閑話 甘いもの食べたい
……桔梗が今回やっていることについては、あくまでうろ覚えのやりかたです。砂糖作りとかも、何となくでやってます。
甘味がないだと‼
……思わず動揺しまくった。
プレナイトの町についてはや4日目。
お菓子とかみてないなー、とマリーに確認したところ、甘いものといえばハチミツで、これは自然の物をハンターに依頼して採ってくる、ということで、ほとんど貴族御用達の品となってる。
他には、果物をとろとろになるまで煮込んだ物とか(ジャムもどきだな)、ドライフルーツしかない。
……これは、やるしかないか。
「マリー。これから森にいきますけど、マリーも来ますか?」
「いくいく」
よし。人手確保。
こないだ見っけたサトウキビ林に向かって、黒羽でゴー!
「これを根元から刈るので、袋にどんどん詰めてください」
「えー?こんなものどうするの?」
「あとでわかります!」
あたしの勢いに推されてか、マリーはあたしが魔術で刈り取った端から袋に仕舞ってくれた。
……うん。これくらいでいいか。ある程度で終了。これも魔力と関係あんのか、成長がみょーに早いみたいなんだよね。
「戻りましょう!」
「うん」
すぐに町まで戻る。
宿に戻ると、十数人の町の女性とパン屋のおじさんがいた。出発前にトキワに呼ぶよう頼んどいたのだ。
「キキョウ、頼まれたものこれでいいかな?」
「十分です!」
あたしはシオンに買ってきてもらったものを確認して答える。
さて、始めよっか。
まずは……。
袋から一本のサトウキビを取り出す。
「それ、なんに使うの?」
「こうします」
あたしは魔術でカンタンにかわを剥く。
そして、一口大に切る。
「これを噛んでみてくれませんか?繊維は食べられないので、吐き出して下さい」
1個自分の口にも放り込む。……うむ。これはこれでなかなか。
まわりのみんなはものスッゴク驚いてるね。こんな甘さは初めてだろし。
「どうですか?」
「なにこれ⁉」
「すごく美味しいわ!」
「……こんなものが、これほどのあじとは……」
うむうむ。みんな気に入ったようだな。
「次に、これを処理します。このままでは料理に使えませんから」
「どうするの?」
「まずは見ていて下さい」
ドバドバっとサトウキビを袋から出す。
ここはめんどーなので、魔術で皮剥き。
次に、大きな鍋の上にきれいな布を敷いて、その上でサトウキビを粉砕。
「粉々にする方法については、あとで魔道具を作ろうと思っています」
あたしの言葉にほっとする方々。あたしは魔術で一気に粉砕したかんな。
次は布を絞って液を鍋の中に。
「大量なので魔術でやってますが、少量なら男の人に手伝ってもらえば、大丈夫かと」
これまたみなさんうなずく。力仕事は女性にゃつらいし。
最後、絞った液を加熱して水分をとばす。ただ、どれくらいやりゃいいのかって分からんのよね。ここら辺までは何となくわかるけど。
というわけで、ある程度煮詰まったら加熱を止めた。ペロッと味見。うん、甘い。小皿にとって、まわりのみんなに差し出すと、競うように皿に手を伸ばした。
「これは……⁉」
「こういうの、パンにつけても美味しいんじゃない!」
「他には何か……」
かなり好評だなー。ちなみにマリーは無言で舐めることに集中してます。
さて、次はようやくお菓子作りだ!
作るものはクッキーとホットケーキ。
小麦粉、牛乳、卵があれば取りあえず形にはなるだろ。もとの世界のベーキングパウダーが欲しいぜ。
まずはクッキーのタネを作る。寝かせるとこは魔術で短縮。
型抜きはないから、棒状に丸めて包丁できった。
これをオーブンで焼いて……。
……実はこの世界、ある意味進んでる。魔道具があるからだな。加熱用の器具が、IHクッキングヒーターみたいなのだもん。
もっともオンとオフがあるだけで、温度は感覚で距離を置くことで対処してたらしい。というわけで、コレ改造しちゃった。ちゃんと女将さんに許可をもらってだけど。もとの世界であたしが普段使ってたよーなシステム風に書き換えました。おかげで便利って好評で、コキヒさんにも作り方教えといたんで、大忙しだそう。ゴメン。
っと、クッキーを焼いてる間に、ホットケーキ作ろう。
タネを作って、焼く。その間に青果をシロップモドキと一緒に煮ておく。ジャムもどきだな。、コレも。
お、そろそろいいにおい。
焼けたクッキーを皿にいれ、ホットケーキは食べやすい大きさに切る。
小鉢にジャムもどきも入れた。
「どうぞ、召し上がれ」
……真っ先にマリーが手を伸ばした。
クッキーはプレーンとドライフルーツ入り、ナッツ入りの三種類。
ジャムはリンゴ、みかん、イチゴ、ブルーベリーと四種類つくってみた。
みんなが手を伸ばすなか、あたしもクッキーをつまむ。
……もとの世界で食べれた物とは違うけど、これはこれで美味しい。……幸せ。
あ、そうだ。
「今の作り方は、このノートに書いてあります。必要な方はあとで写してください」
……って、食べることに夢中で聞いてないかも。
まあ、ノートはしばらくこの食堂に置いとくからいっか。
捕捉しとくと、この世界の識字率は高い。
5才から10才まで、天の日にギルドか神殿で文字と計算を習う義務があるから。
……だからこそ、ノートを用意したんだけど。
「キキョウちゃん!これ、スッゴク美味しいわ!他の物ってないの⁉」
……注目された……。
「パンにドライフルーツ入れて焼くとか、ジャム……この甘く煮た果物を入れるとか、あと、いくつかレシピはあるんですけど手間がかかる物もあるので……、他は次回ということで……。みなさんもご自身でアレンジしてみてはいかがですか?」
「……」
あ、みなさん燃えてる……。
パン屋のおじさんも……。
……これでお菓子とか増えるかなー。
楽しみにしとこ。
ーーあたしがしたことが世界中にあっという間に広がるとは、思ってなかった。
町を出る頃には、ほぼ国中に。
二月ほどで世界中に広まった。
……このことで、女神様に感謝されましたとさ。特に甘味で。
やっぱり甘いものは正義!
ここまでで閑話は終了。次からは話が進む予定。
町から出発出来るといいのですが……。