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人間と魔王は相対する。


メフィスト=フェレスの一件から数日が経過し、テスト期間も終了した聖華学園の生徒は皆安堵の表情を浮かべていた。


超常現象研究部の部長と副部長を除いては。


「山打、ちゃんと寝てるかい?」


「部長の方こそ目の下のクマがひどいな。」


互いに顔を見合わせた二人は、深い溜め息をつく。

しばらく間を置いた後、困惑の表情を浮かべながら部長は切り出した。


「確かに、あの二人の発見は素晴らしいものだ。しかし、研究者としてはもっとこう段階を踏んでほしい。いきなり悪魔召喚とか、契約だとか、女神降臨だとか、クラスメイトが天使だとか」


「そうだな。なんの推測も科学的検証も出来ないまま、あの日は新事実が次々と目の前を通りすぎていった感が否めない」


「悪魔や天使?そんなもの、人間が作り出した概念にすぎない。ましてや魔力など…物理現象をすっとばして何かに影響を与えるなど……夢物語だったはずだ」


「の、はずだった」

「この1週間で調べた結果……どうだ?山打」


と、小さな木製の机の上に二人は資料を並べ出す。


「詳しい事は、佐島ちゃんを研究しないといけないけど、結論から言うと」

「この世界で起きる物理現象を根底から覆す程の因果関係は魔力には無い」

「そうだな、山打」

ふぅー、と溜め息をつき、椅子にもたれ掛かる2人。

「ひとまず、私達の研究の障害にはならないが」

「考慮する必要はある。特に宗教関係の資料は、実在する悪魔や天使の差異に注意しないと。

まぁ、この分野は佐島や、久瀬の分野か……」


そんな2人のやり取りを、目を輝かせて見守る人物がいた。


「いいナ、いいナ!お前ら仲良さそうで、友達なんだロ!?」


机に肘をつき、割り込んできたのは暇をもて余していたアシュタルテである。

今は、その身長を丁度小学生位にまで上げている。



「ふーむ…友情?」


「ただ互いの研究結果報告だよ。別に仲良くしてた訳じゃ…。」


照れるなと言うように、2人の肩をばんばん叩きだすアシュタルテ。


「魔界では、友達はいただろ?君も。」


「ん?…そうだな…。」


と、アシュタルテの表情が哀しみのものへと変わり、目線を下に落す。


「それより、アシュタルテ。なんだ?その衣装は?」

「ん?これか?これは…あの長身で、ロン毛のサングラスがくれたんだ。似合うカ?」

「まぁな」

「こんなものを着せて…。完全に花菱くんの趣味だね。しかも手作りときた。トモローくんは無駄に器用だよねぇ」

「あぁ、無駄にな」


アシュタルテは、ロングタイプのスカートのシックなメイド服を着用していた。ちなみに今の頭身は、この着衣に合わしたものだ。部室の扉が開く。


「お、今のあんたのお友達とご主人様がお帰りだぞ?」


「ン!?」


振り替えるとそこには久瀬と佐島、羽根野が私服で立っていた。


「ん?なんだ?オマエら?今日は制服じゃないんだな?」


不思議そうな顔をして3人を見るアシュタルテ。


「あぁ、少し急用が出来て自宅に戻ったんだ。行くぞ?アシュタルテ?」

「お?お出掛けか!」

「アシュ…その服は?」

「いいだろ?奏。あのサングラスに貰ったんダ☆」

「いいわね……。黒い服は好き」

「…はいはい、2人とも…早く行くわよ?どちらにしろ、そんな格好じゃあ秋葉原位しか歩けないわ。着替えて?アシュタルテ。あと…頭身も変えれるなら、目立たないように私達と合わせられる?」


「ら、ラゥビー…なんかピリピリしてるナ……。頭身はともかく、服装はどうすれば…いいんだ?」


「うーん、考えてなかったわ。人間界は面倒だ」


大丈夫だ。問題無い。とヒロが奏に合図を送る。頷いた奏は、鞄から服を取り出すと、アシュタルテを奥の部屋に連れていき、着せ替える。


出て来たアシュタルテの頭身は、丁度高校生位にまで上がり、束ねていた髪型も解いて、そのロングヘヤ―が波打っている。そして、その服装は、少しかわいいめの所謂、森ガール的なものになっていた。


「うん、やっぱり似合う」


「あ、この衣装もいい感じね。魔力で出来た衣服とはまた違ったよさがある。ヒラヒラでふわふわなのもいい」


「でしょ?気に入ったのなら、プレゼントするわ?」


「いいの?ママ?」


「うん、店員さんに進められて買っちゃったのだけど、帰って着てみたら、全然似合ってない気がして。それに白いから、何だか落ち着かなくて」


「そっか、それなら頂きます」


「うん!」


咳払いをした久瀬は、佐島とアシュタルテに出発を促す。


「久瀬くん、僕達は必要かい?」


「人手はいた方がいいのですが、今から僕達が調査しにいくのは悪魔絡みですし、魔力を持たない先輩達を危険にさらしたくはありません。それに寝不足でしょ?」


ハハッ、と両手を上げてクタクタだというサインを送る。


「一応聞いておく、目的地は?」


「それは“新宿公園”近辺です。あそこに、どうやら魔界に繋がるトンネルがあるって噂なので…」


「それは怖い噂だな」

「私も昔、他の天使づてに聞いた……いや、あれは悪魔を拷問にかけた時の話だったかな?

まぁ情報源が曖昧だから半信半疑なのだがな。その付近で犬の悪魔とも遭遇しているし、念のために調べてみようと思ってな」


「……ラゥビー……私にはしない?拷問」


しばらく考えた後、アシュタルテに答える羽根野。


「必要があればするわ」


「……気を付ける」

「大丈夫だよ、アシュタルテ。僕がそんなことさせない……」

「ご主人……」

「いや、待てよ……」

と様々な可能性を考え込む久瀬。

「僕もラゥビーに賛成だ。無論、その必要があるならだけど」

「うぅ……主人ー、見捨てないでよー」。

「大丈夫だって、アシュタルテは世界が滅びるような隠し事なんかないだろ?だから安心して」「うん、ないゾー!」

と、今度は喜びで強く久瀬に抱き着く。


溜め息をつく羽根野。

(しかし、あの感じ…メフィストとも知り合いのようだった…その点は注意すべきか…)


久瀬とアシュタルテの間に強引に割り込み、2人を引き剥がそうとする佐島。


「アシュちゃん、何なら今してあげましょうか?魔女式の拷問を」

震え上がるアシュタルテはすぐさま久瀬から離れる。

「はは、冗談に決まってるだろ?」

と久瀬は笑っているが、佐島の表情は明らかに本気のようだ。

「さ!行くわよ!」

羽根野に先導されて3人は部室をあとにする。


新宿のビル街を昼間にも関わらず、一匹の蝙蝠が飛び回っている。

その鳴き声と羽音は、都会の喧騒に飲まれ、人々の視界からその存在は消えていた。

その蝙蝠の存在に唯一気付いていたのは、小さな蝿一匹であった。


「あいつは確か第一世代のアルカードか?魔界の第4皇女リルムの従者だっけかな…?って、事はあのくそったれな奴の仲間って事か……」


ムスカはその蝙蝠の後をバレないようにつける事に決めた。


この蝙蝠は、強い日差しにまだ慣れていないのか、時折ふらつきビルや家屋に体をぶつけそうになっていた。


「へー…第一世代ともあろう御方が…なんとも情けない。

少しは、父上を見習えばいいのにな。って、もう遅いんだよな」


しばらくそうして飛行続けるアルカードの後をつける事数分。今度は来た方向とは正反対の方向に体を翻し、一直線に飛行していく。


そのあまりの速度に、ムスカもすぐには追い付けないでいた。


「あ、あいつ!本気じゃ無かったのか?全くなんて速さだ。俺の尾行に感づかれたか?いや…違う」


ムスカは、アルカードを追跡しながらも、あらゆる可能性を考えていた。

どこかかが目的地なら、到着した時点で、そこに降りる。


それに、わざわざ速度を落としていたということは…

何か理由があるはず…そして、急に体を翻し、一直線に元来た道を引き返したことと……リルムの従者兼保護者である立場を考えると……リルムに何かを命令されていて……

その目的が果たされたから、帰路についた?


と考えるのが自然か…?


「しかも、人目や、天使に見つかりやすい上空を…・・・日中に飛ぶとなると。

そんなリスクを侵してまでという事は何か非常事態ってことか?」


にやりと、ムスカの口元が歪む。


「面白くなりそうだ」


しばらくすると、遠くの方に、パーカーを羽織った制服姿の少女が視界に入る。

そこに、先程の蝙蝠もいる。


「ビンゴ!見つけたぜ…皇女様!」

ムスカは、十分な距離を取り、二人のやり取りを盗み見る。

「おかえり、キィちゃん…。」

心配そうに、疲れた表情をするアルカードの頭を撫でて気遣うリルム。

「ウェルティーは見つかった?」

コクりと、頷くアルカード。

「恐らく、間違いないだろう…。

微量だが、奴の魔力の気配も感じタ。」

その事実に喜ぶリルム。

さぁ、その場所に行きましょう!と、アルカードを急かすが、

何故かその蝙蝠は乗り気ではないようだ…。


「その……リルムよ。しばらく、それらしき人物の後を追っていたのだが…。この世界の学生が着る服を身に纏い、見知らぬ女と一緒に歩いていたのだ。そして、最終的にはその女と一緒に、長くて四角い建築物の中に入っていってしまったのであル」


その事実に、衝撃を受けるリルム。


「ウェルティーって、確か…マザコンよね?」

「ん?あぁ…本人意外は気付いてる周知の事実だ。」

「年上の女性が好きって事よね?」

「いや、あいつの場合は、母であるユーリ意外全く気にかけてないようナ」


リルムはあまりアルカードの話が耳に入っていないように、話し出す。


「少し頼りないけど、あれで結構かわいいから……。ついいじめたくなっちゃう…って言うか…所謂、母性本能を…くすぐる?感じだから、きっとその人間界の女性はウェルティーの魔性ヘタレの虜に。 ウ、ウェルティーの……」


リルムの顔が青ざめていく。

そして、拳を握り締めて声を大にする。


「ウェルティーの貞操が、危険よ!!」


アルカードは、そうか…とだけ小さく呟いた。

傍らで話を聞いていたムスカは呆れて溜め息をつく。


「もしかして…皇族は…馬鹿揃いか…?」


それより…と、ムスカは違う方向を見る。

以前からマークしていた、新宿区の守護天使がどうやらあの公園に近付いている気配がする。


今あそこにいるのは……確か、あの段ボールを被った兄ちゃんか……皇女が、公園の敷地外に出ている事は吉とでるか、凶と出るか……ま、俺には関係ないけどな。


 *


――同時刻「新宿公園」。


公園と、街との境目にあたる出入口付近で、浮浪者がうろついている。それを見つめる佐島奏の姿がそこにあった。ほどなくして、辺りを警戒しながら羽根野と久瀬浩樹、アシュタルテがやってくる。


「アシュタルテ、羽根野?何か見つかったか?」


首を横に振りながらラゥビーは返事する。


「付近は特に不審な点はないようだな」


「そうか、じゃあ当初の目的地である公園に」


ふと久瀬はアシュタルテの方に目をやる。何やら不機嫌そうにしているアシュタルテの姿がそこにあった。

「どうした?何かあったか?」

「主人……さっきはなんで私に確認とらなかったの?」

と、口を尖らせて怒っている。


アシュタルテは、本来の頭身以外の時はどうやら扱いづらいキャラのようだ。

(今は十代の女子に近い頭身だ)


「君は完全に攻撃型だろ?何かを発見出来るとは思えない。まさか相手が何の対策も無しで、人間界に紛れているとは考えにくい。それに…君は、自分の記憶の一部と魔力で出来た肉体を手に入れたに過ぎない。本来の肉体は、恐らく魔界にあると思う。だから、今君に危ない橋は渡ってほしく……な・・・・・・ん?」


横から、羽根野が久瀬の肩をつつく。


「話てるとこ、申し訳無いが、君の話の前半だけ聞いて泣きながら公園の中に入って行ったぞ?」


「あれ?なんでだろ?」


溜め息をつくラゥビー。


「君達は、ホントいいコンビだよ。ね?佐島さん?」


と羽根野は視線を佐島の方に向ける。奏はもの珍しいのか浮浪者を凝視している。


「(こらー佐島さん!見せ物じゃないんだから、あまり見る……な?)」


羽根野の動きも止まる。

横を歩いていた久瀬もその異変に気付く。


「羽根野どうかしたか?何か見つけ…たの…か?」


3人は固まってしまう。


先程から佐島が凝視していた浮浪者の格好と行動が変なのである。


出入口付近をぐるぐる回りながら、時折決心したかのように公園の外に向かってダイブするが、しばらくフリーズした後、また慌てて引き返す。そんな行動を繰り返している段ボール箱を頭から被った人物が、そこに居たからである。


今まで、色んな人を見てきたが、段ボール箱を頭から被っている人物など見たことは無い。その男は、何やら独り言を話しているようで、


時折、小さい声で「く、やはり、恐ろしい」「ホースが」「姉さんに追い付かなければ」などとぶつぶつ聞こえてくる。僕は本能的に理解する。危険人物だ。


久瀬は慌てて、佐島の瞼を手で隠して視界を塞ぎ、先に進むように促す。


「ハイハイ、あまり見てはいけませんよ?奏さん?」

ズリズリと久瀬は佐島を引っ張っていく。


「にょ、違うよ?別に興味本意とかじゃなくてね……」


「ハイハイ、解った、解ったから……」


佐島はそれ以上抵抗する事は無かった。

羽根野もそれに続く。


「あ、羽根野ラゥビーさん?今更だけど確認しておきたいことが」


久瀬は話に集中する為に、奏を誘導するのを止めたが今度は逆に佐島が久瀬の手を握り、引っ張って歩き出す。そして、囁くように話しかける。


「よかった。ヒロちゃんが無事だったからこうしてまた一緒に歩ける!」


昔からの付き合いではあるが、嬉しそうにしている奏はかなり珍しい。

よっぽどということだ。笑顔では無いが、声のトーンと閉じた目でそれが解った。


「感謝してる」


佐島の肩を叩く久瀬。



「おーい、君から話しかけといてほったらかしかい?そこの夫婦」

羽根野が不機嫌そうに悪態をつく。

「ちょ!夫婦!?」

慌てて久瀬は佐島から離れる。

「ぐぐ、ところで」

久瀬は拗ねて歩く事を止めた佐島の背中を押しながら羽根野に伺いを立てる。


「ところで、悪魔か人間か天使かをどんな基準で見分けているんですか?」

しばらく間を置いたあと、小さい声でラゥビーは答えた。

「え、なんて?ラゥビーさん?」

ごほん、と咳払いをし、照れながら答える。

「勘だ。怪しい奴は洩れなく尋問している。」

「……」

「な、何だおまえ!何か言いたそうだな!」

「そんな危ない橋を渡ってよく生き残ってこれましたね」


「ま、これでも守護天使という役職はエリートだからな」


「アシュタルテの事を例に挙げると、ある程度の魔力感知は出来るみたいなんですが、ラゥビーさんに教えて貰った”魔力を抑制する方法”で抑えられた魔力は感知出来なくなるみたいなんです。この事は、まだ彼女が不完全だからだと言う事ですか?そしてそれは、天使と悪魔の違いが関係しているんですか?」


そうだ……と歩きながら羽根野は答えた。


佐島は、特に興味が無いようで、辺りをキョロキョロして、困った顔をしている。


「我々天使には、元々肉体が無いのだ。

本来の私達の住む世界では住人に血と肉は無く、

魂しか無い状態で映像ヴィジョンとして存在している」


「今の体は、映像なんですか?」


「いや、君も私が傷つき、血を流している所を見たであろう?」


「メフィストとの戦闘時、確かに血を流してましたね」


「私達天使は、使命無くしてこの世界には送られてこない。 私達が存在する理由は、全てある方の望みであるからなのだよ」


「ある方?」


「あぁ……君らの世で言うところの神様だよ」


「私達の世界ではあまりにも神様が創られすぎて、どれを指しているか判りません」


「そうか、君達はそういう無駄な知識だけは多かったな。所謂、キリストの父なる存在だよ」


「了解しました。で、その事が見分けに何か関係すると?」


「悪魔は、生まれた時から肉体も、魂も、魔力も与えられた存在だ。だからその成長と共に、五感は鋭く、魔力も増幅していく。」


「その点、私達天使は常に与えられたもの。自らの力で勝ち取った力ではない。主の目的の遂行の為、必要最低限の力しか与えられない。ま、その最低限と言っても、並みの悪魔を軽く消し去る位の力は与えられているのだがな。ちなみに、最低限という所がみそで・・・…かつてそのある方は一度失敗しているのだよ。自分の創造した天使に力を与えすぎてそれが反逆を起こすきっかけになってしまった。最初の堕天使ルキフェル。一般的には、ルシファーだとか、サタンだとか言われている。お前も聞いたことのある名だろ?」


「はい・・・。魔界の王って事ですよね?ホントに居たんだ。 って、話を元に戻すと、羽根野さん達天使には、魔力を感知する能力は与えられていないと言う事ですか?」


「フフ、違う違う。そもそもそんな能力自体が与える事の出来る代物では無いんだよ」


「?」


「考えてもみろ?魔力が視認出来るようになるのはどんな時かを。」


「んー?」


「 魔力を使った術を使うか、魔力を凝縮したり、力として発現させる時に、目に見えるオーラとして具現化される。もしくは、物理現象により発光したりはする。君の肉体は、目に見えないものを感知出来たりするのか?もちろん嗅覚、聴覚、味覚、触覚で感じるものでは無い。視覚でだ」


「でも、天使と人間は違うのでは?」


「フフ、もう今では魔力を行使できるようになった君や、佐島さんと大差ないさ。あるとしたら“魔力の質と量、戦闘能力”ぐらいかな?」


「なるほど。メフィストが僕に近づいてきたのも、その能力があいつにあったからか・・・…。

あれ?でも、あの時、羽根野さんや、もしかしたら僕も魔力を感知出来てた感覚がある」


「あぁ、今出来ないと話をしているのは、こちらも魔力を抑制している時のことだ。

無論、感知する方法や見分ける方法は他にもある」


と、一度言葉を飲み込む羽根野。


「 本当はこういう事はなるべく話してはいけないんだがな。まぁ、規則にはないし、お前達の命に関わることだから教えておいてやる。」


「感謝します。」と久瀬は頭を下げる。


「なぁ、蝙蝠が闇の中であんなにも素早く飛べるのは何故だ?鯨が光も届かないほどの深海で獲物を捕れるのは何でだと思う?」


「超音波や声、音?」


「当たりだ。あいつらは、自分から放つ音波の微妙な跳ね返りにより、目の前のものを視認せずに感知している」


「それと一緒だと?」


「魔力同士は、若干反応し合うんだ。大きく分けて、感知する方法は2通りある。


一つめは、こちらから魔力を放ち、その反射具合で感知する方法。


二つめは、自分の魔力の領域を広げる方法だ。

ちなみに、私は一つめの方法で見分ける事は出来ない。


二つ目の方法は、わざわざ自分の魔力の領域を広げなければ感知出来ない。


これは、常に魔力を放出しなければいけなくなるし、その範囲も自分がどれだけ領域を広げられるかによる。最も逆に感知されやすい方法でもあるが、状況により背に腹は変えられんからな。まぁ、感覚の鋭い魔族なら、相手に感づかれない程度の微弱な魔力領域の開放で感知してしまう奴もいるがな」


「なるほど、それで僕も感知できたんですね」


「そして、見分ける方法のもうひとつはこれだ」


羽根野は、ポケットから綺麗な懐中時計を取り出す。


「懐中時計?」


「あぁ。時を止める懐中時計だ。これはその地区の守護天使のみに与えられるもので、私達にしか使えない。」


「時を?あ、奏を助けてくれた時のやつですね」


「そうよ。やってみようか?まぁ…・・・それぞれの担当する守護地区の範囲内にしかその有効範囲は無いのだけど。それに連続しては使えない。時間を止めた分、他の時間軸と接合する為の処理時間が必要になるからな。あ、念の為だ。久瀬、奏の背中を押している状態から奏を抱きしめろ。そしてお前の魔力で包んでやれ」


「え!えぇ!!」


いいから!っと、久瀬にその行為を促す。


「これも試練だ。覚悟はいいか?」


「う……うん」と、久瀬の方に向き直り、目を瞑る佐島。


「い、いや。後ろは向かなくていい」

佐島に方向転換させると、久瀬は後ろから佐島を優しく包む。

魔力と一緒に。赤面する2人。


「ま、まだですか?結構恥ずかしいんですけど?」


「ヒロちゃん、周りの人が見てるよ?」


同じく赤くなってしまった羽根野が慌てて時計に魔力を注ぎ込む。


「羽根野さん?」


と久瀬が声を上げた瞬間、羽根野の淡い青色の魔力が発現し、独特の紋章が時計の周りに浮かび上がる。そして次の瞬間、大きな魔力の波が辺りを包み込む。


その波に触れた物からまるで凍てついたようにあらゆる物の動きを止まる。


「嘘だ、こんな事が物理的に為されるはずがない!」


「そうだ。本来ならいくら魔力を極めようとも、こんな事は出来ない。私達の主だから可能であり、許された行為でもある」


「え、ちょっと待って下さい!なんで僕達だけ動けるんですか?」


「あぁ、実は、この時計から発せられる時を止める波の耐久力を

あえて微弱に設定している。魔力に触れた瞬間、その魔力の持つ力に反応して、効力が相殺されるくらいのな」


「そうか、それなら相手が魔力に関わる人物かどうか判りますね」


「あぁ。この辺にはいないと思うが、もし動けるやつがいたら、そいつは間違い無く

悪魔か天使、もしくはお前達みたいな魔術師だよ」


「これで探しやすくなりますね。目立ちませんし」


「タイムリミットを30分に設定した。時間も止まっているから、思いっきり魔力の知覚領域を広げて片っ端から探せ!」


「了解!」


と、横を見るといつの間にか奏も敬礼をしている。

途中から話を聞いていたのか、しっかりと魔力も解放中である。


「奏は駄目だ。危険すぎる。これは、羽根野か、契約者の僕、アシュタルテの役目……」


あ!と久瀬が叫ぶ。

そして奏の両肩に手を置く。


「奏、よかったら、アシュタルテを探してきてほしい。」


こくりと頷く奏。


「まぁ……あいつは攻撃型だからそうそうやられないとは思うけど。奏は逆に完全なサポートタイプだから丁度いいか」


「二手に分かれましょう」と久瀬が羽根野に提案する。


「そうだな。ただし、くれぐれも油断するなよ。何者かを見つけたら、魔界への入り口や、悪魔の情報を引き出せ。吐かないのなら、躊躇無く殺せ。迷えばお前が殺される。それだけだ」


「り、了解。」


「なぁに、安心しろ?この前みたいな、メフィストのようなランクが高いような奴とは

まず遭遇しないだろ。」


その言葉を聞き、久瀬の緊張が和らぐ。


「無理はしないように。無理ならすぐ助けをよべ?いいな?」


と、釘を押されて探索作業に移る。

ふと、走り出したラゥビーの首元が疼く。


「(そういえば、あの犬の悪魔と出会ったのも公園の近くだったな)」


久瀬は一度深い深呼吸をしてから目を閉じる。そして世界の時を止めた事で、つかの間の自由を得る事の出来た久瀬の魔力は、抑制されていた反動でとめどなく溢れてくる。

左腕の包帯を取ると、刻印が魔力の放出に反応して僅かに紫色の輝きを帯びる。意識的に、自らの持つ魔力で知覚できる範囲を少しずつ広げてやる。


今、立っている場所を中心に、約20Mほど範囲を広げたあたりで、それ以上自らの魔力領域を広げるのを止めた。弱い悪魔だったとしても、複数に発見されては対処が難しいからだ。更に魔力領域の有効範囲を窄めていき、13m位までその範囲を縮小させる。


目を開けて、歩き出す。そして、ある違和感に気付く。


ごくごく薄い魔力の反応ではあるが、公園の至る所に魔力があったという痕跡が見つかる。


「・・・なんだこの感覚は?」


至る所に感じる魔力の残り香。自らの魔力領域を広げないと感知出来ないようなレベルのものであるが、確かにそこに魔力を持つ者達がいたという事を知覚出来る。しかも、それぞれに受ける魔力干渉の具合がまちまちで、恐らくこれは複数の魔力保持者が存在していることになる。


予想以上にこの公園は危険度が高いようだった。恐らく羽根野の方でも驚いていると思う。いや、この量なら気付いて無いかも知れない。

これ以上魔力領域を広げておくことが危険だと感じた久瀬は慌てて魔力の領域を縮小させる。


「アシュタルテの力が必要だ。それに奏も心配だ」


久瀬は、進行方向をアシュタルテが走って行った方向に変えた。

その瞬間、耳元で声が聞こえる。


「何者だ?」


久瀬の血の気は一気に引き、恐怖で動けなくなる。


その声に凄みこそ無かったが、いつでも自分の事を殺せるという落ち着いた声が逆に恐怖を感じさせた。その声の主は、僕の真後ろ、完全な死角にいる。背中には、棒の様なモノを後ろから突きつけられている感覚がある。魔力領域を2mほど拡大させる。


が、驚いた事に魔力をハッキリと感じる事は出来なかった。感じとれたのは、そこらじゅうにある魔力の残り火程度だった。これは、どっちだ?弱い魔力の持ち主が故に、干渉する魔力の反応が微弱なのか……。それとも、完全に魔力をコントロールする事が出来る強者なのか。どちらにしろ、久瀬の次にとる行動で全てが決まる。


質問者にとって有害と見なされれば先手を取られる。まずは、味方であることをアピールしなければ。


嘘ではない。


悪魔との契約者である事実は変わり無い。


「契約者だ」


相手は?と答えが返ってくる。

「豊穣神アシュタルテ。」

知らないなぁ。と言う返答があり、相手は警戒の手を緩めない。

「天使ではないんだな?」と、謎の人物は聞いてくる。

一瞬、羽根野ラゥビーの顔が過ぎるがすぐさま頭から消す。


「天使ではありません、悪魔との契約者です。信じてください」


その言葉の真意を確かめるように数秒間があった。

依然としてこちらから話し相手の顔は見えない。


「貴殿に、一つ聞きたい事がある。」


「何だ?」


「この状況について、何か知っていまいか?」

「この状況?」

「まるで私達以外の時が止まったかのようになっている周りの状況の事だ。」


この状況について話すべきか、話さないべきか一瞬躊躇する久瀬だったが、

命を握られている今、出来る限り話す事にする。


「この辺一体の時間が止まっているみたいですね。」

「そうか」


久瀬はわざとらしく手を上に上げて、降参した様なしぐさをする。


「よかったら、その武器を退けて貰えませんか?その代わり知っている事は全て話します」


しばらく間があり、体にあてられていた武器の感覚が久瀬の背中から無くなる。


身の安全を確認した瞬間、久瀬は声をかけてきた人物の方へ振り返り、炎を一線放つ。

直線的な軌道を描いた炎が近接するその人物に直撃し、炎の威力は更に増す。


久瀬は用心して、その人物が居た場所から距離を取る。


赤く燃える炎が、辺りを照らす、羽根野が言う通り、魔力を帯びていない周りのものに関しては燃える事すら無く、現存している。


今大きく炎を上げて、燃えているのは先程の人物だけだった。


「悪魔は即殺処分。」


久瀬は、羽根野の言葉通り、油断する事無く悪魔に攻撃を加える。そして謎の人物がもし生きていた場合に備えて、両腕に魔力を集約させる。


「わからない」


先ほどの声が、その炎の中から聞こえた瞬間、久瀬は続け様に3発、電撃を放つ。

鋭い一撃目が直撃したと思った瞬間、何かが空を裂き、雷を弾けさせた。

ニ撃目、三撃目ともに同様の結果に終る。


よく見ると、炎の黒い影から銀色に光る鋭い翼が展開していた。

その1対の翼が雷を弾いたのである。


そして、炎を諸共せず久瀬の方に向かってくる。

その人物の姿が徐々に明らかになってくる。


そこには、先ほど公園の入り口付近で奇怪な行動を取っていた不審者の姿があった。

先程の炎により、ダンボールで出来た頭に被った箱は黒く焦げていく。黒焦げパンマンのようである。


鋼の翼が音を立てて羽ばたくと、一瞬にして炎は消え、黒く焦げていたダンボールの箱も同じく細かい灰となり、掻き消える。そして、その人物の素顔が露になる。その奇妙な出で立ち、奇怪な行動を除けばその風貌は貴族の様に威厳に満ち、堂々としている顔立ちであった。その予想に反した姿に、戸惑う久瀬を余所にその男は腰にかけていた筒の様なものを抜く。


ブゥン!


という玩具っぽい効果音と共に筒が延びて長い棒になる。


…あれはどうみても、某宇宙戦争映画の作品内にでてくるエネルギーが集約された刃が出てくる剣のレプリカだ。


「敵だと…見なしていいのかな?」


相手が戦闘体勢に入ると、威圧的な魔力を久瀬は肌で感じていた。

20mは離れているにも関わらずにだ。


「あなたは一体?悪魔ですよね……おかしい。下手したらメフィストよりも……」


すると次の瞬間、辺りを支配していたその男の魔力が消える。


「質問をしているのは、私だよ?なぜ、契約者でありながら私に攻撃をしかけた?」


これは、恐らく最後通告だ。先ほどの魔力のプレッシャーも、何かの警告だったのかも知れない。


「そ、それは」


ここからのやりとりは命に関わる。と、久瀬の本能は告げていた。

戸惑いを隠せないでいる久瀬に見かねた男は、敢て警戒を解く。


ブゥン!という効果音と共に、剣を納刀する男。


「悪かった。少しいじわるが過ぎたかな?」


どうやら、動揺している久瀬が哀れに思えて戦闘体勢を解いたのであろう。

 それは対峙する契約者がまだほんの子供だった故の行動だった。


「誰にでも、間違いはある。次からはダメだよ?」


と、その謎の男はあたりをキョロキョロしながら久瀬に無警戒に近付いてくる。

その行動に、再び久瀬は身構えるが、その男は横を素通りして、後ろにあるたくさんの段ボールの箱を物色し始めた。


「あ、この黄緑色の果実が描かれたやつがいいな。メロンって書いてるのかな?」


久瀬はその行動の意図が掴めない。


「あ、あれ?なんだこれ?」


謎の男は、折り畳まれたメロンの段ボール箱を拾おうとしてもがいている。そう、時間が停止している為、あらゆる人間界の物質は時間という最強の鎧を纏い、固定されてしまっているからだ。


「あ、そうか時間が……」

と、近くにいる久瀬に顔を向ける。先ほど感じた魔力は感じなくなっていた。


「いつか、これ(時間)は元に戻って、これ(段ボール)は組み立てられるようになるのかい?」


久瀬は、少し笑いそうなのを堪えて答える。


「大丈夫ですよ?その箱をあなたの魔力で包んであげたら、取れますし、何もしなくても、あと20分ほどしたらとけて……」


と、言いかけてハッとする久瀬。


これでは、この現象に何か関わっている事を自ら教えているようなものだ。

相手の目つきが、優しいものから少し厳しいものになる。


「そういえば、質問に答えて貰って無かったね?」


どうする?


相手は悪魔……正直に話せば、自身の命が奪われる確率は少ないものの、天使である羽根野に危害が及ぶ危険性がある。ここは、同じ悪魔であることをアピールする為に……。


「この現象は、メフィストって言う悪魔が……」


先ほどの、鋭い眼光は自身には向けられなくなったが、辺りを見渡している。


「聞き間違いではなければさっきも、確か……メフィストと言っていたね?」


「え?…はい。」


「どういう関係だい?」


「それは…」


無関係だと。言おうとして言葉をつぐむ。

それだと時間停止をしているのが、メフィストだとしている事に矛盾が生じるからである。


「君は、メフィストの仲間か、その従者の魔術師かい?」


久瀬はなるべく注意が羽根野にいくのを避ける為にうそをついた。


「はい、従者の魔術師です。」


しかし、それがまずかったようだ。ふと気付くと、再びその男の魔力は広がっていた。

しかも、さっきと違い至近距離でその大きな魔力を感知した為に身動きすら出来ず、今にも潰されてしまいそうになる。


嫌な汗が久瀬の頬を伝う。


そして、次の瞬間その悪魔の姿が視界から消える。


「悪いけど、君達を生かしておけるほど僕はお人好しじゃない」


背後から、声が聞こえた。今の数瞬で背後に回られていた。


そして、今度は玩具の剣ではなく、本物の魔力で出来た刃が久瀬の腹部から突き出していた。


「な……ん……?」


久瀬は、視界を落とし、改めて自分の腹部を背後から刺し貫かれている事を確認する。


「誰なんだ……貴方は」


再び謎の男は、貫いている剣に力を込めようとする。久瀬の口から血が溢れ、体中が痺れた様な感覚に襲われる。そして視界が段々と暗くなっていく。


「ヒロキーー!!」


と大きな声が、公園に響く。普段は絶対にそんな大きな声は出さない佐島の声だった。

久瀬はその姿が幻かどうか区別がつかなかったが、こちらにやってくる佐島と目が合うと優しく微笑み、目を閉じた。


剣に力が込められ久瀬が背中から引き裂かれようとした刹那、魔力の光が一閃その男を襲う。危険だと感知したその男は、刃を消失させて回避行動をとる。それと同時に久瀬の腹部から大量の血が吹き出し、その場に倒れ込んでしまう。


「(人が死ぬのって…意外とあっけないもんだなぁ)」

と久瀬は最後に心の中で呟いた。


 *


久瀬が目を覚まし、辺りを見渡すと、洞窟の様な場所に寝かされていた。光もほとんど射さないその場所に、久瀬と佐島、そしてその2人を護るように、羽根野とアシュタルテが立っていた。両者は、威嚇でもするように、各々が黒と白の羽を広げている。


久瀬は上体を起こそうとするが、腹部に激痛が走る。すぐさま佐島は久瀬の体を寝かせようとする。


「まだ動かないで?内臓がまだ完治していないの」


久瀬は霞む目を擦り、よく見ると奏が腹部に手をあてている。その光から、治癒系の魔術だろう。


「……また、奏に助けられた」


首を横に振り、いいのと呟く佐島。


「アシュと羽根野さんの協力がなかったら、ヒロちゃんは助かってなかった」


「?」


「ヒロが、刺された時、アシュタルテが、間に入って……そのあとすぐに、羽根野さんも駆けつけてくれたの」


「そうか…。2人ともありがとう」

改めて、その恩人達方を見て礼を言う。


羽根野からは「礼には及ばない」というそっけない返事が。

アシュタルテからは、涙ぐむ声で生きててよかったと返事がある。


それにしても、ここは見通しが悪い。

そして、あの男からどうやって逃げ出したのかが気になった。


「ここは……?僕が気を失っている間に何が?」


羽根野が答える。


「魔界だ。恐らくな」


久瀬は、驚き、周りを見渡すが、ただの洞窟である為、そこが魔界であるかどうか判断出来るだけのめぼしい物は見当たらなかった。


「魔界って、悪魔の本拠地みたいたものですよね?どうしてそんな危ない所にいきなり……。いや、それよりもどうやって来れたんですか?」


「それはだなぁ」と、羽根野が語りだす。


 *


私が合流した時、その場ではお前が気を失い、先に駆けつけていた

佐島とアシュタルテは既に戦っていた。端から見れば、2対1でアシュタルテ側が有利に戦いを進める事が出来るように思え、私も戦闘に加わったのだが現状は少し違っていた。


男とは言え、魔力を行使する女3人との戦いなど無謀以外の何物でもないはずなのだが

あいつは、顔色ひとつ変えず、私達の相手をしていた。


解るか?


この屈辱が!?


何匹もの悪魔を血祭りにあげてきた「守護天使」であるこの私が、女子供は殺さないと、手を抜かれていたんだ。


もちろんこちらは、本気だ…

持てる力全てを使い、奴を始末しようとした…。


奴はハンデを背負っていたかの様に、魔力で形作られた銀の鎧を身に纏ったかと思うと、

私達の打撃の全てを防ぎ、鋼の翼は、私達の全ての魔法を掻き消した。


「羽根野さん…?」


感情的になっている羽根野に割り込み話かける久瀬。


「なんだ、貴様。まだ話は終わっていないぞ……プンプン」


「少し、解り辛いです」


「な!?」


その言葉に、ショックを受けたのか固まってしまう羽根野。


「主人~。アシュタルテが話そうかー!」


「いや……」


「あの戦いはなぁ、数と物量でこっちは攻めようとしたんだが、負けた。けど、アシュタルテも頑張って……」


「いや、君からの説明はいい。奏?出来るだけ客観的に、あの男との戦いから、魔界に来るまでの経緯を説明してくれないか?」


「うん。わかった」


アシュタルテの説明を途中で遮った久瀬は、佐島奏に説明を求める。


「ヒロちゃんが気を失ってから……私に膝枕されるまでを語らせてもらうよ」


「ん?(まぁいいか)とにかく、現在(膝枕)までの経緯をお願いするよ」


奏はいつになくやる気だった。

コホンと、咳払いをすると奏は語りだす。


4時間前の地上での出来事を。


 *


「アシュ!お願い!」

と、奏が叫ぶと魔力の閃光が謎の男を久瀬から遠ざけるように放たれていく。謎の男は、止めを刺す事に興味は無いらしく、アシュタルテに従うように……久瀬から離れていく。


「おっと……君達もメフィストと関係のある人達かい?」

再び魔力の刃を具現化させる。


その言葉にアシュタルテが返事をする。

「私は……関係無くないっちゃ…ないわ。恐らくね」


奏は、男の言葉には反応せずに久瀬の下に駆け寄る。気を失い倒れている久瀬を抱き起こすと腹部に出来た赤い染みが広がり、地面にその溜まりを大きくつくる。


「ヒロ!」


と、短い悲鳴をあげるとすぐさま患部に手をあてて魔力を治癒の術式に変換させていく。

それでも血は流れ続ける。


「なんで!?なんで止血すらできないの!?」


謎の男と、アシュタルテは一対一の戦いをくりひろげていた。


「奏ママ!……落ち着いて!」


奏の方を振り向いた瞬間、アシュタルテの頬を魔力の剣が掠める。貰ったよ。と男が小さく囁いた。その男の剣が、アシュタルテの体を2つに引き裂こうとした瞬間、アシュタルテはその殺気を感じとり、本能的に黒い翼を展開させて何も考えずに前方に羽ばたかせる。


体を背けるだけにしては凄まじい爆音が辺りに響く。羽ばたきの衝撃により、両者の体は対角線上に弾き飛ばされる。受け身をとる両者。


男の方を見ながら佐島に話しかけるアシュタルテ。


「大丈夫!奏!私は主人と契約しているから……生きてるかどうかは判る!今はまだ大丈夫!」


涙を流しながらも、少しずつ冷静さを取り戻す佐島。自分に言い聞かせるように呟く奏。


「多分だけど、魔力の量が足りないの。どこかから魔力を補給しないと」


アシュタルテが、口を挟む。


「奏!なんで魔力が足りないの?あなたは魔力をほとんど使ってないし、治癒魔術も使えるはずじゃ」


「違うの。ダメなのよ……」


男がアシュタルテに話しかける。


「アシュタルテ……君があの少年と契約を交わした悪魔かい?」


アシュタルテは睨みながらそうだと答える。


「私の名はレオボルト。魔界の王の血を継ぐ者」


少し間を置き、驚いた表情をするアシュタルテ。

「魔王ルキフェルの?」


「いかにも」


その言葉と供に、先ほどは感じられなかった

魔力の圧力が広範囲に広がる。


幾重もの金属音が鳴り響いたかと思うと、体外へ放出された魔力が逆流するように

その男へと逆戻りする。


その隙を見逃さず、アシュタルテは魔力をチャージする態勢をとる。同じ空間で、両者の魔力が増大していく。


その異様とも呼べる魔力の絶対量が、震えるはずのない空間を震えさせている。


……3、2、1!


の合図でアシュタルテから、自分の身の丈の2倍ものある魔力の閃光が放たれる。

一瞬にして、その男を飲み込む光。だが、その光の束は男の腕の一振りにより寸断され、掻き消されてしまう。


「な、なんなのこいつ!あの攻撃を正面から軽々と!しかも掻き消すって!」


その男は一歩、また一歩とアシュタルテに近付いて来る。

その姿は先ほどまでとは違い、体には魔力で構築された怪しく光る銀色の鎧を纏っていた。


「この姿になるのはあの大戦以来かな」


「何、こいつ、まだこんな奥の手を!?」


「大丈夫、これで最後だよ。それにこうでもしないと、君の攻撃で肉体の方は掻き消えてたよ」


アシュタルテは、相手とのその絶対的な差に絶望する。


「敵に回ると……こうも厄介なのね。悪魔って」


「敵?あぁそうだ。君達があの悪魔の手先である限りね」


その男の語尾には静かだが、憎悪が渦巻いているのを感じるアシュタルテであった。


「悪魔の手先?何を言ってるの?」


そこに、弱々しい声で佐島がアシュタルテに話しかける。


「やっぱりダメよ、アシュタルテ。魔力が足りない!」


「な、なんで!?あの時は、メフィストの時は十分治癒魔法を使えてたでしょ?それでラゥビーの傷も、うぅ!」


急に悪寒が走り、眩暈を起こしてしまうアシュタルテ。その一瞬の体調変化を見逃さなかったその男は、相手を確実に仕留める事の出来る間合いへと一気に詰め寄る。


「しまった!」


その眩暈は、久瀬の状態が好ましく無い事を意味していた。そして、その一瞬の間がアシュタルテにとっては生死を分けるものでもあった。


魔力の刃が、アシュタルテに振り下ろされる。先ほどの様な抵抗する間を与えない速度で。「決闘中に、話をする方が悪いよ。」と声が聞こえたような気がした。


次の瞬間あたりに閃光が迸る。


「ごめーん!お待たせ!!」


アシュタルテの目の前には、羽根野が十字の剣を振りかざし

立っていた。強引な態勢ではあったが、何とか相手の剣を防いでいる。


「ラゥビー!!来てくれたのね!」


当たり前よ、と息を上げながら返事をする。


「もう、何手こずってんのよ。こっちは、あの憎き駄犬を見かけたっていうのに、また見逃しちゃったじゃない」


「ごめん、ラゥ」


と、地面に手をつくアシュタルテ。


「え!ちょっと、私これ以上、こいつの剣は防げないわ?むこうは二刀流だし」


「ごめん、でも主人が!」



アシュタルテの方を見てから、その近くに久瀬の姿を確認する羽根野。

そこには佐島も一緒に居て、青冷めた顔をしている。まるで地面に広がっている血溜りが、奏のものではないかと思う程だ。「なるほど」と小さく羽根野は呟くと、剣で相手の攻撃を防いだまま、その男の頭上から光る十字架を器用に投下させていく。


銀の鎧を装着した為に、それらが男を貫く事は無かったが、その態勢でいる事に無駄を感じたレオボルトは、一旦体を退ける。


十字架の剣を相手に向けて挑発する羽根野。


「悪魔風情が騎士でも無いのに、剣なんか使うんじゃないわよ!昔から光の剣って言ったら、天使が相場と決まってるんだからね!」


その言葉と供に、羽根野の頭上に光の輪が出現し、背中には白い羽根が展開する。


「(アシュタルテ、具合はどう?)」


「(かなりまずいみたい、主人の方が……。それに、この男、魔王の血縁者みたい。)」


焦りの表情を見せるラゥビー。その焦りは、一度魔界の王の一族を名乗る者との戦いに敗れているからだ。そして、その敗れた相手がこの公園内にいる事も、焦りの原因の一つになっていた。


二人揃われたら・・・まずい。この状況だけはなんとか避けなければいけない。人ごみの中に隠れるにしても、時間停止が解除されるまであと13分。


この状況で戦闘が続けば、間違いなく全滅。


持ったとしても、久瀬の命は恐らくその時間は耐えられないだろうというのが、

羽根野の直感だった。男が、両手に持っていた光の刃を一つの束に集約する。


恐らく、あの刃は今の羽根野の十字架を意図も簡単に打ち砕くだろう。

男が一歩を踏み出した瞬間、ラゥビーが光の球を4つ、空中に出現させる。


男がそれを警戒し、踏み止まる。


「(聞いて?アシュタルテ。)」


「?」


「(先ほど締め上げた小悪魔から聞き出したんだけど、ここから50M位、東に行った所に噴水があるらしいの)」


と、ラゥビーがその方角を指し示す。


「(どうやら、最近まで魔界と繋がっていたらしいのだけど、何者かの手によって、その繋がりが断たれてしまったみたいなの)」


「何を考えてるの?」


「(天使の私なら、位置さえ把握していれば、魔界と人間界の繋がりを少し強める事が出来る)」


「少し?」


先ほど羽根野が空中に放った4つの球体が、激しく発光したかと思うと、

すさまじい数の光線が男目がけて飛んでいく。


「(そう。少しだけ。)」


「(それで主人は助かるの?)」


少し、間を置き頷く羽根野。時間は無い!と言うと、再び羽根野は新たな光線を男に放ち、その隙にラゥビーは佐島を。アシュタルテは久瀬を連れてその場を離れ、噴水前へと移動する。レオボルトは、未だ4つの球体から放たれている光線に戸惑い、追跡行動をとれずにいた。


――噴水近くの茂み。


「お、おい!もっと静かに運ばんか!」


「ご、ごめん!?兄貴!」


そう犬に謝罪しているのはフレイラである。


「くそ、こちらは腹のキズが疼くと言うのに。まさか、その傷をつけた張本人にまた出会うとわ……ん」


そっとアホそうな犬を抱えたフレイラは、天使が追ってこないか辺りを見渡している。


「よかった……巻いたみたいだね。」


「何を言っている?わしは戦えたものを……ん」


フレイラが、犬の腹部をつつく。


「おんおんおん!」


悲痛な鳴き声が辺りに響く。慌てて口を抑えるフレイラ。

その手に仕返しにかみつく犬。


「いたたたたた!」


叫ぶフレイラの口を前足で塞ぐ犬。




「ふごふご…

(2人で漫才をしている場合ではない!)」


「むぐぐぐぐ…

(とにかく、兄貴のキズがこれ以上悪化しないように魔界に少しでも戻った方がいいよ。)」


犬は項垂れるように下を向く。


「くぅーん…。」


「(兄貴、自分で気付いているのかな?犬化が進んでいることに)」


と、遠くの方で何かが連続して光る。


恐らく魔力だ。警戒して身を潜める2人。

しばらくすると、先程の追い掛けてきた天使と、

見慣れない黒い翼を持つ女性がそれぞれ人間を連れて噴水前に現れた。


遠くからでも何か焦っている様子が伺えた。


「フレイラよ……。今、奴等はお前の目にはどう映っている?」


「そうだなぁ……。さっきの天使に関しては、発しているオーラは、安定していてまだ元気そうだ。けど、黒い翼の人は……オーラは大きいけど、どこか不安定な状態にある……。人間の子供2人に関しては……消え去りそうなオーラだ。


特に、男子の方はオーラすら感じ取れない程に衰弱しきっているように思えるなぁ」


「ふむ、そうか」とだけケヲルは呟いた。



「ラゥビー!これからどうするの?早くしないと!」


奏が堪らなくなり、問いかける。


「フム。奏の魔力をどうにかすれば助かるのだな?」


「え、えぇ。そうだと思う。でも肝心の魔力が集まらないの」


ラゥビーが噴水の前の空間を両手で探り、何かを探している。よく見ると、指先が触れた空間が波打っている。

「私達から放出する魔力を利用すれば・・・…多少、強力な魔術は使えるだろうが、その場合、敵に追いつかれた場合、戦闘が困難になる。アシュタルテは、久瀬と契約していて、その魔力は久瀬との結びつきが強すぎる性で、大量に奏は魔力を吸収出来ない。となると・・・…無いなら、ある所から持ってくればいい。そうだろ?奏?」


「そうだけど……」


「恐らく、メフィストの時は、スポット的にも魔力が周りに満ちていた。それを吸収、循環させて利用していたおかげでお前達2人は強力な魔術を行使出来ていた」


「なぜ、今回は出来ないの?」


「これは推測だが、あの男からの魔力放出が極端に少ないからだろう。そして、自分の治癒では無く、他人に用いる場合の治癒術は魔力の消費量が極端に高くなるんだ。これは、相手との魔力の干渉具合にもよるが…・・・」


ラゥビーの触れる指先の空間が更に波打つ。


「私は、辺りに魔力が満ちてないと魔術が使えないの?」


「いや、恐らく佐島と久瀬に刻まれている刻印の性質上だろう。あれは本来、魔力では無く、生体エネルギー、生命体の活動と供に発生するライフエネルギーを循環させ、魔術に変換するものなのだよ」


話を続けながら羽根野は、自らの頭上にある光の輪を、先ほど波立たせた空間にはめ込める。


「やはりな、まだこの程度のズレなら、なんとか修正可能か」


「生物の命の力?」


「そうだ。そしてあくまで生命活動のだから、この時間が止まった空間ではそれらは発生しない。状況は最悪という訳だ」


佐島が何かを決心した様な表情をする。


「ねぇ、生物の命の力が私の力の源なら…

今、生体活動のしている私の命を利用する事は出来る?」


羽根野が、難しい顔をして佐島を窘める。


「馬鹿を言うな!お前までが犠牲になることは許さない!

そして、絶対にそんな方法は教えないからな。それにもう一つの作戦が上手くいきそうだ。

っと…座標位置特定完了。よし、あとは」


「おい、ラゥビー?何をしているのだ?」


横から、のぞきこむアシュタルテ。相変わらず顔色は優れない。


「アシュタルテには、説明しても解らないと思うけど……聞く?」


聞かないと即答するアシュタルテ。


「それより、ラゥビー痛くないのか?頭のわっかをこんな所に固定して……」


大丈夫よ、と答えたラゥビーはその輪を指差す。


「難しい事は言わない……この輪の中心に向かって、ありったけの魔力をぶつけなさい!!」


「!?」


「私の天使としての権限で出来るのはここまで……後は貴女が悪魔らしく、空間ごとぶち壊しちゃいなさい!魔界へ侵入する事が出来れば、大量の魔力を奏は吸収出来るし、敵からも発見されにくい……そうすれば!え!」


頭上から、光の刀が振り下ろされる。あの男が追い付いたのである。

それを二本の十字架で受け止めたラゥビーは、アシュタルテの目を真っ直ぐ見る。


「そしたら…あなたのご主人様も助かるわ!」


「頑張る!」


直ぐ様体勢をとり、構えるアシュタルテだが契約者である主が瀕死である為、なんどか目眩を起こして倒れそうになる。唇を噛み締めて、拳を握りしめるアシュタルテ。


「どうなったっていい……私の体は!動け!!」


その叫びが、アシュタルテの眠れる魔力を呼び起こし、増幅させる。

するどい閃光が、真っ直ぐラゥビーの光の輪の中央に向かって伸びる。

不思議な事に、本来なら貫通し、輪の向こう側に光は貫通する筈なのだが、そこから先は消失していた。それを止めようとする男は、羽根野を振り払い、隙だらけのアシュタルテに斬りかかる。


叫ぶ羽根野だが、その動きをとらえるには及ばなかった。


突如として、炎が、男に襲いかかる。その勢いで地面に転がるその男。

羽根野達には、何が起きたのかは解らなかった。


地面から炎が湧き上がり、男に襲いかかったのである。


「殺せないのならばぁ!」


戦いのプロでもある羽根野は、無論その隙を見逃さない。仰向けになった男に対して、両腕を両足で踏みつけ、その両手を十字架の剣で地面に張り付けにする。


「しばらく、そこにいろ!」


意外にも、その男はそれ以上抵抗はしなかった。

両腕を踏みつけたままラゥビーはアシュタルテの方に視線を戻す。


「もうすぐだ……さすがは元“女神の力”か……」


佐島に、久瀬をこちらに連れてくるように合図する。数秒後、辺りに激しいスパークが発生し、凄まじい突風があたりに渦巻く。


空間に亀裂が生じて、魔界と人間界を結ぶ接合点が開いたのである。

魔力による砲撃を終えたアシュタルテはふらついているが、意識は保てていた。


「2人とも!早く中へ!」

「え、羽根野さん…魔界へ行くの?魔界の魔力を吸収するだけじゃ…?」

「このやり方は、正規のやり方でない分……そうは持たないはずだ。だから、途中で魔力の供給が出来なくなる可能性もある。それに何より、近くにメフィストクラスの悪魔が2人以上いると解った今、こちらにいるよりかは、あちらで身を隠す方が得策だろう」


頷いた佐島は、久瀬の肩を抱えてその亀裂に足を運ぶ。


「ごめん、ラゥビー。ラゥビーの輪っか、壊しちゃったみたいだ」


泣きそうに謝罪するアシュタルテ。


「いや、大丈夫だよ。あれはただの魔力の塊だし……亀裂を開ける瞬間、わざと私が破裂させた」


頭は痛くないのか?頭を撫でてくるアシュタルテに、照れた表情をするラゥビー。


「私は大丈夫だ。それより、早く行くの!」


と、無理矢理アシュタルテを押し込むラゥビー。

そして、羽根野は久瀬の空いてる方の肩を担ぐと、薄暗い世界へと足を踏み出した。


「(しかし、先程の炎は一体?)」


頭の中でその事が引っ掛かったラゥビーだったが、優先事項は何かと言うことを考え、それ以上考えるのは止める事にした。


数分後、噴水前に出来た亀裂が徐々に閉じていく。

そのタイミングを見計らったかのように、一匹の犬を抱えた青年が茂みから飛び出してきて、その亀裂に飛び込んだ。


それを静かに見守る銀色の鎧の男。更に亀裂は小さくなっていく。

閉じようとした瞬間、さきほどの抱えられていた犬が顔を出す。


「レオボルト、火傷してないか?それから……」


銀の鎧を解除して、両手に刺さっている光の十字架を魔力で相殺させるレオボルト。


「わかってるよ。兄さん。こっちの方が僕らに都合がいい……って事ですよね?」

「あぁ。こちらの事は…任せろ。その代わり……」


「うん。天界への手掛かりと……姉と弟達の事は任せて」


「すまん」


亀裂から、手が伸び、無理矢理犬は引き込まれていった。


「兄さん、危ないってば!亀裂が閉じれば、首が飛ぶよ?!」


という、フレイラの声が向こう側から聞こえたかと思うと、亀裂はすっかり消滅してしまっていた。自分の両手を見るレオボルト。まるで聖痕みたいだと感じていた。敵は時をも自在に操る。その事実に対して「勝算は…無いのかも知れないなぁ」と小さく呟いた。


第三章 ~狭間の王~ 完。


第四章 ~ 揺らぐ魔界編~ へ続く。


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