神殿から連絡がきた
朱に交われば赤くなる➡
朱に交われば赤くなるとは、人は関わる相手や環境によって、良くも悪くもなるというたとえ。
……プレナイトの町に来てからはや3週間。あたしはトキワたちとハンターとして活動していた。
といってもやってることは採取が主。魔術の検索と鑑定、分析ってほーんと便利。
「本当にキキョウは魔術の使い方が上手いよね」
「もとが母国語だし。意味がよく分かってるから、どう言えば良いかがすぐに解るんだよね」
……はい、あれから3週間もたち、荒くれもいるようなハンターギルドにしょっちゅう出入りしてたため、あっという間に話し言葉は崩れましたとさ。ふん、朱と交わって赤くなったさ。
……取りあえず、あたしがみんなに教えた染め物や糖類の材料集めを主にやってた。おかげで採取のランク、みんな上がったし。
あ、あたしは戦闘C、採取Bです。能力的にはAでよくても、この世界の常識はずれな存在だし、トキワたちと同じくらいにしとかないと、一緒にいるの不自然にもなっちゃうし、何より正体を隠すにもこの方がいい。木を隠すなら、森の中ってね。
「ゴメン。あたしが戦うの避けるため、採取ばかりになっちゃってたよね」
いちおー悪くは思ってたのだ。
「……はあ」
なに、そのため息?
「あのね、キキョウちゃん。森に来てちゃんと魔獣も倒してたでしょ?」
「?だって、あんな弱いのばっかで……」
「……。キキョウ、ゴールドラビットだが、かなり珍しい魔獣なんだぞ?魔力を溜め込んでで美味いが、逃げ足も速く滅多に捕まえられん」
「?カンタンに捕まえられたよ?」
うん。出てきた瞬間、反射的に回りを土の壁で囲って、上から魔術で一撃だった。
「普通はそんなとっさに魔術使えないよ。どの魔術をどのようなイメージで使うか、考えないとならないから。それに、ここで出てくる魔獣は、僕たちのランクにちょうどいいくらいで、何びきも倒してるよね。大体このくらいの頻度がハンターにとってちょうどいいくらいなんだよ」
そりゃそっか。強いのばっかと戦ってたら、命がいくつあっても足りんわな。
「そっか」
「そう。それに採取が増えたのも、このリュックのおかげだし」
「だな。いくら入れても重くならんし、常に両手が空いてるため戦いやすい。それに荷物を放り投げることもないから、盗まれる心配もない」
役に立ってなにより。
ちなみにあたしたちの格好も、前とは変わっている。
あたしは皮鎧の下に生なりのシャツ。鎧の上に濃い緑の上着。薄茶のパンツとショートブーツ。武器は大剣を太刀に加工し直してもらって使用してる。いずれ王都にいったら、ドラゴンを加工してもらう予定。
マリーは薄いピンクのシャツ、赤い上着、薄茶のパンツ、ショートブーツ。
トキワは黒いシャツ、青い上着、薄い青のパンツ、ショートブーツ。
シオンは薄い緑のシャツに濃い紫の丈の長い上着、黒いパンツとロングブーツ。鎧なし、となってる。
……あたしとマリーでコーディネートしました。楽しかった。
染め物もみんなで研究した結果、染料に少し魔石を入れると、色の濃さが替えれることが判明。それだけでだいぶバリエーションでたし。
「さてと、そろそろ帰るぞ」
採取を終えて、みんなで町に戻った。
「戻られたのですね。それではすみませんがすぐにギルドへ向かってくれませんか。」
戻ってすぐに門番さんに言われた。人の出入りはけっこう自由だけど、魔獣や危険な物がないか確認のために必ず出入り口には人がいる。そのために伝言役になってることも多い。
「分かった。すぐに向かう」
これはあれかな。神殿との連絡がついた。
確かー真竜を連れた記憶喪失の娘がいる、神殿でこの娘について神々に確認してほしいーって連絡したっていってたっけ。どうなったのかな。
「きたか……」
ギルドへ行くとすぐにモエギさんに面会になった。
「……神殿から連絡がきた。ー真竜を従えている以上、神々に深い関係性があると思われる。すぐにその娘を神殿に連れてこいーだそうだ」
「つまり、わたしが神殿に行けばいいんですね」
……目上の人には丁寧語になっちゃいます。
「そうだ。護衛と案内役としてトキワたちも同行を。それと、ベスビアでは同行者が増える。まずはベスビアの神殿に向かうように」
「はい」
あたしたちはうなずいた。
……これから本格的な旅が始まるか。
さて、どーなるかな?
ようやく旅立ち直前。
次回はベスビアのまち。