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080 守護八剣のブリジット

おはようございます。

先週の日曜日の投稿、執筆が間に合わなくて急遽お休みさせてもらいました。

申し訳ございません。

では、早速どうぞっ!!



 自由都市アルメリアに到着した翌日。俺たちは、補給のための買い出しと装備の手入れのために二手に分かれた。此処でもう一泊してから明日出発すると言う事なので、他のチームも同じように買い出しに出かけている。


 とは言え、実際俺たちは補給どころか武器の手入れもそれほど心配していない。


 食べ物や飲み物は魔法の袋の中にたくさん詰め込んでいて、数ヶ月は困らないだろう。途中から肉ばかりになりそうではあるが・・・。手入れの方は、夜に『転移(テレポート)』で交易都市イリードのトルベンの所へ行って手入れをお願いしていたのだ。それに簡単な手入れは布や研ぎ石があればできるし、そもそも主力の武器に関してはちょっとやそっとでは刃こぼれを起こさない。


 魔物の血のりを拭う位で済むのだ。


 そして、コンラーディン王太子殿下たちはと言うと、アルメリアの領主との会談を行っていた。自国の時もそうだったが、こうして都市部に着たらそこを収める領主に会う必要があり、それは他国へ来たとして同じ事。


 稀にお忍びで来る貴族の子息女や貴族夫人などが居るが、それでも手紙などで一報入れておくことが多い。そうしなければ問題(トラブル)に巻き込まれた時後で大変な事になるからである。


「お忙しい中ご足労頂き、誠にありがとうございます」


 アルメリアの領主。クレーメンス・ゲレオン・フォン・アルメリア辺境伯。アバルトリア帝国の東西南北の南部一帯を管理する大貴族の一人。辺境伯という爵位ではあるが、実質有事の際は公爵と同等の権限を持つ事もある程の爵位だ。ただ文字通り、辺境と言う部分から分かる様に国境の監視も含めているのでかなり大変な地位としても知られていたりする。


「いえ、此方こそ急な訪問でご迷惑おかけします」


 他国の貴族でありながらも相手にこれだけの気を使わせるコンラーディン王太子殿下の才能か、それともその事を一早く察したアルメリア辺境伯の手腕か。いずれにしても両者の会話は、静かに幕を開けた。


「今回の訪問はやはり、帝都まで行かれるのですか?」


 この時期に他国の重鎮・・・それも王族クラスの人物が尋ねてくる意味を理解しているアルメリア辺境伯は、敢えてその事を尋ねた。


 コンラーディン王太子殿下もアルメリア辺境伯の意図を理解し、返答する。


「ええ。マリウス様がご婚約されたとの事で、そのお祝いに」


 マリウスと言うのが、現皇帝の甥にあたる人物で、マリウス・ドウェイン・フォン・ハリントン。ハリントン公爵家の次期当主だ。彼の父親が現皇帝の弟で、ハリントン公爵家に婿養子で入ったのだ。


「存じておりますよ。私も一応招待はされたのですが、役目を疎かにできないので代理人を立てておりますが・・・」


 アルメリア辺境伯の様に公務で尋ねられない時は、代役を立てる事もありえる。コンラーディンもレーア王女殿下の件がなければ、代役を立てていただろう。ただ、そうなればレオンハルトという人物との接手は失われ、会う事が出来なかった可能性も考えられたため、結果的に良かったとコンラーディンは思っていた。


 それから、話をして行くとアルメリア辺境伯の代理人は既に出発しているとの事だったが、我々のために案内人を一人付けてくれるとの事だった。


「流石にそこまで甘えるわけには・・・」


 要らぬところで恩を作りたくはなかったし、その為に態々自国の冒険者も雇っている。


 必死に拒否しようとするも、アルメリア辺境伯はそこに追い打ちをかける様に情報を開示した。


「いえ、此方も案内人を付けさせていただくのには訳があります。近頃、帝国内に不穏な動きが見られておりまして、他国の王族の方を巻き込むわけには此方としても行かないのです」


 不穏な動き。これが指し示すのは魔族や他国の間者、反乱分子であろう。盗賊などであれば不穏な動きと言う表現とは使わないからだ。


 魔族の線も考えられるが、他国の間者と言う認識が最も高いと判断し、その疑いを晴らすために彼の申し出を受ける事にした。


「同行させる者を紹介します。おい、彼女を呼んできてくれ」


 使用人に伝えるとものの数分で同行する人物と共に使用人が戻ってきた。長い金髪を後ろで束ねて両サイドの髪の毛を三つ編みにし、後ろに束ねた髪に巻き付けたヘアースタイルに、整った顔立ち、尖った耳を持つ女性。


「彼女はハーフエルフのブリジットです。我が家に仕える専属の冒険者ですが、腕は確かですよ?」


 かなり珍しい種族を雇っているのだと感心する王太子殿下。ハーフエルフは、エルフ族と人族との間に生まれた混血種。両種族が結ばれる事が無いわけではないが、子が生まれにくい傾向にある。生まれる子供は必ず混血種になり、混血種を忌み嫌う国も存在する。なので、ハーフエルフは人前に出てこないか。出てきても身元を隠す傾向がある。実際、彼女の様に見た目では余りエルフと差はなく、何となく雰囲気が異なるぐらいしかわからない。後は、エルフに見慣れた者が所々注意深く観察しないと分からないのだ。


「お初にお目にかかりますコンラーディン王太子殿下。ハーフエルフのブリジットです。帝都までの道中はどうかご安心ください」


 帝国は混血種に対して差別的な考えは薄い方なので、彼女もそれ程酷い扱いを受けて来ていないのだろう。


「ブリジット?・・・・ハーフエルフのブリジットって事は、貴方があの守護八剣のブリジット殿ですか?」


 守護八剣はアバルトリア帝国に在籍する国内最強の剣士たちに付けられた総称。アルデレール王国の騎士団隊長と同等の実力を有しているが、彼らは自国の騎士団に籍を置く者も居れば、彼女の様に誰かに雇われた冒険者も居る。当然自由に活動する冒険者も中には居るが・・・。


 ブリジットの場合、アルメリア辺境伯家に雇われる前からその才覚を出しており、閃影のブリジットと呼ばれる程の逸材。冒険者ランクも(エー)ランクと超一流の人物でもある。得意な剣に独自の技と魔法を得意としている。


「おや?知っているのですか?」


 コンラーディン王太子殿下に尋ねられた三番隊隊長ジークフリートは頷いて答える。


「守護八剣の第五席、閃影のブリジット。魔法と剣技の組み合わせを得意とし、(エー)ランク冒険者として活動している実力者です」


 第五席と言うのは、序列みたいなもので第一席が最も強く、第八席が最も弱いのだ。弱いと言っても八人の中での話の為、全体から見れば上位に君臨する様な連中に変わりはない。


 コンラーディン王太子殿下は、守護八剣については知っているし、第一席と第三席は実際に顔を合わせた事がある。第一席は帝国の騎士団長が、第三席は帝国の第三皇子である。だから顔を合わせる事があったが、それ以外の者たちとは面識は愚か、名前すら知らなかったのだ。


 ジークフリートが知っていたのは、三番隊の隊長と言う地位にいるため他国の情報は調べる必要があり偶然覚えていただけの事。いや、正確に言えば思い出したと言うべきであろう。


「彼女と君ではどちらが強いのかね?」


 アルメリア辺境伯が彼女に話をしている間にこっそり尋ねる。ジークフリートは考える事無く返答した。


「戦闘の状況によりますが、互角だと思われます」


 アルデレール王国の中でも上位にいるジークフリートの実力と同等と言うのは、かなりの逸材だと言っている様な物。実際ジークフリートの言う様に、戦場の状況次第で、彼に軍配が上がるし、彼女の方に上がる事もある。


 お互いに得意とする戦法が違うので当然と言えば当然だ。


 その後も話は続き、コンラーディン王太子殿下が辺境伯家の屋敷を後にしたのはお昼を大分過ぎてからの事になる。











 夕方に、ジークフリートは主だった騎士団員とそれぞれのチームのリーダーを呼び出し、ブリジットが同行する旨を説明した。強い者が加わるのは喜ばしくはある・・・しかし、間者かもしれないと言う事で監視されていると言うのは正直やりにくい。


 本当に間者と思われているかどうかは分からないが、問題は彼女を何処に組み込むかと言う事だ。案内役も兼ねているのであれば一番先頭の馬車に乗るチームに預けるのが良いのだろうが、生憎と明日の先頭を走る馬車は円卓(ナイト・オブ・)騎士(ラウンズ)となっている。


「レオンハルト殿、すまないが君の所で彼女を預かってくれないか?」


 ジークフリートの言葉に耳を疑うが、この言葉を聞いて俺は少しだけ心を弾ませていた。何せ帝国の中でもトップクラスと言われる者の戦いが見られるかもしれないからだ。


 正直、レオンハルトの実力は王国内でもトップクラスにいるため彼女との力の差は互角か自身より劣るレベルではあるのだが、それでも強者との手合わせは、自身に新たな力を身に付けさせてくれる事が大きい。前世の頃は、こんな好戦的な考え方ではなかったが、此方の世界では幾ら強くなっても足りないと考える様になったための変化だろう。


 此処から帝都までの道のりは約二週間、道中何があるか分からない為日数を大目に見積もって三週間としているが、その間レオンハルトたちが常に先頭を進む事を余儀なくされる。


 力の均衡を保つために、レオンハルトたち円卓(ナイト・オブ・)騎士(ラウンズ)と赤い一撃が先頭集団に、(ムーン・)(ドロップ)と森人の集いが最後尾の集団と言う話にまとまった。


 話し合いの中で、エルフ族が主体となっている森人の集いの方が良いのではとか、女性だけのチームの(ムーン・)(ドロップ)が良いのではと言う話もあったが、彼女を押さえられる強さを持つのが三番隊の隊長ジークフリートとレオンハルトの二人と言う点。それに、案内人も兼ねていると言う事は先頭に居てもらう必要があると言う点。更に(エー)ランクと言う実力を戦闘で生かしてもらうと点から考えての選択。


 それに、レオンハルトとシャルロットは広範囲での探索系の魔法が使えるので、ブリジットの不審な動きに一早く察知できるというのもある。


「それぞれの準備はもう済ませてあるのか?」


「此方は滞りなく」


「わたしたちも大丈夫ですよ」


「・・・問題ない」


 それぞれのチームリーダーが返答し、翌朝の出発時間を伝えて解散となった。それぞれが戻ろうとする中、ジークフリートに呼び止められるレオンハルト。


「すまないが、少し時間を貰えるか?」


 深刻な顔で話しかけてきた事で、先程の打ち合わせでは離せないような内容だと悟った俺は彼の誘いを受けて別室へと移る。


「アルメリア辺境伯様から言われた事なのだが、帝国内に魔族が潜んでいるかもしれないと言う情報を得た」


 魔族・・・アルデレール王国でも王都に襲撃を受けたり、スクリームと呼ばれる人を改造して作った人造魔物でかなりの被害を受けたりもした。ガバリアマルス王国に至っては長年魔族との戦闘を最前線で引き受けてくれた国だったが、数百年保たれた均衡が崩れ、滅亡させられてしまった。魔族側にも被害が出たのかそれ以上の進行は耳にしていなかったが、既に他国への侵略も進行しているのかもしれない。


 個々の実力も桁外れに高く、下級魔族の地位に居る者ですら、簡単に街を蹂躙出来てしまう。恐ろしい集団だ。


「まだ確証はしていないが、その可能性が僅かに浮上したと言う事だけの事。くれぐれも注意してくれ」


 その魔族を幾度となく退け、上級魔族をも撃退したレオンハルト。王都の襲撃時の功績から魔族殺しの二つ名を授かっているアルデレール王国の対魔族の切り札的存在。王国側の人間はそう判断している。


 無論、本人はそんな事知る良しもないが、仲間の命、愛する者の命を守るためなら、魔族であれ戦闘をする覚悟は持ち合わせている。


「ああ、それとこれを渡しておく」


 渡されたのは一つの魔道具。球体状の水晶で大きさは、丁度前世のビー玉と野球ボールの中間ぐらいの小さい物。初めて見る魔道具のため、使用用途などを確認するとこの魔道具は使い捨ての物の様で、魔力を込めると周囲の映像を記録する事が出来る。


 使い捨てと言うよりも一回限りのビデオカメラみたいな代物だった。映像は何回か見る事が出来るが、十回以上見た場合は、水晶が粉々になるそうなので使い捨てと言えば使い捨てかもしれない。


「もしもの時はそれを使用してください」


 もしもの時・・・それが何を指し示すのか。分からないが、この護衛依頼は想像以上に何か起こるかもしれないと考え直す事にした。


 それからレオンハルトは皆のいる場所に戻り、仲間たちにブリジットが一時的に仲間になった事を説明したが、シャルロットには彼女の警戒を常にしておくようにも頼んだ。


 馬車に常時待機するシャルロット、エルフィー、アニータ、それと御者のエリーゼとラウラの二人彼女たち以外の面々は基本ローテーションで騎乗して護衛に当たったりしている。となればシャルロットが唯一馬車での変化を察知しやすいからだ。


 それと、エルフィーに魔法の袋を渡す。普段使っている汎用型に入れている水薬(ポーション)類をエルフィー自身しか取り出せない様にした。


 同じくアニータには、実弾の使用を禁じて魔法弾で対処するように言い聞かせる。実弾を他国の者に余り見せたくないからと、いざと言う時の切り札になりえるからだ。知らない攻撃はそれだけで武器になる。


 他の者に持たせている銃も同様に禁止した。流石に自身の命や仲間の命が危ういと判断した場合はその限りではないが・・・。


「馬車の守りを考えないといけない・・・外からだけでなく内側も」


 防御面を強化する場合、普通は攻撃を受ける外側を強化して身を守る。しかし、外側からの攻撃に強くても内側からの攻撃に脆い傾向がある。誰しもが内側から攻撃があるとは予想していないからだ。


 今回、その内側にチームメンバー以外の者が参加する。普段であればそこまで気にかけないが、普段の状況でない今は万全を期しておく必要がある。


 考えられる可能性を洗い出し、持っている物で対処するとなれば、どうするのが良いのか・・・。


「銃は使えない。狭いエリアだから槍や剣もダメ・・・そもそも、戦闘が苦手な者と遠距離の二人・・・ダヴィか誰か付けるべきか」


「防具の見直しは?鎖帷子(くさりかたびら)を着込むとか、急所のみ鉄板を入れるとか?」


「それだと動きが制限されるし、急所は頭部を狙われたらおしまいだ」


 仲間たちもそれぞれ意見を出し合う。だがどれも現実的ではないし、決定的でもない。


「罠を仕掛けるとか?ほら、仲間にしか分からない言葉かけとか合図で」


 ん?何か引っかかる感じがするな。


 リーゼロッテの言葉をよく考え直してみる事にした。合図、これは声が出せない環境下で便利ではある。採用するのは良い案だが、少し違う感じがするな。それに狩猟の際のハンドサインもあるし、其方をそのまま活かして・・・狩猟?・・・罠?


 獲物の注意を引くには囮が必要になる。罠は落とし穴の様な古典的な物もあるが、他にも餌となる物をチラつかせて獲物を誘き寄せる罠もある。


 注意を別に向ける・・・それだと、馬車の中では難しい。それなら錯覚させるのはどうだろうか。何かで見た事があるが奇術師(マジシャン)は相手の注意を別の場所に向けさせることで本当に行いたい事から視線を外させる代表的な技法ミスディレクション。


 そこまで考えると一つの妙案を思いついた。


「シャル。悪いけど新しい魔法を二つ習得して使えるレベルにしてほしい」


「ええ。分かったわ。どういった魔法を習得したら良いの?」


 その夜、レオンハルトの考えた案を皆に伝えるとシャルロット以外が何を言っているのか理解できなかった様だが、キーパーソンとなるシャルロットが理解できたため、それぞれの役割を話す。


 流石に出発して数日は大丈夫だろうが、何も練習していない事を考え毎日が本番のつもりで実戦練習をする事にした。


 レオンハルトとシャルロットは、結局その晩一睡もする事なく対策のための準備に覆われる羽目になった。


「眠たそうな顔だな?大丈夫か?」


 ジークフリートが心配して声をかけてきたが、大したことないと返答して合流場所に向かう。北門の手前にある広場でブリジットと合流する手筈になっていた。予定時間よりも早めに到着したのだが、ブリジットは既に準備を終えて待っており、流石冒険者と行った所だろう。殆ど軽装の恰好だった。つまり必要な道具は魔法の袋か魔法鞄(マジックバック)に入れているのだろう。両方所持している辺り流石としか言いようがない。


「初めまして、今回王太子殿下の護衛をしております。レオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロンです。名前でおわかりいただけただけると思いますが、今回は冒険者として同行しています。気兼ねなくレオンハルトと呼んでください」


「ご丁寧にありがとうございます。私は、クレーメンス・ゲレオン・フォン・アルメリア辺境伯家に仕える専属冒険者の一人、ブリジットです。既に聞き及んでいると思いますが種族はハーフエルフです。道中よろしくお願いします」


 コンラーディン王太子殿下と面会した際は、主であるアルメリア辺境伯が紹介した為、簡単な自己紹介だけで終わってしまったが今回はそう言うわけにはいかない。それに、相手は貴族と言う立場も持っているとあれば口調も丁寧になってしまう。


 これが、自分と同じ普通の冒険者であれば、タメ口とまではいかないにしても砕けた口調であったのは間違いない。


「帝都までの道中は私がご案内します」


 実際は案内役だけでなく、王太子殿下の護衛と監視も含まれている。


 自国で他国の王族に何かあれば、戦争の引き金になりかねない。戦争と言うのは言い過ぎかもしれないが、争いが起こる事は間違いない。戦争まで発展すると共通の敵である魔族に隙をつかれて攻め込まれかねないからだ。


 そして、監視には自国の不利益になる様な情報を入手しに来た若しくは、妨害活動や自国民同士の争いの火種を提供しに来ていないかなど見極める事だ。


 王族が自ら間者として潜入する事は珍しいが、全くないとは言えない。


 彼女が何のために同行したのかしっかり見極めなくてはならない。











 自由都市アルメリアを出発して五日が経過した。その間に魔物の襲撃が十数回、盗賊の襲撃が二度あったが、いずれも護衛として雇われた俺たち冒険者とアルメリア辺境伯から案内役兼護衛として同行しているブリジットで対処にあたった。


 (エー)ランク冒険者と言う実力も伊達ではなく、魔法で強化し高速で移動しながら相手を斬り伏せる。移動速度と斬撃速度が速すぎて残像の様な物が見える程だ。それ故に彼女は閃影のブリジットと呼ばれている。


 細身の片手剣で刃の形状が炎の様に揺らめく形状をしたフランベルジュと言う名の剣の種類。両手剣など幅広くあるが、彼女はその速さを活かすため細身の片手剣を使用しており、特殊な形状と速度が合わさり驚異的な切れ味をたたき出している。


「グギャ?」


 今も丁度、魔物に襲われて討伐を行っているのだが、ブリジットの攻撃の速さに魔物たちも首を跳ね飛ばされて、自分自身が死んでいる事に気づくのが遅れている様な反応が多々ある。


「相変わらず見えないわね・・・」


 ティアナの言葉に頷くダーヴィトとエッダ。実力は兼ね備えているがレオンハルトのメンバーは熟練の冒険者に負けないレベル。ブリジットは一流の冒険者当然実力差が出るのは当たり前だ。


 そもそも孤児院で魔法や戦い方などの生きる上で必要な知識を教えてくれたリーゼロッテの母親であり孤児院の院長をしていたアンネローゼも冒険者として活動していた時は(ビー)ランク、年月が経てば強くなって今も活動していたら(エー)ランクになれていたかもしれないが(ビー)ランクから(エー)ランクへの道のりはかなりの壁が存在する。


 要するに努力だけではどうする事も出来ない壁、才能だけでも同じである。


 全力ではないにしてもブリジットの攻撃速度はそれだけ早かったのだ。


「私は辛うじて分かるような感じです」


 ただし、レオンハルトのパーティーメンバーの中にもその速さについて行けるものがいる。(ヴァーリ)の恩恵を受けたレオンハルト。同じく恩恵を受けたシャルロットは対応できるが元々はただの一般人。技術的な部分がどうしても差となって出てきてしまう。それと、目で追う事が出来るユリアーヌとクルト、リリーの三人。ユリアーヌはその生まれ持った才能で、クルトとリリーは戦闘スタイルが似ているのと連撃と言う連続技を繰り出すための速さを努力で身に付けた結果からだろう。


 付け加えるならブリジットの武器はその速さ、これが例えば力を武器に戦う(エー)ランク冒険者の戦闘であれば姿を捕える事は出来たはずだ。その場合、攻撃を受けきれない可能性が高いが・・・。


 まあ、飽くまで目安に過ぎない。力が秀でているからと言った理由で(エー)ランクにはなれないのだから・・・。総合的に見て幾つかの項目が一定水準を上回らないといけないのだ。


 瞬く間に戦闘が終わり、他の冒険者たちと一緒に素材を回収に向かい。騎士たちはその間に周囲の警戒を行っていた。


「・・・アヴァロン卿は(エー)ランクにならないのですか?」


 ブリジットが同行するようになり、数回の戦闘でレオンハルトの実力の高さを見抜き、そこから模擬試合で剣を交えた事がきっかけで、毎日の様に同じ質問を尋ねられている。


 と言うのも(エー)ランクの冒険者と(ビー)ランクの冒険者での模擬試合は、(エー)ランクの冒険者が手を抜かない限りは、殆ど負ける事は無い。しかし、お互い本気ではないにしても全力で挑み結果、(エー)ランクの冒険者であるブリジットが七割近く負けている。


 ブリジットは、負けた事に対して悔しい気持ちはあるが、それよりも自分を負かした人物が(ビー)ランクと言うのが納得できないようだ。


 昨日は、アルデレール王国で(エー)ランクと認められないのであれば、帝国に来て冒険をしたらどうかと言う提案までされた。要するに亡命を勧められたのだ。


 本人はそんなつもりはないにしても。


「ブリジット殿、それは昨日もお伝えしましたが、私にはまだ学ぶべき事がたくさんあります。(エー)ランクの試験を受けるのはそれからでも遅くないと思いますよ」


 レオンハルトの言葉に納得は出来ないまでも、こう連日断られている事から(エー)ランクの試験をすぐに受けるつもりが無いのだと観念した。


 ただ、これ以上その話を持ち出さない代わりに、帝都に到着するまでの間、毎日模擬試合をしてほしいと頼まれる。


 彼女との戦闘はレオンハルトにとっても経験になると言う事で了承するが、加えて彼からも一つ提案を出した。


「出来れば仲間の稽古に参加してもらえますか?仲間たちにとって良いきっかけになればと思うので」


 ブリジットもその案を受け入れ、その日の夕方から早速試合が行われるようになったのであった。


此処まで読んで頂きありがとうございました。

世間では、コロナの事で大変な事になっていますね。

自分も本業がその為、忙しなく動いておりました。

それも少し落ち着いてきた上、もうGW間近と言う事で、頑張って執筆していこうと思います。

これからも是非読んで頂けると嬉しい限りです。

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