初ダンジョンはコンクリート舗装
▽KOUJIはジャケットを手に入れた
▶︎装備しますか?
はい
▽KOUJIはリストバンドを手に入れた
▶︎装備しますか?
はい
▽KOUJIはボロボロのGパンを手に入れた
▶︎装備しますか?
…はい
ダメージジーンズをボロボロと表記するのには首を傾げたが、ひとまず衣服を揃えた。もっとも戦闘用と言うよりも休日の外出スタイルといった感じだが。
どれぐらいステータスが上がったのか気になるがどうやって見ればいいのか分からない。諦めて一階へと降り、そのまま玄関へと向かった。
履き慣れたスニーカーを履く。どうやら靴は装備に入らないらしくテロップは現れなかった。靴べらを使ってしっかりと履くと、緊張の足取りで扉のノブを握った。刹那、赤いテロップが視界の中央に表示される。
▽注意!
この先はモンスターに遭遇する恐れがあります。装備を揃えてから先へ進むことをオススメします。
うるせえ。俺は初めのイベントが起きる前に傷薬は手に入れておくタイプの人間なんだよ。警告を無視して、扉を開いた。
◼︎日本 H県 H市 I町
朝日が眩しいほどに輝いていて一瞬目をすぼめる。次第に慣れて目を大きく見開くと、そこには今までと全く同じの風景が立ち並んでいた。
家の前には、長らく無人になっている空き家がツタをはよわせながら存在感をしめしている。
「ついに始まったのか…」
いつもと同じ景観なのに俺は異様に緊張していた。まだモンスターに遭遇していないというのに、もしものために俺は鞘から包丁を取り出して右手で強く握った。
…もしここまでが幻覚だったら、俺が人と出くわした瞬間、銃刀法違反で捕まるだろうな。
そんなバカらしい事を考えながら俺は足を進めた。バカな事を考えていないと、包丁を握って外は歩けなかった。
しばらく歩みを進めるが、人にまったく出くわさない。それは両親の部屋で感じた「いない」ではなく「元々いなかった」という感覚。2月の寒空の下、俺が住むI町は枯葉がコンクリートを擦る音しか聴こえなかった。
もう少しだけ遠くに行くか。そう思った俺は無意識の内に通学路へと体の方向を向けていた。一歩一歩、潜むように静かな足どりで歩み始める。
「な、なんだあれ!?」
家から離れると、俺は衝撃的な光景を目の当たりにした。そこは家から徒歩4分と近場にあるコンビニ…だった場所だ。
しかし店のマークが描かれていた看板には剣が交差されている絵に代えられていて、ゴミ箱があったはずの店先には大小様々な武器が並んでいる。
「マジかよ…まだ1番くじのA賞ゲットしてなかったのに…」
気重な足取りで店へと向かう。コンクリートで舗装された駐車場の先に剣や棍棒が並んでいる光景は見ていて中々シュールだ。
慎重に店の扉へと向かっていると、扉に貼られていた紙に気が付いた。周りに気配しながらその紙を恐る恐る覗いてみる。
現在準備中
AM10:00 〜PM7:00
定休:毎週水曜日
「なんだこれ、理髪店かよ」
左下に表示されている時間を見ると、午前9時14分。せっかく新しい展開があると期待していた俺はすっかり落胆し、同時に大事なことに気付いた。
…お金を持ってくるの忘れた。
もう一度、今来た道を戻っていった。
プレイ時間 00:01:16
プレイヤー名:KOUJI Lv:1
HP 30/30 MP 0/0
攻撃力:3(+2)
防御力:5(+4)
魔攻力:1
魔防力:2(+1)
素早さ:1
ラック:2(+1)
装備
武器 :包丁
上半身:ジャケット
下半身:ボロボロのGパン
装飾品:リストバンド