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071 人は集団になると脅威です

 アンネローゼを無事にアシュテル孤児院に送り、その日のうちに家具やトルベンに発注していた物を受け取ったり、ちょっとしたトラブル等の対処に手間取ったりして慌ただしく一日があっという間に過ぎた。


 トラブルと言うのは、今回レオンハルトが頑張って作った浴室だ。


 この世界・・・と言うか、アルデレール王国は浴槽に身体を浸ける習慣がなく、あったとしても膝下ぐらいの足湯の様な物があるぐらいだ。それでもかなりの裕福な者たちでない限りはまず行う事はない。


 ティアナやリリーは実家にバスタブの様な物があるそうで、その中で身体を洗ったりしていたらしいが、湯船に浸かった事は無いと話していた。


 マウント山脈の麓に作った隠れ家で生活した事があるメンバーは、あそこにも浴槽を作っていたので知っていたが、孤児院時代には作っていないので、アニータやユリアーヌたちも浴槽は初めての経験だったようだ。


 当然、男女別々に入浴した。浴室自体はかなり大きく作っているので、数人では入れるが流石にそこはきちんと守らなければならないだろう。入り方はレオンハルトとシャルロットがそれぞれ男性陣と女性陣に指導する。


 ほぼ皆が初めてと言う事で、入浴に費やす時間が延び結果的に三人程のぼせてしまった。


 そして、今もローレたちが四苦八苦しながら皆の朝食を準備している。此処でも浴室同様に心機一転、新しい魔道具が多く設置されていてその使い方に苦戦を強いられていた。


 流石に使い方の説明を碌にしていなかった事に気が付き、レオンハルトとシャルロットが一緒に作って、各種魔道具の使い方を教えた。


「この屋敷って普通の貴族の屋敷よりもかなり豪華なんじゃない?」


 エッダの言葉にこれまで誰もその事を言わなかった仲間たちが、徐に口を開く。


「レオンのする事はいつも凄いが、今回は一段と力を入れている・・・・とは思う」


「レオンハルト様は私たちには思いつかない様な事を何時もやってのけてしまいますから」


 まさかの評価に苦笑を浮かべるレオンハルト。他の仲間たちもそれが分かっているから、少し困った様な表情で笑っていた。


 何時もの光景と言えばそれで終わってしまうが、これがレオンハルトたちの日常でもあった。


「今日は皆どうする予定だ?」


 屋敷の事で此処二、三日働いて貰ったため、彼らを今日は休みにしている。まあ、冒険者として活動したり行商人として活動したりしていない日は、毎日休みみたいなものだが・・・。


「俺とヨハンは、冒険者ギルドに足を運ぶ予定だ。依頼の確認と情報収集に行って来る」


「だったら私も同行して良い?手紙を出したいから」


 ユリアーヌとヨハン、エッダが冒険者ギルドに向かうそうで、エッダの手紙の送り主は両親宛だとか。年に二回程手紙を送っている。


「私は治療院に行きたいのですが、宜しいでしょうか?」


「行くなら私も同行するわよ?」


 エルフィーはこのパーティーの回復役。この国の教会責任者である枢機卿の孫と言う事もあり、日々休みの日は教会や治療院に足を運んで聖魔法の練習も兼ねて治療のお手伝いをしている。リーゼロッテも今日はエルフィーに付き添って治療院に同行するらしい。彼女もまた聖属性魔法が使える一人だが、それ程上手くないので練習をしたいのだろう。


 因みに治療院は、教会が運営する病院の様な場所だ。小さな町や村は治療院が無く教会の中にある一角で治療がなされている。過去にレオンハルトがレカンテート村でギガントボア討伐の折に世話になった場所だ。


 此処王都には当然だが治療院が数か所あるそうで、その一か所を今日は訪れるのだろう。


「分かった。クルト、暇なら二人に同行してくれないか?」


「いいぜ。特にする事もないしな」


 こういう時クルトは率先して動いてくれる。とても頼りになる仲間だ。リーゼロッテもいるから何かあっても問題は無いだろうし・・・。


「俺も特に予定は無いから、少し街をぶらついてくる」


「あーそれ、わたしも行きたいっ」


 ダーヴィトの予定にアニータが同行を求め、それを承諾していた。


「ぶらつくなら悪いけど、商業ギルドにこの手紙を渡してきてくれないか?」


 ダーヴィトは嫌な顔一つせずに手紙を受け取った。商業ギルドがある場所の近辺に行かないのであればこの後、直接自分で持って行こうと思ったが聞けば商業ギルドの近くをウロウロするらしいので頼む事にした。


 これで予定が決まっていないのは、レオンハルトとシャルロット、ティアナとリリーの四人のみ。ローレたちは屋敷で待機する者と出かける者たちの馬車の御者をする者に分かれる。


「レオ様は今日何をされるのですか?」


「そうだな・・・・新しい使用人たちはティアナたちにお願いしているから良いとしても、もう少し数は増やしておいたほうが良いかもしれないな」


 ローレたちは、屋敷の使用人として購入した奴隷ではなく、行商人として働いてもらう為に購入している。だが、屋敷を手に入れてから彼女たちには行商人と使用人の両方をさせる事になるので負担が大きくなる。奴隷でない正規の使用人が屋敷で、奴隷たちが行商人と言うのも構図としてはおかしいと言えるため、新たに使用人の補佐をする奴隷を購入する必要があった。


 そうしなければ、ローレたち奴隷の世話も使用人たちが行わなくてはならないからだ。


「また、あのお店に行くの?」


 ローレたちを購入した時に同行していたシャルロットは直ぐにレオンハルトの言いたい事が分かったようで、少し気難しい顔をしていた。


 まあ俺自身も奴隷を購入すると言うのは、余り良い気分ではない。そもそも人身売買は前世では犯罪行為だ。それをこの世界では合法としているのだから、気持ちを切り替えると言う事は直ぐには出来ないだろう。


 もし、購入して罪悪感が残るなら、奴隷たちも一般人と変わらない扱いをしてあげたいという願いを叶える事ぐらいしかないし、現にローレたちにはそういう生活を送らせる様に心がけている。


 朝食の片づけをさせている間に皆は準備を始める。馬車は行商用の馬車が三台と貴族用の馬車が一台あるため、ユリアーヌたちとエルフィーたち、ダーヴィトたちに俺たちの四グループに分かれて出発できる。先の三組は外出用の服装に着替えるなり、それぞれリンとローレ、ソフィアとリタ、ナディヤとランとで出かけている。


 俺はと言うと、シャルロットたちの着替えを待っているとエリーゼが急いで駆け寄ってきた。


「慌ててどうかしたの?」


 エリーゼとラウラの二人は屋敷で留守番をする予定で、御者はルナーリアがしてくれる事になっていた。額に汗を流し赤い髪の毛が頬に張り付いていたエリーゼは、息を整えるため深い呼吸を数回してから口を開く。


「ご、ご主人様。正門にたくさんの人が来られておりますっ!!」


 今日は来客の予定はなかったはずだと思いながら『周囲探索(エリアサーチ)』で屋敷の周囲を確かめる。


 すると、エリーゼの言うように十数人・・いや数百人が屋敷の外に待ち構えていた。


「今日って予定何かあったっけ?」


 エリーゼに問うも彼女は首を横に振るだけ、そもそも予定はなかったから自由行動にしたのにこれでは外に出られない。先に出た三組はこの人だかりの中、どうやって出発したのだろう?


「先程は数人程度しか居ませんでしたが、ご主人様が乗られる馬車の準備をしていましたら、どんどん人が集まり出して・・・」


 なる程、ユリアーヌたちが乗っていたのは行商用の馬車だったから、この屋敷に用事があった人たちだと考え集まらなかったが、貴族用の馬車が用意されれば高確率で当主のレオンハルトかそれに準ずる者が乗ると判断し、正門の前に集まったのだろう。


 ルナーリアもその光景に若干恐怖を覚えて、屋敷の中に引き返してきた。おいおい、流石に馬たちを馬車に装着したまま逃げてきてはいけないだろう。馬たちも何処となく興奮状態にあるみたいだし・・・。


「外が騒がしいわね?」


 階段の方に視線を向けるとティアナが、お嬢様風の恰好で降りてきた。あまり見る事のない光景に思わず唾を飲み込む。見た目かなりの美少女と言って差し支えないが、服を変えるだけでより一層美少女に磨きがかかった感じになる。


「レオンくん。どう?ティアナちゃん可愛くなったでしょ?」


 ティアナの後ろから続く様に降りてきたのは、シャルロットとリリーの二人。二人も同様にお嬢様風のフリルをあしらった服を着て現れた。


 ティアナの印象の変化にも驚かされたが、リリーも同様に驚かされる。そして、シャルロットに至っては目が離せなくなったと錯覚させられる程の美少女になっていた。


 これだけの変化を遂げたのには、如何やら軽く化粧を施したからだと言う。化粧道具は何処から持ってきたのかと思ったら、アンネローゼからこっそりプレゼントされた様で、それをシャルロットが二人の分もメイクしてあげたと言う事らしい。


 厚手の化粧ではなく、ナチュラルメイクなだけに素材を最大限に生かせていると素直に感じた。


「何かあったの?」


「正門に凄い人数が押し寄せているみたいなんだ」


 何故この様な状況になっているのか分からないレオンハルト。それに同調するシャルロット。


 人が押し寄せている状況を真っ先に理解したのは、ティアナとリリーの二人。二人から訳を聞こうと思ったが、馬たちの興奮がより一層高まっているのを感じ取り、このままでは庭中を走り回ると考え、取り敢えず玄関の戸を開ける。


「あっ!!アヴァロン卿だッ!!」


「レオンハルト様――ッ!!私の娘を是非、お傍に――――っ」


「どうかご自分を雇っていただけませんかッ!?」


「うちの息子は、かなり気配りが出来ると自負しております。だからどうか――――」


「妹はまだ七歳ですが、是非貴方様の妾に」


 ・・・・・は?


 なにこれ?玄関の戸を開けただけで、正門にいた人たちは門が壊れるのではないかと言うぐらい一気に押し寄せて来た。そしてそれぞれの用件を口走る。


 娘や妹をお傍に置いて下さい等は、給仕係(メイド)として雇用してほしいと言う事なのだろう。気配りが出来る息子や弟、自分自身をアピールする者も執事や私兵として雇用してほしいのは分かった。


 だが、時々聞こえる愛人や妾と言う発言はどうなのだッ!!おかしいだろッ!!


 百歩譲って同年代ぐらいの子ならまだしも、七歳の少女や三十過ぎのぽっちゃり体系の女性が妾になるのはどう考えてもおかしい。


 七歳児に手を出すとか犯罪の香りしかしない。ただでさえ、同年代のティアナやリリーたちですら、ちょっと戸惑う若さなのに、それを更に下回る少女は流石にドン引きでしかない。


 先に言おう・・・・・俺はロリ好きではないッ!!誤解されない様に二度言うが、ロリ好きではない。子供が嫌いかと言われれば、好きだが・・・それは、恋愛対象としてではなく親みたいな立場から見ての話だ。恋愛対象として見た事は一度もない。


 それと、精神年齢がおっさんに近いからと言って、外見はまだ子供の俺に三十歳を超えた女性が言い寄るのもどうかと思う。はっきり言って倍以上離れた人だ・・・普通考えられないだろう。余程の美人かお金持ちなら可能性は無くもないが・・・・。お世辞にも美人とは言えないその人を妾にするぐらいなら、独身貴族を貫く方がましと思える。


 そんなくだらなくもないが、話は置いておいて、まずは馬たちの興奮を鎮める方が先だ。直ぐに玄関の前に停めている馬車・・・の馬たちに駆け寄った。手綱を持ち、馬たちを宥める。


「レオンハルト様ッ!!どうかお話だけでもッ!」


「アヴァロン卿、必ずや役に立って見せますぞ・・・・」


 役に立ちたいなら黙って居てほしい。外が騒がしいから馬たちの興奮は余り静まっていない。『範囲遮音(サイレントフィールド)』で、屋敷の外にいる外部の音を遮断した。口だけはパクパクと動かしていたが、声は全く聞こえなくなった。


 馬たちが落ち着いた所で、エリーゼに馬小屋に戻すように指示し、屋敷へと戻る。


「あれは一体なんだ?一瞬デモかと思ったが」


「デモが何か分かりませんが、あれは下級貴族や商人たちが貴族との縁を築こうとしての行動ですよ?」


「何でそんな事をするの?」


 ティアナの回答にシャルロットが質問をする。こう言う貴族社会の動きは二人ともまだまだ理解しきれていないのだ。何分、孤児院育ちで貴族の事は全くと言って良い程勉強していない。加えて言うならば騎士爵位になった時は本当に名ばかりの貴族と言う部分もあり、平民よりも少し扱いが優遇される程度だった。


 実際、レオンハルト以外の領地を持たぬ騎士爵の当主たちは、平民なのか貴族なのか良く分からない位置に居る者が多かった。


 即ち、準男爵位の当主と言うのはそのあやふやな立ち位置から初めて脱却すると言う事で、真の貴族の仲間入りを果たしたと言う事になる。簡潔に言ってしまえば、初心者と初級者の違いだろう。まあ騎士爵位を馬鹿にしているわけでもなく、彼らは彼らでしっかり自分たちの領地を守ったり、領地拡大のための開拓に勤しんでいたりする。


「新しくできた貴族家は、人手が足りないのは分かりますよね?」


 それは、今現在直面している事なので理解できるし、屋敷一つでこの状態なのだから、領地などを管理するなら更に人手が必要になる。領内を見回る私兵に、財政管理をする者たち、事務管理をする者たち、執事に給仕係(メイド)、開拓があれば開拓案を話し合う者や指示する者たち等、上げればきりがない位の人手が必要になる。


 だが、貴族と言うものは妻を複数人持っていたり、女遊びだけして妊娠。子供が産まれるも認知しない場合(ケース)もあり、貴族の子供はわりと溢れている。その者たちが成長し家の後を継げない者が仕事先として、私兵や財務官、事務官、代官になるのだ。そして当然の事ながらその席も既に満席状態。常に席空き状態の開拓作業に関しては、跡取りになれない貴族の子たちも働きたがらないので、技術を身に付けてその職に就くしかないのだ。


 そんな中に、色々な役職が空席状態の新規で立ち上がった貴族家が出来れば、こぞってやってくるのは明白。皆新年も明けて漸く今年初めの仕事が我先にと新しい貴族家へのコネクション作りだったのだ。


「それで昨日の夜、アンネ先生があんな事を言っていたのか」


 ティアナとリリーから説明を聞いたレオンハルトは漸く腑に落ちた顔で納得した。此処で初めて、昨日アンネローゼから言われた意味を正確に理解したのだ。


「どうする?これだと外には出られそうにないけど?」


 シャルロットの言うように、この状態では出る事は愚か・・・戻って来るのも一苦労の状態で、何らかの形を取らなければ、暫くこの状態が続くらしい。実際にどの位の日数で収まるのかはティアナたちにも分からないと言う事だ。


「陛下に直接相談しよう・・・・エリーゼ?悪いけど一筆したためるから、王城に届けてくれないか?」


「畏まりました」


 その後、執務室でアウグスト陛下宛ての書状を書き王城へ持って行かせる。正門はあのざまだし、裏門も確認したが其方も人で溢れかえっていた。何処からこれだけの人間が集まったのかと聞きたくなるが、今はそれどころではない。転移魔法でエリーゼを治療院へと飛ばした。レオンハルト本人が直接王城に転移しても良いがそれだと後々面倒な事になりかねない為、治療院にいるエルフィーたちの馬車を使用する事にしたのだ。


 エルフィーに事情を話して馬車だけ使用する。そのままエリーゼには王城に向かってもらい城門を守る騎士に書状を手渡すように指示した。


 一刻ほどしてから、数名の騎士が屋敷にやって来た。その中にはエリーゼも一緒に同行していたので無事に届けられたのだと安心した。


 群がっていた人たちも道を開けて騎士たちが通れるようにする。流石に騎士の行く手を阻むつもりはないのだろう。


「陛下より書状を預かってまいりました」


 一人の騎士から上質な紙を使用した手紙を受け取る。裏にはきっちり封蝋がされており、家紋は王家が使用する印が押されていた。


「それと、この事態に対して対応してくださる方々を連れしてきました」


 すると騎士たちが護衛してきた馬車から四人の男性が降り立つ。一人は二十代前半ぐらいのイケメンで、長身にスラっとしたスタイルは、前世でモデルでもできる程の見た感じだ。赤髪の短髪にキリっとした目元が少し相手を威圧している風にも取れるが、全体的に見てもかなり女性にモテる容姿をしていた。


 次に降りてきたのは、二十代後半のまあ当たり障りのない感じの人だ。眼鏡をかけており先程の人とは完全に真逆の真面目感を漂わせる秀才っぽい人だ。この人は魔法が使えるのだろう。薄っすらと魔力で防護幕を形成していた。


 三番目に降りてきたのは、優しそうな感じの爽やかイケメン。年齢も十代後半から二十代前半ぐらいの見た目をしており、金色の長髪を後ろで結っていて遠くから見たら女性と見間違いそうになる感じの雰囲気(オーラ)も醸し出していた。この人も魔力を感じる事から魔法が使えると判断した。何処かで見た事もある容姿をしていたので不思議に思っていると最後の一人が馬車から降りてくる。


 此方は四十代前半と思われる人物で、これまでの人たちと違い年齢が高いせいか渋さを感じさせられる。灰色のオールバックに切り揃えた髭が、見た目よりも年齢を高く見せていた。


(誰だろう?王城で働く人たちかな?)


「レオンハルト様、順にご紹介させていただきます。まずは・・・・」


 騎士の説明では、レオンハルトの予想通り皆王城に勤める者たちだった・・・・赤髪の青年は子爵家の三男にあたる人物だそうで、家の跡を継ぐ事が出来ない事を理解していたため、早い段階から王城で内務に携わろうと努力し、現在は内務大臣のもとで働く中心核の一人だそうだ。


 次に現れた人物は、王城勤務の紋章官の一人で彼もまた貴族としての身分がある。男爵家の四男として教育を受けただけでなく紋章官と言う役職に就いた事で、準男爵位を陞爵している立派な貴族当主だ。


 三番目の金髪の青年は、ティアナの遠縁にあたる様で現在は、王城を守る魔法士だそうだ。ティアナも彼との面識がある様なので、陛下か宰相あたりが気を利かせたのだろう。因みに彼は伯爵家の六男と言う事もあり、現在は実家である伯爵家から出ているそうだ。


 最後の四十代前半の男性は子爵家の当主をしており、王城では剣術指南役として王太子殿下や王子たちに剣術を教えている人物らしい。王城や各街を警備する騎士団や兵士たちの多くは彼や彼の父親から教わってきている。


「よろしくお願いします。ヴァンフリート卿にイステル卿、それにアルノー殿とカミル殿も・・・」


 ハントムート・ヘンリック・フォン・ヴァンフリート子爵、アンスガー・ブルーノ・フォン・イステル準男爵、ノルドハイム男爵家の四男アルノー・ヘンリック・フォン・ノルドハイムとアルベルト伯爵家の六男カミル・ロータル・フォン・アルベルト。


 剣術指南役に紋章官、王国騎士の魔法士、内務関連の者と担当職種は異なるが皆王城に勤める立派な役職の持ち主たち。彼らがこの事態にどう対処するのか見当もつかなかったが、四人の中で最も権力を持つヴァンフリート子爵が説明してくれた。


「アヴァロン卿。年始早々に大変でしたな。国王陛下の命により我々がこの事態に対処させていただく。まずは・・・」


 正門に集まっている者たちを落ち着かせるところからの様で、これに対処するのがヴァンフリート子爵と魔法士のカミルだそうだ。騎士たちも一緒に対処するらしいが、事を荒立てない様にするためにカミルは魔法で鎮静化させる。それでも引かない場合はヴァンフリート子爵が威圧で相手を委縮させるらしい。


 イステル準男爵とアルノーは、落ち着いた者たちをレオンハルトと共に面接を行うのだが、全員を面接するわけにも行かない。何せ何百人と集まっているのだから、一人ひとり面接していたら一日では終わらないのだ。


 本当に面接をするらしいが、それにはきちんとした日時を決めて、雇用をどの程度するのかどの仕事を欲しているのかなど決めて行く必要があった。だったら何故二人は今日この場に来ているのかと言うと、この集まった人たちの中には、貴族当主も少なからずいる。流石に貴族当主たちを蔑ろにできない為、それらを見分ける紋章官とその者たちと話を付ける内務職員と言う事らしい。


次回は2/14に投稿します。その代わりに2/16の定時投稿は出来れば投稿しますが、執筆が進んでいない場合はお休みさせていただきます。

ご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくお願いします。

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