付けものだった。

「おいしい!」あたしは素直に感激する。

「そりゃ、そうよ!あたしの愛をたっぷり込めたんだから。」

桃子さんはどや顔でいう。

「久しぶりにまともに温かいできたてご飯を食べました!」

食べ出したらもう、止まらない。あたしはすごい勢いでご飯を食べていく。

「お味噌汁もすごいおいしいし、鯖も、塩がきいてて・・・・す、すご・・・あ・・・あれ・・・・?」

気がつくとあたしは、泣いていた。

「!、あれま!どうしたの?!骨が刺さった?」

「ううう・・・・い、いや・・・ちが、違うんです、ひっく・・・あたし、長いこと、まともな、愛のこもった、ご飯たべて・・・・なくて・・・・」


「うん。」

桃子さんは静かに相づちを打つ。優しい目であたしを見つめる。


「すごく、美味しいなぁって思ってぇ・・・・こんなに・・・・ひっ・・・当たり前の事が・・・すごく幸せなんだなって・・・・」

そこまで言って、あたしはついにしゃべる事ができないくらい、泣いてしまった。

桃子さんが近くまで来てあたしを抱き締めてくれた。

「そっか、いろいろ辛かったんだね。いろいろ我慢してたんだね。泣いていいのよ。泣いても。」

桃子さんは背中をトントン、やさしく叩く。

あたしはその胸のなかで落ち着くまで泣いた。


ようやく落ち着いて来た頃、

「・・・ご飯・・・食べよっか。」

桃子さんは優しく話しかける。

「・・・・はい。」

それから、あたしと桃子さんは、ゆっくりとご飯を食べる。

そこへ、

「ふぃい~・・・ようやく描き終えたぜ。おっ、今日は鯖かぁ。うまそうだな、へへへ。」

と、机の図面を描き終えた虎雄さんがご飯を食べに来た。

「?!、どした?!」

虎雄さんはあたしを見て言った。

「ふぇ?!」

唐突でびびる。

「なんかあったのか?そんなに泣きはらして、目も赤いし・・・大丈夫か?」

めっちゃ心配してくれる虎雄さん。

「い、いえ。全然なんでもないんです。ほんとに。ありがとうございます。」


「?、そうか?ならいいんだが。・・・・いいか?なっちゃん。」


「は、はい?」


「俺と桃子さんのことはな、実の親のように頼ってくれていいんだぜ?そりゃぁ、まだ出会って1日もたってねぇけどな、お前さんはもう、ここの住人だ。辛くて辛くてどうしようもなくなったら、俺たちだけじゃねぇ、この家の住人全員がお前さんのことを助けてくれるさ。」


「みんなが・・・・?」


「ああ、そうさ。みんなだ。お前さんが失ったものよりも遥かに多くの愛や幸せをくれるだろう。だから・・・・その・・・・あれだ。」

ここまで来て、虎雄さんは口をゴニョゴニョさせ始める。

「?、なんですか?」

「そ、その・・・・あれだよ。あれ。」

そのあれが何か全く見当がつかないんですけど!?

「うふふふ。虎雄さんたら、『もう、泣くな。』の一言が恥ずかしくて言えないのね。かわいい。」

桃子さんが笑いながら言う。

すると虎雄さんは、顔を真っ赤にしながら、

「そ、そうだよ!恥ずかしくて言えんかったんだよ!」

桃子さんに八つ当たりをする。

「うふふふ。」

「わ、笑うなぁ!!」

たしかに、口ごもる虎雄さんはどこか可愛らしかった。


みんながご飯を食べ終わって、一息ついた頃にはすでに午後2時半くらいだった。


「はぁ~こんな時間に居間でごろごろなんて・・・・幸せぇ・・・」

「はっはっはっ!じいさんみてぇなこと言うなぁ。なっちゃんは。」

「でも、ほんとに温かいですねぇ。あたしも眠くなって来ちゃったわ。」

三人で、他愛もない話をしていると


ピンポーン・・・・


また、玄関でインターホンがなった。


「あら?お客さん?妙子ちゃんかしら?」

「ああ。妙子ちゃんぐらいだな。この時間に来るのは。」

「ちょっと出てきますね。はいはーい。今行きますよー。」

そう言って桃子さんは居間を出ていく。


(桃子さんと虎雄さんの話に出てきた、妙子さんって誰だろ??)


「妙子ちゃんは、関口せきぐち妙子たえこって言ってな、よくここへくるんだよ。」

「あ、そうなんですか。」

「ああ。よくここへご飯食べに来たり酒飲みに来たりするんだよ。よく、夏樹くんの部屋へあそびにいってるな。」

「えっ?!それって・・・・」

あたしが最後まで言い終わる前に、妙子さんという人は桃子さんと一緒に居間へ入ってきた。


妙子さんは見た感じ20代くらいで、きれいな茶色の髪を後ろできゅっと結んでいる。

肌はほどよく焼けていて、全体的に元気な印象だ。

・・・て言うか・・・・大きい(身長とか胸とか胸とか胸とか)


「おっすぅ~、虎雄さん。こんちはぁ。・・・・?ああ!!?」

妙子さんはおもむろにこっちを見て、あたしを指差しながら驚きの声をあげる。

「ひぅ!?」

(今日はなんの日なのぉお?!朝から驚きっぱなしだし!)

「ねね、あなたもしかして、新しい住人??いくつ?どこから来たの??なんでここに住むことにしたの・・・・」


(うわわわ!質問攻めだ!どうしよう・・・・ううう)どう答えようかぐるぐる考えていると、


「コラコラ妙子ちゃん。なっちゃんが困ってるだろ?ゆっくり話してあげなさい。」

虎雄さんが止めてくれた。


ホッ・・・

(助かったぁ・・・・)


「おっといけない。ごめんねぇ。あなたは、なっちゃん?て言うのね。あたしは関口 妙子っていうの。よろしくねぇ。」


「下田 なつきです。よ、よろしくお願いします。」


少しの間妙子さんはあたしのことを黙って見ていた。

「~~~~かぁわぁあいぃい!」

「わっ?!」

妙子さんはあたしに抱きついてきた。

「ちっちゃい!可愛い!お肌もプルプル!可愛い!!」


妙子さんは少し上気してはあはあと息を荒くしている。


(こ、この人も変態だ!!?)


「も、桃子さーん!!この人も居間ではぁはぁしてる!!」

「んまあ!妙子さん!女の子が、はしたないわよ?!」

桃子さんが妙子さんを注意する。(まあ、たいして聞いてないっぽいけど。)


「・・・・でも、ちょっと小汚ないわね・・・・」


んな!?失礼な!!毎日・・・・とは、言えないけど二日に一回は絶対にお風呂に行くもん!


そんなことを思っていると、妙子さんがとんでもないことを言い出した。

「ねぇ、お風呂!一緒に入ろう!」

「ええ?!」

「お・ふ・ろぉ♪」

「うぅ・・・・ヤです・・・」

あたしは拒否した・・・・したんだけど、

「そんなこと言わずにさぁ、ね?」

そう言って妙子さんはあたしを軽々と持ち上げ風呂場へと歩いていく。

「きゃぁあ?!」

「おっ?やっぱり軽いねぇ。ちゃんと食べてる?」

「お、下ろしてぇえ!!」

そのままあたしはお風呂場につれていかれた。



「ほら、こっち向いて?前も洗わなきゃ。」

あたしは妙子さんに体を洗われていた。

「あの、自分でできるからいいんです・・・・けど・・・」

「それにしても、なっちゃんなかなかいい体してんね?胸もいい感じに小さいしぃ。」

カチン・・・

「ええ!どうせ、あたしの胸は小さいですよ!!妙子さんみたいな化けもの乳こうしてやる!!」


あたしは特殊な性癖にコンプレックス攻撃されたので、反撃として彼女の胸を強く揉みしだいてやった。


「にゃはは!くすぐったぃ・・・いいデデデデデデで!ちょ!なっちゃん!!力入れすぎぃい!爪!爪食い込んでるぅ!ぁだだだ!!」


お風呂場には妙子さんの悶絶する声が響いた。


~一方その頃、玄関では~


がららら・・・・

「ただいまー。・・・・ん?」

(くつがひとつ多いな)


「あら、夏樹くんおかえり。今日は早いのねぇ。」

桃子さんはいつものように玄関まで迎えに来てくれる。


「桃子さん。ただいま。今日は早く上がったんだよ。」

「あら、そうなの。」

「うん。・・・・て、言うか妙子さん今日も来てるの?」

「うふふふ。ええ。今日も来てるわ。」

(まったく・・・・あれ?そういえば昨日は僕の部屋に来なかったな。)

「僕、きがえてきますね。」

「はぁい。あ、そうそう。夏樹くん。」


「?」


「本当に住むって。なっちゃん。」

桃子さんは嬉しそうに顔をほころ

ばせながらいった。

「!ほんとですか?!それは良かったです!」

僕は嬉しさのあまり、自分の部屋までスキップする。


~場所は戻って、お風呂~


「ふぃ~参った、参った。なっちゃんたら思いっきり爪食い込ますんだから・・・・おませさんね☆」


てへぺろみたいな感じで妙子さんが湯船に浸かりながら言う。


あたしもお湯に浸かる。


この家、お風呂もデカイ。湯船も、二人入ってもすかすかあと3人ははいれるくらいの広さがある。


「いっときますけど、おませって言う言葉の使い方間違ってますよ・・・・」


「?、なんで?」


「あのですね、おませっていうのは子供とかに使うんです。」


「??なっちゃんは子供でしょ??」

当然のように人を子供扱いするなぁ・・・・・


「21が子供なら、あなたもじゃないですか。」


「いやぁ、あたしは29よ。」


「へっ?」


「へ?」


あたしと妙子さんはお互いに顔を見合わせる。

「なっちゃんて、21だったの??てっきり高校生かと・・・・」

「妙子さんは29なんだ。結構歳くってんですねー、て言うか失礼ですよ?」

「なっちゃんもねー。」


何だかんだあってようやくあたしたちはお風呂でゆっくりできるようになった。


「そういえばなっちゃんはさぁ、好きな人とかいるの?」

「・・・・いないです。」

あたしと妙子さんは他愛もない会話をする。

「なんでここに住むことにしたの?」

「ここに来たのは、昨日の夜に酔ったあたしを澄川さんが拾ってここへつれてきてくれたの。」

「あぁ~・・・澄川かぁ、あいつならやりかねないな。」

と、妙子さんが笑う。


やっぱり妙子さんと澄川さんは特別な関係なのかなぁ・・・・?


気になったので聞いてみることにした、



のだが、


(な、何て聞こう・・・・)


あたしは、恋ばなとかそういう部類の話をほとんどしたことがない。別に嫌いなわけではない。縁がなかったのだ。

だから、何て聞いていいのかわかんないの・・・


「あたしはさぁー、」


妙子さんが唐突に口を開いた。


「絶賛募集中だよぉ。」


「はぁ・・・」


わりとどうでも良かった・・・・


「実はさぁ、最近結婚願望強くなってきてさぁ、気づいたんだよね・・・・」


あ、あれ??なんか、嫌な予感・・・・


「女の子って・・・・・・・・・・・・いいよね・・・・」


やっぱり、どうでもよくなかったわ・・・とんでもない性的少数者セクシャルマイノリティが来たなぁ・・・・


そう思って、妙子さんをみると、彼女はあたしに向かって熱い視線を向けていた。


あーー・・・・これは・・・・ヤバイな・・・・


「あたしねぇ・・・最初みたときから・・・・なっちゃんのこといいなぁって思ってたのぉ。なっちゃんはうけ?攻め?ねぇ、お願いよ・・・」


(犯される!!)


「いやぁー!」

妙子さんが皆までいう前にあたしは風呂から飛び出していた。


一方、


「はぁー、今日も疲れたな・・・」


ひと風呂浴びたいなぁ・・・・そう思い僕は風呂場に行くために廊下を歩いていた。


すると急に、


「いやぁー!」


女の子の悲鳴が風呂から聞こえてきた。


「?!、なんだ?!」

僕は驚いて、すぐに風呂場へ走っていった。


そしてまもなくして、なつきさんがすごい慌てた様子でこっちへ走ってきた。


しかも、すっぽんぽんで(?!)


「うお゛?!な、なつきさん!?何で裸なんですか?!」


なつきさんは、なぜかなにも言わずに僕の後ろへ隠れる。


走ってきたあとをみると、床は濡れていた。


(体も拭かずに走ってきたのか?なんで?)


僕の疑問は、数秒後に解決した。


「まってよぉ~、なっちゃぁ~ん。●●●(青少年には聞かせられないね。)させてよぉ~!欲求不満なのぉお!」


これまたすっぽんぽんの妙子ちゃんが走ってきたのだ。


(まぁ、これはいつもどおりだね。)

これが日常なのはどうかとおもうけども・・・・


妙子ちゃんは僕の前で、ぴたっ!っと止まって、僕の後ろでちっちゃくなったなつきさんに喋りかける。

「なっちゃぁ~ん?隠れてないで、●●●に、指突っ込ませてぇ?」

「ひっ!?」

なつきさんは完全に怯えた猫みたいな声を出す。

「まあまあ・・・・今回は見逃してあげたら?二人とも裸だし、風邪ひいちゃうよ?」

僕は助け船を出す。

「ヘイヘイ。わかったよ。」

妙子ちゃんは素直に引き下がってくれた。

しかし、なつきさんはまだ僕の後ろで縮こまっていた。

「ほら、なつきさんも、風邪引くよ?」

「・・・・妙子さんと二人の密室はヤだ・・・・」

「・・・・あー、確かに・・・」

あの人ちょっと癖が強いとこあるからなぁ・・・・

あの人ほど恋愛ベタなひとみたことないもんね。

「?、なっちゃん?どうしたの?着替えるよ?」

妙子ちゃんが言う。

「あぁ~・・・なつきさん、何て言うか妙ちゃんのこと怖がっちゃって、一緒に着替えれないって・・・」


「ええー!?」

妙子ちゃんはいかにもショックそうな顔をする。

「まぁ、しょうがないかぁ・・・」





(最悪だ・・・・)

澄川さんがいつのまにか帰って来ていた。

(ガッツリみられたよね・・・裸・・・・)

そう考えただけで泣きそう・・・

さっきの妙子さんは怖かったけど、別に気持ち悪いとかそういう気分にはならなかった。

ただ、この人は女のひとが、好きになってしまうひとで、きっとその事でいろんな苦労をして来たんだろうなぁ、って思っただけだった。

(愛の対象が違うだけで、なにも違わないんだよね・・・・)

でもやっぱり怖い。


「?、なつきさん?」

澄川さんが話しかけてくる。

「は、はい?」

「あの人、妙子ちゃんは別に悪い子じゃないんだよね。あー、あのー、今日ああなったのは多分なつきさんがかわいいからだと思うよ。まあ、半分くらいはいつも通りだけどね。」


「えっ?!」

いま、かわいいって・・・・・・・

「妙子ちゃんは――――――」

そのあと、澄川さんがなにを言ったかわからない。あたしはかわいいと言われたのが久しぶりすぎて呆けてしまった。


「―――なぁ。」

はっ!

「すみません。もういかっいってください。」

「だからー、僕もその状況に、突撃して、ふたりに思いっきり殴られたり、蔑まれたりしたかったなぁ・・・・って」

澄川さんは、はぁはぁする。

「~~~」

「あ、あれ?どうしたの?きゅうにだまって・・・」

「ばかぁーーー!」


思いっきり、腹パンした。


「あたし、着替えてくる!」

怒りながら歩いていく。


「なんだ?!どうした!なんか、デカイおとがきこえたけど・・・・な、夏樹くん!?」

虎雄さんが走ってくる。

「ど、どうしたんだ?!」

「ぐふ・・・なかなか、いい・・・・ぱんちだっ・・・・」(ガクッ・・・・)

「な、夏樹ーー!!」


「?、二人とも~?遊んでないで、お夕飯の手伝いしてくれる~?」


「はーい。」「いいよー。」


あたしが風呂場にもどっていると、ばったり妙子さんとあってしまった。

(一本道だから当たり前だけど・・・・)


「あ、あの・・・・なっちゃん?」

「・・・・」

「そのぉ・・・さっきはごめんね・・・・」

「・・・」

「ゆ、許してなんて言わないから・・・ご、ごめ゛・・・・」

「もう、いいですよ。」

「へっ?」

「だから、もういいです。別に悪気があったんじゃないんですから。(それに、このまま続けてたら泣かれてただろうし。)」

「あり・・・・がとう・・・ううっ・・・ふええ・・・」

妙子さんは泣きだしてしまった。

(やっぱり泣いちゃったぁ・・・)

「ごめ゛んねぇー、あだしどうしてもはどめがきかなくなっぢゃうのぉ・・・ほんどにごめんねー・・・・」

めちゃくちゃ号泣する。

「も、もういいですから・・・」

あたしはどうしていいかわからずに困っていると、

「あらあら、どうして泣いてるの?」

桃子さんがこっちに来てくれた。

「ふえぇえん・・・」

桃子さんは妙子さんを抱き締める。

「もう、泣かないの泣かないの。ほら、泣いたら美人が台無しよぉ。」


「うっう・・・ひっく・・・・」


やっと、妙子さんは落ち着いてきた。


「さぁ!傷心の妙子ちゃんのために、いいお酒を開けましょう!」

桃子さんがそう叫ぶと、


「ほんと!?やったぁ!」

妙子さんは歓喜していた。

立ち直りはっや・・・・!


「みんなぁ、ご飯ですよぉ。」


「はぁーい」


みんな口々に返事をし、居間へ集まる。


今日はこの家にいるみんな+αであたしにとってはじめての夜ご飯。


妙子さんはすでにべろべろによっていて、さっき、泣いていたことなど忘れている様子だった。


しまいには澄川さんもべろべろによっぱらって、裸になろうとするし、

この家はほんとに賑やかだなぁ。


・・・・でも、この雰囲気は嫌いじゃ・・・・ない・・・かも。


こうして、あたしの今までと違う一日が終わった。


つづく。

遅くなって申し訳ありません!!


いろいろ、試行錯誤していたら、いつのまにかこんなに時間がたってまして、ほんとにごめんなさい!

ゆるしてちょ★


今回は色んな人の視点から物語が構成されてるんですが、分かりにくくてすみません!


話の流れの整理としては、


(一話より)

澄川となつきが出会う

ここにすんでいいといわれる

澄川が抱きつく

(二話に移動)

澄川出ていく

朝飯

いろんなことを桃子さんからきく。

部屋案内。机を頼む。

なつき寝る

昼めし

妙子くる

こんな感じですね。


次回もお楽しみにぃ!

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