075 追加募集
おはようございます。昨日の夕方から雨が降っていて萎えますねー。
今回も少し短めですが、良かったら続きをどうぞっ!!
コンラーディン王太子殿下とエルヴィン宰相から王都アルドレートから帝都アバルトロース道のりの往復の護衛と帝都滞在中の待機と言う指名依頼を受けたレオンハルトたち円卓の騎士。
しかも、護衛対象がコンラーディン王太子殿下ご自身と言う事もあり、かなり重要な依頼でもあった。その帝都アバルトロース訪問には当然、王国の精鋭である近衛騎士団も同行する様だが、人数は僅か五十人と言う事だ。
これが多いのか少ないのかと言われれば、必要最低限の人数とも言える人数だろう。今回この任に就くのは近衛騎士団七番隊まである中の三番隊との事で、その三番隊の中でも精鋭中の精鋭が集められる予定になっている。
これにレオンハルトたち円卓の騎士が加わり、総勢約七十人前後の集団となった。これだけの人数であれば、魔物や盗賊に襲われる事は少ないし、襲われても返り討ちに出来るが、騎士団は基本王太子殿下を守るために動く事を考えれば、魔物の対処は冒険者が請け負う事になるはず。
そうなってくると円卓の騎士だけでは対処できないし、これだけ重要な依頼を一チームに負担させるのも可笑しい為、急遽別チームに増援を頼むべくレオンハルトとシャルロット、ヨハンの三人は冒険者ギルドを訪れていた。
「なるほどのー。王族の護衛依頼とは聞いていたが、まさか隣国までの護衛とは・・・」
レオンハルトは、直接ギルド支部長に相談する事にして、今王都にいる高ランク冒険者のチームのリストを見せてもらえないか交渉を行っていた。
「ええ。出来れば信頼できるチームを教えてほしいのですが・・・」
「まあ、これほどの内容だ。実力だけではなく、信頼も重要になってくるの。少し待て」
ギルド支部長は手元にあるハンドベルの形をした呼び鈴で、職員を呼びだし王都滞在中の高ランクの冒険者を調べる様に言い渡した。
呼び出された職員はすぐさま行動に移り、暫くすれば報告に来るだろうとの事だ。その間に此方は昼食を済ませようと話をしたら、支部長と一緒に食べる事になった。無論場所は今いる支部長室でだ。人数的には余裕があるが、落ち着いて食事は食べれないなと断ろうとしたら、既に用意させていると言う事だったのでその厚意に甘える事にした。
その言葉通り料理は直ぐに支部長室に運ばれてきた。普通の硬さのパンに茸と山菜の炒め物、カボチャの様なポタージュスープ、そしてメインディッシュがホーンディアーのステーキだ。ホーンディアーとは魔物ではなく獣に分類される鹿。特徴的なのは名前の由来通り角が特徴的で、幾つも枝分かれした角を持っている。
これが魔物化する場合、角の形の様に幾つかの種類に変わる。オーガの上位亜種の様なレッドオーガやイエローオーガの様な感じだが、このホーンディアーは亜種ではなく上位種が幾つかに分かれるのだそうだ。
角が槍の様な形状に変わりスッキリした体形と強靭な脚力で敵に突進するスパイラルホーンディアー。渦を巻き盾の様な形状の角に肉体は一回り以上大きくなり、硬い毛皮に覆われたシールドホーンディアーなどである。他にも幾つか存在するが、今は全てを説明しなくても良いだろう。
「これは早朝に狩ってきたから、新鮮だぞ?」
如何やら支部長自らホーンディアーを狩ったそうだ。時々腕を鈍らせない様に狩りに出かけては、こうして昼食に出し、余った物は職員に配っているのだとか。
そのステーキの味だが、淡白なあっさりした味に独特な獣臭を感じさせない・・とても食べやすい肉だった。レオンハルトもこのホーンディアーを狩った経験はあるが、食した事はこれまで一度もなかった。恐らくこのステーキの決め手はソースにある用だ。ソースの出来次第で良くも悪くもなる感じがする。
上品に食べる面子だけにがむしゃらに食べる者はいなかった。これがクルトだったらガツガツ食べていただろう。
満足の行く食事をした所で、職員が部屋を訪問し二枚の羊皮紙を支部長に渡した。
それが、先程お願いした王都に滞在している高ランク冒険者の一覧なのだろう。
一通り目を通した後、その羊皮紙を此方に渡してきた。羊皮紙に目を通す三人。
「Aランクの冒険者チームがあるけれど・・・依頼で出ているのね」
「Bランクのチームで依頼を受けていないのが・・・月の雫に青い稲妻・・・森人の集いか・・・・知っているのは森人の集いで、見た事があるのは青い稲妻だね」
リストには、チームの名前とチームのランク。それにチームメンバーが記載されており、個々のランクも記載してあった。後は、現在依頼を受けていて出ている事も記載してあった。
「青い稲妻はどういうメンバーなんだ?」
ヨハンが口にしたチームはどれもレオンハルトは知らなかったので、知っているであろう事をヨハンに尋ねた。
一拍考えるが、直ぐにしっくりくる答えを口にした。青い稲妻の構成員は全部で八名いて、リーダーである人物と他二名がBランクで他がCランクだそうだ。加えて、実力はあるが態度がデカい上に、喧嘩っ早いらしい。今回の依頼には不向きなようだ。
次に森人の集いは、高ランクと言う意味だけでなく構成員も独特なメンバーが多い事で有名だそうだ。構成員は六名で、うち四人がエルフなのだそうだ。残りの二人のうちの一人は人族で、もう一人は熊の獣人との事。男女混合な上、個々のランクもBランク四人にCランク二人と優秀な感じだ。それ以上は知らないようだったので、ギルド職員に人柄を聞いた。
「森人の集いは、人種差別を嫌う傾向にありますが、特にそういう感じがない人であれば問題ないチームだと思いますよ。遠距離主体なのが難点と言えば難点でしょうか?」
月の雫についても聞いてみると、此方は女性ばかりのチームの様で強さ的にもBランク五人にCランク二人、Dランク二人と言うわりと人数を揃えているチームの様だ。攻防共にバランスは良いそうだが、ただ若干ではあるが力不足の時もあるのだとか。今回の依頼では、問題ないだろうが女性と言う面から依頼人や他のチームへの配慮も必要になるかもしれない。まあ実際の所、そう言う事を気にする者はあまりいないらしいが。
命が安いこの世界では、女性が冒険者をすると言うのはある意味覚悟して、冒険者になっているのだろう。
「Bランクのチームだと森人の集いか月の雫だな。まあ両方でも良いかもしれないが・・・ん?」
レオンハルトは、チームリストに目を向けながら話していたら、ふとCランクのチームに気になる名前のチーム名があった。
「シャル・・・・これって、彼らのチームかな?」
そこに書かれていたのは、Cランクチーム赤い一撃と言う名前の文字。この名前は、ダーヴィトとエッダの二人に初めて出会った時、共に受けた依頼で知り合ったチーム名の一つだ。当初はDランクのチームだったが、今はCランクにまで上り詰めたようだ。
「あっ!?赤い一撃ってノーマンさんのチーム名だよね?」
「赤い一撃?聞いた事が無いけど・・・知り合い?」
シャルロットも気が付いた様で、赤い一撃のリーダーの名前を口にしていた。アーミーアント討伐の折に共に戦ったのだから、そんな簡単には忘れる事は無い。あの時はノーマンたちの赤い一撃と同格のチーム・・・カスパルが率いる影の牙もいた事を思い出して探してみたが、其方は王都には居ないらしい。
ノーマンたち赤い一撃は、拠点を交易都市ナルキーソから王都アルデレートへ移したのかもしれないし、偶々王都に居て活動しているだけの可能性もあり得る。
レオンハルトとシャルロットの二人は赤い一撃を知っているが、一緒に同行していたヨハンは赤い一撃のチームの事を知らなかった。ユリアーヌやヨハンたちがナルキーソで活動していた頃は、彼らは別の街を拠点に活動していたのだろう。
ヨハンに彼らについて説明し、どういう経緯で関りを持ったのかも話した。
「良い感じの人たちだね。彼らが良ければ誘ってみたら良いと思うよ。知らない人よりも知って居る人の方が連携取りやすいし、こっちの実力もある程度把握しているだろうからね」
確かに彼らなら此方の戦力を確認しなくても理解してくれるだろう。これが全く初めて組む連中になると一から説明が必要なるだけでなく、十中八九疑われる。こんな未成年の子供が本当にBランクなのか。加えて大した実力はないのだろうからと・・・。
そういう意味を考えると彼らを味方につけた方が良いかもしれない。正し、チーム全体として人数は増えているが、メンバーの半分は知らない連中になっていた。当時のメンバーも入れ替わりがあったのだろう。
となれば、次にBランク冒険者をどうするかだ。森人の集いか月の雫のどちらかを選ぶ必要がある。こればかりは直接会ってみてから判断した方が良いだろう。と言う事で、支部長に伝えて森人の集いと月の雫・・・それに赤い一撃を冒険者ギルドに集めてもらうようにした。
「月の雫なら一階の酒場にいるぞ?森人の集いは午前中ホールに居たのを見たから、今頃は街中をうろついていると思うぞ?・・・しかたがないギルド側で探させるか。赤い一撃は分からないからそっちも調べさせるか」
「助かる。なら先に月の雫のメンバーに会って来るか」
一同はそのまま部屋を退出し、一階に設置された酒場に移動した。酒場に向かう最中に支部長は受付の兎耳の獣人の職員に森人の集いと赤い一撃のメンバーを探し、ギルドへ連れて来るよう言い渡した。
彼女の種族・・・兎人族と言う種で、聴覚と俊敏さが優れている種族だ。この広い王都の中から探し出すのであれば、彼女の様な優れた能力を持つ獣人族か。探索系の魔法が使える者を頼るのが早い。
人海戦術も一つの手ではあるが、そうすれば他の業務が機能しなくなるため、余程の事ではない限りその手段を取る事は無い。
外へ探しに出ている間に、酒場にいると言う月の雫のメンバーの元に向かった。
冒険者ギルドの中にある酒場と言う事もあり、そこに屯っている者の殆どが剣や杖などの武器を携帯しており、軽装の革鎧やハーフプレートを身に付けている者もいた。爽やかな顔つきのイケメンの青年や体格ががっちりした如何にも肉体系の冒険者ですみたいねワイルドな中年。まだ昼だと言うのにカウンターに座っているだけで周囲の男を虜にしそうな雰囲気を纏う女性など様々な冒険者が酒を飲んで盛り上がったり、静かに味を楽しんでいたりした。
昼なのに酒と思うかもしれないがこの時間に此処に居ると言う事は、今日は冒険者として活動しないと決めた連中か、良い依頼が無かったから休みにしたみたいな冒険者たちが各々に過ごしていたのだ。中には、これから出てくる依頼待ちの者も居なくはないがどちらかと言えば少数派だろう。そもそも依頼を待っている冒険者であれば基本的にお酒は控えているものだ。
依頼を持ってきた依頼主と話をする事になった場合、相手からアルコール臭がしたら、冒険者としての信用を失いかねないからだ。
そんな連中からの視線を受けながら奥に進むと、周囲から少し浮いた雰囲気を出すテーブルがあった。
「彼女らが月の雫のメンバーだ。彼女がリーダーのエミーリエだ。遠距離主体のメンバーで数少ない接近戦担当だよ。隣に居る灰色の髪の毛の子がコローナで、反対側に居るのがカトリナだ。対面に座っているのがシェリーだ。他は出かけていない様だな?」
シェリーは後ろ姿なので容姿を確認する事は出来ないが、エミーリエとカトリナは二十代半ばぐらいのお姉さんで、コローナは十代後半位の容姿をしている。三人とも容姿は優れている方だが、その容姿とは裏腹に実力は見た目からは想像がつかないらしい。
まああの年齢で既にB冒険者として活動しているのだから、相当の修羅場を潜り抜けているのは間違いない。
実際に彼女たちは、剣士や魔法使いとして天才に近いレベルの才能を有していたのだ。
支部長が説明をしてくれている間に別の職員が彼女たちの元へ行き話始めていた。
「月の雫の皆さま、ご歓談中申し訳ありませんが支部長がお呼びです。一緒にご同行して頂けますか?」
「支部長が?」
「何の用でしょうね?」
エミーリエとカトリナが発言し、職員が此方を指さす。如何やら支部長があそこにいると言う事を伝えているのだろ。その横には俺やシャルロット、ヨハンも居る。後ろにソフィアも待機している。月の雫のメンバーは此方を向くと驚いた表情を見せる。
レオンハルトたちは何故か分からない様子だったが、実は魔族襲撃事件の際に彼女たちもシャルロットたちと共に戦闘に加わっていた。とは言っても参加していたのは魔法使いのメンバーだけで、エミーリエなど接近戦を行う者たちは国民の避難誘導を行っていたのだ。だから最前線で戦っていたレオンハルトたちの事はよく覚えていた。
職員に連れられてやって来た四人は、軽く挨拶を交わして人が少ない場所へ移動した。流石に昼間の酒場とはいえ人が大勢いる場所で話すような内容ではない。
「依頼ですか・・・・内容はどういった内容になりますか?」
「今は詳しく話せないが護衛依頼になる。今他のチームにも声をかけている所だ」
レオンハルトの説明で眉を顰めるエミーリエ。他の三人も幾ら王都を救った英雄として称えられているレオンハルトでも説明が不十分な上、自分たち以外にもチームを誘っていると聞かされれば表情が険しくなるのも無理はない。
「どの道、君たちも全員揃っていないのだ。仲間たちも集まってからきちんと話を聞いた方が良いであろう?それに、護衛依頼ではあるが、報酬は破格だぞ?」
たしかに、報酬は破格と言っても良い値段をエルヴィン宰相と約束を交わしている。チーム数もこれと言って上限は無いが、足手まといを連れて行く事は考えられないし、複数のチームが行動を共にするのであれば連携が出来るかどうかも重要なポイントの一つになる。
「そ、そうですか。分かりました」
それから半刻程で月の雫のメンバーに森人の集い、赤い一撃の面々が冒険者ギルドの中会議室に集められた。
「それで?俺たちを此処へ招集したのは何故だ?」
森人の集いのリーダーでエルフ族のアーヴィン。齢二百歳越えの長寿なのにも関わらず見た目は二十代半ばの好青年に見えるかなり美形の顔立ちの人物。絹の様な細く輝く長い金髪を後ろで結び束ねている彼は、急な呼び出しに少しだけ機嫌が悪そうに見えた。
そのアーヴィンの周辺に彼の仲間であるエルフ族や人族、獣人族が待機している。
「私も、護衛と言う事は聞いているけど、誰を何処まで護衛するのかしら?」
月の雫のリーダーのエミーリエ。彼女の近くには先程の三人の女性の他にも五人の女性が加わっていた。
彼女の護衛と言う言葉で、一層険しい表情を示す森人の集いのリーダー、アーヴィン。
「ああ?護衛のためだけに呼ばれたのかよ?Bのチームが三つも必要なのか」
その言葉に赤い一撃のリーダーのノーマンは少し苦笑いをしていた。四つのチームの中で唯一Cの冒険者チームなのだ。
まあ、チームとしてのランクはあくまでメンバーの総合的な力をランク付けしただけの事。
「此処に皆さんを呼んだのは自分です。まずは集まっていただいた事感謝します。それでは、今回の依頼の説明をしますが、幾つか注意事項があります。依頼を受ける受けないはそれぞれのチームの判断に任せますが、話を聞いた場合は、不参加後情報を漏洩させる事を禁じます。これを守らなかった場合は、冒険者としての資格の剥奪を行います。これは既に支部長と話を付けているので、確認してもらって構いません」
そこまでの言葉を聞いて、全員が息をのんだ。
情報を漏らす・・・・言わば漏洩が発覚した場合、冒険者としての資格の剥奪は、重度の犯罪を起こした時とほぼ同じ条件になる。
「では、説明を」
すると、レオンハルトの横で待機していたヨハンが一歩前に出て話始めた。
「今回我々円卓の騎士は、ある指名依頼を受けました。それによると、とある人物を隣国アバルトリア帝国の帝都アバルトロースまで行く際中と帰りの護衛任務でした」
帝都に赴く為の用事については説明しなかったが、誰が行くのか、依頼料がどれくらいなのか、個別で騎士団が同行する事など、今朝話をした内容をすらすら話す。
皆、思わぬ大物の名前が挙がった事で、一気に部屋の中の重圧が変化した。
かなり精密に説明した事で、極力質問されない様にしたが、それでも幾つか質問が飛び込んで来た。
「騎士団の規模は?」
「精鋭五十人ぐらいだ」
「戦闘時の配分は?」
「原則倒したものと考えている」
「馬車の用意は?」
「各自でお願いする。・・・・他はないか?――――ないようなので、この依頼に参加するか決めてもらえるか?」
その言葉を聞き、仲間同士で話し合う。直ぐに決まるチームもあれば、最初のチームの意見が固まってから倍以上の時間が経過して漸く最後の一つが結論を出した。
「森人の集い。この依頼是非参加させてもらおう」
来た時は不機嫌です雰囲気万歳だったのに、今はその雰囲気は感じられなくなった。
「月の雫もこの依頼一枚噛ませてもらうわ」
此方は、慎重に話し合ったのだろう。かなり時間を有していた。長々とメリット、デメリットを話し合い結果的に行う事になった様だ。
最後の赤い一撃は、三チーム中最も早く結論を出しており、当然参加するそうだ。前者の二つよりも実力は劣るものの、此方の事を知っていると言う事もあり三チーム中最も連携しやすいだろう。
まあ、当時に比べれば、此方はかなり人数が増えたから、連携が出来るかどうか不安ではあった。
いつもありがとうございます。来週は14日に投稿いたします(予定ですが)。
もう少ししたら温かくなりますかね?
皆さんお体に気を付けてください。