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089 元第二王子の想い

おはようございます。こんにちは、こんばんは。nahatovallです。

今回は、ガバリアマルス王国の第二王子であるセドリック視点で書いてみました。(一部違う視点ですが・・・)

「父上ッ!!私はこの場に残ります。兄上の仇を私が・・・」


 滅びゆく我が国を背に逃げる事はしたくない私は、父親である国王陛下へ想いを伝える。心より尊敬していた兄上の死。あまり身に付けられなかったが、剣の稽古をしてくれた将軍たち。良き友となった他世界から召喚された勇者たち。


 この戦いで多くの者を、私は失ってしまったのだ。


 だからか・・・。


 王族として、一人の人族として・・・・。


 迫り来る魔族の軍勢へ一矢報いたいと願ったのは、例えこの命が無残に散ったとしても・・・。


「ならぬ。お前は生きよっ!!生きて、この国を必ず再建するのだッ!!」


 だが、父上は大反対した。これまで見た事が無いほど、怒りや悲しみに満ち溢れた表情で。でも、その中でほんの・・・ほんの僅かに希望らしきものも感じ取る事が出来た。


 我が国・・・ガバリアマルス王国は今日滅ぶ。だが、王族生き残り、何年・・・いや、何十年、何百年かかったとしても必ずガバリアマルス王国を新ガバリアマルス王国として再建してほしいと言う希望をっ!!


 魔王軍の側近にして、最強の十二魔将。その一角である魔龍帝ヴァルグドレッド。王城を襲撃する直前に宮廷魔法士のイスティとアルマリーアの命を掛けた転移魔法で、エクシエント共和国のクアント小国近くの森の中へ転移した。


 ガバリアマルス王国に南下するとクアント小国、エクシエント共和国、アバルトリア帝国、アルデレール王国と続いている。小国とは言え一国を飛び越える距離の転移魔法は流石としか言えない。転移魔法を使用した宮廷魔法士二人は、その魔法に全生命を使い果たし亡くなってしまうが・・・。


 如何にか手持ちの物を売ったりしてアバルトリア帝国へ入国した。だが、アバルトリア帝国はローア大陸の中でもトップクラスの大国。その領土はクアント小国やエクシエント共和国の比ではなかった。帝都までの道のりも楽ではなく。


 魔物や獣、盗賊などに注意しつつ日雇い労働で溜めては移動を繰り返す日々を続けた。


 天候や魔物の大群、まだ二歳に満たない妹のリリアーヌの体調不良等。多くの困難(トラブル)があったが、如何にか帝都まであと少しと言う所まで来た時、事件は起こった。


 帝都まで行商で移動している馬車に便乗させてもらっていた時、あろう事か盗賊の襲撃を受けてしまった。護衛で雇われていた冒険者も必死の抵抗をしていたが、数に押されて皆を逃がすのが精いっぱいだったのだ。


 襲撃を受けやすい森林の道、だが逆を言えば上手く逃げ延びれば、見つかりにくい環境でもある。


「あっ!!お頭ッ!!商人どもが逃げますぜっ」


 何とも下っ端らしい盗賊の一人が逃げる商人や俺たちをみて、仲間を呼ぶ。


 ―――不味いっ!!


 こっそり逃げれば見つけられる事は無いだが、見つかった場合は此方が圧倒的に不利だ。シルヴィアは未成年の女。加えて歩くのが覚束ないリリアーヌを抱えている。走る速度は一気に遅くなるし、リリアーヌが鳴いたりしたら、此方の居場所がばれる。


 そう判断したセドリックは、咄嗟に商人が行商用に積んでいた布袋を見つけて、盗賊側に投げる。


 白い粉が周囲にばら撒かれ、一時的にでも視界を遮る事に成功したのだ。


「うわっ!?ペッ、ペッ!!何しやがんだ・・・あの野郎、ペッ!!」


 空中に舞う白い粉の正体は小麦粉だ。近くに居た盗賊たちは粉まみれになり、口の中に入った小麦粉が唾液と混ざって盗賊たちに不快感を与えていた。


 三人は他の人たちとは別の方へ走って逃げ、盗賊から如何にか逃げ延びる事は出来た。出来たのだが、現在地が分からない。


 加えて、此処は魔物や獣が出る森の中、此方は武器らしい武器と言えば、(セドリック)が持っているショートソード一本だけ。


 慎重に森の中を進むが、当然先程の騒ぎを聞きつけ近くにやって来ていた魔物や獣も少なくはない。


 最悪な事にセドリックたちは、ある魔物に出くわしてしまった。


 何処にでもいる低レベルの魔物の代表にして、人族にある意味最も脅威を振るう魔物。・・・ゴブリンである。


 何処にでも居るこいつらは、盗賊よりも(たち)が悪く。人族や獣人族、亜人族から毛嫌いされている。


 出会った事が不運なのか、一匹しかいない事が幸運なのかは分からないが、セドリックは剣を抜きシルヴィアへ逃げる様に言う。シルヴィアはリリアーヌを抱えて走り出すが、一瞬後ろを振り返ると―――。


(お兄様ッ!!)


 セドリックとゴブリンが剣を交えて戦っていた。低レベルの魔物とは言え魔物には変わりなく。一般人にとっては脅威でしかない。セドリックは剣の才は無いにしても、幼少の時に将軍たちから鍛えられている。勝てないかもしれないが、負ける様な事もない。


 そんな姿を見て走っていたのが災いして、シルヴィアは木の根に足を取られ盛大に転倒する。しかも、緩やかとは言え傾斜面を転がる様に落ちてしまった。


「シルヴィ!!―――ッ!!グハッ・・・邪魔するな」


 ゴブリンに蹴られて、体勢を崩してしまうがすぐに剣を握りしめて、横薙ぎに一閃する。


 胴体を切断されゴブリンはその場に崩れ落ちたが、セドリックは急いでシルヴィアが落ちた傾斜面の所へ行く。斜面の下で気を失っているシルヴィアと落ちた衝撃で泣いているリリアーヌ。シルヴィアがどうなっているのか分からないが、リリアーヌが無事な事を確認し警戒を緩め、下に向かおうとした。


 油断・・・・戦いの後が最も気が緩む時で、そう言った時に攻撃をされると、まともに受けてしまう。


「グギャッ!!」


 ――ッ!!


 魔物が一匹だけとは限らない。現れたのは別の個体のゴブリン。此方は木の棍棒を持って殴り掛かってきたので、躱す事は出来ず辛うじて右腕で防ぐぐらいだ。


 手首の辺りに強打を受ける。衝撃を受けた所からまるで電気が流れた様な痛みが全身に伝わる。


「ぐっ」


 悲痛な表情を浮かべ、再度ゴブリンの方を見ようとすると、立っていた場所が悪く攻撃を受けた事により姿勢を崩し傾斜面に転がる様に落下。傾斜面の途中にあった木に胸部を思いっきり打ち付けてしまう。身体の中にあった空気が一気に体外へ吐き出される。


 痛みと息苦しさから意識を失いそうになるが、気絶する前に傾斜面が終わり、身体も止まる。


「―――ゲホゲホッ。―――痛ッ!!」


 胸に鈍痛と右手首に激痛が走る。


「たいりょーふ?」


 リリアーヌが此方によちよちと歩いてやって来ようとする。私はリリアーヌに声を上げて来させないようにした。まだ、ゴブリンが一匹生き残っているからだ。


「ギギギッ」


 予想通りゴブリンは私が転げ落ちた傾斜を難なく降りてくる。ジワジワと不敵の笑みを浮かべながら此方にやって来た。


 シルヴィアは、未だ動かず打ち所が悪かったのか?リリアーヌは先程の事で大泣きをしている。


 地面にへたり込んだまま後ずさりをして逃げるが、ゴブリンの歩みの方が早い。


「くッ」


 目の前までやってくると、再び棍棒を振り上げて攻撃をして来ようとする。


 ザシュッ。


 棍棒で攻撃されたにしては可笑しな音と共に左の太腿が非常に熱い。熱いと同時に痛い。振り上げた時に眼を瞑ってしまった事で何が起こったのか事態が分からず、目を開けると襲って来ようとしていたゴブリンは、胸を何かに貫かれて身体をピクピクさせながら大量の血を口から吐いていた。


 そして、その何かはゴブリンの身体を貫くとセドリックの左の太腿に突き刺さっていたのだ。


「え?」


 紫色の外殻に黒の波模様の体長はボアぐらいの大きさ。そして身体より少し小さい位の大きい(ハサミ)と体長の倍近くある刺々しい尾。帝都周辺で稀に目撃される猛毒の蠍の魔物、デスストーカー。


 基本的には、尾の一撃で相手を仕留めるのだが、場合によっては遅延性の猛毒を獲物の体内に送り込み、ジワジワと動けなくなったところを追い詰めて捕食する。


 セドリックはこの魔物について詳しくはないが、太腿部に突き刺さる尾を見て相当ヤバイ状況だと理解する。


 デスストーカーは、尾を引き抜きゴブリンの身体を鋏で掴み捕食し始めた。最初からゴブリンが狙いだったのだ。尾の攻撃の射線上に偶々セドリックがいただけに過ぎない。しかし、ゴブリンを捕食し終えたらどうなるか・・・・獲物が此方に変わるだけに過ぎない。


 捕食に集中しているデスストーカーに悟られない様、激痛で顔を顰めながら、シルヴィアとリリアーヌの元に向かう。


「リリアーヌ?泣いては駄目だよ?おいで」


 リリアーヌを宥めてシルヴィアを確認する。呼吸はしているし、全身ボロボロだが見える範囲で深手を負った様子もない。兎に角、この場を急いで逃げなければいけない。


 セドリックは、覚悟を決め叫びそうな声を必死で堪え、シルヴィアとリリアーヌを抱えてその場を離れた。


 それからどれぐらい経過したのか、視界が徐々に歪み始め地面に倒れそうになった時、森の出口と思しき光が見えた。


「も、う・・・すこし・・・」


 最後の力を振り絞り、光の方へ向かう。そして、ついに・・・・。


「で、でられた・・・」


 森からの脱出を果たせたのだ。


「リ、リアーヌよく、頑張ったね・・・・」


 蠍の魔物から逃げてから、リリアーヌは一度も泣かずに堪えていたのだ。もし泣いていたらその声を聞きつけて他の魔物を呼び寄せていた可能性があった。無事・・・とは言いにくいが、如何にか出られた事で安心してしまった。だが、それが良くなかった。緊張の糸が切れ疲労と毒と痛みで意識を失いそうになる。


 突然、倒れたセドリック。シルヴィアとリリアーヌも抱えている状態なので、二人も一緒に倒れた。リリアーヌに至っては抱っこしている様な状態で、セドリックが倒れた事で地面に投げ出される形となる。


(ああ、リリアーヌ。ごめん、ごめんな)


 辛うじて意識が残っていたセドリックは、地面に投げ出され身体を打ち付けたリリアーヌに手を差し伸べようとする。


 リリアーヌも我慢の限界を超えており、身体を打ち付けた事で涙が出始め、大泣きしてしまった。


「な、なにがあった!?おい、大丈夫か?」


 セドリックたちの近くを帝国の騎士が巡回しており、リリアーヌの泣き声を聞きつけ助けに来てくれたのだ。


「・・・・帝国の、兵士の方・・・です、か?」


「そうだッ!!おいっ誰か水薬(ポーション)をっ!!」


 騎士は直ぐに他の騎士へ薬を手配した。その騎士の手を取り、伝えなければいけない事を口にする。


「自分は、ガバリアマルス王国の・・・第二王子で、す。・・・ハァハァ。すみま、せんが皇帝へ、陛下に謁見を――――」


「おい。しゃべるなッ!!今は身体を休めるんだッ!!」


「お、おねがい・・・します」


 そこからの記憶は私にはない。それを最後に、意識を失ってしまったからだ。


 その後、セドリックたちを助けた騎士たちは、彼の言葉を信じるかどうか悩むが、仮に事実だった場合は大変な事になると考え、急ぎ帝城に向かった。それからレオンハルトたちが懸命に治療したのだ。











 帝城の会議室。ジギスバルト陛下や大臣たちが重要な話を此処三日行っていた。


「あの治療は異常だっ!!此方側にも提供を求める義務があるはずですっ」


「馬鹿を言えっ!!彼らはコンラーディン王太子殿下の・・・王国の者だぞ。おいそれと教えてくれるはずがなかろうっ!!」


 そう。この会議で議論になっている事は三つ。まずは此度の会議のきっかけとなっている滅んだはずのガバリアマルス王国の王族の生き残りについて。次いでその王族を助けるために用いたアルドレール王国の冒険者が見せた帝国の数段上を行く治療の技術。そして、最後はレオンハルトたちの報酬についてだ。


 無論、帝都に来る時に襲われたと言う魔族の撃退もまだ渡せていない。そんな中でのこの惨事だ。


 単なる金銭だけでは済まぬ問題。


「冒険者なら、王国民だろうと帝国民だろうと変わりはしない。彼らは拠点を・・・国を転々と出来るのだから」


「それこそ問題発言だ。確かに彼らは冒険者として我が国に来てはいるが、レオンハルト殿は冒険者である前に王国の貴族だぞっ!!」


「そうだな、それにお連れの者たちも貴族令嬢たちだ。技術提供を強制させると国際問題になるぞ?」


 初日に、セドリック王子たちの件は話し終えていた。結論から言って彼らの話を聞いていないから判断できないと言う事になるが、そんな結論に至るなら話し合う必要はないと言いたくなる。でも、ある程度の道筋と言うものは話し合っておく必要はあったのだ。


 レオンハルトたちの報告によれば、今日、明日にでも目覚めるだろうとの事。セドリック王子の毒等は完全に完治しているし、シルヴィア王女の臓器の損傷と言ったか?・・・そちらも問題はないと言っていた。リリアーヌと言う名前の王女・・・と思しき子供はと言うと治療の後、数刻してから目を覚ましている。名前を教えてもらい。事情は流石に分からないようだったので、(レオンハルト)らに預ける事にした。


 聞けば、レオンハルトとシャルロット、アニータ、ユリアーヌ、クルト、ヨハンは元孤児院で育ったと言うし、リーゼロッテは、その孤児院の院長の娘。子供の扱いには長けている。こう考えると孤児院出身が半分近くいる事に驚いた。


 残りの半分の殆どは上級貴族の令嬢。どうすればそんな面々が一箇所に集まるのだろうか?


 どうすればそんな事になるのだろうか不思議でならないが・・・。


 で、今は二つ目の件について話し合いをしていた。レオンハルトたちが使っていた点滴とか言う物や適切な診断と処置を行う膨大な知識について。


 アレを個人で所有しているとなると各国で引っ張りだこになる。


「あれは、コンラーディン王太子から秘匿技術と言われている。よって、彼らに直接接触して聞き出す事は禁ずる。良いな?」


 ジギスバルト陛下の言葉で、大臣たちはこれ以上何も言わなくなった。昨日も同じことを議論したが、会議終了時にコンラーディン王太子と会談し技術提供を申し出てみたが、駄目だった。


 まあ、自国の者だったら儂も同じことをするので、これ以上追求する事も出来ないし・・・。


「では、最後に彼らの・・・・・・」


 会議はそのまま継続され、新しい議題について話し合うのであった。










「――――ぅん・・・・こ、こは?」


 とても懐かしく感じるこの全身を包まれた感覚。ただ、天井はこれまで目覚めてきた中でも上位に入る綺麗な天井をしていた。・・・・綺麗な天井と言う表現は可笑しいかもしれないが、最近は小屋や安い宿屋、酷い時は洞窟や木の幹の窪みでの目覚めだったので、真っ白な天井はとても綺麗で懐かしかった。


「目が覚めましたか?気分は如何です?」


 知らない男性の声で、ぼんやりしていた脳が一気に覚醒した。


「此処は何処ですか?―――痛っ」


 腕に何かが刺さっていた様で、動かしたら地味に痛みがあった。あれ?そう言えば手首の痛みが無い?と不思議な顔をしていると。


「腕は余り動かさないでください。これは点滴と言う治療道具です。殿下は毒に犯されて怪我も負っていたので治療させていただきました」


 私よりも年下らしき少年に説明されて腕を見ると何か針が刺さっていて、太く中が空洞の糸の様な物が付いていた。それを辿ると水薬(ポーション)みたいな液体の入った容器があり、それを身体に流し込んでいるみたいだ。


 これが、点滴と言う奴なのだろうか?


「君は誰だ?」


「申し遅れました。私、アルデレール王国のレオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロン準男爵です」


 ア、アルデレール王国ッ!?


 何時の間に目的地であるはずのアルデレール王国に来ていたのだろうか。記憶が正しければアバルトリア帝国の帝都近くに来ていたはずだ。アルデレール王国までは、かなり距離がある。私は、それだけ長い間眠りについていたのか?


「では、此処は王都アルデレートなのか?」


 もしそうなら、直ぐにでも国王陛下に謁見の許可をもらい。我が国ガバリアマルス王国がどうなったのか説明しなければならない。この国にはまだ、勇者が生き残っているのだから、魔族が攻めてきた時に勇者の力が絶対必要になる。寝ている間にシルヴィアが目的地を伝えてくれたのだろう。・・・・そう言えば、シルヴィアとリリアーヌはどうなったんだろう。


「此処はアルデレール王国ではありません。アバルトリア帝国の帝都アバルトロースです。私は訳があってアバルトロースに訪問していたのですが、殿下たちが重体だったため治療をさせて頂きました」


 ・・・・このアヴァロン卿と言う少年。この若さで準男爵位を持っている事に驚いたが、用があって他国に訪問するほどの人物なのかと更に驚く。だが、彼の言葉の中で気になる言葉があった。「殿下たちが重体だった」それは、妹シルヴィアかリリアーヌのどちらか若しくは両方ともが重体だったと言っている様な物。


「シルヴィたちは・・・妹たちは無事なのかッ!?」


 意識を失う前にシルヴィアは傾斜から滑り落ちて行こうずっと気を失っていた。リリアーヌは、最後に泣いていたのを見たので、気を失う時に倒れた拍子で怪我をさせてしまった恐れもある。その事を思い出すと急に身体中が冷え切ったようになった。


「シルヴィア殿下は、まだ目覚めておりませんが私の仲間が看病しております。リリアーヌ殿下は、運び込まれた日に目を覚まして、元気にされておりますよ」


 落ち着いた表情で答える彼の言葉で、少しだけ私も安心させられた。


「アヴァロン卿と言ったか?御面倒をお掛けして申し訳なかった。後で妹たちに会わせてもらいたいのだが、それよりも先に皇帝陛下に謁見させてもらう事は可能だろうか?」


 治療させてもらったと言う事は、優れた治癒士の可能性もある。つまりは、私の身体の状態も把握しているのだろう。治癒士の助言は、聞いておく必要がある。私の身体は動いて平気なのかと?


「陛下に謁見ですか?確認してみないと分かりませんが・・・」


 如何やら、私自身の身体の事ではなく、皇帝陛下の予定が分からず謁見できるか分からないと言った感じで困っていた。


「私の身体は、動いても大丈夫なのか?」


「え?・・・・あぁ、そちらですか。それは大丈夫です。一通り治療して完治していますので」


 そう言って、腕に刺さっていた針を抜いてくれる。抜く際に少し痛みがあったのと血が出てきたため、綺麗な布で抑えて止血してくれた。


「そうですか。お礼を言っていませんでしたね。命を救っていただき、ありがとうございます。それで、早速皇帝陛下にお会いしたいのですが・・・」


「分かりました。外に待機している騎士に確認してみますので、少しお待ちください」


 (レオンハルト)は、そのまま点滴と呼ばれる治療用の道具を片付け、外にいる騎士を呼び、私が目を覚ました事を陛下に伝えてほしいと話していた。緊急でお会いしたいと言う事もきちんと伝えてくれたようで、騎士は駆け足でその場を立ち去る。


「これで、大丈夫だと思います。・・・・と、その前に謁見できるよう着替えをしなければ」


 今度は、使用人を呼んで服の着替えを手伝う様に申し付けていた。


 使用人は彼のお供と言うわけではなく。この帝城の使用人の様だ。用意された服は帝城にある貴族たち用に用意された予備の服の中から選ばれ、身に付ける。


 着替えが終わる頃に、先程の騎士が戻って来て、謁見の間に通される事になった。皇帝陛下への説明次第では今後の自分たちの立場が大きく変化するため、数日動かしていなかったため身体が少し重い感じを味わいつつ、アヴァロン卿と共に謁見の間に向かうのであった。


いつも読んで頂き、ありがとうございます。

梅雨に入って雨がよく降るため、湿度が高くジメジメしておりますが、皆様も身体には気を付けてください。特にこれから脱水症や熱中症のシーズンです。

十分水分を取ってお過ごしください。

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