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094 久しぶりの我が家

おはよう。こんにちは。こんばんは。

先週はすみません。二話投稿予定が、仕事と体調不良で殆ど活動できませんでした。

ご迷惑おかけしてすみません。

「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」


「ただいま。フリードリヒ、これお土産だから皆で分けて」


 筆頭執事のフリードリヒに帝国で購入した果物や花蜜メリアネアなどを渡した。彼は、エルヴィン宰相が紹介してくれた老齢の凄腕執事で元公爵の所で長年執事をしていた経験もあり、文句なしに仕事をしてくれるため非常に助かっている。更に他の執事や使用人達の指示や管理もしてくれるので、長期間屋敷を留守にしても安心して任せられる。


 まあ、五日に一度ぐらいのペースでこっそり戻ってきていたから、急ぎ案件で自分が処理しなければいけない仕事は無く。後回しにして良い仕事ばかりだ。


 ただ転移できる事は、屋敷の中でも一部のもの達だけなので、主だった事はできないし急ぎの仕事も最後の詰めはこれからする事になる。


 急ぎと言っても、案件はほとんどなく一部の上級貴族が書簡にて面談を希望していたぐらいだ。


 面談を希望する書簡には、主だった内容が書かれており、アヴァロン家と親交を深めたいと書いてあるが、裏を返せば繋がりを作りたいのだろう。他には弟や息子を家臣にしないかとか、妹や娘の模写を載せたお見合いの案内みたいな物まで幅広くある。


 中身を確認し、返答用の書簡も作成を終えているので、後はフリードリヒが使用人たちや遠方であれば冒険者に依頼して持って行ってもらうだけだ。


「ご主人様、こちらが昨日届きました追加分でございます」


 表情が硬いフリードリヒ。その手には、十数枚の蝋封された書簡があった。


「あ、ありがとう」


 正直「またか・・・」と思いたくなってしまう。しかも今までの立ち位置でこれなのだ。今日、国王陛下から言い渡された領地の件や伯爵への陞爵を考えると、一気に数倍の量が届きそうで恐ろしい。


 取り敢えず、届いた書簡に目を通し、決まり文句となっている返事を書き綴る。


「ん?これは・・・」


 書簡に目を通していると、封蝋されていない物が一つ混ざっていた。中を開けて読んでいくとそこには・・・。


「え?アシュテル孤児院を改修?」


 送り主はリーゼロッテの母親で、俺たちの母親的存在のアンネローゼからだった。その内容は、レカンテート村が発展していくにつれ村内を整備する事になったようだ。整備しているのは武術大会後に王家の指示の元行われているのは知っていたが、それは周辺を拡張させるもので村内に関しては綺麗に整備し直すぐらいで店舗や家などはそのままの位置のはずだった。


 だが周辺が発展していく中、今度は中央が周辺の発展したところと比べて、発展具合が低下し、利便性が失われつつあるらしい。


 そこで、アシュテル孤児院を含め店舗や家を取り壊し新しく作り直すと言う事になったそうだ。アシュテル孤児院に関しては、規模を拡大するらしく。アンネローゼの案で、孤児院兼勉学を学べる場所にする事になったとの事。


 場所は今と同じところに再建するらしく、壊した後に新しく立て直すのだそうだ。


「立て直す間、皆は何処で生活するんだろう?」


 そのあたりの事は記述されていないので、対応策が無いのであれば、一時的に屋敷で預かる事も出来なくはないが・・・。そうなると部屋数が絶対的に足りない。


 そこそこの部屋数は確保しているが、孤児院の子供たちの人数を考えると受け入れが出来て七割ぐらいだろう。三割は、他所で対処するしかないが・・・。


「明日、訪問されてはいかがですか?」


「そうだね。ちょっと確認しておいた方が良さそうだ」


 フリードリヒに勧められて翌日、レカンテートへ訪れる事になった。とは言っても国王陛下からレカンテートの領地を頂いたので、村長・・・いや、町長になるのか、そこで一番偉い人と話をしなければいけない。それにレカンテート周辺をこれまで領地としていたヴァイデンライヒ子爵にも挨拶は必要だろう。


 顔馴染と言うのもあって少し気持ちは楽である。


(そう言えば、そのレカンテートを領地として頂いた事をフリードリヒたちに伝えておかなければならないか?)


 レカンテートの領主となり、伯爵の地位を陛下から賜ってしまった事。人生としては成功者と言えるのだろうが、冒険者や行商人としては行動範囲が狭められてしまうので、マイナス面も大きかった。


「フリードリヒ。悪いけど後で屋敷にいる皆を食堂へ集めてくれるかな?ちょっと報告しなければならない事があるから。シャルとリーゼは、ユーリたちを集めておいて」


 フリードリヒは、皆に伝えるべく動き始め、シャルロットとリーゼロッテも同様に部屋を退室した。


 俺は明日の段取りの為に少し整理をしておく事にする。


 午前中に冒険者ギルドへ寄って王太子殿下からの指名依頼の完了の報告。多分、他のチームが今日中に報告に行っているので、詳しく聞かれたりする事は無いだろうが・・・。それと、魔物の素材の買取を査定してもらう。量が多いので恐らく後日査定が終わるので、売買の金銭は査定後にもらうようになるだろう。


 あとは、書簡の返答を冒険者ギルドへ依頼して届けてもらう。王都に居る者であれば使用人に持たせるが、数名王都に屋敷を構えない貴族が居たので、持って行く必要があった。


 午後からヴァイデンライヒ子爵と面談して、レカンテートの件を報告するつもりだが、此方はまだアポイントが取れていないので、後で転移して向こうの執事に伝える必要がある。ヴァイデンライヒ子爵訪問の後は、レカンテートへ移動して書簡の経緯の確認と領主に任命された事の報告をしなければならない。


 思いの外やらなければならない事が山積みである。


 それから四半刻程の後に食堂へ行くと屋敷にいる使用人や給仕係(メイド)、ローレたち奴隷の面々、円卓(ナイト・オブ・)騎士(ラウンズ)が集まる。


「皆、忙しいと時間に俺たちが留守の間、しっかり屋敷を守ってくれた事感謝している」


「ご主人様、滅相もございません。我らはご主人様の為であれば、この程度の事大したことはありませんよ」


「はい。ご主人様がご無事に戻って来てくれれば、私たちはそれだけでうれしく思います」


 フリードリヒやローレの言葉に続く様に他の使用人たちも同様の言葉を掛けてきた。


 皆に慕われると言うのは、とても良い事だろう。前世で言う所の雇用主は会社の代表取締役で、使用人たちは社員と言う関係性になる。世界が違えば必然的に働くと言う考えが違うのは当然なのだが、それでも変わらない事もある。それが関係性と言うもの。


 横暴な貴族に雇われている使用人は、表面上は慕っている様に見せても内面は真逆の事を考えている。逆襲しないのは、前世と違い主を殺害した場合、自分だけでなく一族皆へ罰が課せられることだ。それに、未遂に終わったり、計画だけの場合だったりしても、それが主の機嫌を損ねる結果につながれば、どんな仕打ちをされるか分からない。


 使用人も後を継げない貴族の子供や兄弟だけではなく、平民たちも雇用されている。立場的に逆らえず、渋々従わざる負えない者も少なからずいるのだ。これが、貴族社会と言う力がある者が支配する環境だ。


 フリードリヒや他の使用人はそんな態度を一切見せないし、事実今の生活に不満を持っている者は誰一人としていない。


 だから、慕われていると言うのが確かな物だと実感できる。


「ありがとう。それで、王家からの依頼で隣国まで行ってきたんだけど・・・まあ、ちょっとした事があって、この度伯爵へと陞爵した。あと、領地を貰う事になったから、今後はその領地に皆で移ろうと思う」


 慕われているが、流石に住まいを別の場所に移す事で、ローレたち奴隷たちは従うしかないが、雇用している使用人の中には辞退者が出てもおかしくはない。内心ドキドキしながら、話をした為、手に汗が出てくる。


「「「「「「お、おめでとうございます」」」」」」


「領地は何方(どちら)なのでしょうか?」


「領地へ何時頃、出立されますか?」


「此方の屋敷の管理も必要ですよね?追加で募集した方が良さそうですね・・・」


「本日は、ご主人様たちが戻られたので豪勢な夕食を、と思っていましたが・・・これは皆様でお祝いしょう!!」


 辞退者が出る以前に使用人たちは一堂に喜びの声を上げた。まるで自分のことに喜んでいる彼らを見て、先ほどまでの不安は消え去っていた。


 領地長の提案を受け入れ、今日の夕食は屋敷に居る身内だけでのパーティーを行う事になり、フリードリヒや他の使用人たちはその準備を始める。


「ご主人様、少し宜しいでしょうか?」


 皆が準備を始める中、ローレが声をかけてくる。話を聞くと、現在薬の調合を行っているそうだが、その中で痛みを和らげる薬が作れないのかと言う相談だった。


水薬(ポーション)だと効かない感じなのか」


 基本的に水薬(ポーション)で負傷した傷などの痛みを回復させてくれるが。彼女たちが調薬しているのは下級水薬(ポーション)で、これの効果が薄いとなるとそれを上回る傷を負っていて中級水薬(ポーション)以上の物が必要になると言う事。


「いえ、傷ではなく・・・・その・・・」


「病気関係の痛みも多少は和らぐはずだけど、病気は基本的に自然治癒か病気に合わせて調合をしなければいかないから・・・」


 この世界では身体の仕組み的と言うか免疫力が高いのか、割と病気にかかりにくい。かかりにくいだけで、病気にかからないと言うわけではなく。現に、レオンハルトも風邪で寝込んだり、体調不良になったりする事は何度かある。彼が転生者だからではなく、他の面々も同様だったので間違いない。


 まあ、文明レベルが中世のヨーロッパ並みの部分もあり、病気とは何故発生するのかと言う科学的な部分が殆ど解明されていない。微生物どころか、病原菌や細菌といった目で見えないレベルの物を認知していない節がある。


 だから、医者と言う職業はいない、代わりに魔法が発展しているため治癒士と言う職業の者たちが存在するが、病気に関する知識は弱い傾向にある。どちらかと言うと錬金術師や薬師の方が病気への対処方法は理解している。


 錬金術師は特殊な魔法薬の生成や秘薬の生成をしたりする者たちで、薬師は各種類の水薬(ポーション)や万能薬の類を生成する者たちだ。主だった違いは、魔力を支流(メイン)にしているか、補助(サブ)にしているかと言う違い位だろうか。錬金術師は調合以外にも素材そのものを加工したりもするし、場合によっては細工や彫金も行う幅広い分野に手を染めている。なので、細工師や鍛冶師の仕事も請け負えたりする。


 薬師や細工師、鍛冶師の上位互換の職業と思われるが、逆に幅広く知識を必要とする分、その分野ごとに特化した熟練者に比べれば劣る事も多い。


 だから基本、傷などの外傷は治癒士か薬師が対応、病気関係は薬師か錬金術師が対応する構図となっている。治癒士は、聖魔法が使えないとなれないので、やや劣る効果を持つ水薬(ポーション)は騎士や冒険者にとって必需品となる。


 それに治癒士が行える治癒魔法は、個々の保有する魔力量によって回数などが変わるため、大勢の怪我人等が居る場合は一人では対処できないなどのデメリットもある。まあ、水薬(ポーション)も時間が立てば劣化して使えなくなってしまうが・・・。


 ローレは薬草から調合、調薬をして薬を作る薬師見習いをさせている。他の物も作らせているから、錬金術師も並行で鍛えている。錬金の方は魔法が必要な上、彼女だけの力では危ないので、いない時は基本調薬の練習をしてもらっていた。


 水薬(ポーション)は、何処の街でも需要があるため、作り方を覚えておいて損はないし・・・。独り立ちを希望した時に何か手に職をつけられるようにはしておきたかったのだ。


「あの・・・・病気、でもないのですが、その、女性特有のものと・・・言いますか・・」


 何だか恥ずかしそうに話す仕草と会話の内容を照らし合わせる。


(女性特有の痛みに、怪我でもなく、病気でもない・・・生理的な現象?あっ!!)


「なる程、確かに症状の重い人は辛いって言うしね。・・・でも、前に鎮痛剤の作り方を教えたよね?アグの実を磨り潰して作るやつ?」


「はい、ですが其方では効果が無いお客様がいる様でして」


 まあ、鎮痛剤なので痛みを和らげてくれはするが、生理痛に効きにくい人も居るのだろう。薬も人によって効果の出方が違うと言うし。そう考えるならば生理痛に特化した鎮痛剤の方が良いかも知れない。


「そう言う事か、分かった。ちょっと待ってね。他に使える薬があったか思い出してみるから」


 女性特有の生理的な痛み。詰まる所、あの日と呼ばれる生理痛の事だ。男性には分からないが、女性によってかなり症状がバラバラのようで、軽い人は少し痛いなぐらいらしいが、重い人は学校や会社を休まないといけない程の痛みを伴うらしい。これが毎月ぐらいのペースで訪れるのだから、女性は大変だと思う。


 恩恵の知識から該当するものを検索する。すると、割と簡単に作る事が出来る様なので、その事を伝える。ローレはそれを聞いて喜んでいた。


 でも、ローレたちとはこれまで行商している時にそんな様子は一度も見られなかったが、此処に来てそれが必要な事に疑問を持ち尋ねると、「露店を出している時にお客様から相談がありましたので・・・」と答えてくれた。


 男性が薬師だったり、売り子をしていたりすると女性はそう言う薬を求める時に尋ねにくいのだろう。そこにローレたち女性が水薬(ポーション)を売っている所にそう言う相談を持ち掛けやすかったのだ。


 これは盲点だったと改めて感じさせられて、明日の朝一番にフリードリヒに確認してみる事にした。何をって?当然露店などに相談窓口があるのかって事を。


 お客の求めているニーズが分かれば、それは商売として成り立つ可能性が大いにあるし、相談してくる人に合わせて対応すれば、信頼度も上がる。


 何はともあれ、まずは生理痛用の痛み止めを実際に作るところから始める事にした。パーティーまで時間もあるので問題ないはず・・・。


 レオンハルトは、ローレに指示を出して調薬を行っている奴隷たちを作業場へ来るよう伝えた。


 一足先に作業場に来たレオンハルトは、痛み止めの元になる素材を準備する。使用するのは薬草が三種類、花のエキスが二種類、白湯に生姜と蜂蜜だ。生姜は此方の世界でもショウガと呼ばれており前世の物とほぼ同じだ。違うのは大きさが前世の玉葱並みに大きいと言う事だけだろう。割と安価に手に入る物ばかりなので、コスト的に問題もなさそうだが、花のエキスだけは少し厄介かもしれない。


 希少性の花ではない分手に入りやすく、二種類とも一年中咲いている花なので安価に仕入れできるが、花のエキスとなれば相当数の花が必要になる。しかもその相当数の花から取れるエキスはほんの僅かしか取れないと言うのだから、大変な労力だろう。


 当然、裏技も存在する。ほしい花のエキスの元になる花を水薬(ポーション)に浸し、魔力を注ぎながら掻き混ぜるとエキス入り水薬(ポーション)が出来上がる。まあ、エキス入りポーションは通常の水薬(ポーション)に比べてやや効果が薄まってしまうので、普通は作らない代物だ。錬金術師たちはこれを知っているが、役に立たない方法と言う事でお蔵入りしているやり方でもある。


 恩恵で裏技の方法も知っていたのは、助かったと言わざるを得ない。


 まあ、魔力のないローレたちでは作れない代物なので、必要な時は魔力を持つ者にお願いするしかないだろうが・・・。


「ご入室してもよろしいでしょうかご主人様?」


「ああ、入って来てくれ」


 ローレに連れられてやって来たのは、銀色の毛並の狐獣人のルナーリアに兄妹で奴隷として買われた黒猫獣人の妹リン、後はエルフィーも一緒にやって来た。


 エルフィーは教会で怪我人や病人の治癒などをしていたので、ローレの言葉を聞いて参加してきたのだろう。


「レオンハルト様、すみません私もご一緒してよろしいでしょうか?」


「ああ、構わないよ」


 そのまま、レオンハルトは四人に生理痛用の鎮痛剤の作り方を教えた。ローレたち三人でも問題なく作れるようなので、今後販売時に一緒に出す様に言う。ただし、そのまま出しても女性は買うのに勇気が必要な物なので、フリードリヒに確認してからになるが、常備薬の水薬(ポーション)以外の薬の類は必要目的を確認した後に、その用途に合わせて出す様に伝えておいた。


 数本作ってから片付けを終えたタイミングで、給仕係(メイド)が夕食の知らせに来てくれた。


 伯爵への陞爵と領地獲得のお祝いのパーティーの為、料理長たちが張り切って作り、仲間たちだけでなく使用人たちも一緒に食事をする事にした。


 最初はかなり遠慮していたが、折れない主人に使用人たちがやむを得ず従った。始まった時はやはり使用人らしく俺や仲間たちの世話を焼いていたが、中盤辺りになれば使用人たちも交代で世話をする者とパーティーを楽しむ者に分かれた。


 翌朝、フリードリヒに昨日の露店の事を尋ねる。


「あまり聞いた事はありませんね。ですが、皆の声を聴いて薬を用意するのは、とても良い案と思います。私も私用で薬を購入する時はどれが良いのか悩んでおりましたから」


 やっぱりこの世界では、そう言った詳しく聞いてその症状に合わせた薬を売る様なお店はないのだと分かった。直接、薬師の元を尋ねて調合してもらう事はあるらしいが、平民がそう言う手段をとる事はまずない。何せ、薬師が直接症状に合わせて調合する場合は費用がそれなりに掛かる。


 結局、レカンテートへ拠点を移すまでの間の露店販売は、お試しも兼ねて状態を聞いてから最適な薬の提供を促す方向に決めた。


 ローレたちだけでは知識不足は明確なので、明日からシャルロットに同席してもらう事にした。護衛にユリアーヌをつければ大丈夫だろう。


 早朝での話が終わり、この後も色々立て込んでいるので一つずつ終わらせるためにまずは冒険者ギルドへ足を運び、指名依頼完了の報告へ行く。


 内容が内容だけに、ギルド支部長へ話を通してもらい、事の説明を行うと各地で魔族の仕業らしい事件が多発しているとの事を耳に挟む。中には、国の中心部で暴れまわる魔族も報告があり、正体を隠して侵入しているかもしれないと言われ、警戒を怠らない様に注意された。レオンハルトは既に数体の魔族と交戦し殆どを返り討ちにしているので、魔族側から標的にされていてもおかしくないのだろうだ。


 冒険者ギルドの用事を済ませると、今度は仲間たちと合流して昼食を取った。


「四人とも無事に家族に会えた?」


 午前中レオンハルトは一人で冒険者ギルドに向かい。他の者たち・・・リーゼロッテにティアナとリリー、エルフィーの四人はそれぞれ実家へ戻り、家族に顔を見せに行った。一人だと何かあるといけないので、ティアナには、ダーヴィトと黒猫獣人の兄ラン護衛にラウラに御者を任せ、リリーにはエッダとクルトの二人と御者にエリーゼを、エルフィーにはヨハンとアニータに御者は執事見習い中のローマンが行う。


 シャルロットはリーゼロッテに同行して、母方の実家へ足を運び近々に母の元へ一度帰省をする事を伝えた。女性だけでは考慮してユリアーヌを護衛につけ、リタに御者をお願いしておいた。


 ローレとルナーリア、リンにナディヤの四人は、商業ギルドへ行ってもらい。拠点を移す報告をしてもらっている。商業ギルドの専属担当者のテスタロッサとは、彼女たちの顔合わせの際に会ってから殆ど接する事は無くなった。


 商業ギルドへの売り上げの報告や露店の場所の確保にはその四人が主となって行ってもらっている。正確にはナディヤが四人の中で代表として働いてくれてる。


四人とも合流をしたが、流石に外で食事をする場合は、使用人たちは一緒の食卓で食事は出来ないので、交代で近くの飲食店で食事を摂ってもらっている。


「ローマンとローレ、ナディヤ皆を連れて屋敷に戻っておいて、俺たちはこのまま別の用事を済ませに行って来るから」


 そう言って、人気のない所へ移動し転移で海隣都市ナルキーソに移動した。


 昨日の内にナルキーソの領主のヴァイデンライヒ子爵へ面会の都合を尋ねていたからだ。屋敷の門にいる衛兵へ声をかけて、返答を聞くとお会いしてくれるとの事でそのまま敷地内へ通される。


 門から屋敷まで距離があるので、徒歩で来た我々に対して衛兵が馬車を用意してくれて屋敷の前まで連れて行ってもらった。


「お久しぶりですアルノルトさん」


 屋敷の入口で待ち構えていたヴァイデンライヒ子爵の執事アルノルト。白髪の老齢だが、今も元気そうで安心する。


「ようこそ御出でくださいました。アヴァロン伯爵様に皆様。どうぞ中へお入りください」


 アルノルトに連れられて応接室に通されると給仕係(メイド)がすぐに紅茶を用意してくれたので、それを飲みながら待つ事にした。


「失礼いたします。当主様が来られました」


「お久しぶりです。レオンハルト様」


「ヴェロニカ様もお元気そうで何よりです。公の場ではありませんし、以前の様に振舞っていただけると・・・」


 知っている人物だけにこうも畏まった対応をされると此方も一瞬戸惑ってしまう。しかもナルキーソの領主ヴェロニカは子爵位、対する此方は伯爵位なので立場的には此方の方が上になるのだ。


 初めて会った時は子爵と平民だったのが、今は完全に逆転している。


「そうか?そうしてもらえると助かる。まさかあの少年がこの数年で伯爵様になるとは思っても見なかったからな」


「自分もです。冒険者として活動していたのに気が付いたら貴族の仲間入りですからね」


 そうして積もる話もあるが、早速本題を話す。レカンテートについてだ。国王陛下が決めた事なのでヴェロニカも従わざるを得ないが実際に彼女がどう考えているのかを聞いておく必要もあった。場合によっては何らかの支援をする必要があるとさえ考えていた。


 まあ、支援と言ってもレカンテートとナルキーソでは街の規模が違うし、ヴァイデンライヒ子爵領とレカンテート周辺の領地しかないアヴァロン伯爵領では、此方から援助できる事なんて限られている。人手も資金もかなり違うのだから、むしろ此方が人手の援助をお願いしなければならない位でもある。


 けれど、レオンハルトたちには知識と言う何物にも代えがたい財産があるのだ。最悪幾らかの知識をお伝えしても良いとさえ考えていたのだが・・・。


「そのあたりは大丈夫だ。レカンテート周辺はレオンハルト殿の領地となってしまうが、代わりに国王陛下から別の領地を頂ける事になっておる。国直轄の地域だから誰も損はしないはずだし」


 各地域にそう言った国が管理する領地があり、今回はその中でヴァイデンライヒ子爵領に近い場所を譲渡される事になっているらしい。それに国が管理する直轄領は、基本的に貴族が悪さをして領地を没収されるか、取壊しの貴族の領地なので今回譲渡される領地もそう言った事で国が管理していただけの場所なのだそうだ。


「それを聞いて安心しました。ただ、これからレカンテートを発展させていきますので、今後取引などしていただけると助かります」


 ヴェロニカと有意義な話をし、その後は女性たちで何か盛り上がっていた。流石に女性だけの話に男性たちは入る事が出来ないので、アルノルトが用意した別室にて優雅に紅茶を飲んで過ごした。クルトは退屈そうにしていたが、反対にヨハンはアルノルトから色々話を聞いていた。俺は、ユリアーヌと雑談をして過ごすだけだったが。


何時も読んで頂きありがとうございます。

引き続き読んで頂けると、とても嬉しいです。

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