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―― あれは圭子ではなく。もう一人の、私。



 私は自室の中、布団をかぶって震えていた。


 圭子が最後に言った言葉が、もしも「もう一人の私」だったとしたなら。

 私はもしかしたら、圭子と同じ道を歩んでしまっているのかもしれない。そして、このまま行ったら私も……



 食事も喉を通らない。


 心配して見に来た両親には、調子が悪いと嘘をついた。



 早く眠ってしまいたかった。明日起きたら、きっと今までのことはすべて夢で、またうるさい圭子が迎えに来るのだろう。



「圭子……助けて……」



 

 翌朝、私はスマートフォンのアラームの音で目を覚ました。


 アラームなんてかけただろうか。普段から朝が強い私は、スマートフォンのアラーム機能なんて使ったことがなかった。


 スマホのロックを解除すると、アラームを確認しようとアプリを起動する。


 その途中で、ふと、指が止まった。



 昨日撮った、自撮りさんの写真。

 あれが全部消えていてくれたら、夢であったなら。



 私は昨夜抱いた淡い希望を胸に、画像フォルダを開いた。





 あの時の自撮りさんの写真は、消えていた。






  画像フォルダの中は、私一色になっていた。

 暗闇の中、虚ろな目をした私の写真が、何十枚も画像フォルダの中に保存されている。


 その横には、当たり前のように黒い靄が浮かんでいた。


 枚数を重ねるごとに靄は大きさを増していき、画面全体を覆っていく。



「なにこれ……」



 こんな写真とった覚えはない。

 昨夜は、家に帰ってきてから、スマホにさえ触ってないはずなのだ。



 一枚ずつ画像を削除していた私は、あることに気がついた。


 画像の中にいる私らしき人物は、靄が大きくなるほどに、その姿を鮮明にしてきている。ついにその大きさは画像の半分以上を占めるようになり、目元から下は肩口ほどまで見えるようになった。


 その画像の中の私が、両手を広げて立っているのだ。


 こちらに手のひらを見せて、目の前で指を広げている。



 次の画像でも、もう一人の私は両手を広げていたが、前の画像と一つだけ違うところがある。

 左手の親指だけが、折られ、閉じられていた。



 次の画像では親指と人差し指。



 その次では親指と人差し指と中指。




「カウントダウン……?」



 

 一枚につき一本ずつ、指の本数が減っていく。

 昨夜取られた画像は、カウントダウンが三まで進んだところで止まっていた。


「あと三枚ってこと……? あと三枚撮られたら、私は……?」

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