086 帝都アバルトロース
先日から土日の連続投稿を頑張っております。
恐らくずっとは無理なので、時を見て周一投稿に戻りますが、それまでは週二投稿を楽しんで
読んで頂ければと思います。
アバルトリア帝国の首都、帝都アバルトロース。ローア大陸にある国々の中でも大国と呼ばれるアバルトリア帝国、隣国アルデレート王国も大国の一つではあるが、このアバルトリア帝国は領土の規模がアルデレート王国の約二倍近くあるのだ。ただ領土は倍近いのだが、未開発地や魔物の森や山と言った場所も多く開発に難航していると言う部分もある。
ただ、大国の首都と言う事だけあって、帝都アバルトロースの規模はかなりの物であった。
魔物や獣だけでなく、同種族からの攻撃も考えられた造りの防壁は、圧巻としか言えないものがある。
帝城までの防壁で最初にあたる第一の防壁、外部から帝都に入ろうとした時に必ず通る場所で、王都同様に厳重な警戒態勢が敷かれている。野党や魔物はこの防壁で食い止めるし、帝都に入るための入り口では、厳しいチェックがされる。
第二の防壁は、第一の防壁からかなり離れた場所にある。この間にあるのは主に畜産や作物などを栽培する場所で、冒険者たちの一時的な宿なども此処に作られている。駐屯兵用の宿舎や訓練場もあり、かなり広大な場所でもある。見張り塔も一定間隔にあるため、有事の際には指揮系もそこから発信されるのだろう。また、この第一の防壁と第二の防壁の間が広いのは、第一の防壁がもし落とされた場合の次の防衛線と言う事で保険として考えられた造りとなっていた。
それ以外にも侵入された時用の対策として、第一の防壁から帝都内部は帝城を中心に円形に防壁を作っているが、防壁と防壁の間にも縦上の防壁を設けている。要は防壁内部を細かく区分けしているのだ。
こうする事で、仮に第一の防壁が壊され中に進入されても一部のみの侵入となり押し返す事が可能になる。また、両サイドにも縦状の防壁があるため囲い込む形で侵入者を攻撃できるのだ。防壁上部を足場に中へ侵入されない様に高さもバラバラにしているので、上からの侵入も容易ではない。
デメリットとしては、往来に手間がかかるのと維持費がかかると言う事だが、その維持費を惜しみなく投資する事で、帝都と言う巨大な要塞が出来上がったのだ。
帝都の人口はアルデレール王国の王都アルデレートより僅かに多い約五百五十万人が暮らしている。
レオンハルトたちは第一の防壁の門で審査のため並ぶが、一般の列と貴族専用の列があり、騎士たちを筆頭に其方へ並ぶ。
此処で、素性を明らかにし、例えば今回の様な他国の王侯貴族や上級貴族など重要人物が訪れた場合、門兵がすぐに早馬で知らせに走るのだ。
今回は現皇帝の甥の婚約パーティーと言う事で、普段以上に帝都は厳重な警戒がなされていた。婚約パーティーの開催日がまだ七日程先になるが、門兵は各国へ招待状を送ったあたりから忙しなく働いている。
「これはッ!!ようこそアバルトリア帝国、帝都アバルトロースへ」
門兵の一人が丁寧な口調で挨拶を交わす。その後招待状の確認と身分証を拝見し問題ないと分かると直ぐに他の門兵に早馬を走らせた。
「どうぞ、お進みください」
コンラーディン王太子殿下の身分及び騎士たちの素性も手早く確認し、同行していた護衛である冒険者と守護八剣のブリジットも簡単に確認されて終わった。
「ブリジット様もご苦労様です」
流石に彼女が何故この面々と同行しているのか直ぐに察しが付いた様で、手の空いている門兵は、コンラーディン王太子殿下の馬車やブリジットへ敬礼をしていた。
それから四半刻程、馬車で進むと第二の防壁にたどり着く。大した速度は出していなかったが、それでも少し遠いのではと感じさせられる。
ブリジット曰く、こういう場合はゆっくり行った方が良いそうだ。
早馬を走らせて連絡をしに行ってはいるが、向こうも受け入れる準備と言うものがある。その時間をこう言う感じにゆっくり進んで稼ぐ必要があるのだとか。
その事は、王太子殿下や騎士たちも重々承知している様なので何も言わなかったが、それを知らない護衛の冒険者たちの一部は少しだけ我慢をしている感じがした。
まあ、やっと休める環境にあるのにそれが中々行えないのだ。ご褒美をお預けされているのと同じなのだろう。ここまで来るのにかなり労力を使ったから、暫くは動きたくないと言うのもわからなくはない。
長期間の護衛任務と言うのは大体こんな感じだ。それに今回は報酬が良いから、文句をつけるわけにはいかないし・・・。
第二の防壁の入口にたどり着くと、此処でも同じように招待状を見せていた。
「お待ちしておりました。この度帝城までご同行いたします。騎士アロイジウスと申します。早速ではありますが、此方に」
そう言って王太子殿下と騎士たちを誘導しようとする。遠回しに言えば護衛である冒険者はこの場で解散しろと言う事。
「失礼だが、彼らも同行しても?」
王国の騎士代表としてジークフリートが、帝国騎士アロイジウスに待ったをかけた。別に彼らに対して差別意識があるわけではなく。案内される場所が、帝城つまりその前に通る防壁の向こうには貴族地区があり、その先の防壁をも通り過ぎてから場内入りすると言うわけだ。この辺りは王都と変わらない。
つまり、冒険者の多くは平民であり、貴族地区への出入りは余程の事が無い限り立ち入ることは出来ない。これは、他国の重要人物の護衛であろうと変わらない。ブリジットは、自国民且つ守護八剣の一人で、雇い主が辺境伯なので場内へ入る事は可能なのだ。
「何故ですか?理由を聞いても?」
「それには私からお答えしましょう」
ジークフリートとアロイジウスの会話に入るブリジット。突然彼女が其方側に就いた事でアロイジウスは一瞬表情を変化させたが、直ぐに素の表情に戻る。
ブリジットは簡単に此処に来る際にあった出来事を話した。
「そ、それは本当ですッ!!」
アロイジウスの大きな声に周囲にいた人たちが此方に意識を向けた。
「お、おほん。申し訳ありません。少々お見苦しい所をお見せしました。そう言う事でしたら、皆さんも同行をお願いします・・・・ただ、人数が多くなりますので、冒険者の方々はチームで二名までの同行でお願いします」
「そうだ。そちらのレオンハルト殿は我が国の貴族当主で、お連れの女性は婚約者で上級貴族の御令嬢です。彼の人数は必要最低限でもよろしいか?」
ジークフリートの意見が通り、レオンハルト率いる円卓の騎士からは、リーダーで貴族当主のレオンハルト。サブリーダーで婚約者にしてレオンハルトと同じ転生者のシャルロット。割と最近、上級貴族エーデルシュタイン伯爵家の孫娘だと発覚したリーゼロッテ。フォルマー公爵家の当主にして宰相の愛娘であるティアナ。ラインフェルト侯爵家の御令嬢にして勇者の血筋を濃く受け継いでいるリリー。シュヴァイガート伯爵家の御令嬢にしてアルデレール王国の国教、その権力者であるエクスナー枢機卿の孫娘のエルフィーの合計六名。
月の雫からは、リーダーのエミーリエに剣士マーリオンの二人が同行し、森人の集いは、リーダーでエルフ族のアーヴィンと同じくエルフ族のジョナスの二人。赤い一撃は、リーダーのノーマンと獅子人族のガレスの二人が同行する。
「ヨハン。後は任せる。出来れば良さそうな所と情報を頼む」
「マルク。皆の事頼むぞ」
それぞれが仲間たちに指示を出して、用意された馬車に乗り込んだ。行くメンバーを選出している時にアロイジウスたちが急遽用意してくれた馬車で六人乗りが二台だけ。うち一台はレオンハルトたちの面々が使用した。
馬車に乗り込んで暫く進む。外の景色を見て分かったが、防壁内部はかなり複雑な作りをしているようだった。家も王都の家とは異なり、四角型の形が良く目立った。
如何やら土壁の様な感じで作られているが、土壁にしては強度がありそうで、コンクリートと土壁の間ぐらいの代物の様だ。中には煉瓦作りの壁や石垣みたいな壁もあった。木造主体の王国の作りとはかなり異なる感じがする。
そんな事に驚くレオンハルトたちだが、馬車の外では・・・。
「あの少年は何か特別な方なのですか?」
アロイジウスは、ジークフリートに不思議な顔で訪ねた。只の若い冒険者かと思えば貴族の・・・それも当主として籍を置く者で、その婚約者が上級貴族の中でもかなりの権限を有した者の御令嬢たちとくれば、疑問に感じない方がおかしい。
それに態々(わざわざ)、降家までして嫁ぐのだから何かあると思うのは当然の事。
「彼は、あの年齢で上級魔族を撃退するだけの力の持ち主だ。我が陛下もそれをお認めになられているし、今の地位も仮でしかないと私は考えています」
魔族の強さは実力がある者は皆同じ認識をしている。中には自分の力を過信しすぎている者や相手の力量を見極められない者も一部でいるが、こう言った者はそもそも実力があると言えないのが常識だ。
そして、魔族は下級魔族なら実力者が数名で相手にすればそこそこの被害が出るにしても勝てなくはない。だが、上級魔族となればそれこそ冒険者でいう所のAランク相当の実力者が複数人で当たる様なものだ。
「恐らく彼は守護八剣の第一席アルフレッド殿と同格かそれ以上ですよ。私よりはるかに強い実力者の様ですし・・・」
ブリジットの言葉に耳を疑う。未成年の子供が既に帝国内最強の守護八剣、その第一席と同格の実力だと第五席の地位にいる彼女の評価に。
「閣下と同格・・・ですとッ!?それは、にわかには信じられません」
閣下と呼ばれる人物。帝国騎士の総責任者にして勇者と同格の実力の持ち主。守護八剣の第一席、煌光のアルフレッドである。剣だけでなく槍や弓など幅広い武器を使いこなし、指揮能力の高さや騎士としての誇りも兼ね備えた様な人物でもある。
その閣下と同格と言われている様な物で、それは即ち・・・・勇者並みの実力者と言う事になるのだ。
「煌光殿かー。まあ、うちの騎士団長と同格だから、そうかもしれないな」
ジークフリートは更にブリジットの援護を行った。
アバルトリア帝国のアルフレッドとアルデレール王国のアレクシスの二人の実力はほぼ同じ、戦闘の状況で多少の差は出たりするが、それでも総合的に見ればあまり変わらない。
馬車の外での会話は、レオンハルトの実力などについて盛り上がっていた。一方馬車の中では・・・。
「レオ様、良かったら此方をどうぞ」
「あっ!!リリー狡いですよ。レオン様、私の方も良かったら召し上がってください」
リリーとティアナが両サイドから果物を一口サイズに切った物を渡してくる。リリーは梨の様な果物で、ティアナはパイナップルの様な果物だ。どちらもこの国に来てから購入した果物で時期的にも丁度良いそうだ。同じような果物でも前世とは時期が異なるので、未だになれない点の一つだ。
「両方、頂くから・・・」
二人が差し出す果物を食べ、口の中で味を確かめる。まあ、丁度良い時期と言う事もあってどちらもとても美味しい。梨の様な果物は、見た目は梨だが、味は林檎に近い感じがする。パイナップルは糖度が高いのか、予想していたより甘みが強かった。
お互いの果物を食べ終えると、再び一口サイズの梨モドキとパイナップルモドキを食べさせようとする。
帝国へ来る時は、いつもと変わらないのに此処に来て、この態度。二人がこんな風になってしまったのは、魔族との戦闘の後からだ。あの戦闘後、二人は当初出会っていた時の彼を再度意識させられてしまった。即ち惚れ直したのだ。
そして原因がもう一つ、彼がこの国に勧誘されない様にする為でもあった。
「うん。美味しいよ」
流石に女性の好意を無碍には出来ず、梨モドキとパイナップルモドキを一人で平らげてしまった。とは言ってもサイズが前世の物に比べて二回り以上小さいので一人で食べきるのは造作もない。
両サイドに座るティアナとリリーは満足そうな表情を浮かべ、正面に座っていたシャルロットが少し苦笑していた。シャルロットの両サイドに座るリーゼロッテとエルフィーは、外を眺めて目を輝かせていた。
ああ、慣れない点と言えば、今の環境もそうだろうなーと内心考えながら、帝城へ到着するのを待つ事にした。
同じ頃、もう一つの馬車ではレオンハルトたちが乗っている甘々雰囲気とは異なり、少しギスギスした様な感じが漂っていた。
同じチームメンバーで固まっているのであれば、もう少し和んでいたのだろうがこの場に居るのはそれぞれのチームのリーダーとその補佐が出来る人だ。必然的に会話が弾むとは考えられない。それもそのはずだろう、皆あの時の戦闘で足を引っ張ってしまった自覚とこれから訪れる場所で後悔と不安でいっぱいなのだ。
「やっぱり、皇帝陛下に会うのだろうか?」
ノーマンが、こっそり呟いた言葉は、この場に居た誰もが聞こえ更に緊張する。Bランクチームの冒険者と言え、早々国のトップに等面識する機会などない。今回の依頼ですらレオンハルトのチーム以外はかなりのプレッシャーを感じていた。
いずれ自国のトップに君臨する王太子殿下と国の進むべき道を指し示す現宰相から頼まれれば嫌とは言えない。
「殿下が対応してくれるだろうが・・・あまり無礼な行いは出来ないな。俺、礼儀作法とか詳しくないんだが・・・」
「それを言うなら俺は、全くできない」
「私もあまり出来ないかな?」
冒険者一筋で生きてきた者にとっては、礼儀作法何て依頼人と話をする程度の礼儀作法ぐらいだ。貴族が直接依頼してくる時もあるがそれに対応できる程度の教養しか身に付けていない。貴族として生まれたわけでもないので、教養自体も見様見真似だったりする。そして、全員が同じ結論に至った。
彼に全てを任せようっ!!
年下の未成年に全てを任せようと思うのはどうかと思ったが、これはそもそも彼が追加人員を求めたのが発端なのだからと言う事にした。それに、彼はあの年で貴族当主としての地位に就いているし、年離れしている様にも感じられる。
(時々、俺たちより年上に感じるんだよなー)
ノーマンの予想は、間違っていないが・・・・レオンハルトの精神年齢が公開される事は無いので、ノーマンの予想が正しいと証明される事は無かった。。
最後の防壁・・・いや、城壁に当たる門を潜り帝城の大きな入口の扉の前で馬車が停車した。
「皆様、ご到着しました。どうぞこちらです」
騎士アロイジウスの言葉に従い、コンラーディン王太子殿下や三番隊隊長ジークフリート及び同行した騎士団、レオンハルト一行、月の雫たち各冒険者チームのリーダーたちが馬車から降り、案内されるがまま帝城内に入っていった。
「此方で、お待ちください。護衛の冒険者は此方へ」
王太子殿下や騎士たちとは別室に案内されて、其方で待機する事になる。帝城の中にある応接室の中でも割と小さい部屋に案内されたようだが、それでも二十畳ぐらいの広さはあった。
コンラーディン王太子殿下たちの部屋は、ちらっと見ただけだがかなりの広さがあり、その中に入ったのは王太子殿下とジークフリート、副隊長に十名ほどの騎士。八人程は王太子の部屋の前で待機し、残りは帝城の外で待機している。
五十人近くの騎士が全員帝城内に入る事はあり得ない上、王太子殿下の乗ってきた馬車を守る役割もある。敵国ではないにしても他国であることに変わりはなく、殿下の乗る馬車以外に騎士団の馬車には物資も乗せているので、要らないちょっかいはかけられたくないのだ。
そこで、暫く待っていると、ドアの向こうから数人の足音が聞こえてきた。
コンコン。
ドアをノックして数秒後に中に待機していた帝城に勤める使用人の一人が此方を見てきたので、相槌をしてドアを開けさせた。
「失礼します。謁見の用意が出来ました。皆様、ご同行願います」
別の騎士が数名やって来てきちんと礼を尽くし、案内されるがまま廊下を進む。
何度か曲がり角を曲がり、一際立派な扉の前に来る。騎士は、そのまま扉を警護する騎士に話をして、ノックし中へ誘導された。
「・・・・・・」
アルデレール王国の王城とは少し雰囲気が違うが、王城と同じぐらいの謁見の間の広さはあった。両サイドには国の重鎮と思われる人物が数名と最も上座の位置に皇帝陛下が此方を品定めでもしているかのような鋭い眼光で睨みつけてきた。
コンラーディン王太子殿下とジークフリートや他の騎士も数名既に謁見の間に着いていた様で此方を見るや否や・・・。
「陛下、彼らが魔族の撃退に一役買ってくれた者たちです」
俺たちが来るより前に既に謁見の間で道中の出来事を話している様子が会話から察する事が出来た。
「そうか。お主らが、其方たち面を上げよ」
謁見の間に到着後すぐに少し進んだところで一斉に頭を下げていた。レオンハルトたちは皇帝陛下の言葉通り、顔を上げて漸くまともにそこに居る人たちの顔を確認する。
ジギスバルト・ルードルフ・フォン・アバルトリア皇帝陛下・・・この帝国のトップに居る人物で、アルデレール王国のアウグスト陛下の様な優しい感じは一切感じられない。どちらかと言うと巌の様な人だった。短い赤髪のオールバックが、まるで炎を連想させられる。着ている服も朱色を基本に金色や黒色などの刺繍が施されていた。
後から聞いた話だが、現皇帝は元々今の立場に来る前は前線で大暴れする様な将軍職に就いていて、数多の敵に恐れられていた。また、守護八剣の第三席としても活躍していたそうだが、現在は皇帝陛下の地位を受け継いだ際に守護八剣の席も次代に譲ったのだとか。
しかも、その席に就いたのが現皇帝の息子で、継承権第一位の皇太子殿下だそうだ。謁見の間には来ておらず、現在は帝国北部で防衛の任に就いているらしい。
流石に従兄弟の婚約パーティーには出席するだろうからニ、三日後には会えるだろう。
ジギスバルト陛下の横にもう一つ席が空いていたが、此方は皇妃様が座る席で、今回は不在にしている。
後は主だった者たちと言えば、帝国の宰相や各大臣が立っていて、その中でも一際存在感を出していたのが、大臣たちより外側、騎士列の最前列にいた人物だ。
人間観察をしていると、ジギスバルト陛下から声がかかる。
「まずは、礼を言う。我が国を魔族の手から救ってくれた事、感謝する。その年齢で魔族を退ける程の力を有しているとは俄に信じられなかったが、其方たちを見て納得した」
やはり、コンラーディン王太子殿下たちが事前に説明していたようで、すんなり話は進む。殿下や騎士団の隊長の他にもブリジットも同伴していたので、発言に偽りが無いかどうか確かめるために俺たちが呼ばれた感じだ。
「後日、其方たちに褒美を渡す。それまではゆっくり帝都を見て回ると良い」
レオンハルトたちは、発言を殆どしないまま。謁見の間での対話は終了した。エミーリエにマーリオン、アーヴィン、ジョナスは、その場の空気に圧倒されて、発言できなかったし、ノーマンとガレスに至っては、緊張しすぎて身体が強張っていた。二人とも歩き方が機械の様になっていて少し面白かったが・・・・。本人たちからしたら、寿命が縮む思いだったのだろう。
王太子殿下一行は、そのまま謁見の間から出ると先程案内してきた騎士が、先の応接室に誘導しようとする。帰る前に少し緊張をほぐすための様だ。
「凄い威圧感だったでしょ?」
王太子殿下がレオンハルトに面白そうに話しかけてきたので、思った事をそのまま口にした。
「そうですね。歴戦の将軍って感じはしました。かなり実力がある人なのでは?」
「うちのジークフリートよりも強いと思いますよ。現役を退いて尚その強さ。きっとかなりの才能に恵まれたのでしょうね。父上とは大違いです」
アウグスト陛下は武力にかけては、余り優れていないらしい。だが、それを除いてもアウグスト陛下は臣下や民から慕われる存在なのは、国を指揮する能力が長けているからであろう。
ふと、先程の謁見時に凄まじい雰囲気を纏った人物について尋ねてみる。
「ああ、彼は・・・・帝国騎士団の団長だよ」
「私に何か用でしょうか?」
後方から声をかけられ振り返ると今しがた彼については話をしていた人物が、此方に向かって歩いて来ていた。
「申し訳ありませんが、コンラーディン様にレオンハルト様。陛下が別室にてお待ちです。一緒に同行してもらえますか?」
終わったと思っていた会談が再び訪れた瞬間である。
いつも読んで頂きありがとうございます。
明日も短いですが、投稿を予定しております。是非読んで下さい。