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079 ローレたちの日常

コロナウイルスで、外出自粛の指示が出ていますね。

都心部の方々は自宅で大変かもしれませんが、頑張って下さい。

暇でどうしようもなくなったら、映画を見るとか小説を読むとかゲームをするとか・・・。

気を紛らわす物は沢山ありますよ!!

 レオンハルトたちが王城からの指名依頼で王都を離れて二十日ほど経過した頃。王都にある彼の屋敷で、忙しく働く者たちがいた。


「ローレ?薬を作る薬草がもうなくなりそうだよ?」


「奥の倉庫に在庫が残っていたと思うのだけれど・・・ありませんか?」


 銀色の毛を持つ狐獣人のルナーリア。自分と同じくご主人様(レオンハルト)に仕える奴隷の一人。レオンハルト様は私を始め多くの奴隷を一年以上前に奴隷商から買われた謎の多いご主人様だ。


 謎と言っても悪い意味ではない。そもそもご主人様の出自は不明。十歳までは孤児院で生活していた。私たち奴隷と大して差が無い身分にいたのだ。私たちを購入しようとした時も彼は未成年な上、冒険者稼業で生計を立てていた。


 出会った時は出自の事は知らなかったし、冒険者稼業の事も知らなかったため、貴族の子息が興味本位に奴隷を買いに来たのだと思ったのだけれど、購入してすぐに私たちが抱えていた怪我や病を立ちどころに治してくれた。


「倉庫の奥を確認してきます」


 在庫の確認に向かうリン。この中で唯一の兄妹奴隷の妹。黒猫の獣人で、一緒に買われた時は、顔に酷い大きな傷が刻まれてた。女の子にとって大事な顔に痛ましい傷は、かなり致命的で相当苦労したであろう事は想像できた。


 ご主人様に仕えるようになって傷も綺麗になくなり、とても元気に仕事をしている。兄のランは少し妹愛が強い感じがするが、二人で協力している所を見るととても仲良しなのだと感じさせられる。


 奴隷たちに対しても平等に接してくれるご主人様とその仲間たちが居たからこそランとリンも今のような生活が出来ている。それが本当に凄い事でご主人様たちの力が謎めいているのだと思うのです。


 リンは直ぐに戻って来て、ルナーリアの言う様に倉庫の薬草もほとんど残っていないと言う事だったので、筆頭執事のフリードリヒにその報告を行う事にした。


 薬草が無ければ水薬(ポーション)を作る事が出来ない。ご主人様の様な凄い水薬(ポーション)は作れないけれど、新人冒険者が使いやすい下級の水薬(ポーション)はそれなりに作れるようになってきていて、ローレたちが商売する商品の主力製品になりつつあるもの。


「分かりました。薬草を手配しておきましょう。それよりも皆さんは大丈夫ですか?思いの外、薬草などの消費が激しいようですが・・・」


 使いすぎではないかと言う注意ではなく、ハイペースで使っていると言う事は普段に仕事をしながら調合などを行っているため休む暇などないのでは?と言う意味で彼女たちに問いかけている。無論その事はローレたちも理解していた。


 確かに睡眠不足になる時もあるけれど、今の生活が自分たちにとってとても幸せな事を理解しているからこそ、彼女たちは必死に腕を磨く為努力を惜しまない。


「そうですか。他に必要な物はありますか?」


 倉庫の中身を確認したリンが慌てて不足している他の物を伝えた。


「ソウカ草にアグの実、天梅雨草(あまつゆぐさ)ですか・・・天梅雨草(あまつゆぐさ)は今の時期ではないので、すこし質が落ちると思いますが、それでも良いですか?」


 ソウカ草は解熱効果のある薬草で、アグの実は刻んだり磨り潰したりと手を加えれば鎮痛薬になる。水薬(ポーション)だけでなくこういった薬もレオンハルトから教わっているので合わせて売っているのだ。


 天梅雨草(あまつゆぐさ)は、水薬(ポーション)や粉末状の薬など幅広い薬の効果を高めてくれる薬草になる。天梅雨草(あまつゆぐさ)だけでも傷口に濡らして張れば傷の治りが少し早くなるし、刻んで食べれば解熱や鎮痛効果も少なからずある。万能ではあるが、効果のほどは他の薬に比べて低い為、手を加えて他の薬草の効果を上昇させるのに使った方が良い代物なのだ。


 フリードリヒの言葉に頷く三人。それを見ると、直ぐ近くに控えていた執事に声をかける。


「分かりました。ローマン早速で申し訳ないのですが、彼女たちの買い物に頼まれもらえますか?」


 ローマンは執事見習いとしてこの屋敷に雇われている人物で、数多くの面接者の中から選ばれた逸材だ。彼は、他でも執事見習いをしていたらしいが、失敗が多く解雇され新しい働き場所を求めてやって来た。


特技は確か皿洗いと教えてもらったはず・・・だけど、それで良く採用されたものだ。とその時の奴隷たちは思ったらしい。まあ実際に働いても皿を割るし、片付けているのか散らかしているのか分からない掃除の方法だが、それでも未だに雇われ続けている。


ご主人様の器がとても広いのだと感心したが、彼にも特技と言うものがあったようで、山菜を採らせに行かせたら籠いっぱいに採って来ていた。これは本当に凄い事。これがもし自分だったら間違えなく三分の一も採る事は出来ないし、時間も三倍以上かかる。


 とは言っても山菜採りは、彼が休みの日に行っているらしいので基本的には失敗している方が高い。ここ最近は失敗も減ってきているようだけれど・・・。


 身分としてはご主人様に雇われている皆様と奴隷として買われている私たちでは、私たちの方が圧倒的に低い。こういう買い物と言った雑務も本来であれば奴隷が行ったりするもの。しかし、私たちは奴隷でありながら雑務はわりと免除されている。


 ご主人様がフリードリヒたちに奴隷について、自分たちの扱いを説明していたからだ。


 本当に優しい方だと心から尊敬している。だからこそ、そんなご主人様の力になりたいために奴隷の身分である私たちは一生懸命、今を頑張っている。


「そうですね。厨房に行って他に必要な物がないか確認してから行ってもらえますか?」


 厨房は、専属の料理長を雇用され、毎朝市場の人に新鮮な野菜や果物何かを持ってきてもらっているので、あまり何かが不足すると言う事もないが、ちょっとしたものがない事もあるので、そう言ったちょっとした物を買いに行くのだ。


 ほとんどが、調味料と呼ばれる類でご主人様が好んで使用している物も多い。中にはかなり高価な調味料も存在するが、構わず使用しているので、本当に好んでいるのだと理解できる。


(あれ?そう言えば、調味料って薬になるってご主人様が前に言われてたような・・・・?)


 前に一度レオンハルトが作っていた薬を思い出そうとするローレ。知らない知識を何処で身に付けたのか分からない内容をいろいろと教えてもらっていた為、それが何時教えてもらったのか真剣に考え始めた。


(ランが食欲不振になった時に・・・たしか・・・そうよッ!!香り付けに使う調味料・・・いえ、香辛料だったわね。それも練習しておいたほうが良いわよね?)


 フリードリヒに頼み追加注文も行おうとすると・・・。


「すみませんが、小麦粉もそろそろ切れそうなのでお願いできますか?」


 厨房からソフィアが顔を出してきた。彼女もまたご主人様の奴隷の一人で、聞いた事が無い重度の病に侵され余命あと僅かと言う所でご主人様たちの魔法で助けられた。私たちと同じように商売の手伝いをさせていたのだけれど、彼女の料理センスを見込まれて、商売の中でも軽食部門の手伝いをする事が多くなった。


 軽食部門はご主人様たちが幅広い商売をしており、そのご主人様やシャルロット様たちが考案したドネルケバブやパンケーキ等の軽食の屋台で作ったり売ったり、またメニューの考案をしたりする事をそう呼んでいる。他にも出店で取り扱う水薬(ポーション)や薬関連の商品。魔物の素材や加工した物、燻製肉や道中で見つけた山菜や果物などの商品。趣味程度で作ったと思われるアクセサリーや宝石の原石、魔石、鉱石などの商品もあり、部門ごとに分けると医療部門、錬金部門、日用品部門に分かれている。医療部門はまだ途中なのだと教えてもらった。


 レオンハルト曰く、薬を作って売るだけなら錬金部門と一緒との事。売る事は当然として、その他の事にも手を伸ばしたいのだそうだ。この辺りになってくると話のスケールが大きすぎて私たちには理解できなかった。


 私たちは主にそれらを売ったりする商人ではあるが、それと同時に各分野で手伝いもしている。私やルナーリアたちは錬金部門で薬などの調合、ソフィアは軽食部門で頑張っていた。その軽食部門だが、特に売れ行きが良かったのがドネルケバブで、他にも目玉商品となる商品は沢山ありフランクフルトやホットドッグ、クレープ、ヤキソバ、タコヤキ、唐揚げなどの商品。基本的にはご主人様かシャルロット様のどちらかが居る時にしか屋台は開かないが、いなくても開けるように毎日懸命に作っている。


料理長として雇われた元シュヴァイガート伯爵家の副料理長のラウレンツ。彼も一緒に手伝ってくれているので、腕前はかなり上達してきている。


 他の奴隷たちと言えば、ランは奴隷の中で唯一の男。他の奴隷たちの護衛を任されているため、屋敷の庭で訓練に明け暮れている。メニュー内容はご主人様が自ら考案されたもので、かなりきついのだと言う事。毎日ヘトヘトになって帰ってきているため、誰が見ても分かる。


 ナディヤは、商業都市オルキデオに向かっている時にゴブリンに捕まっていた一人で、リタと言う女性と一緒に今も一緒に生活している。他の女性も居たのだが、其方はそれぞれ戻るべき場所で暮らしていて、残った二人がご主人様の元にいる。ただ、ナディヤはロホスの街にいる知り合いの商人へ行く予定になっているのだが、ロホスに行った際に知り合いに会えず、今も残っている状態。


 知り合いの商人についてご主人様が調べた所、他国で新しく商売を始めてそれが大ヒットしたとの事。そちらが落ち着くまでロホスにある商店は相方に任せるそうだ。そして、ナディヤはその相方との面識が無く、予定していた商人見習いをご主人様の元で学ぶ事になった。


 それが良かったのかどうかは分からないけれど、でも一つ言えるのは彼女も少しずつ成長していると言う事です。


「あのーどうかしましたか?」


「え?あっ!!すみません」


 廊下で立っていると背後から声をかけられ振り返るローレ。そこに立っていたのは、ナディヤと共にご主人様の元に来たリタだった。彼女は今、他の給仕係(メイド)たちと一緒に屋敷の清掃をしていた様で、その手にはバケツと雑巾を所持していた。


 十分広い廊下とは言え、数人が立って話をしていたのだから邪魔になった可能性はあるし、集まっていた事に何事なのだろうと話しかけてきた事も考えられた。


「リタさんも何か不足している物はないでしょうか?丁度買い出しをお願いしていたので」


 フリードリヒの言葉に特に必要な物が思いつかなかったため、大丈夫と伝えて近くの部屋に入って掃除を始める。


「彼女は真面目ですね?少し心配になるぐらいですよ?」


 それは私自身も感じ取れていた。境遇が境遇だけに立ち直れないと最初は思っていたけれど、ご主人様やその仲間たちが懸命に支えた事で、今では一生懸命自分の足で立とうとしているのだ。


「はい。ただ、何かしていないと辛い事を思い出すのかもしれません」


 毎晩ではないが、彼女は時々夜こっそりと泣いているのを知っている。日中は給仕係(メイド)として働き、あの出来事を思い出そうとしない様にしているみたいだが、夜はあの頃の事・・・彼女が最も幸せだった村での出来事を思い出してしまうのだろう。


 誰だってあんな経験をすれば普通は立ち直れない。増してや彼女の場合は結婚したばかりの幸せな夫婦生活を送っていて、ゴブリンに襲われ身を汚され、最愛の人を目の前で殺され、宿したくないゴブリンの子を宿した。


 女性であれば、まず命を絶つ選択を高い確率で選択する様な状況。だから余計に頑張って働いているのだろう。


 ローレの言葉にフリードリヒは表情を曇らせた。皆の境遇について一通りレオンハルトから聞いていたからだ。


「彼女は強いですな。まあ男の私より貴方たちの方が、彼女を支えられるでしょうから、少し気にかけてあげてください。何かあればすぐに私に」


 そう言って、買い物のリストを再確認するため筆頭執事のフリードリヒはその場を立ち去った。


 ローレたちも自分たちの作業へと戻り、皆と一緒に商売のノウハウや薬作りに励むのであった。










 レオンハルトが雇用し屋敷の管理を任せているフリードリヒは、ある事について悩みを抱えていた。


「フリードリヒ様、今日もこの様な物が・・・」


 大量に渡される手紙の山。新規貴族として成り上がり、しかも異例の昇格や年齢と言う事で、他の貴族から一目を置かれる存在となったレオンハルト。そんな彼と少しでも縁を結ぼうと娘や妹を嫁候補として話を持ち掛けられているのである。


「・・・・最近、更に増えてきましたな」


 時期的な事もあり、届く手紙は三日に一枚ぐらいだったものが、今では一日に二十枚ぐらい来ている。そんなに貴族が居るのかと言う疑問もあるだろうが、同じ人物から手紙は無事に届いているかなどの内容から一族から数枚の手紙で嫁候補もそれぞれ立てて来ていたりする。実に傍迷惑な行為だ。


「公表してしまえば、少しは落ち着くのですがね」


 レオンハルトが既に複数人と婚約していると言う事は、フリードリヒも知っている事だ。だけれど、それを知るのはごく一部の者のみのため、当然貴族たちからすれば、新規貴族と言う事は仕えた場合の立ち位置もかなり良いポジションを確保できると踏んで、あの手この手を使って関わろうとするのだ。


 本人が冒険者として不在のため、その後処理をする方は大変である。そんな中に一枚違う雰囲気の手紙が混ざっていた。蝋で封されている事から本人が直接開けなければならない手紙の類だった為、中は確認していないが。確実に上級貴族からである。


「もう一つあるみたいですね・・・・これは我々宛ですか」


 中を開けて手紙を取り出し、目を通すと・・・。


「これは、また」


 手紙を一通り読み終えた感想がこれである。少しばかり溜息が出ていたように感じられるフリードリヒの態度に不思議に思った執事見習いのローマンが尋ねる。


「ええ。如何やら此方の手紙は王家からの様ですね。蝋印のデザインに記憶が無いので分かりませんでしたが、手紙の差出人はレーア様のようです。此方は、我々がその手紙を受け取り家主が居ない場合の対応方法が書かれていました」


 我々へ出された手紙もまた、王家の人間・・・・それも国のトップである国王陛下自ら書かれた手紙だった。陛下はレオンハルトが依頼でいない事を知っているが、レーア様には伝えていないそうだ。


 それもそうだろう。レオンハルトが受けた依頼はレーア王女殿下のお見合い予定だった件の謝罪などで訪れる王太子殿下の護衛の為。彼女が知れば絶対に同行させてほしいと懇願したに違いない。


「その、対応とは・・・」


 ローマンへはそれ以上説明をせずに、主要な使用人だけを集めて話し合い。対応の事について周知させたのであった。


気が付けばトータル百万文字突破していました。

無駄に長いだけの物かも知れませんが、お付き合いしてくださっている方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

次は二百万文字達成できるようにがんばります。

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