076 王都出発とホワイトデー
おはようございます。
昨日投稿するつもりだったのですが、連日仕事で帰っリが遅くなってしまい。
執筆が思う様に進みませんでした。
投稿が遅くなったこと申し訳ありません。
「森人の集い。この依頼是非参加させてもらおう」
「月の雫もこの依頼一枚噛ませてもらうわ」
Bランクのチームそれぞれがこの依頼に参加する意思表示を示し、赤い一撃も問題なく参加してくれることとなった。
話がまとまり、依頼主の元へ報告に行こうとすると、それぞれのリーダー・・・厳密に言えば森人の集いのリーダー、アーヴィンと月の雫のリーダー、エミーリエが待ったをかける。
信用していない訳ではないが、さっきの話を聞く限り王城に居る者・・・簡単に言ってしまえば王族からの依頼になるがそれを少しだけ疑っていたのだ。
「悪いが、俺たちも依頼人に合わせてもらえるか?」
アーヴィンの発言に彼の仲間や月の雫の人たちも頷く。この中で唯一発言力の小さな赤い一撃は沈黙を続けていたと言うよりもついて行けてなかった。
BランクとCランクではそれだけの差が生じるのも事実。
「そうだな。それぞれ二、三人なら大丈夫だと思うけど・・・」
すると、森人の集いと月の雫は人選を始める。それに習って赤い一撃も人選を進めた。数分後には同行する面子が決まったとの事で、同行しない仲間たちに馬車の手配や買い出しなどに行かせる段取りをしていた。
「待たせたみたいね?」
最後に準備が整ったのは、月の雫のメンバーだった。因みに森人の集いからは、リーダーのアーヴィン。同じくエルフ族の優男ジョナス。これぞまさしくエルフと主張しかねない美貌のチェルシー。エルフは基本的に美男美女ばかりの種族の様だが、その中でも群を抜いているのがチェルシーだった。聞けば彼女は、エルフ族の族長の娘だそうだ。エルフ族は至る場所にひっそりと暮らしているため、幾つもの集落がある。その集落をまとめているのが族長と言うわけだ。
人族で例えれば村の村長みたいなものだろう。しかし、中には大きな規模の集落もある様でそう言った場所は結界で外部から認識できない様に手を尽くされているのだとか。噂では、エルフの上位種族であるハイエルフと呼ばれる種族も隠れ住んでいるらしい。
月の雫からは、リーダーのエミーリエに同じく前衛の剣士マーリオン。それと酒場にいたカトリナの三人だ。マーリオンはカトリナたちとほぼ同年代の透き通った淡い青紫色のロングストレートに整った顔立ち、何処か真面目というか、ちょっとだけ冷たく足立ってきそうな見た目の女性だ。リーダーのエミーリエに二つ名がある様に、彼女も二つ名を持っているのだとか。
基本遠距離主体のチームなのに前衛二人が二つ名持ちなら、別に遠距離主体のチームではないのだと感じるのだが、如何やら見た目や所持している武器で判断してはいけないのだそうだ。エミーリエの二つ名・・・疾風は、風属性魔法を使った飛ぶ斬撃や移動速度の上昇から来ている様で、同じようにマーリオンの二つ名は、魔法剣士と呼ばれているらしい。エミーリエの風属性同様の事の他に水属性と土属性、火属性の四大属性魔法が使えるのだとか。但し、均一に習熟させているからか、威力はエミーリエより少し劣ってしまうし剣術も少し低い。
最後に赤い一撃だが、当然リーダーのノーマン。彼もCランクでありながら、既に二つ名持ちだ。彼の持つ雷属性の魔装武器・・戦鎚が由来で雷撃のノーマンと呼ばれているのだそうだ。同行する仲間は、初めて会う人たちで一人は白いモヒカン頭に日焼けしたような肌の見た目悪そうな二十代前半の男性マルクと獅子人族の獣人ガレス。ガレスの見た目は獅子を二足歩行させて人に似せた雰囲気があるが、猫人族のリンやランたちの様な人族に耳や尻尾が生えているようではない。丁度中間にいる感じの獣人だ。金色の鬣が汚れていなければ神々しさを感じられただろう。
マルクは、アーミーアント討伐の折にいたが、ガレスは今回初対面となる。と言うか、赤い一撃のメンバーの半分近くは初対面の者たちだった。訳を聞いた所、負傷し前線を退いた者。魔物との戦闘で命を落とした者。結婚して別の人生を歩んだ者。方向性の対立からチームを抜けた者など理由はさまざまである。
暫く合わないだけで、チームのメンバーはこれ程までに変化するのだろう。逆に言えばレオンハルトのチームも彼らからしたら増員されすぎてて最初は驚いていたそうだ。まあ、この世界で生きていると、人の命と言うものは重いように見えて軽いので、こういった事はよく起こるそうだ。彼らのチームから誰一人欠けないと言うのは、非常にまれであり優れたチームであることを示している証でもあった。
そして、王城に向かう為の方法だが、三チームとも馬車を所持しているらしいが、月の雫以外は、馬車を宿屋に置いて来ており、月の雫とレオンハルトたちの馬車の二台で王城に向かう事になった。
月の雫の馬車に森人の集いの三人が同乗し、俺たちの馬車には赤い一撃の三人が同乗した。暫くする進んでいると王城に入るための門が見えてきた。
「あれ?忘れ物ですか?」
午前中に来た時に警備していた人物が午後も担当していた様で駆け寄ってくる。しかし、後ろにもう一台馬車があるのを確認するや否や表情が険しくなった。
「エルヴィン宰相に・・・そうだな。例の件の面子を集めてきたので顔合わせがしたいと伝えてくれるか?」
流石に王太子殿下が隣国訪問の際に同行させる冒険者を揃えたとは話せない為、当たり障りが無いように伝える。もしかしたら既に周知させているかもしれないが、知らなかった場合は大変な事になるので、具体的な内容は極力避ける様にしたのだ。
「例の件・・・ですか?はあ、わかりました」
何処か納得していない表情ではあるが、一応レオンハルトは下級貴族とは言え貴族の現当主でもあるし、王都を救った人物でもある。
因みに王都を救った事で、レオンハルトもそれに関連した二つ名が実は存在している。魔族殺しの英雄・・・それがレオンハルトの二つ名。本人もその事は耳にしているし、時々「レオンハルトだーッ!!」ではなく「魔族殺しの英雄殿だーッ!!」と言われるのだ。
初めて知った時は、顔から火が出る程恥ずかしかったのは・・・今でもしっかり覚えている。
そんな二つ名を持つ彼が言うのだから、そうなのかもしれないと判断し、その場にいたもう一人に確認を取る様促した。確認が取れるまでは門を潜る事は出来ない。午前中の時の様に書簡等があれば話は別だったのだが、今回は何も持たずに来てしまった。
待機する事数分。確認を取りに出かけていた兵士が戻ってきた。
「宰相閣下の確認が取れました。皆様を三番隊の兵舎へ誘導するようにとの事でした」
「王城内ではなく兵舎ですか?」
これには流石のレオンハルトも尋ねざるを得ない。午前中の部屋・・・は少し手狭なためあのような部屋で少し規模が大きい場所に案内されると思っていたのに、王城の敷地内ではあるがまさか近衛騎士団が話あったり待機したりする兵舎へ連れて行かれることになるとは考えても居なかった。
他の者たちは話について行けない為、黙って成り行きを見ているしかできなかった。
確認を取ってきた兵士曰く。宰相はこの後近衛騎士団の三番隊と打ち合わせがある様で、その打ち合わせに我々も参加してほしいと言う事だ。まあ、実際に王太子殿下を護衛する三番隊との顔合わせも兼ねるとなると都合が良い展開だったとも言える。
「三番隊の兵舎の場所は彼が案内をいたします。少々お待ちください」
そう言って、兵士は待機所の近くに待機させている馬を一頭連れてきて、騎乗し案内を始めた。
普段馬車を停める所を更に奥へ進み、暫く歩いた場所に大きな訓練場の様な広い場所が見えてきた。前世で例えるなら高校などのグラウンドみたいな感じの場所。所々に案山子のような粗末な鎧を着せた人形があり、間合いの練習用に使用しているのだろうと考えた。
グラウンドの一角を見ると今まさに訓練の最中と言う感じに打ち稽古をしている姿を捕える事が出来た。
「彼らは五番隊ですね。突撃に優れた部隊です。ちょっと騎士団の中でも喧嘩っ早い人が多くいる部隊ですけどね・・・アハハッ」
乾いた笑みを浮かべる兵士に少しだけ同情してしまった。要するに制御が効きにくい連中が集まっていると言う事なのだろう。
ただ、そこだけが欠点なのだろう。現在訓練をしている者たちは流石近衛騎士団と呼んで差し支えない程、鍛え抜かれた連携をとっていたのだ。五番隊隊長とみられる見た目はかなりやんちゃをしていそうな荒くれ者の面構えをした中年のオジサンが、自分の部下を指示しながら怒鳴り散らしていた。
その場所から更に進んだ場所の奥に幾つもの建物が見え始める。そのうちの一つが、現在我々が向かっている騎士団の三番隊の兵舎がある場所なのだそうだ。
「此方が三番隊の兵舎になります。どうぞ中にお入りください」
そう言って案内してくれた兵士は扉を開ける。急に戸を開けられた事で一斉に中にいた騎士たちは此方を向く。鋭い視線を浴びつつも中に入るレオンハルトたち。
「おや?もう来てしまったのかい?」
すると、奥にある大きなテーブルを囲う様に座っていた人の一人から声をかけられた。
「ええ。此方に案内されたものですから・・・打ち合わせ中ですか?」
午前中にお会いしたエルヴィン宰相がテーブルの上座に鎮座していた。その隣には三番隊の隊長と思われる美形顔の人物が座っていた。緑色の長髪が若干きざったく見えてしまうが、彼の纏う雰囲気は真豪事なき強者の風格を感じさせられた。
他にも実力者と思われる人物や隊の中で頭が切れる者がその場に集められていて、コンラーディン王太子殿下が隣国へ訪問する際の道を確認しているようだった。
その話し合いに参加させられた俺たちだったが、その前にお互いの自己紹介し、ついでに冒険者側のチームを三チーム増やす報告を行った。宰相はチームの数に制限を設けていなかったし、嫌な顔一つせずに歓迎してくれていた。
「では、最前列と最後尾は冒険者の方々にお任せして・・・」
「馬車をこの隊列で・・・」
「そこの道は迂回する方が良い。少数なら問題ないが大人数だと動きが取りにくい」
それぞれで知りうる情報を基に隊列や道を話し合った。騎士団でも知らない情報を知っているあたり流石冒険者と言えるだろう。ただ、俺たちはアルデレール王国の北部についてはあまり詳しくない為、殆ど力になれなかった。その点、森人の集いや月の雫たちは、何度か商人の護衛で利用した事があるとの事で、一般的な道から少し外れた道まで知っていたのだ。
騎士団の中でもそっち方面の出身の者が居れば何とかなる事が多いが、今回は偶々そっち方面の出身の者が居なかったのだ。
日が沈むまで打ち合わせは続いた。その中で決まった事の一つは、移動は馬車若しくは馬などの移動に限り徒歩は厳禁となった。徒歩だと時間がかかり過ぎてしまうと言う理由からだ。冒険者側は全員馬車を所持していたが、馬は馬車を牽く馬以外は居ないとの事で、レオンハルトたちだけが馬に乗って護衛する事になった。騎士団側は当然馬車と騎馬の両方で護衛する様だ。
次に、出発の時間だが早朝の時間でいう所の六時ごろに決まった。きちんとした時計は持っていないのだが、二時間おきに時計台の鐘が鳴り、六時の鐘が鳴る頃に集合する。後は、道中の食事は基本王家側が物資を用意していくらしいが、何が起こるか分からない為、冒険者側も非常食の様な物を用意しておいてほしいと言われた。ただ、飲み水に関しては各自持参との事。
水属性魔法が使える魔法使いや魔道具がない者は、飲み水を持って移動するだけでも一苦労なのだそうだ。そう言った事に困った事が無いレオンハルトたちには、いまいちピンと来ていないが普通そう言った物を確保できなければ、移動中は常に水場を確保しながら移動するのが定石だし、その水が飲んで大丈夫か調べるのに時間も有する。
此処に居る冒険者たちはそう言った事の対策はしているので、問題ないそうだ。とは言ってもそこそこの冒険者になればそういう魔道具を購入したりするものだ。持っていないのは冒険者登録したばかりの初心者か遠出をした事が無い低ランク冒険者ぐらいだろう。
「では皆、明日はしっかり準備をして、明後日は頼むぞ」
エルヴィン宰相の言葉で締めくくられた打ち合わせは、無事に終わり騎士団たちはその日のノルマの為の訓練を、冒険者たちは各々の宿屋へに向けて移動した。
レオンハルトたちもリーゼロッテたちが居る屋敷に戻り、今日あった事を話した。
「・・・・って事は、暫く王都を離れるのか?」
「そうなるかな。此処の管理もあるから御者はローレたちの中から二人同行してもらうつもりだ」
その言葉を聞きその二人が誰なのか気にするローレたち。だが、彼女たちは奴隷であることを自分自身が良く理解しているため、こういう場合は発言をしたりしない。
「誰と誰の予定?」
リリーの問いに考えるレオンハルト。粗方同行してもらう人は決めていたりする。
「今回、同行してもらうのはエリーゼとラウラの二人だ。フリードリヒ悪いけれどこの屋敷の管理を頼むよ」
「承知しました旦那様」
フリードリヒはこの屋敷の筆頭執事である。齢六十近いと言う事だが、この老人見た目以上にかなり働いてくれているので、紹介してくれたエルヴィン宰相にはお礼の言葉しか出ない。彼はエルヴィン宰相の元で働いていた執事だったようで、筆頭執事の補佐を任される程の逸材だったらしい。魔族襲撃の折にレオンハルトたちに娘が助けられたと言う経緯から自ら志願してきたのだそうだ。
その娘と言うのも偶々助けた多くの住人の一人なので顔すら知らないのだが、それでも娘を助けてくれた事に感謝しているのだとか。
「それからアルニム。俺たちが留守の間ローレたちの屋台の手伝いをお願いできるか?」
アルニムと言う人物もフリードリヒと同じくエルヴィン宰相の紹介でやって来た人物。算術が得意で元々大きな商会で働いていた経験もあり、計算に関してはかなり腕があるそうだ。
「分かりました。商品はどの分野を取り扱う様にしたらよろしいでしょうか?」
ローレたちには現在、薬関係や小物関係、軽食に魔物の素材などを売っている。目玉と呼べる代物は水薬系と軟膏系、魔物の爪や牙、骨、革等である。軽食は目玉商品となる物は多いが、基本的にレオンハルトたちが居なければ爆発的に売れはしないのだ。
魔物の素材も結局はレオンハルトたちが討伐したものが大半な為、売れていけば何時かは売る物がなくなってしまう。逆に水薬系は現在、ソフィアとリタが制作できるように特訓している。成功率はそれほど高くないし作れても下級の水薬ぐらいだ。効果は簡単切り傷を治す程度のもの。後は解毒薬なども手を出しているが此方は更に成功率が低い様だ。
売れるようになるまではもう少し時間がかかるだろう。
「暫くは魔物の素材をメインで、そこから薬関係を並べてくれるか?出来れば常に数本で構わないから水薬系か軟膏系を置いておいてくれると助かる」
水薬等の薬は、王都であっても需要は高い。これが、戦闘が多い場所であれば尚更売れるのだが、売れすぎても数に限りがある現状、王都ぐらいがちょうどよかったのかもしれない。
取り敢えず、明日のエリーゼとラウラの仕事は少なめにしてもらうよう頼み。彼女たちは明後日から出発するための準備に当たってもらう事にした。ランに馬車の状態のチェックも言い渡しておいた。
買い出しは給仕長であるマイヤーに頼む事にした。他の者も手伝ってくれるようだし、本当に使用人たちを紹介してくれたエルヴィン宰相やラインフォルト候たちには感謝しかなかった。
二日後。レオンハルトたちの出発の日。
「では、後の事を頼む。あっ!!そうだ!これを渡しておくよ」
フリードリヒに二つの魔法の袋を渡す。一つは汎用型の魔法の袋で中には、昨日の内に作っておいた水薬や討伐しておいた魔物の素材のストックを入れておいたもので、もう一つは固有型の魔法の袋で、フリードリヒしか使えない様にしている。中身は当面の間の資金が入っていた。金貨で約三百枚、これは使用人たちの給金も含まれているので、月初めに渡すように伝えておいた。
「確かにお預かりいたしました。では旦那様お気をつけて行ってらっしゃいませ」
代表でフリードリヒが発言すると、他の者たちも「行ってらっしゃいませ」と口を揃えて言ってきた。
十五人乗りの馬車にレオンハルトとシャルロット、リーゼロッテ、ティアナ、リリー、エルフィー、アニータ、ヨハンが乗り込み、御者をエリーゼが担当、ラウラはその横に一緒に座っていた。ユリアーヌにクルト、ダーヴィト、エッダの四人には馬に乗ってもらっている。
使用人たちに見送られて屋敷を後にし、集合場所となっている王都北門に向かった。
集合場所にたどり着いた時には、森人の集いと赤い一撃が既に到着していた。
「おはようございます。本日はよろしくお願いします」
「ああ。此方こそよろしく頼む」
お互い挨拶を行っていると、更にもう一台の馬車が此方に向かって来ていた。
「すみませーん。遅くなりましたっ」
月の雫が予定時間の十数分前に到着し、依頼人たちの馬車を待つ。早朝六時の鐘が鳴るかどうかと言う時間になって漸く依頼人であるコンラーディン王太子殿下を乗せた馬車が十数人の騎士に囲われてやって来た。
「すまない。遅くなってしまった様だ」
馬に跨ってやって来たのは、近衛騎士団三番隊隊長のジークフリート・ヴィーゲルトと副隊長のザシャ・ヴァルタースだった。コンラーディン王太子殿下も本当は直接出てきて挨拶をかわしたいのだったが、この場で出て来てはかなり目立つと言う事で、馬車の中で待機してもらっている。
「いえ、時間通りですので問題ないです。では早速出発しますか?」
ジークフリートは頷き、それに従って森人の集いの馬車とレオンハルトの馬車が先導を進んだ。最後尾は赤い一撃と月の雫の馬車で、門を出る時に騎士団の一人が門兵と話をして、素通り出来るようにしてくれていた。
それから数日。今日は暦通りで行くと三月の十四日に当たる日。
現在、王都からかなりの距離を進んでおり、もう数日もすれば国境付近にたどり着くそうだ。街や村で滞在したり、野宿したりしながら此処まで辿り着き。今日は近くに集落が無かったことから野宿の準備を始めている所だ。
どのタイミングで渡すかだが・・・・タイミングが分からず気が付けばもう夕方の時間になってしまっていたのだ。
うじうじ考えても仕方がない。
そう心で固い決心をしてから、シャルロットたちを集めて例のプレゼントを渡した。二月十四日にくれたバレンタインデーのお返しであるプレゼント。
包装紙何て上品な物は無いので、申し訳ないが簡単な作りの木箱を全員に手渡した。今日この場にいない人は後日渡すのではなく、冒険者ギルドに依頼を出して届けてもらうように手配していた。
「これ、バレンタインの時のお返しっ」
突然の贈り物に皆驚きの表情を表していたが、ホワイトデーと言うものの存在をこの場でこっそりシャルロットが皆に教えて、嬉しそうに飛び上がっていた。
「これ、中を見ても良いかしら?」
「構わないよ。ただ、気に食わないものだったらすまない」
レオンハルトとしては、中々良い物を選んだつもりでも、女性と言う者の好みはかなり難しい。それに皆がみんな喜んでくれるかはプレゼントを見た時の表情で何となくわかってしまうのだが・・・・。
結局レオンハルトの心配をよそに、皆中身を見てより一層喜んでいた。
「ありがとうレオンくん。大切にするね」
「レオン様。ありがとうございます」
他の皆も同じようにお礼を伝えてくる。但し、皆が見ているのはあくまで外側の小物入れの部分。これが更に驚きの仕掛けと同時に中に入れている物を見たらどういった反応をするのか逆に楽しみになってきた。
「それ、実は小物入れなんだけど中にもプレゼントを入れているから」
その言葉を聞いて皆、恐る恐る中を確認し始めた。すると・・・。
中の物をみて嬉しさのあまりレオンハルトに抱きついてきたのだ。それ程嬉しい物が中に入っていたのだった。
その中身は、アクセサリーである。
それもイヤリングやネックレスではなく・・・・個々をモチーフにレオンハルトが手作りした指輪。つまり婚約指輪だったのだ。
最初はもう少し別の・・・それこそネックレスなどのアクセサリーにしようとしたのだが、ナルキーソにいるトルベンに相談したところ、そう言う事なら指輪を送るのが一番だと言う事で、皆の事を思いながら誠心誠意作ったのだった。
箱のギミックにはまだ気が付いていない様だが、彼女たちが落ち着けば気が付くだろう。結局その日の夜にテントの中でその事に気が付き、翌朝再びシャルロットたちに抱きつかれてしまったのであった。
次はいよいよ他国でのお話になります。
此処では一体どの様な事が、彼らを待ち受けているのでしょうか。
次回も是非読んで下さい。
 




