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095 魔城での軍議

おはよう。こんにちは。こんばんは。nahatovallです。

コロナウイルスが再び急増しておりますが、皆さまは大丈夫でしょうか?

自分は県内外の出張が多く、先日会社から簡易検査キットをもらい確認したら、大丈夫でした。

8月はお盆もあり帰省が危ぶまれますね。

 昼間なのに薄暗い空が広がり、夜は月明かりすら届かい闇一色の大陸。環境が刻一刻と変化し順応できない者は死に繋がる極悪の大地。


 そんな場所に(そび)え立つ禍々しい形をした城。魔王城と呼ばれるその城の一角に再び各種族の代表ともいえる魔族の重鎮が集まった。


「魔王様、今回はどの様な事で我々を集められたのですか?」


 猿皇と呼ばれる十二魔将の一人が魔王クラウドに質問する。


「ああ、まずは魔龍帝よ。かの国を滅ぼした事褒めて遣わす。その後の進行はどうなっておるのだ?」


「現在、ガバリアマルス王国ノ周辺諸国ヘ攻メ入ル準備ヲシテオリマス。ソレト、勇者ドモガ所持シテイタ聖剣ナル代物ヲ捜索中デス。アレハ、カナリ危険ナモノダト感ジマシタ」


「聖剣如き大した事ないだろうが―」


「フン。大昔勇者ニ痛イ思イヲサセラレタノハ誰ダッタカ忘レタワケデハアルマイ」


 猿皇が魔龍帝に意見するが、魔龍帝はそれに全く動ずる事は無かった。実際に勇者や勇者に匹敵する騎士たちとの戦闘で、予想以上に魔族側にも被害が出てしまっていたからだ。ただ、被害と言っても下級魔族が殆どだったので、中級や上級の欠員はあまり起こらなかった。


 魔龍帝からしたら勇者は確かにまだまだ足元にも及ばなかったレベルではあるが、あれがもう数年遅れての戦闘になっていた場合は、深手を負わされていたかもしれない。たらればの話になるので実際どうなったかはそん時の戦闘次第だっただろう。


「猿皇、不死王、赤銅豚王、巨兵王。お前たちはどうだ?」


 猿皇に不死王、赤銅豚王、巨兵王の四人は魔王の指示で、各地で暴れて世界の混乱を図る様に伝えているのだが、其方からの成果は余り耳にしなかった。


 聞けば、あれから今まで軍団の底上げや各地への数名の密偵を出したりしているとの事。猿皇の配下であれば身軽な物が多いため密偵も問題なく熟せるだろうが、不死王を含む配下たちは昼間の活動に制限があるし、巨兵王に至ってはその巨体から密偵ではなく的になってしまう。


 暴れまわる意味で言えば赤銅豚王も含めて配下の多さや暴れっぷりから期待できるが、こそこそ動くとなれば完全に人選ミスだったと言わざるを得ない。


「・・・・そうか、であるなら丁度良いだろう」


 暫く考えた後に魔王クラウドは、静かに口を開いた。


「邪神様から連絡があった。何でもあの大陸に勇者ではない別の者たちが数名、迷いこんできたらしい。勇者ではないから放っておいても良いかと思ったのだが、勇者以上に危険な存在になるかもしれないとの事だ。だから、それらしい奴を見つけ次第殺せ」


 邪神はまだ復活していないが、時折魔王クラウドたちに対して神託みたいな事を伝えてくる。正確には魔王ではなく魔王妃リリスの方になるが。彼女は邪神教徒の巫女でもあるのだ。


 お告げによれば、邪神たちと敵対する神々が力を使って数人、この世界に送り込んだと言う。勇者ではないが、それに匹敵する力を授かっているため、邪魔される可能性が高いとの事。直ぐに調べてしかるべき対処をせよ。と言う内容だった。


 闇妖精王と冥府王から質問が来る。容姿やどの辺りに出現しているのか。何か特徴的な事はあるのかなどだ。


 だが、現在分かっている事はそう多くない。


 特殊な力を持っているのと他者と比べて、実力がある事ぐらいなのだとか。それに合わせて各地に配下たちや実験に出ている者たちからの報告がないか確認する。


「童カラハ少シ気ニナル人物ガイル」


 魔龍帝から発せられたのは、ガバリアマルス王国の王族の生き残りについて、普通に聞けば取り逃がしたと言われても不思議ではないが、今はその事に誰も意見を述べなかった。


 魔龍帝は一応強制転移で逃げた王族の行方を捜しに西に移動した。その時一人の身の丈ほどの大剣を携えた虎の獣人・・・虎人族に遭遇する。魔王軍が彼を襲うが、獣人は戦闘能力が高くその中でも攻撃に特化した虎人族に翻弄されて結局逃げられてしまったと言うのだ。


 こういう情報でもあるのとないのでは大きく違うと判断して話す事にした魔龍帝。それを筆頭に、配下の物から上がっている情報を皆それぞれに伝え始めた。


 大陸の西部に風雷の戦乙女と呼ばれる騎士。時の番人と呼ばれる魔法使い。魅入られる様な剣舞から魅惑の舞姫と呼ばれる者に共和国が誇る狂戦士集団。大陸の北部には、剣豪と呼ばれる剣士、炎の姫騎士呼ばれるお姫様、右腕が悪魔と融合した呪われ()軍人、巨人殺しの英雄と魔物を戦いながら調理する戦慄の料理人がいるとの事。


 これだけ聞けば、まだこの様な猛者たちが残っているのかと思ってしまうが、各国は英雄に近い若しくは英雄と呼ばれる者たちも含め数名は自国の戦力として残していたのだ。


 更に西部や北部以外の報告もあがる。南部には、魔法とは別の何かで敵を翻弄する狐獣人に剣と魔法の才に恵まれたエルフ族の少年。全身に入れ墨を施している武闘派一族に精霊と対話する白いフードの人物。東部にも百戦錬磨の冒険者チームに帝国を守る守護八剣。一騎当千の王国騎士団の騎士団長や隊長たちに上級魔族をも倒す魔族殺しの英雄。そして忌まわしき勇者とその一味。


 あげればきりがない位いる事に、十二魔将の顔に苛立ちめいたものを感じさせていた。要はこの場に居る者たちを不快にさせる者たちと言う事だ。


 しかし報告で上がっているだけであって、実際に戦闘し敗北したと言う者は掲げた者たちの三割程度で、後はそう言う話を聞いたと言う事だ。下級魔族は少なからず戦闘し敗北している可能性はあるが・・・。


「――――勇者。まずは最優先に倒さなければなりますまい」


 魔王の近くに控える魔族の言葉に魔王も頷く。そして勇者討伐の命令を下していたはずの十二魔将の一人へと視線を向けた。


「鬼神。お前に任せた仕事だが、どうなっているのだ?」


 重圧をのせて話す魔王に、十二魔将たちが一瞬で身体が強張ってしまう。重々しく黒い何かがそうさせているかのように。


「魔王様。申し訳ありません。勇者ですが、各国を転々としている様でして足取りが中々つかめません」


 勇者コウジ・シノモリ。四人いた勇者の一人で最後の生き残りでもある。勇者タスク・ホンジョウに勇者ショウタ・ツヅラ、勇者ナオヒト・アリマの三名は、ガバリアマルス王国防衛戦の折、十二魔将の一人魔龍帝ヴァルグドレッドとの激しい戦闘で命を落とした。その他にも剣聖の一人や賢者、聖騎士なども相次いで討ち死にしている。


 アルデレール王国に在籍する勇者であるが、他の勇者が戦死した為、各地を回り勇者としての責務を果たしているのだ。


「目撃情報を追って追撃しているのでは、何時まで経っても追いつけませんぞ?」


 冥府王の言葉に鬼神は青筋を立てるが、事実な上に魔王からも同じように意思を感じ取れるため反論はできなかった。


「勇者の拠点は南東部の大国であったな?そこをまずは調べるのだ」


 魔王クラウドの言葉に頭を下げて返答する。


「あのあたりには、魔族殺しの英雄と呼ばれる者がいる。気を付ける事だ。どこかの誰かもその国にマウントゴリラを仕掛けようとして失敗しておるしな」


「そう言えば、嵌合体魔獣(キメラ)だったか?あの合成魔獣は・・・その魔獣の実験と言う名目で鬼人族のバルラハ、デトマン、ゾーンがあの国へ襲撃を仕掛けたが無残にも敗北しておるぞ」


 嵌合体魔獣(キメラ)の種族名を勝手につけたのは、鬼人族の上級魔族であったバルラハがその事については誰も異論はなかった。人工的に作った魔物や魔獣の種族名など誰も気にしないのだ。バルラハがつけなければ、種族名すらなかったかもしれない。


 バルラハ、デトマン、ゾーンは倒されてその時に決めた種族名が何故知れ渡っているのかと言うと同席して戦闘には参加していなかったシュラ族の男が、帰還後に自分の主へ報告したのだ。


 鬼人族・・・詰まる所、鬼神の配下の者たちだ。


 勇者を見つけられないどころか、配下の失態までも魔王クラウドの耳に入る事になる。苦虫を潰した様な表情をする鬼神に、更に追いうちがかかる。


「その三人って上級魔族でしょ?三人もいて負けるなんて、鬼人族の程度が知れるわね。うちの上級魔族たちの品質も下がったように見られてしまうわ」


 魔妖妃は相手を見下すような話し方で鬼神を貶める。


 魔王クラウドはその事に対しての処罰は言わなかったが、機嫌が悪そうな雰囲気は出していた。


「魔王様。アスラダーラの配下の件、嵌合体魔獣(キメラ)の有用性と改良点が分かった事ですし、彼のこれからの働きを見てから決断されてはどうでしょうか?」


 アスラダーラとは、鬼神の個体名である。鬼神や魔龍帝などはあくまで、地位と言うか二つ名と言うか役職と言うか、取り敢えずそう言う扱いの物だ。魔王が個体名ではなく其方を使うのは、十二魔将も戦闘で撃ち滅ぼされる事があり、その都度名前を変えていると疲れたというどうでも良い事が理由だったりする。まあ、入れ替わり何て数百年単位でしか起こらない事ではあるが。


 魔王に発言したのは、魔王の近くに常に控えている男であり、魔王城のまとめ役の様な人物。彼自身は十二魔将に含まれていないが、実力は十二魔将以上ある人物だ。


 その日の軍議は、魔龍帝ヴァルグドレッドの功績と鬼神アスラダーラの部下の失態。敵側の要注意人物の確認を主としてその他の決め事なども順に話し合い、無事とは言わないが軍具を終えた。











 レオンハルトたちは、海隣都市ナルキーソの領主ヴァイデンライヒ子爵の屋敷を訪れた後、街の人目の付かない場所で転移魔法を使い元レカンテート村近くの森へ移動した。


 ・・・・


 予想していたよりも発展している故郷を見て驚くレオンハルトたち。前に訪れたよりもまた違う部分が多く観られたからだ。


 村を越える規模になっているのはかなり前から知っていたが、町の規模かと言われれば今はそれをも超える勢いを見せていた。


 アンネローゼの手紙にも書いてはいたが、やはり実際に目にするとその凄さが良く分かる。


 レカンテート村へ国が支援するようになったのは、レオンハルトが十一歳の時に王都で行われる武術大会に参加していた時、過去に第二王女殿下や上級貴族の令嬢を助けた経緯から得た報酬でレカンテート・・・と言うよりもアシュテル孤児院へ金銭的な援助を申し出たからだ。


 レオンハルトからすれば、多少の寄付金と言う形の金銭がアシュテル孤児院へ渡ると思っていたが、まさか村から町への発展も行ってくれるとは思っても見なかったのだ。


 国だけでは恐らく此処まで発展しなかっただろう。公爵家や侯爵家の令嬢を助けた事でそれぞれの貴族からもかなりの援助が行われているし、その後の発覚で分かったアンネローゼが貴族令嬢だったと言う事実。


 アンネローゼの実家からもかなりの支援が入っているし、それを聞きつけた商業ギルドも随分と力を貸してくれている。レオンハルトが好意にしている商会が惜しみなく支えてくれるのは、彼のこれまでの功績とも言えよう。


 レカンテートの建設中の入口で身元の確認が行われ、冒険者ギルドのカードを提示し中へ入る。その時に衛兵と思われる人物たちが頭を下げていたのは、俺が貴族だと言う事を知っていたからであろう。もしかしたら同行しているティアナ、リリー、エルフィーの誰かを知っていた可能性もあるが。


「新しい家やお店がたくさん出来てるなー」


「もう、知らない街に来た感じですね。あっ!?此処昔、子供たちと花を摘んだりして遊んでいた所だ」


 数年前の思い出の場所もなくなっている事に何処か心が悲しくなってしまうが、こればかりは致し方が無い事でもある。形あるものは何時か無くなるし、形がないものでも変わってしまうのだから。


 暫く建設中の町中を進むと見慣れた店が見え始めた。


「おっ!?ヴェラさんのお店だ」


 ヴェラとは孤児院でフェザーラビットやランドバードを捕まえた時にお店に持ち込むといい値で買い取ってくれる優しい人だ。確か旦那はすでに他界しており、子供たちも別の街で仕事をしていると聞いた事がある。一度だけ長男夫婦が孫を連れて村に訪れた事があったが、とても真面目そうな人だった。


 お店はヴェラが一人で切り盛りしているが、年齢的な事を考えると何十年も続けられない。


「まだ居るのかな?店は閉まってるみたいだね?」


「珍しいですね?私が知っている限りこの時間で閉まっている事は無かったと思うけど・・・」


 リーゼロッテの言葉にシャルロットが返答する。そして、レカンテート村出身の者は皆シャルロットの発言に頷いた。


「何かあったのでしょうか?」


「開発による立ち退き・・・とか?」


 エッダとダーヴィトの言葉に誰もがその可能性を信じた。手紙でも周辺の開発は順調の様ではあるが、元々あった区画はどうしても手を入れにくいとか何とか。


 レオンハルトは、『周囲探索(エリアサーチ)』でお店の中を確認すると、店は閉まっていたが、奥の住居地部分で反応があった。その反応がヴェラのものと言うのも分かるとその事を皆に教える。


 後で、誰かに尋ねてみようかと思いその場を離れようとすると、片足を失った老人が立っていた。彼は良くヴェラのお店で鉢合わせをする事が多かった老人で、名前をインゴと言っていた。俺たちは接点が無かったから碌に関わりを持っていなかったのであれだったが、インゴはレオンハルトたちの事を良く知っていた。特にレオンハルト、ユリアーヌ、ヨハンはその才能とギガントボアが襲ってきた時の戦闘はこの村の人皆が知っている事でもあるからだ。


「お主ら帰ってきたのか?ヴェラさんは今病気らしくてな。此処三日程店を開けておらんのだよ」


 インゴ老人より聞いた情報で、納得しつつ少し心配になる。あとでアンネローゼに確認して病気の薬があるか確認しておこう。


 一先ず、今回レカンテートに訪れた目的を果たすために、知った道を進んでアシュテル孤児院を目指す事にした。


いつも読んで頂きありがとうございます。

ちょっと4日程前から首を痛めてしまって、動かすとかなり痛みがあるので、執筆活動が思う様に進まないかもしれません。その時はご迷惑をお掛けすると思います。

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