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064 良いお年を!!

皆さん、おはようございます。


今年も最終日となりましたが、皆さんはどんな一年でしたか?


自分は、この一年何とか執筆を続けてこれた事をうれしく思っております。


出来ればペースアップしたいのですが、新しい物も現在製作中でして、中々手が回らない状態です。

そうそう。読者の中で書き手が居たらアドバイスが欲しいのですが、小説になろうだけに投稿していますか。それとも別の際とも利用していますか。


別のサイトを利用している人は、同じ物を投稿しているのか、違う作品なのか教えてほしいです。

自分は二作品目をなろうにするか別のサイトにするかで悩んでいます。


異世界系をなろうで統一して、現実系を別サイトにしても良いのかな?

ご意見待っています。

 アルデレール王国にある王都アルデレート。


 此処でも生誕祭は大賑わいを見せ、無事に終わった。


「お父様っ!!本当にレオンハルト様は来られるのですね?」


 アルデレール王国の国王アウグスト・ウォルフガング・フォン・アルデレールは、今自室にて第二王女レーア・エル・フォン・アルデレールに問い詰められ、かなり危機的な状況に追い込まれていた。


 それを静かに見守る第一王妃アマーリエ・リーゼル・フォン・アルデレール。レーアの実母である彼女とその息子にして王太子でもあるコンラーディン・ブルーノ・フォン・アルデレール。レーアの実兄の二人が椅子に座っていた。


「先日、彼に向けて手紙を出しておる。年明けの挨拶には来るだろう」


 彼の地位はまだ騎士爵位。本来ならば、年始の挨拶には来るはずがなく、今回の様に国王陛下自らが直筆で招待状紛いの物を書く事もありえない。しかし、そうせざる負えなかったのは愛娘であるレーアに強くせがまれての事だ。


 事ある毎にレオンハルト様は何時来るのか。今何をしているのか。何処にいるのか等しつこく聞いて来るからであった。


 彼には領地は疎か、貴族としての屋敷もないので、連絡の手段がない。唯一連絡が行える手段としたら、冒険者兼商人として活動しているため、冒険者ギルドでなら彼の動きも此方よりは把握していると思い、この手段で一度彼を呼び出そうと考えたのだ。


(貴族が屋敷を持たずに行動するとは・・・どうした物か)


 直筆の手紙を書いている時に若干呆れ果てていたのは、書いた本人とその時に傍にいた宰相のエトヴィンだけだろう。


(そう言えば・・・フォルマー公爵の娘やラインフェルト侯爵の娘たちも同行していたが、エトヴィンたちは行方を知らないのか?)


 アウグスト国王同様に彼らもまた自身の娘を溺愛していた。その娘たちがレオンハルトと言う小さき英雄について旅に出てしまった。レーアも同行を願い出てきたが、流石にそれを容認は出来ず、王城で彼が来るのを待つようになった。


 王都を救っただけではなく、過去にレーア自身を助けてくれた事もあり、彼には返し切れない恩もある。レーアの想い人にもなってしまい、応援したいのは山々だが、王家の婚姻となるとそれなりの地位が必要になるのもまた事実。


 如何にか、爵位を授けようとしたが、一度は断られ、魔族襲撃の撃退による功績で、騎士爵を授ける事には成功しているが、それから陞爵はしていない。


 また、何らかの理由を見つけて陞爵させねばならないため、ある意味では悩みの種となっている。


「では、その時は私も」


「レーア?貴方もその日は、来客たちの対応があるのですよ?」


 そう、新年の挨拶の時は、王族が揃って玉座の間で挨拶に来る上級貴族の相手をしなければならない。相手と言っても席に座っているだけで、基本的な会話は国王陛下と王太子、王妃ぐらいで、それ以下は、一言挨拶を返すぐらい。


「そ・・・そう、でした・・・」


 見て分かるぐらい落ち込むレーア。その姿を見て面白かったのかコンラーディンが、我慢できずに笑ってしまう。


「はははっ。悪い、まさかレーアがこれ程まで夢中になるとはな。父上とあれだけ相手に困ったというのに、可笑しくて」


 笑われたレーアは顔を真っ赤にして、ポカポカとコンラーディンを叩く。こういう一面は、王族だろうと、そうでなかろうと同じなのかもしれない。


「父上、新年の挨拶の後・・・そうですね。夜に少しお話しできませんか?」


「そうですわね。貴方、私もその時は是非参加させてほしいわ」


 アマーリエ第一王妃とコンラーディン王太子は、レーアについての今後をどうするか、国王としっかり話し合う必要があったのだ。


 二人の考えにアウグストは頷く。


(二人の考えは、恐らく・・・・となれば、他の者とも話し合う必要があるな)


 その場の集まりは、結局その後すぐに解散した。


 翌日、エトヴィン宰相にラインフェルト侯爵とシュヴァイガート伯爵、エクスナー枢機卿を呼び出してもらう。年末と言う事で、皆忙しい中その日の夕方には、三人とも集まってくれた。エトヴィンも含めて四人で席に座る。


「忙しいのに呼び出して悪かったな」


「いえ。陛下の急ぎの用事と言う事でしたので。それでどのような用件でしょうか?このメンバーが集められたと言う事は・・・やはり」


 レオンハルトたちが、旅に出てから一年以上彼らは集まっては、話し合いを行ってきた。


「娘のレーアが、もう我慢の限界の様でな。毎晩のように聞いて来るんじゃ」


 実際に国王陛下以外の者は、彼と共に娘たちが同行しているので、彼のような思いはしていないが、それでも彼とは別の不安を抱えている。


「そうですか。我々は時々届く手紙で状況を知る程度ですが・・・」


「現在は、ヴァイデンライヒ子爵が治めている海隣都市ナルキーソに居る様です。何でも先日、届いた手紙には生誕祭でレストランフェスなる物をすると書いてあったから、彼らが率先して動いたのでしょう」


 エルフィーの父親であるハイネスに届いた手紙は、レオンハルトたちがレストランフェスをする事が決定した後に出されているので、何をしたのかは知っている。


 当然、その話は此処に居る国王陛下以外は知っている内容だった。


「レストランフェス?何じゃそれは?何も報告はないぞ?」


 それもそのはず、此方に手紙が届いてまだ日が浅く、その日のうちにそれぞれ手紙を出した。その手紙が、生誕祭の前々日にナルキーソにつき、前日に彼の元に届いたと言うわけだ。


 その手紙は偶然にも国王陛下が出した直筆の手紙と同じ時に出されたため、一気に彼の元に手紙が来たのだが、手紙が届いてからと言うもの何かと忙しかったこのメンバーは、手紙が届いてからだと初めて集まったのだ。


 普段、国王陛下と宰相は、毎日のように顔を合わせるが、その話は一切していない。だから、国王陛下は知らなかった。


「其方らも手紙を出したのか?」


「と言う事は、陛下も出されたのですか?」


「宰相、其方は何と書いたのだ?」


 それぞれ手紙の内容について話をした。それぞれが出した内容に皆、驚きの表情を出す。


「これは、何と言いますか。彼に負担をかけたかもしれませんね」


 エルフィーの父親、ハイネスだけは彼に手紙を出してはおらず、代わりにエルフィーだけに留めておいた分、彼の気苦労が目に浮かんだ。


 フォルマー公爵からは、王都での屋敷を準備していると書いてあり、ラインフェルト侯爵からは、訳ありな言い方をされ、エクスナー枢機卿からは、行事ごとに教会がバックアップにつくと記している。これは、たとえ一時的であろうと、今後も力を貸すと言っている様な事。最後は、上級貴族しか集まらない新年の挨拶に出席しろと言っている様な文章を出した国王陛下。これで気疲れしない人はいないだろう。


「エトヴィン?一体どこの屋敷を用意したのだ?」


「中央区にあります元侯爵家の屋敷です。皆も覚えているでしょ?取りつぶしになったヴァルザー侯爵の屋敷です」


 ヴァルザー侯爵とは、十数年前に当時当主であるルーマン・ガスト・フォン・ヴァルザーが、王都にいる孤児たちを密かに誘拐して、人身売買をしていたのだ。売られた子供たちの多くは、他国に売り飛ばされて、それで得た多額の資金で、多くの上級貴族よりも快適な生活を送っていた。


 売り飛ばされた子供たちがどうなったのかまでは、彼は知っていても興味がなかったようで知らぬ顔をしており、誘拐された多くの子供たちは人体実験の材料に使われたと言うおぞましい事件があったのだ。


 しかも、更に質が悪い事に、家族の半分以上がその事件に関与していた他、他の貴族も関与している事が分かり、関わった殆どの家が取り潰されたのだ。主防犯であるルーマン他、関与した貴族当主たちは皆打ち首にされ、死刑を免れた家族は、犯罪奴隷の様に扱われる事になった。


 取り潰しになった家が多く、屋敷や彼らの所有する財産は、国の物となり屋敷や土地は、数年前に国から屋敷などの売買を主にしている商会へ売り渡されたのだ。


 幾つかの家は、既に他の貴族が住んでいるが、流石に主犯となった屋敷には誰も住もうとはしなかった。それに土地は一等地にあり土地も屋敷も広いと言う事で管理に困っていた所を、フォルマー公爵が購入したのだ。


「あの屋敷を渡すとか、お主は何を考えておるのだ?」


 皆がその事情を知っているため溜息はより一層、大きくなる。


「彼の苦労はこれからなのか、それとも我々の心労がこれからなのか・・・」


 皆が同じように苦笑する中、エクスナー枢機卿が、集められた本当の目的について尋ねる。こう言う時は年の功と言う事なのだろう。


「そうだな。今回集まってもらったのはこの先の事についてだ。恐らく皆もそれを承知の上で来ていると儂は思っている」


 神妙な顔つきに戻ったアウグスト陛下は、これまでの雰囲気(オーラ)とは全く別の・・・そう、王としての風格とでも言うような様子で話し始める。


「レオンハルトの婚約者についてだ」


 そう、今に直面する問題は、レーアの暴走の原因となっている彼自身の身を固めると言う話。当の本人たちがいない中での話など普通は意味がないのだが、この貴族社会では良くある事だ。


 普通は、同レベルの爵位を有する娘から嫁を貰ったりするが、彼の場合、上級貴族の令嬢が彼を気に入っている。それに彼自身、その能力が未知数な為、婚約者を決められないでいた。


 それに、貴族の場合本人たちには関係なく結婚すると言う事もある。俗に言う政略結婚だ。出来れば、親としては娘たちが望んだ相手と結婚して幸せになってほしいと考えているが、それが出来ない事も知っているため、結婚にはかなり慎重になる。そもそもお付き合いするにしても結婚を前提に付き合い、婚約者として発表したりする。


 貴族の結婚とは、平民たちの自由恋愛とは違って、かなり面倒が多いのだ。


 その問題の種であるレオンハルト。爵位を陞爵したのだから、次の代に爵位を継承できる。と言う事は、婚約者のいない現状で、正妻の座を狙うよからぬ貴族も現れるのは目に見えている。


 と言うか既に現れているが、それをフォルマー公爵家やラインフェルト侯爵家が抑えているし、本人たちが行商人として活動していて捕まらないと言う理由でこれまで大きな問題にならなかった。


「うちの娘は、彼をかなり気に入っている。それは其方たちの所も同様であろう?」


 現在、王家であるレーア、フォルマー公爵家のティアナ、ラインフェルト侯爵家のリリー、シュヴァイガート伯爵家のエルフィーの四人が立候補しようとしているのだ。


「ええ。ただ、他に情報があるとすれば、同行している仲間たちの中で二人ほど同じような存在がいるとの報告もある」


 ティアナからの手紙で「シャルロットはいつもレオンハルト様と一緒に凄い物を作るの。本当に凄いのよ」などと書かれていたし、シュヴァイガート伯爵とエクスナー枢機卿は、二人の関係を実際に見ていたので、良く話をしていた。


「あの時に一緒にいたシャルロット嬢とリーゼロッテ嬢だな。そう言えばリーゼロッテ嬢は何処かで見た様な・・・・誰かにそっくりなんじゃが、誰か心当たりはないか?」


 それは、エクスナー枢機卿を始め他の者も同様に考えていたが、誰似なのか分からずにいた。そう言えば彼女は孤児院の娘と言っていたのを思い出し、新年明けてから早速誰かに使いを出そうと考えた。


 結婚の意思があるか。こればかりは、本人に聞かないと分からない。


 それに上級貴族や王家との結婚になると最低でも伯爵の地位は必要になる。それをどうやって陞爵させるか。


 もう一つ、妻の序列についても問題になってくる。例えば今回の場合、仮に全員が彼と婚約したら、序列は、レーア、ティアナ、リリー、エルフィー、リーゼロッテ、シャルロットとなるだろう。それを彼がどう判断するかと言う事も問題になる。かと言ってリーゼロッテ、シャルロット、レーア・・・・と続いても、それはそれで問題になる。


 恐らく近年悩まされる一つがレオンハルトについてだろう。優先順位もそれ程低くはない。小さき英雄と言われる程の実力者なのだから、これから先魔族との戦闘で必ず彼らの力は必要になると考えている。


「それと、この話は本人たちにはまだ伏せておいてくれ。年始の挨拶に来た翌日に彼を呼んで話をするつもりだ」


 まあ、海隣都市ナルキーソから王都アルデレートまで、馬車で移動して挨拶だけしてすぐに帰るとも思えないし、もしかしたらそのまま仲間たちと別の街に移動するかもしれないが、王都に至っては新年祭を三日間行われる。最低でも三日間は王都に滞在してくれると考えている国王陛下たちだったが、実際は、別の手段で来るので、滞在するかどうかは彼ら次第だ。










 此処は、エクシエント共和国とアバルトリア帝国の国境沿い。そのアバルトリア帝国にある名もなき農村で二人の少年少女と一人の幼子が小屋で貧しい食事を終えていた。少年は既に成人を迎えているが、少女の方は未成年だ。二人が連れている幼子は、二人の間で生まれた子供ではなく二人の妹に当たる。


 一年以上かかり、漸くアバルトリア帝国に入る事が出来たのだ。


 この三人は、今は滅んでしまったガバリアマルス王国の元が付くが、第二王子と第一王女、第二王女たちだ。


 王城が魔龍帝ヴァルグドレッドと破壊竜ジェノサイドドラゴンに襲われる直前、己の命を掛けて転移魔法を掛け、脱出させてくれた。


 手持ちのお金もほとんどない状態だったが、辛うじて持っていた宝石類を売り、そのお金でエクシエント共和国を端から端まで移動できたのだが、此処に来て資金の底をついてしまい、食べ物すらまともに得られない状況となっている。


 まだ幼子の第二王女の面倒を見ながらの移動もあり、時間と資金を思いのほか消費してしまったのだ。


 この農村で、使っていない小屋を貸してくれ、食事もわずかだが分けてくれたのは、感謝してもしきれない二人であった。


「お兄様この後どうしましょう?馬車に乗るお金もなければ、宿に泊まるお金もありません。それにリリアーヌの食事もありません」


 リリアーヌと言うのが、元第二王女の名前である。


「そうだね。明日の朝、村長に森で食料を取っていいか尋ねておくよ。それで暫く持つだろうが、リリアーヌの食事か、何か柔らかい物を探してくる。移動は暫く徒歩だね。シルヴィは大丈夫?」


 シルヴィとは愛称で、本当の名前はシルヴィア。それでもって元第二王子の名前は、セドリックと言う名前だ。


「・・・うん、大丈夫」


 少しだけ具合が悪そうな妹にそっと毛布を掛けてあげる。農村の周囲に魔物はいないと言う話だったが、時々獣が畑を荒らしに来るとは言っていたので、セドリックは見張りも兼ねて入り口近くで夜を過ごす事にした。


 雪が積もる様な寒い夜の下、暖炉を取るどころか隙間風さえ入ってくる様な小屋で、三人は寒さに耐えながら一晩明かしたのだった。


 翌朝、寒さで目を覚ましたセドリック、シルヴィアは、リリアーヌを抱っこして一緒に外へ出た。


「雪が積もっていたのね。道理で寒いと思いました」


 凍え死ななかったのは、魔道具をなけなしのお金で購入していたおかげだろう。必ずと言って良い程の必需品で、継続的に購入するよりは魔道具に頼った方が安いと判断したから購入した代物だ。


 周囲の温度を変化させる魔道具、水を少量出せる魔道具、着火用の火を出す魔道具などどれも低レベルの物だが、あるとないではかなり違う。


 吐く息が白くなり、寒さが強くなったと感じた為、直ぐに温度を変化させる指輪の魔道具に魔力を流して発動させた。


「シルヴィ。僕は村長と話をして、何かないか探してくるよ。二人は此処で待ってて」


 今、雪は降っていないが、この先又降ると思う様な空の色を見て、暫くは動けそうにないと考えるセドリック。


 彼らが、無事にアバルトリア帝国の帝都にたどり着けるかどうかは、気力次第だろう。本来の目的地はアルデレール王国の王都であるが、此方はかなり絶望的に近い。


 帝都にいる皇帝に話をして援助してもらっても良いかもしれないが、そうするのであれば最初からエクシエント共和国のトップと話をして、準備金を貰っていたが、それをしなかったのには、返せると言う保証が無いからだ。


 奴隷落ちでもしたら元も子もないので、自分たちだけでこれまで一生懸命生きてきた。だから、帝都でも条件は同じだ。命がかかっていないのであれば、自分たちの足でアルデレール王国の王都を目指す必要があるのだ。


 明日には新しい年を迎えると言うのに、王族であった彼らには、新年を祝う余裕すらないのだ。彼らが安心して暮らせる日は、果たしていつ来るのだろう。











 ところ変わって・・・。


 アルデレール王国にある海隣都市ナルキーソに居るレオンハルトたち一行は、明日新しい年を迎えるための最期の準備をしていた。


 屋台の準備も明日の挨拶の準備も終わらせているが、最後のある事をするために皆で狩りに出かけている。


「セイッ」


 愛刀から放たれた一閃は、オークの頸動脈を通過し、オークは血を吹き出すようにその場に倒れた。他の仲間たちも次々に魔物や獣を狩る。


 魔法の袋には既に大量の魔物や獣の肉でいっぱいになっていた。


「この先にゴブリンの集落(コロニー)があるわよ?」


「リタたちは未だにゴブリンたちを恐れるからな。襲われる事は、もうないだろうけど」


 リタとナディアは、商業都市オルキデオに向かう途中ゴブリンの集落で見つけた人族だ。他に二人いたが、其方は今、オルキデオで家族たちと一緒に生活をしている。


 リタとナディアは、今も行商人の手伝いをしてもらっており、ローレたちと共に宿でくつろいでいる事だろう。


 行商中も度々ゴブリンと遭遇し、その旅に顔を真っ青にしていた。今尚その苦しみからは解放されておらず、前に比べて良くはなっているが、突然現れると震えが止まらなくなったりしている。


「そっちは俺たちで倒してくる。レオンは引き続き狩りを頼む」


 そう言ってユリアーヌ、クルト、ヨハン、ダーヴィト、エッダの五人が向かう。


「アニータ。五人の援護に回って」


 魔法が使えない彼女には複数の魔道具を渡して、彼女もそれをかなり使いこなしていた。今も空を翔れるように靴を魔道具化させていて、それを使って空中を飛んでいる。


「前方から四足歩行の生物三体接近」


 魔物や獣の名称を使わなかったと言う事は、知らない反応だったと言う事。全員身体強化を行い戦闘態勢に入る。


 足音からしてそこそこの大きさを誇る生物。長い舌を出しながらウネウネと歩いてくるオオトカゲ。森に棲む魔物の一種で、メガラニアと言う体長が約八メートルはある肉食系の魔物。


「一体に対して二人で対処。残りの二体は俺とシャルで対処する」


 ティアナとリリー。リーゼロッテとエルフィーがそれぞれ、メガラニアに攻撃を仕掛ける。レオンハルトとシャルロットは、一瞬で片付けて、それぞれフォローに入れるように位置取りを行った。


 魔物や獣の血の臭いで、どんどん肉食系の魔物や獣が集まってくる。


「後方からツインテールウルフ七頭。右からはキリングベア二頭来ている」


 リリーがメガラニアの注意を引いている隙にティアナの大剣で首を一刀両断。リーゼロッテたちも魔法と剣の連携であっさり倒し次の敵に備える。


 今、皆が狩りをしているのは訓練でも何でもない。毎年、アンネローゼたちに送っている肉類だ。去年今年は特にレカンテート村の開拓のために多くの人が村に来ていた。


 半年近く前に訪れた時は、肉不足になっていたと言う話もあり、急遽魔法の袋に入れていた肉類を出して対処した。今回もそうなると見越して、色々な肉を現在確保しているのだ。


 一刻ほど続けていると、ゴブリンの集落(コロニー)を潰し終えた仲間たちが戻って来て狩りを再開した。その日のお昼過ぎまで狩りをしたら、十分確保できただろうと言う事で、ナルキーソの冒険者ギルドへ行き、諸々を換金してもらった。


 流石にこの人数で、この戦果は目立ちすぎると言える。オーク二十七体、メガラニア八頭、ツインテールウルフ十六体、シールドボア十一体、ゴブリン百十三体等々、僅か半日の戦果ではないのだ。


 食べれない魔物の肉はそのまま売り払い、食べれる肉の一部だけ売り、残りは持ち帰る。昼食を食べ終えたら、レオンハルトとシャルロット、リーゼロッテ、ユリアーヌにクルト、ヨハン、アニータの七人は、レカンテート村に転移魔法で飛んだ。


 流石に、大勢の居る人の前に転移できないので、うち明かした後で、転移専用の部屋を設けてくれた。とは言っても昔使っていたと言う倉庫だ。


 倉庫に到着すると流石に七人が入るにしては狭く、直ぐに倉庫から飛び出した。


「あっ!!レオにいちゃんだー」


「シャルおねーちゃんもいるよ―」


 早々に子供たちに見つかり、それを聞いてやって来たミュラー。既に七十を超えており、近頃はベッドから起きてこれない日もあるらしい。今日は歩けている所を見ると大丈夫そうだと安心した。


 ミュラーに連れられて、アンネローゼの元に向かい、久しぶりの再会をした。


「元気そうで何よりだわ」


「ええ。アンネ先生もお変わりなくて良かったです」


 普通の日常会話を四半刻程行う中で、子供たちが遊びを一緒にしようと誘って来る。ヨハンとクルト、アニータが子供たちの元に向かい一緒に遊び始め、その間に当初の予定を済ませる事にした。


「オークの肉やボアの肉を沢山、狩ってきたので置いておきますね。それと魚介類も仕入れています。新鮮で美味しい魚が食べられると思いますよ。山菜類は余りありませんが、根菜類は仕入れできたので、此方も一緒に入れておきます」


 その他にも行商人として色々な街に行った際の変わり種のお土産や、食べ物なども渡しておく。


「こんなに沢山。気を使わなくて大丈夫なのよ?レオンくんたちも生活があるでしょうに」


 アンネローゼには、自分が貴族になった事は伝えている。最初は驚いていたが、その後「名前を様付けで呼びましょうか」と笑いながら言われ、全力で拒否した。今では親と言って良い存在の彼女に様付けなどされたくはない。今まで通りで良いと説明している。


「大丈夫です。こう見えて商人としてかなりの収益が入るようになっていますし、不足すれば冒険者として狩りに出ればすぐに対処できますから」


 言葉には出さなかったが、実際彼の懐は、かなり潤っている。贅沢をしなければ孤児院をあと二十でも三十でも作れて、養っていける程だ。


「それと、これ新しい本です。子供たちに読める内容かと思いまして」


 この世界の本は貴重で一つ一つ手書きで書かれているため高価な物だ。これはそれをもっと安価に手に入れやすくするため、今レオンハルトたちが開発中の代物のサンプルだ。


 文字を覚えるには、文字に興味を持たせなくてはならない。興味を持てば人は、それだけで集中力が高まり覚えやすくなる。


「流石に高価すぎるわよ」


 遠慮するアンネローゼに同様の物を出して、説明した。


「これは、新しく考えている方法で作った写本です。手書きは一切していませんので、時間もそれほどかかりません。価格も従来よりもかなり抑えられていますよ」


「・・・それは、凄い技術ね。だったら貰っておきましょうか。ありがとう」」


 用事を済ませたレオンハルトたちも子供たちと合流して遊ぶ、その間にシャルロットとリーゼロッテは台所を借りて、簡単なおやつを作って皆に振舞った。


 楽しい時間もあっと言う間に終わり、来た時と同じ小屋に向かった。


「また何時でもいらっしゃい。手ぶらで全然かまわないからね」


「はい。また来ます。皆も元気に頑張るんだぞ」


「お母さん。元気でねーまた遊びに来るから」


「ミュラーさんも何かあったら何時でも私たちを呼んで下さいね」


「おい、お前ら、先生たちを困らせるんじゃないぞ?」


「「「「はーい」」」」


 元気に返事する子供たち。お土産が嬉しかったのか、恩を早速持っている子供も中には居た。


「「「「「皆さん、良いお年を」」」」」


「「「「「「「先生方も、良いお年をお迎えください」」」」」」」


 そう言い残し、七人は転移魔法でナルキーソに戻った。


 この世界でも、年末年始の言葉は共通している。年越しそばを食べる習慣はないらしいが。

此処まで読んで頂き誠にありがとうございました。


つたない文章な上、誤字脱字が酷くて読んで頂いている皆様にはご迷惑ばかりおかけしています。

来年も本業と両立させながら頑張って執筆していきますので、応援の程宜しくお願いします。

皆さまが来年良い年になりますように祈っています。


それでは、タイトル通り、良いお年を!!

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