やっぱここは逃げるべし!
新キャラ登場。
神殿から出ると、取りあえずふところから方位磁針を出した。
せーかくには方位磁針型の魔道具。
これはあたしたち用なので、針が3つある。あたしのはトキワの青、マリーの赤、シオンの紫。ちなみにあたしは緑。それぞれのリュックの色だな。分かりやすくしたらそうなった。
ちなみに汎用性のあるものは、魔道具に指すもの(基本は小粒の石)がセットでついてて、指すものを相手に持たせる。服に縫い込む場合もあるみたい。他のものをオーダーメイドも出来るから、迷子防止にけっこう便利。あたしたちのは魔道具自身を指すタイプで、4つでセットに作った。
うん。トキワとシオンは一緒に町の西の方、って場合によっちゃさっさと逃げれる場所か。
「ふたりは西の方みたいだよ」
「すぐに合流しましょう」
あたしたちはすぐにふたりの方に向かった。
方位磁針が指す方に行くと、一軒の飯屋があった。
この世界にゃ喫茶店とか茶屋とかないしね。昼をある程度過ぎたこの時間だと、お茶とかもお願いできっけど。
「おう、戻ったか」
「どうだった?」
飯屋に入ると、すぐに二人は気づいてくれた。
「……面倒な事になったわ」
はあ、と二人でため息ついた。
「ホント、なーんで、あんなのが、神殿長なんだ‼」
「ああ、それは神殿から追い出すためだよ」
横から声が割り込んできた。
「あんたがキキョウかい?」
「……人の名前を聞くなら、まずは自分から。って習わなかった?」
そこにいたのは、犬ミミのおにーさんだった。あ、尻尾もふさふさ……じゃなくって。
「あはは、そうだね。ボクは本神殿からの迎え、ヤマブキだよ。この子が証人。いや証狼かな?」
ヤマブキさんの足元には、黄色っぽい毛皮の天狼がいた。ヤマブキさんと毛皮の色お揃いだ。
「はじめまして。真竜の契約者どの。私はヤマブキと契約しているものです。あなた方のお迎えに参りましたことを、私が保証いたします」
確かに、神様の眷属が嘘つくこともないだろしね。
「だけど、どーして神殿にいなかったんだ?」
「ああ、アイツの近くにコイツがよりたがらないからなー」
あれ、そう言えば。
「黒羽も、神殿で何もしゃべらなかったね」
「……だって、アノヒトたちって、臭いんだもん」
「臭い?」
「ウン。キキョウとかみんな、いい匂いダケド、アイツらスッゴク臭いの。あ、コノヒトは普通の匂い」
「……真竜は人の魂を五感で感じられるそうですから。私達天狼は匂いだけですが」
そっか、つまり。
「あいつらは正真正銘、性根が腐ってるってことか」
「そーだね。真竜とキミが証言してくれれば、アイツら追い出せるからさ。頼むよ」
「それはかまわない。あんなのさっさと追い出すべしだ」
あー、思い出しただけで、キモチワル。あれ。
「あの神殿長、一緒にいくんじゃなかったのかしら?」
だよね。
「大丈夫。もともとその予定はないよ。キキョウのこと聞いて、勝手に言い出したダケ。ほっとけほっとけ」
よかった……。みんなほっとしてます。
「なら、さっさとこの町は出るか」
「その方がいいね。あの人たちがどうでるか分からないし」
「取りあえず、黒羽で隣町までいっちゃおっか」
「マカセテ!」
「あ、あのわたしの馬車は……」
「大丈夫よ。持っていけるから」
「空の旅が。楽しみだねー」
「いつも私に乗っているでしょう?」
思い思いに口にしつつ、取りあえずこの町から逃げるべし!
神々の眷属は、使命に関しては嘘がつけません。
桔梗が本神殿に向かうことは、神様の願いでもあるため、眷属である天狼にとっては、連れていくことは使命ということになっています。