聴いちゃったことは、謝りましょう
明けましておめでとうございます。
1日おくれですが、今年もよろしくお願いいたします。
……朝だ。
夕べの夢って、現実だよな。夢が現実ってのも妙な話だけど。
……あー。やっぱりちゃんと謝らないとな、聴いちゃったことと、能力を知っちゃったこと。それと、あたしを護ろうとしてくれてることのお礼と、女神様の言ってたことと……。
まあ、とりあえず起きるか。
「おはようござー」
「おはよう!」
あいさつの途中で、マリーに抱きつかれてしまった。
「起きたか。おほよう」
「おはよう、エリカ」
トキワとシオンもあいさつしてくれた。
「……とりあえず、マリー、あいさつはきちんとさせてください。おはようございます」
「だって、エリカって今日も朝から可愛いんだもの」
……実際のところ、向こうでは可愛いとか言われたこと、なかったけどな。どっちかってっと、カッコいい、だった。……他の女子にお姉様呼ばわりされるのは、さすがに遠慮させてもらったけど。
「あのー」
「まあ、とりあえずは朝飯だ」
……ということで、昨日の残りのシチューとパンをたべましたとさ。
「……実は、お話があるんです」
食後のお茶を飲みながら、切り出した。
「どうも、この子達が見聞きしたことが、わたしにも伝わるようなのです」
昨日作った人形をなでながら言う。
「ほう。それなら今度からはこいつを偵察役にすっといいかもな」
これから先も、あたしが一緒にいる前提がちょっと嬉しい。
「……ですか、……その、……お二人の夕べの話も聞いてしまいまして……」
「……」
「そうか……」
「?」
やっちゃったって顔を二人としてる……。蚊帳の外のシオンは首をかしげてるけど。
「……そっか、聴いちゃってたか。騙しちゃったわけだものね。ごめんなさいね、キキョウちゃん」
「いえー」
「はあ⁉」
……こんどはシオンに遮られてしまった。シオンはなにも知らなかったわけだからな。
「マリー、どうしてキキョウさんのことをしってるの?……どういうことか、説明してくれるかな」
……ちょっと怒ってる、かなー。一人だけなにも知らずにいたわけだし。
「……実はね、寝た振りをしてキキョウちゃんの話を聴いてたのよ。それで、私はキキョウちゃんをエリカの替わりにする、振りをしてキキョウちゃんを甘やかそうとしてたってこと」
「……どういうこと?」
「私の眼には、キキョウちゃんってとっっってもキレイなモノとして映っているの。だからね、家族みたいになりたいなっておもったのよ。ちょうど妹を亡くしたばかりだったから、エリカに対するようにして、警戒心を融けるかなって」
「まあ、実際のところはマリーはエリカを好き好んで構ってた訳でもないしな。どちらかといえば血縁としての義務感か。だから、本気で気に入ったキキョウを妹のように甘やかそうと思ったんだろ」
「さすがトキワ。よくわかってる」
「……」
……シオンは色々と理解が追い付かないようだ。
まあ、そちらはおいておこう。とにかく、
「わたしのほうこそ、勝手に聴いてしまって、ごめんなさい。
……次からは、そのあたりを制御して、盗み聞きなどしないようにします」
「ごめんね。気を使わせてしまったみたいで」
「そうだ。キキョウが気にすることじゃない。どちらかといえば、隠し事をしてたこっちがわるいんだしな」
「……それでも、ごめんなさい」
……隠し事が全くない人間なんていないしね。それを暴いちゃった以上は、きっちりと謝るべし。
「それと、二人とも」
「なんだ」
「なに」
「……わたしを受け入れてくれて、ありがとう」
思わず照れたような笑い方になってしまった。
トキワとマリーは、微笑み返してくれた。
……置いてきぼりにされてたシオンが、ちょっとすねていたみたいだけど。
今回は、謝罪とお礼のみ。女神様のお話は、次話になります。