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097 呼び出し

おはよう。こんにちは。こんばんは。

気温が中々下がらないので、毎日が地獄の様です。

 レオンハルトがレカンテートに訪れている頃、王城にて国王陛下とエトヴィン宰相、ラインフェルト侯、シュヴァイガート伯、エーデルシュタイン伯は会議室に集まって話をしていた。議題は、当然件の人物であるレオンハルトの事である。


 彼に領地を任せる事にした為、近いうちに婚約発表をと考えていたのだ。


「それにしても彼の故郷を領地にするとは」


「あの地はヴァイデンライヒ子爵の領地だったから表立って支援できなかったが、娘がいる事を考えれば、これからは積極的に援助ができるな」


 一応、他の領地に多額の資金援助などは出来ない為、孤児院が金銭困難にならない程度にサポートしてきたエーデルシュタイン伯ことテオ。アンネローゼの父親でもある彼は、十数年ぶりに再会を果たし、それ以降は食料や生活用品と言った物を孤児院へ送ったりしていたのだ。シュヴァイガート伯ことハイネスも義父であるエクスナー枢機卿、ラインフェルト候ことリーンハルト、エトヴィン宰相と共に支援していた。此方のエクスナー枢機卿は教会と言う立場から貧困層の支援と言う名目で、他の三人は過去に娘を助けてもらったお礼と言う事で支援している。


 当然、王都の四大貴族と称される家々が支援をしているのだから、国からも支援を行っている。第二王女であるレーアを救った功績としてなので、ヴァイデンライヒ子爵も拒否はできないのだ。だが、やはりお互いの立場と言うのもあり、限られた内容での支援しかできなかったのも事実だ。


 限られたと言っても、村から町への規模拡大の段階でかなり力を入れている様に思えるのだが、そこは誰も口にしない。


「彼は全てが規格外の様な奴だ。そんな奴がどの様に領地を運営していくのか。少し楽しみではあるな」


「・・・・ところで、彼って領地の運営について、学んだことはあるのかね?」


 ・・・・・


 リーンハルトの言葉にそれまで、賑やかに話をしていた者たちが一瞬で静まり返る。誰もが考えなかったと言うか気が付かなかった事案だ。


―――ッ!!


 気が付いた時には遅かったと言わざるを得ない。彼の未知の知識と子供なのにも関わらず上級貴族並みの頭の回転と理解力の高さ。だから必然的に誰もが彼ならば領地開発や運営などを問題なく行えると勘違いしていた。


 そう上級貴族並みの実力があれば領地運営など問題はないはずだが、彼は領地運営に携わる知識を学んでいなかったのだ。


 それが、陛下たちに会う前に習得しているのであれば、この場は心配しただけで終わるのだが、彼は元々孤児である。講師を招き入れたり、王立学園で教育を受けたわけではないのだ。


 精神と肉体の年齢がかけ離れているが故に相手に錯覚させてしまったレオンハルトの失敗(ミス)であり、その為、陛下たちが間違った判断を下してしまったのだ。


「不味いぞっ?彼は孤児だったはずだ・・・・領地の治め方なんて誰からも聞いていないはずじゃ」


 その言葉に皆が頷く。


「今からでも学園に入って学んでもらう・・・か、でもその間の領地は・・・」


「代役を立てるしかないだろうね。彼の知人に居ればいいけれど、そんな人はいるのか?」


「最悪此方で人選して、数年任せるしかないかの?」


 皆がそれぞれ意見を出し合う。


「兎に角、彼を此処へ招集させて確認しなければな」


 その日の会議を終えると各々がこれから動く為の準備を始めた。


 王城からレオンハルトへ招集の通達が来るが、屋敷には居ない事が分かり、既にナルキーソへ移動している旨を伝えられて、戻り次第王城へ来るよう手配される事になった。










「さて、こんなもんかな?」


 レオンハルトは数台の馬車を手配し、孤児院の子供たちが王都に来る段取りを勧めていた。アンネローゼたちとの話し合いの結果、アンネローゼを含む孤児院の子供たちを王都の屋敷へ移動させる。屋敷だけでは収容人数に限りがあるので、子供たちが馬車で移動中にレオンハルトだけが転移魔法で王都に移動し、準備をする事になった。


 他の者たちは、交易都市イリードへ向かい。そこから更に護衛の冒険者を雇って王都に向かう手はずになっている。


 自分が別行動する事に若干の不安はあったが、アンネローゼも居るし、シャルロットやユリアーヌたちも居るので大丈夫だろう。


「町長。暫く町を頼みます」


「其方も気を付けるんじゃぞ?町の事は大丈夫。皆で、発展させるよう頑張っておくから」


 町長が笑顔で見送ると共に手に持つ大きい羊皮紙をわざとらしく見せてきた。その羊皮紙は、昨日の夜にレオンハルトがシャルロットと共に設計した新レカンテートの街の設計図の様な物。正確には何処に何が立てられるのか、どういう風に区切るのか等、様々な事が書き記されているのだ。流石に現在進行形で建築中の物は手を入れない様にしているが、これから建築する場所や壊して新しくする場合などは少し立地が変更になったりもしている。


 上空から発展中の町を見下ろして書き込み、その後円卓上で話し合ったので、かなり地図自体の完成度は高い。


「シャル。皆の事を頼んだよ。町長、自分は一足先に戻ります」


「レオンハルト様、本当にお一人で行かれるのですか?今の貴方様は伯爵家の当主でありこの町の領主様でもあらせられます。同行者を伴っていた方がよろしいのでは?」


 町長は、この数日レカンテートの方向性や孤児院の子供たちの王都の準備の際に話し合いの場を何度も設け、今では完全に彼に付き従うようになった。ただ、年齢的な事や所詮村の長をしていた程度なので、規模が大きくなると彼ではどうしても対応できない事が多いのだが、それでも懸命にやって行くつもりの様だ。


「大丈夫です。魔法を使って戻りますので、安全ですから」


 そう言うと風属性魔法『飛行(フライ)』を使用して、飛翔し始めた。それを見た者は歓声を上げる。本当は町から離れたら『転移(テレポート)』で移動するつもりだが、人目を忍ぶ必要があるので『飛行(フライ)』を選択した。どちらも魔法に変わりはないので嘘にもならない。


 それに『飛行(フライ)』は扱いと魔力量が必要にはなるが、使える人がいない訳ではない。その逆に『転移(テレポート)』は希少だ。使える者がかなり少ないので知られてしまうと厄介な事に巻き込まれかねない。


 『飛行(フライ)』で上空へ舞い上がると、そのまま手を上げて挨拶をして王都の方角へ飛び去ってしまった。


 『周囲探索(エリアサーチ)』で人気が無い所へ移動した後『転移(テレポート)』で王都にある屋敷へと移動すると、給仕係(メイド)の一人と遭遇し、王城から呼び出しがあった事を聞く。


 呼び出しって何だろう?何かしたのだろうか?


 呼び出された理由に見当がつかないレオンハルトだったが、此方からも相談したい件があったので、フリードリヒに馬車の用意をお願いする。直ぐに準備が整ったようで、エリーゼに御者を頼み王城へ向かった。


 いつもの様に騎士に案内され王城内を進み、毎回お馴染みとなった会議室にたどり着くと、ノックをして入室の許可の返事を待つ。


「開いてるから入って構わないよ?」


「失礼します。御用との事でお伺いしました」


 会議室の中には国王陛下に宰相の二人のみ。立ち話も何なので、席に着くと開口一番に陛下から声をかけられる。


「アヴァロン卿、其方に領地を渡したのだが、領地の運営や人材など相談しておらんかったのでな」


 宰相の言葉を聞き、まさに今日その事について尋ねようとしていた所だったのだ。前世の知識や恩恵による知識には、領地の運営の方法についてあまりなかったので、何処かで覚える必要がある。


 可能であれば、王立学園に編入してそのあたりの事について勉強しておきたかったのだ。あまり乗る気ではない領地運営だが、領主になった以上は出来るだけ領民には良い思いをさせてあげたい。それに単なる領地ではなく故郷なのだ。より領地運営に力が入る。


 国王陛下や宰相と話をして、俺がそういう知識に疎い事を正直に話す。当然陛下たちも「やはりか」と言う様な対応をされているのを見て、大方察しがついていたのだろう。


「取り敢えず、王立学園へ編入して、学んだ方が良いのだろうが・・・」


 陛下の言葉が何処か歯切れが悪く感じる。不審に感じていると宰相は陛下が言い淀んだ内容を話し始めた。


「王立学園へ通う事になると、勉学が主となるから冒険者としての活動がかなり制限されてしまうのだよ。それに領地の事もその間、誰かに全て任せなければならないからね。そうなると、かなり信頼できる人物でなければ、後々大変な事になるからね」


 まあ、簡単に言ってしまえば一週間は七日あり、そのうち五日から六日は学園に通う必要があるのだそうだ。五日だったり六日だったりするのは、隔週で異なるからの様だ。理由は、貴族等も通う学園と言う事もあり、長期休みの期間が二月(ふたつき)ぐらいあるのだそうだ。


 自身の領地に戻る事を考えると妥当なところらしい。


 後は授業が一日で四講義あり、これは選択制の様だ。歴史や算術、地理と言った一般教養から経営学、魔法研究、サバイバル術、武術、商業学など専門的な事まで様々あるのだ。


 全てを学ぶことは物理的に難しいので、将来的になりたいものをベースに科目を選択していく。


 まあ、一講義が凡そ一時間半ぐらいで、一日最大の四講義を受ける場合は六時間ぐらい講義を聞かなければならないのだ。また厄介なのは、曜日と時間ごとに講義の時間は割り当てられているので、物によっては他の講義とブッキングする恐れもある。


 後は、苦学生も当然いるので、冒険者ギルドへ登録して簡単な依頼をこなす者も少なからずいる。


 冒険者として活動できないのは、アヴァロン家の財源に響くので、編入した場合は、適度に依頼を受けるつもりでいる。それに、この機会にローレたちの方に力を入れて商売するのもありかもしれないと考えるレオンハルト。


 商業ギルドにお金を払って登録しているので、生かす事もしなければならない。


「信頼できる人ですか・・・」


 金銭関係よりも寧ろ人材の方が問題だろう。


 何せ、レオンハルトは貴族とは言え、元は孤児である。孤児院を出てから冒険者として活躍していたので知り合う機会はあれど、領地を任せられるような人物に心当たりはない。


 辛うじて、屋敷にいる筆頭執事のフリードリヒぐらいだろうか。しかし彼を領地に行かせたら今度は王都の屋敷を管理できる人物がいなくなってしまう。


 悩んでいると・・・。


「もし難しいようだったら、此方からその手のものに精通した信頼できる人物を紹介するけれど、どうだろう?」


 宰相の言葉に少し考え、頷いた。


 フリードリヒも元々は宰相の紹介で家にやって来た人物だ。彼の様な人物が来るのであれば此方としても大歓迎である。


「分かった。此方で迅速に手配しておこう。それと王立学園の編入だが一応、編入試験を受けてもらうようになる。王立学園に編入を考えているものがいれば、連絡してくれたら其方も手配しておく」


 冒険者として活動できないのであれば、他のメンバーで入学希望者がいれば一緒に参加してもよさそうだな。ただ、編入試験と言うのが非常に気になる事ではあるが。


 それからと言うもの、陛下や宰相たちと話をし、大まかな事が決まりつつあった時、最後に挙げられた議題を聞いて、来てしまったかと言う想いになる。


「編入後に皆との婚約発表を行う。其方も伯爵と言う上級貴族の仲間入りを漸くしたのだからな。これで問題なく降家させても大丈夫だろう」


 確かに、今婚約が決まっているのは、正妻にはシャルロットが、側室にアルデレール王国第二王女レーア、王国の宰相であるフォルマー公爵の息女ティアナ、勇者の血筋を受け継ぐラインフェルト侯爵家の息女リリー、シュヴァイガート伯爵の息女にして国教の枢機卿の孫娘エルフィー、育ての母であるアンネローゼの実家エーデルシュタイン伯爵の孫娘リーゼロッテ。今現在の段階で六人もの婚約者がいるのだ。


 普通の貴族当主の嫁は多くても四人ぐらいで、基本的には二人か三人ぐらいなのだ。


 六人の婚約発表が編入後にされるとなると、必ず王立学園で何かが起こりそうな予感がした。


いつもありがとうございます。

本業が忙しく、執筆活動が思う様に進んでおりませんが、頑張りますのでご教授よろしくお願いいたします。

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