096 レカンテート村の変化
おはよう。こんにちは。こんばんは!nahatovallです。
お盆も今日で最終日。明日から再び仕事が始まりますね。学生はそろそろ学校が始まる頃なのでしょうか?
お盆最終日しっかり、満喫してください。
「手紙を見て飛んできたの?相変わらず行動が早いわね」
アンネローゼの言葉に頷く。ヴェラのお店を後にしたレオンハルトたちは、アシュテル孤児院を訪問し、彼女と会う事が出来た。
そのまま話をして行くと、手紙で書いてあったようにレカンテートの元々あった村の区画を整備する事になる様で、現在アシュテル孤児院の新孤児院を建造する所だそうだ。
村の者たちの家も既に二割方が新しい新居を貰い移り住んでいるらしい。まあ掘建て小屋みたいな家からログハウスの様な感じの家にグレードも上がっているけれど・・・。そう言えば、新規開拓されたところの一部は石造りの家もあったな?
新アシュテル孤児院は今と同じ場所になるそうだ。ただ、場所は同じでも孤児院としての規模も設備も格段に良くなる上、孤児たちに教養を身に付けさせる場も設けるとの事。これはアンネローゼが進めているらしくそれを国が支援する形となっている。
それだけ聞けば良い事尽くめなのだが、問題は立地が同じと言う事。詰まる所新しく建てようとすれば今の孤児院を先に解体しなければならない。そして、レオンハルトたちはその事を手紙で知っているため、急遽レカンテートを訪れたのだ。
孤児院の解体から新築までの間、子供たちを含めどうするのか尋ねると、仮の小屋を作って忽ち其方で生活する予定との事だ。
設備は当然今よりも数段落ちてしまうが、完成までの辛抱だと言う・・・。でも、その新しい孤児院が出来るのは何ヶ月も先の事だ。
王都の屋敷であれば多少の人数は面倒見れるだろうが、全員は流石に厳しい。
魔法で如何にかできなくもないが、魔力の消費が恐ろしい事になるし、周囲に異常だと思われる。実際はもう思われているけれど、まだ常識の範囲内だとレオンハルトもシャルロットも考えていた。
悩んでいると一つの妙案を思いついた。王都内で売買されている屋敷を追加で購入すれば良いのだ。
金銭は、これまでの冒険者業でかなり溜まっているし、貴族になった事で年金も毎年国から貰える。屋敷の一つや二つは問題ないはずだ。もし足りなければ、前世の知識を使ったアイディアをまた商会に売ったりすれば良いだけだ。
「アンネ先生。良かったら新しい孤児院が出来るまで王都にある屋敷に皆で来ませんか?」
昨日、拠点を王都からレカンテートに移すと使用人たちに話したばかりなのに、また王都で暮らすのかと疑問に思う仲間たち。別に使用人の半分を王都に残して王都の屋敷の管理をさせてもいいし、再雇用で雇用した者を管理させても良い。
使用人以外誰も暮らさない屋敷なのだから、有効活用にもなるだろう。自分の所有する屋敷と追加で購入予定の屋敷で全員問題なく暮らせるだろう。
「流石にそれは迷惑でしょ?私たちは別に大丈夫よ?」
「迷惑ではありません。それに、自分は先日、陛下よりレカンテートの領主の任を承りました。孤児院の子供たちが王都に行って、新しい孤児院が出来るまでは王都で商会などのお手伝いなどで知識や経験を身に付け、それをレカンテートに戻って発揮してもらえればうれしいと思っています」
まあ、毎年孤児院を出ないといけない子供たちは、出る前から将来の職に就く為に希望する職のお手伝いを行う。そして、孤児院を出た後はそこで見習いとして住み込みを行ったりするのだ。
レカンテート村だった時は、職も限られていたのでお手伝いと言うよりも体験学習に近かったように思う。
今も年長たちはレカンテート内でお手伝いをして、手に職を就けるための練習をしているが、王都の方が本格的な体験が可能だ。
新しい孤児院が完成するまでに孤児院を出ないといけない子供は、王都でお手伝いをし、問題がなければ見習いと雇って貰えやすくなる。アンネローゼからしたらとても良い提案と言わざるを得なかった。
それに、これから発展していくレカンテートの事を考えるのであれば、少しでも実践形式のお手伝いをさせてあげるのが、町にとっても良い事だと言える。
良い提案だけにレオンハルトにばかり負担がいってしまうのが、アンネローゼからしたら素直に頷けない部分でもあるのだろう。
「え?領主?領主ってどういう事?」
俺の発言の中のある言葉にアンネローゼが反応し驚いた表情をする。そう言えば、仲間内以外にはまだ話していなかったことを思い出し、説明した。
「伯爵位の当主・・・・そして、此処の領主様にね・・・・驚くべき出世ね?」
アンネローゼは、普通に話をしているが、説明を終えた当初は敬語で話す様になっていた。流石に育ての親の様な存在である彼女から敬語で話掛けられるのは、落ち着かなかったので、平時の時は今まで通りの対応をして欲しいとお願いしたのだ。
流石に公の場では、敬語で話されるけれど・・・。
「でも、行き成り領主って、領地の運営はどうするの?誰か代官でも立てて領地を任せるの?」
アンネローゼの指摘で初めて領主としての知識の無さを痛感する。一般的な知識や前世の知識、薬草や魔法などの知識も神の恩恵で、身についているが貴族としての教養や領地運営の知識は全く持っていなかった。
まあ、前世の知識があれば何とかなるだろうと甘い考えをしていたレオンハルトは、アンネローゼから発せられる領主としての義務の数々に前世の知識だけではどうにもならないと悟った。同じ恩恵を持つシャルロットへ視線を向けるも、彼女も困った表情で首を横に振る。
領主が領地を運営できないのであれば、代わりの者・・・それこそ、代官や領地運営にかかわる重要な役職の人物たちに心当たりが居れば、どうにかなるのが常識だが、そんな人物に心当たりが居るわけでもない。
非常に不味い状況に顔色を悪くしていると、取り敢えず村長・・・いや、今は町長になっているのか、その人物に相談した方が良いと言う事になった。
アンネローゼも同席してくれるようで、皆で町長のいる自宅へ移動する。
元のレカンテート村の中央よりにある大きな家みたいな場所、そこが町長の自宅だ。
何のアポイントも取っていないが、問題なく面会が出来た。まあ、レカンテートの領主が就任され尋ねて来たともあれば、断る事などできない。
「まさか、あの時の子供が領主様になられるとは・・・。長生きはするものですなー。それで今日はどうされましたか。挨拶だけと言う感じではありませんが・・・」
町長の言葉に先程の件を説明する。
「領地の運営方法ですか?申し訳ありません。私も教養を受けたわけではないので、分かりません。私も村長として十分やって来れていたと思いますが、町長になってからは戸惑う事も多くありまして、そろそろ息子に役を引き渡そうかと思っているのですよ」
町長の息子はアンネローゼよりも少し上の年齢で、現在は村から町へ発展した事で、町の統治方法を身に付けるべく、ナルキーソへ勉強に出ているとの事だ。
戻って来るのは後二年程先になるらしく、その間は町長が如何にか町民に力を借りながら収めていくつもりでいたのだ。
「デリス殿は、代官業務を行えそうですか?」
アンネローゼの問いかけに町長は首を横に振る。デリスとは町長の息子の名前。もし代官業務を行えるのであれば、レオンハルトは領主として存在し、領地の統治をデリスに代官をさせて運用していけば良いかと考えたのだが、如何やらそれも難しいらしい。
デリスはあくまで次期町長として、業務を身に付けに行っているので、代官業務とは結構異なる事が多いのだ。
簡単に言えば本社と支社と出張所の様な違いだろう。本社は当然、王城のある王都で、支社は各貴族が治める領地を指し、出張所はその貴族が治める領地の領主がいない町や村の事を指す。
町長や村長は、簡単な村の収支を計算して、領主様の雇う役人に渡すだけの仕事。それに対して代官は、その回収した書類を確認したり、各役人たちに指示を出したりしなければならない立場。全然仕事量と密度が違うのだ。
もしかしたら将来的な事を考えて、多少そのあたりの知識を身に付けてくるかもしれないが、その程度は知れている。
本当に困った状況に、横から新しい情報が舞い込んできた。
「レオン様。宜しいでしょうか?」
ティアナが此方に顔を向けて話しかけてくる。ティアナだけではない。リリーやエルフィーも同様に此方へ顔を向けていた。取り敢えず俺は、ティアナに返答して言葉を待つ。
「お父様にお願いして代理の代官を選任してはどうでしょうか?その間にレオン様は、貴族作法や領地運営、内政方法などを学園で学ばれてはいかがでしょう?」
「・・・学園?」
王都の西地区に学園がある事は耳にした事があった。一般の子供も優秀であれば学園に入る事が出来るアルデレール王立学園は国が管理しており、主に通っているのは一般生徒が三割くらいで残りは貴族の子息たちだ。上級貴族は、学園に通わせる者も居れば屋敷に家庭教師の様な専属の講師を招き、個人講習を行う所もあるのだとか。
後半の情報は、リリーが説明してくれた。ティアナとリリー、エルフィーの三人は、個人講習で既に必要な教養は習得済みだそうだ。
「王立学園は、西地区のどの辺りにあるの?行った事が無いのだけれど?」
エッダは、西地区の商業区画へ何度も足を運んでいたそうだが、彼女も見た事が無いそうだ。ただ、時々同じ服装をした集団は見た事があると話す。エッダの疑問にティアナが返答する。
「王立学園は貴族区画にあります。一般生徒は、専用の許可書を持って門を潜ると聞いていますよ」
「そっか、貴族区画は行った事が無かったわ。だから知らなかったのね」
「それで、学園は何歳から入れるところなんだ?聞いていれば、幼少期から学園で教養を身に付けている様に聞こえるのだが・・・」
ティアナは更に説明をしてくれる。王立学園は初等部、中等部、高等部の三つに分けられている。初等部は六歳から九歳まで、中等部は九歳から十二歳、高等部は十二歳から十五歳の成人までだそうだ。それぞれ三年と言う期間がありその三年間も一年毎に学年が定められているそうだ。
ティアナたちも実際に通った事が無いのでよくは知らないとの事だが、今話をしている内容は常識の部分だとか。
「ティアナ様の言う通り、学園に通うのが良さそうね?」
暫く黙って居たアンネローゼが口を開く。聞けば彼女は王立学園を卒業している人物だった。内政や経済だけでなく、武術や剣術、魔法研究に魔道具開発、教育方法、治療技術など様々な事を教えてくれるらしい。
アンネローゼは、経営、算術、剣術、魔法、教育と言ったものを勉強して身に付けたそうだ。
(多種多様の専門学校が纏まっている感じなのか?)
一般の生徒は主にアンネローゼが身に付けようとした科目や商業、役職業務を希望する者は内政を勉強したりも出来る。まあ、貴族は個人講習をしていたりもして、かなり勉学のレベルに差があるようだが。
「王立学園に行くとしても、今から入れるのでしょうか?」
「シャルロット様、編入制度もありますので、今からでも入る事は出来ますよ」
編入時に学科試験を受ける必要があるらしいが、主に基礎知識の事が主なので、俺とシャルロットは問題ない。後は王立学園に誰が通うかだが・・・。
それに、王都にある王立学園に通うと言う事は、王都に継続して住まなければいけないと言う事。使用人たちには近いうちにレカンテートへ移ると説明したばかりなので、まだ数年は王都を拠点に居る事になりそうだった。
どのみち、レカンテートの方の屋敷が無いので、よくよく案が出ればすぐに引っ越しは出来なかった。
取り敢えず、王都に戻り陛下や宰相に相談しなければならない事と代官代理人を手配してもらう事。孤児院の子供たちを王都へ移動させる事。新しい屋敷と使用人の手配、レカンテートの開拓、屋敷の建造と言ったやらなければならない事の多さに眩暈がしてきそうなレオンハルトだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字等多々あると思いますが、皆様のご指摘感謝しております。(自分にもう少し文章力があればと常々思っております)
また、来週も投稿予定ですので、是非ご覧になってください。