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069 王都の屋敷

先日、うちのペットが一匹・・・老衰で亡くなりました。

生きているのだから、必ず死を迎えるのですが、やはり悲しいですね。

一昨年前も一匹亡くなり、遂に三匹いたのが、最後の一匹となってしまいました。

この子も頑張って長生きしてほしいですねー。


さて、此処からは気持ちを切り替えて、読んで頂ければと思います。

 王城の帰りにエトヴィン宰相からもらった屋敷を見に行く事にした。


 幽霊屋敷のようなイメージがあったのだが、実際はかなり大きな屋敷で、庭も広く。外観は普通の屋敷に見える。門の扉を開けて、馬車で庭を進み屋敷の入り口に立つと、より豪華な屋敷だと感じさせられた。


 そもそも立地も一等地と言う事でかなり良い場所にあった。王城までは馬車で十分以内に着ける、周辺も貴族の屋敷が多いので、割とゆったりした感じ、買い物に行くのは少々不便かもしれないが、それでも馬車で十分ぐらいだから知れている。


 良くこれまで売りに出されなかったなと思うが、実際は王家が暫く管理されていたのと、ヴァルザー侯爵が使っていたと言う事で誰も購入しようとしなかった事、最後に屋敷そのものがかなりの高額で、ヴァルザー侯爵が使っていなかったら売れてたが、使っていたからこの金額で買おうと言う者がいなかったのだ。


 結構高そうだな・・・・こんなの貰って良かったのだろうか?


 取り敢えず、鍵を使って中に入る。


「おおおー。これは凄いっ」


「本当に貰って良かったのかな?」


 シャルロットは、この家の価値を知らないが、知らない者が見ても分かるぐらいの屋敷。誰も住まなくなって十年以上経過しているため、所々ガタが来ているかと思っても居たのだが、綺麗にされていた。これもフォルマー公爵家の使用人たちが頑張ってくれたおかげだろう。


「悪い霊も感じません。きっと御爺様が対処してくれたのだと思います」


 悪霊と言った類もいない。ヴァルザー侯爵も知らないので、俺としてはかなり良い物件だと思う。それにもし気に入らなければ・・・・自分たちで改修すれば良いだけの事・・・・そう、改修すれば良いのだ。


 それに、この屋敷で皆が暮らせるようになれば、宿代が浮くので悪くはないはずだ。


 あれ?むしろ逆なような気がする。


 この屋敷の維持費の方が高いのではなかろうか?でも、屋敷は広く、その上庭も広いとくれば、維持費が高くても良い気もする。宿屋だとどうしても融通が利かない事もある。例えばベッドが硬いだとか、話し合いをする場所がないだとか色々な場所で困る事はあった。


 マウント山脈の麓の隠れ家は、住み心地が良かった。


 ベッドは好きなようにできるし、まったりした時間を過ごせるし、皆で話し合いも容易にできる。それにそれぞれがやりたい事もこれだけ屋敷や庭が広いと何でもできそうな気がする。馬たちも走り回ったりできるだろう。


「よし、四日後から此処に皆で暮らそうか?ティアナやリリー、エルフィーはどうする?一応、非公式ではあるが婚約者になったわけだけど・・・一緒に暮らすのは不味いか?」


 これまで散々共に過ごし、宿屋も一緒だった。部屋は別だったにしても、それが良くて、レオンハルトの所有する屋敷は駄目と言う可能性も良いと言うわけではない。


 宿屋はあくまで、共有する場所。どこかの街に貴族子女が泊まり、隣の部屋に男の冒険者が泊まる事もありえる。それが婚約前の女性がする事ではないと強く言えないが、屋敷は別だ。同じような状況であろうと、結局は誰がその場所の所有権を有しているのかと言う事だ。不特定多数の場所か、限られた者しか利用できない場所か。


 これは大きな問題でもある。


「私たちは、お父様から既に許可は得ています。なので、ご一緒させていただいてもよろしいですか?」


 婚約発表はまだ秘密にしなければならないのに、男の家で暮らすのはありとか、どう言う了見だ?


「そうか。それなら歓迎しよう」


「ねえ?レオン君なんで四日後なの?」


 アンネローゼの問いかけには、きちんとした理由があった。と言うか何故アンネローゼがまだ王都に居るのかと言うと、今日一日皆と過ごすと決めていたようだ。孤児院の方は修道女(シスター)やミュラーに任せているそうなので、大丈夫と言う事。どの道レカンテートに帰るには、レオンハルトかシャルロットに頼まなければならない。加えて言うならば、アンネローゼとリーゼロッテは、実家に帰って久しぶりの家族の食事会に招待されている。食事会は明後日開かれるので、それまでは滞在するそうだ。


 そうそう。四日後の理由だが。実は、前払いで宿屋の滞在日数がまだ残っているので、勿体ない。まあ本当は予定より早く出立する場合は、お金が返金されるのだが、俺はこの四日間の間に屋敷を魔改造・・・・魔改修する事に決めた。


 物を作るのは、それ程嫌いでもないし、前世の記憶も暴露している。と言う事は、この世界に知らない物を作っても、国王陛下から変な追及はされないと考えている。


 何せ、国王陛下も欲しくなるような物も作れば、反対はされないだろう。


「明日、もう一度屋敷に行ってから、色々決めようと思う。各自何か要望があれば、その時に教えてくれ。ローレたちも当然、そこで暮らしてもらうから、何かあれば言って」


 問題は、行商として活動する時だろう。ローレたちは、行商人としてこれまで色々教えてきている。まだまだ素人感はあるが、当初に比べればかなり良くなってきている。


 文字の読み書き、足し算引き算の計算、目利き等の観察能力。それらが出来るようになった今、彼女たちを屋敷の給仕係(メイド)だけさせるのは、勿体ないかもしれない。


 俺たちが冒険者として、他の街に行っている間の屋敷の管理の事もある。どこかで屋敷を管理する使用人たちを雇用しなければならないなと思いつつ、取り敢えず屋敷の改修を行ってから考える事にした。


「ありがとうございます。今晩中に話し合っておきます」


 ローレは頭を下げると、他の者も同じように頭を下げた。


「ふふっ。貴族らしくないけど、器の広さは貴族以上ね」


 アンネローゼが苦笑しながら語る。貴族の中には、使用人に対して最低限の対応しかしない貴族もいる。逆に好待遇で使用人を雇用している所もあるが、レオンハルトの場合は、使用人と言うよりも身分的には奴隷になるので、普通に接しているだけでも待遇が良いのに、使用人と同じかそれ以上の待遇なため、器が広いと言ったのだ。


 こう言う場合の奴隷は基本、ただ働き当然で雑用か使用人の下っ端として扱われることが多い。


 まあ、行商人として教育してきた事もあり、使用人と大差ない技量は備わっているので、奴隷から解放されても、生きてはいける。


 他愛ない話をしながら、確実に必要な物を頭の中で考えるレオンハルト。当然、洞窟に作った隠れ家と同じく、トイレは全て水洗式トイレのウォシュレット完備。便座にはヒーターも付ける予定だ。それと浴室も必須だろう。出来れば、露天風呂や岩風呂、噴流式泡風呂(ジャグジー)等も作りたい。露天風呂などは外から見えない方法を考える必要もあるし、風呂場やトイレには、魔法で覗かれない様な対策も講じる。


 台所は大型冷蔵室や冷凍室も設置し、調理器具なども充実しておきたい。


 各部屋には、冷暖房も完備する必要があるなーと考えていると、エルフィーから家の使用人について話が上がる。


「使用人は屋敷が完成してから募集しようかと・・・」


「それでしたら、お父様に頼んでみますよ?」


 エルフィーに続き、ティアナやリリーも同様の事を言う。伝手でもあるのだろうか?と考えたが、普段から使用人たちを雇用している人だ。きっとその手の伝手があると思い三人に頼む事にした。


「レオン?あの広い庭はどうするの?」


 庭まで手を出すつもりはないが、芝生や木々、花の管理もあるので、庭師も雇用したほうが良いのかなと思っていると、訓練場などの建物が欲しいと言う。確かに、そう言った建物も必要かもしれない・・・・と言う事で、離れを作ることにした。これは、設計図だけ此方で書いて、大工に任せる事にする。


 思いの他お金がかかりそうだな。


 他にも幾つか用意する物を考えてから解散した。











 翌日、早速レオンハルトたちは、馬車で貰った屋敷へと移動する。


 昨日も確認したのだが、やはりこの屋敷は周囲の屋敷に比べても大きい方に当たると再確認した。


「さて、まずは外観から見直していくか」


「「「「外観?」」」」


 不思議そうにする仲間たち。左右対称となった四階建ての屋敷。前世のハム・ハウスと呼ばれるイギリスにある十七世紀前半スチュワート王朝時代の貴族の館と古城ホテル・・・オートクレイホテルを足した感じの屋敷。


 (おもむき)があると言うか、古いと言うか・・・・実際は、建物自体は古いが、デザインは最近の流行に近い物がある。


 一周するだけでもかなりの労力を費やしそうな屋敷だが、レオンハルトは改修箇所を見つけては、事前に作っておいた図面に記録した。


 外壁を見たり、地盤を見たり、窓枠や塗装具合、屋根など隈なく見て回る事一刻。此処で漸く外観の確認を終えた。


 気がつくと、レオンハルトの持っていた図面には大量の文字やイメージされた図面がびっしり書き込まれている。


 特にひどいのが、三階から上の外壁だ。一階や二階は修繕しやすいが、三階以上となると料金が上がってしまう。その為、二階までは度々直したのだろうが、三階と四階は稀に直した程度の様だった。


 入り口のドアを開ける。玄関も無駄に広いが、家のスタイルの関係上、土足で中に入る作りだ。取り敢えず、来客の靴を綺麗にする必要があるため、玄関の入口に対策が必要とメモ書きをし、中に入った。正面に大きなロビーがあり、ロビーの奥の中央に二階に上がる階段があった。玄関から見える限りの部屋は一階だけで十箇所、二階は八箇所見える。奥の方にも通路や部屋があるし、この場所からは見えないが、三階に上がる階段もある。


 部屋割りも決める必要があるが、最初に共有部分の確認をして回る。


 一階部分に護衛する者の待機場所や応接室、大食堂、厨房、大広間、書庫、倉庫に幾つかの部屋がある。応接室は大きい部屋と小さい部屋の二種類あり来賓が立て続けに来た際に使用するのだろう。大食堂は、玄関口から向かって左側の殆どを占めており、パーティー等の折に使用される部屋になっていた。


 大広間は、応接室と同じ右側にあり、皆で集まったりできるようになっている。


 奥にある部屋は、トイレや使用人たちの居住地となっている他、階段下に倉庫、大食堂の奥に厨房がある。階段は建物の中央にあるため、階段の裏側は基本的に、来賓たちから見えない様、奥に設置されていた。


 まずは、この大食堂から見て回る。家具類は前の物をそのまま置いているそうだが、古くなっているので、殆ど破棄する予定だ。売れる物は既に売り払われているので、残っているの物は売れなかった屑同然の物とも言える。


 フォルマー公爵家のお抱え魔法使いや使用人たちが綺麗にしてくれてはいるが、年月が経過しており、壁紙は黄ばみ、床もかなり怪しい。


「全て張り替えた方が良さそうだな」


「これ剥がすだけで一苦労しそうだ」


「断熱材とか入っているのかな?」


 年が明けてまだ数日、冬季が終わり霜季に入ったばかりだが、基本は殆ど変わりないので、外に出れば息が白くなる。この屋敷も外とあまり変わらないぐらい寒いので、そう言った部分の対策がなされているか分からなかった。


「「「「「「ダンネツザイ?」」」」」」


 知らない単語が出てきて不思議に思う仲間たち。諸事情を知っているティアナたちですら、レオンハルトとシャルロットの会話について行けない時があるが、そのほとんどが前世の知識を用いた時。


「断熱材の確認までするなら、壁も全て剥がす感じ?」


「そうだね。素材は、魔物でそう言ったものに適したのがあったはず・・・・確か、クラウドシープの羊毛だ」


 クラウドシープとは、雲の様な軽い羊毛に覆われた羊の魔物の事。名前だけだと可愛らしいが、高さ二メートル以上あるので、羊の魔物でも大きい方ではある。クラウドシープの羊毛は、防護服として用いられるが、加工するのに時間がかかるとかで、クラウドシープの毛糸で作った服は高級品としても扱われる。それだけでなく、倒すのにもかなり苦労するらしく。見た目に反して手強さは脅威との事。


 火属性魔法などで倒すと羊毛が焼けるから使用できず、水属性も同じで商品にならなくなる。他の魔法は耐性があり、効果は今一つ。物理攻撃も対衝撃、防刃に優れ、攻撃が決まらない上、クラウドシープの攻撃は羊毛に絡めて窒息死させる。絡まれば、抜け出すのは至難の業の様だ。


「よし、ならそっちは、俺たちに任せろッ」


 クラウドシープ討伐に名乗りを上げるクルト。俺たちと言うのはヨハンとユリアーヌも参加すると言う事だろう。ついでにその中にアニータも含める事にした。多分彼女がその中で最も活躍すると分かっているから。


「では、午後から頼む」


 壁紙は、考えがあるので後回しにする。床や家具も恐らく大丈夫だろう。倒れない様にアレの準備も忘れないようにしなくては・・・。


 厨房はこの後、彼に依頼をして作成してもらう。厨房付き屋台の際にも世話になったから、恐らくイメージ通りの物を作ってくれるはずだ。


 トイレは、魔法の袋にほぼ完成しているのがあるので、それを仕上げて終わりだろうが、数が足りない場合は追加で作る必要がある。材料は揃っているからそれ程時間を必要としないだろう。


 屋敷全部の床、壁紙、天井などやり直すから問題ないし、家具も大丈夫だが、問題は装飾品だろうか。飾る物がなさすぎるので、これは何処かで買ったりしなければならない。


 一階の部屋を使用するのは、ナディヤ、リタ、リン、ランの四人。リンとランは、馬の世話のために一階が良いそうだ。四人の要望を聞いて部屋の改修を行う事にする。ナディヤとリタ、リンの三人が大きめの部屋一つに三人で使用するそうで、ランは小さい部屋を一人で使用する事になった、残り八部屋あるが、取り敢えず空き部屋になるが、一緒に改修はしておくつもりだ。住人が増えるたびに改修していては大変だからな。


 二階は、正面玄関の前にある中央の階段を昇れば上がれる。T字の様に左右に階段が分かれ、右側の通路と左側の通路がある。正し、両サイドの扉の上にある通路の扉は、十畳程度の客室があるだけだ。もう少し大きな部屋にしていないのかと言うと、そもそも大食堂と大広間は吹き抜けとなっている。その為奥行きがそれほど取れなかったのだ。


 階段を上って玄関から見えない位置にトイレや個室があり、三階に向かう階段も左右に設置されている。それと、トイレの近くに浴室を設置している。この個室には使用人が使う事になっており、後日追加で増やす予定だ。その使用人たちは、お客が泊まった際のお世話係をお願いする事になるだろう。


 三階、普通の食堂と小さな厨房があった。小さいと言っても料理店並みの広さはある。それと来賓用の浴室ではなく、住居人用の浴室がある。部屋も三十近くあるので、この場所にローレ、ルナーリア、ソフィアの三人と、ユリアーヌ、クルト、ヨハン、ダーヴィト、エッダ、アニータの部屋を設ける。ローレとルナーリア、ソフィアは三人で一部屋使用するとの事。リビングの様な場所も幾つかあるので、普通に暮らす分には、この階だけでも事足りる。当然各階にトイレは二箇所以上ある。三階から四階へ上がる階段も一箇所正面向かって左側にある。四階は、三階の延べ面積に比べて三分の一少なく、その代わりに広々としている。


 四階には、部屋が二十もあり、そのうち一つは団欒が出来る大部屋となっている。また書斎や執務室と言った部屋もあり、貴族当主が此処で書類業務を行うのだろう。まあ前任者は良からぬ事をしていたようだが・・・。


 四階には、レオンハルトやシャルロット、リーゼロッテ、ティアナ、リリー、エルフィーの部屋が設けられる。それと、お世話係としてエリーゼとラウラが配置する様で、一部屋を二人で使う様だ。他は皆それぞれ個室を用意された。


 部屋が多いと壁紙を変えるだけで一苦労だが、これも実は考えがあった。


 レーアに関しては、暫く婚約者として正式に発表され、結婚をしてからになるだろう。


 流石に、執務室の机や書籍の本などもないので、買い揃えたりするので時間がかかるかもしれないが、デザインだけ作ってしまえば、誰かに依頼すればよい。


 衣類関連は、プリモーロのハンナに頼めば良いだろうし、武器や防具、生活用品の金属関連はトルベンに頼めば済む。まあ、ハンナの場合衣類よりも染物が本来の仕事ではあるが、その両親が衣類関連の仕事をしているので、大して問題は無いだろう。


 後は、木材加工の職人、硝子細工の職人、薬学に精通した調合師、錬金や錬成に精通する錬成師、出来れば諜報員も欲しいところだ。


 一通りの部屋の改修場所や今後のデザインも終わった所で、皆でお昼を食べに街へ出た。今、街で大賑わいの大衆食堂で、ランドバードの丸焼きやライギュウのステーキ、生野菜のサラダなど頼み皆でシェアした。ライギュウは、この王都の近くにある牧場で飼育されている食用牛で、その味わいはオーストラリア産の牛に似ていた。


 食べ終わってから、各々別行動になる。


 リーゼロッテとアンネローゼは、明日の自宅訪問用の衣装の買い出しに行く。ソフィアを一緒に同行させている。ユリアーヌとヨハン、クルト、アニータの四人は、大量に必要となったクラウドシープの羊毛採取に出かける。ダーヴィトとエッダ、ランとリンにも商業都市オルキデオに買い付けに出かける。あの街は金属の鉱石がたくさん売っているので、色々買いに出てもらった。


 エルフィーは教会で、お勤めがある様なのでそちらに向かい。ティアナとリリーは早速、家に戻って使用人の相談に出かけた。ナディヤとリタ、ルナーリアはローレと共に露店で目ぼしい物の買い物に出かける。


 残されたレオンハルトとシャルロットは、二手に分かれて作業を開始した。シャルロットの方にエリーゼ、ラウラの二人を付け、食器類の生成をシャルロットが行い、二人は手分けして洗ったり拭いたりした。


 魔法で作る食器には、かなりの魔力制御(マナコントロール)が要求され、魔力も相当使う。作る食器類は前世でいうドレスデンクリスタルの物やマイセンクリスタル、ウェッジウッド、バカラなどの色々な食器を作り出す。真っ白なお皿や高度の技術を用いたドレスデンクリスタルを見て、エリーゼとラウラがとても興奮していたようだ。


 レオンハルトは、その間に屋敷中の床や壁、天井を剥ぎ取り、基礎と外壁のみ残した形だが、実際は外壁もかなり手を入れる予定なので、某テレビ番組の様な大改造になっていた。


 魔法で屋敷の壁などを一気に破壊し、破壊した大きい物は魔法の袋に入れ、小さい物は魔法で無くした。


「地面が陥没しているな・・・・これも魔法で陥没した部分を直してから・・・・あっ!!そうだっ。ついでに地下室も作るか」


 急遽考えたプランで、地下に向かって魔法を行使する。屋敷自体は杭などで支柱を地面に打ち込んでいるわけでもない。ただ地面に家を乗せている作りになっている為、容易に地下が作れる。となると外壁部分も手をつけたほうが良いかと改め直し、窓を全て外し、外壁も壊した。


 これだけの事をすると周囲から変に感じ取られるので、魔法で隠蔽もしっかりしている。屋敷の中に入らなければ、今まで通りの風景に見える様にしている。


 魔力の消耗が思いのほか激しく、少し休憩を取る事にしたレオンハルト。時々エリーゼがお茶菓子を持ってきた時は、屋敷がほぼ無くなっていたため、腰を抜かしていたが・・・。


「戻ったぞーっ!!って何だ、これはッ!!」


 ユリアーヌたちやダーヴィトたちが戻ってくると、敷地の外からは出る前と変わらない屋敷があったのに、敷地内に入った瞬間・・・屋敷が全壊に近い状態になっていた。

 魔力制御を誤ったのかと思い尋ねるが、急遽予定を変更してほぼ一から作り直す事にしたのだ。


 エトヴィン宰相が見たら気絶しそうなレベルの状態。フォルマー公爵家の使用人からは反感を買ってもおかしくはないが、見た目は前と同じように造るので分からないと思う。


 早速、集めてきてもらった素材を庭に出して、作業を開始する。休んだおかげで魔力は半分近くまで回復しているし、この後の作業は、皆で出来るため少し楽になる。と言うのも地盤基礎及び地下室は既に作成済み。基礎で使用した細骨材とセメントと水で作ったモルタルを使用し、手元に残っていた鉄鋼などで、異形鉄筋を組んで基礎の中に入れこんでいるので、以前に比べて強度は増す。


 モルタルの上から更にトゥリー・エントをウッドチップの様に細かくし、特殊な液体を染み込ませ防腐、防虫加工を施した物を敷き詰める。


 支柱部分も既に幾つも設置している状態で、休憩に入っていた。


「皆には、煉瓦作りをお願いしたい」


「レンガ作り?お店で買えばいいのでは?」


 粘土を大量に仕入れて、魔法で付与してから窯で焼けば、魔法を付与された煉瓦が出来る。その上に更に魔法を付与させれるため、手順は面倒だがより優れた煉瓦が作れるのだ。


 型枠や窯については、魔法で一気に作成しているし、粘土の方にも付与は済ませている。後は、粘土を捏ねて枠に入れて乾燥させて取り出し、窯で焼き上げるだけ。


「シャルは、粘土の乾燥を頼む」


 シャルロットも、食器類はすべて作り終えているので、ダーヴィトたちを迎えに行ってから、作業に参加しに来ていた。


 魔法があると、こう言う場合に非常に便利だ。普通であれば時間を有する部分も短縮させられる。リーゼロッテやアンネローゼ、ティアナ、リリー、エルフィーたちが戻ればもう少し効率が上がるのだが、今は皆出かけている。


 さて、自分は屋敷の骨組みを終わらせますかな。


 使用する素材は、トゥリー・エントやその上位種、最も荷重がかかる場所はアダマンタイトの支柱で支える事にしている。恐らく、家の素材で最もこの支柱が高価だと言える。


 オルキデオ訪問時に、地下に眠る恐らく人がまだ数百年は発掘されなさそうな場所に眠る数多の金属を回収していなければ、こんな事はしていない。珍しい鉱石や貴重な鉱石もかなり手元にあるが、何故か普通の鉄などは手元にあまりなかったから、ダーヴィトたちに買いに行かせたのだ。


 これは後で沢山使用する予定だ。


「ふう・・・・こんなもんだろう」


 日が沈むぐらいの時間まで作業をしていたが、今日はここら辺で終わりにするか。皆に終了を伝えるとかなり疲れたのか、地面にへたり込む。


 普通ではありえない速度で家の修繕・・・いや、この場合立て直しと言っても差し支えないだろう。基礎や実際の設計図があったからこそ、こんな反則染みた方法で造れているのだ。


 煉瓦もかなりの量を完成させている。ヨハンは火力担当で焼き作業をしたのだろう。一人だけ(すす)まみれになっていた。他の者は粘土まみれだったので『清潔(クリーン)』で汚れを落とした。


 残りは明日行うと伝えて、夕食のため街に出る。合流できていない仲間たちには、夕食の会場を伝えているので、直接そちらに向かうだろう。とは言っても宿屋の前にある飲食店を予約しておいただけの事。


 店につくと、既に中で他の者たちが待機していた。


「遅くなってしまった様だな」


「大丈夫よ?そんなに待っていないから」


「私たちは、さっき来たところだから・・・それより、凄い人数ね」


 ティアナたちが最初に到着し、アンネローゼたちが、ほんの僅かの差だった様で、気にした様子は見られない。


 人数はいつも大所帯になる。アンネローゼも分かっている事だが、まだ二日目なので慣れないのだろう。


「え?殆どやり直してる?」


「全壊ってどういう事?私聞いていないわよ?」


 まあ、外観と中のレイアウトを弄る程度と話していたから、ほぼ基礎からやり直すと聞いて驚いている。


 流石にアンネローゼが、怒り口調で話すのだが、地盤などを確認したら、まだ危険ではないにしても、いずれ崩壊する可能性があったのだから仕方がない。


「すみません。基礎を確認したら、かなり痛んでいましたので・・・」


「どうするの?フォルマー公爵様に見つかったら何て言われるか・・・」


 まあ、あげた物だから、何しようが勝手だが、流石に大金貨十数枚する物を傷んでたので壊しましたと言えば、確実に大目玉を受けるだろう。まあ、土地代等も含んでいるので、建物だけだと大金貨十枚ぐらいのはずだが、それでも日本円にして一億円相当の建物だ。


「大丈夫です。見た目は貰った時のままですから・・・・中身は完全に違いますけど」


 見た目は、ほぼ同じ造りにする予定なので、問題はないはず。中身と言うか、外観の見た目だけ同じで、素材や強度面においては別格の仕上がりになる。例えば、以前の壁は、煉瓦の内側にモルタルモドキを塗りたぐり、その後でベニヤ板を貼り、壁紙を糊付けしていた。それを今回は、煉瓦そのものを付与して強度と外からの攻撃に耐えうる構造にする。内側には薄く伸ばしたオリハルコンの金属板に純度の高いモルタルを使用し塗る。アダマンタイトと木の柱で支え、柱と柱の間の空間にクラウドシープの羊毛を特殊な防腐、防虫加工を施し敷き詰める予定だ。更に同じ工程を内側にも施すが、薄く伸ばしたオリハルコンの金属板の次にモルタルを塗ってから、今度は薄く伸ばしたミスリルの金属板を張り付けた。最後はベニヤ板、壁紙と言う感じで、見えない部分の恐ろしい程の魔改造を施すのだ。


 まあ、一部は普通の作りの部分もあるがそれは、幾つかの仕掛けのためにあえてそうしているが、羊毛は何処も敷き詰める予定。


 最後の方を小さく話したためアンネローゼは聞き取れなかったが、どうせ禄でもない事を考えていると言うのだけは、伝わっていた。


「あまり、やり過ぎたらだめよ?」


 五年近くも共に過ごしただけあって、隠し通せない様だなと実感する。


此処まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

今年の目標は、休まずに投稿を続ける事ですかね?


これからも頑張りますので、応援よろしくお願い致します。

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