063 それは何ですか?
おはようございます。こんにちわ。こんばんは。
nahatovallです。
気が付けば、あっと言う間に終わった一週間でした。
クリスマスは、いかがお過ごしでしたか?
自分は、イブの日に大阪のなんばにある・・・ある通りをウロウロしました。
メイドさんや制服コス、サンタコスなど様々。ただし、時間が遅かったので、行く事は出来ず、翌日はそのまま次の場所へ移動し、見るだけとなってしまいました。
非常に残念です。
そんな事はさておき、クリスマスイブとクリスマスに二本立てを行った事もあって、かなり大急ぎで仕上げたので、1万文字を超える事は出来ませんでしたが、ぜひ読んで下さい。
生誕祭も無事に終わる事が出来た。翌日は片付けに勤しんだが、レストランフェスや領主の屋敷で行ったダンスパーティー、冒険者ギルド主催の腕相撲大会等どれも好評だったと報告を受けている。
腕相撲大会はその中でもかなり好評価を得たらしく、参加者を集めるだけで簡単にできる事から、毎月行う事が決まりそうとの報告も受けている。
商業ギルドとしては、大成功と言えるが初期投資の額が多かったため、今後に期待と行った所だろう。
ただ、今回の収益だけで、既に賄えるだけの売り上げをたたき出しているそうで、その売上額の数パーセントが、商業ギルドに支払われる。毎年、生誕祭の時だけ実施したとしても二十年以内に元は取れる計算になるらしい。
積極的に貸し出しを行えば、その分早くなると分かり、眼を輝かせている者も何人かいた。
「んー・・・どうしよう・・・・」
そんな中、一人自室にて頭を抱える少年。
彼が今悩んでいる事は、生誕祭の夜にダンスを踊った事である。しかも一人ではなく五人の女性と踊った。これが、ただの平民同士のダンスであればそこまで問題にはならないが、レオンハルトを含め半数以上が貴族の身分を持っている。その中でもティアナ、リリー、エルフィーの三人は上級貴族の御令嬢でもあるのだ。
その時はさして何とも思わず踊ったが、翌日になってよくよく考えると、かなり不味い事だったのでは、と後悔した。
「年が明けたら、陛下に呼び出されているし、公爵様たちも何か用事があるみたいなんだよな・・・」
未婚の貴族男女がダンスパーティーで踊ると言う事は、すなわちお付き合いをしていると周りが捉える・・・。これは、ヴェロニカの執事であるアルノルトからこっそり教えてもらった事なのだ。
それに、陛下からの呼び出しも何となくだが・・・予想が付く。
俺が下級とは言え貴族になった事で、少なからず周囲の貴族が騒ぎ出す。新設されたお家は、家臣や婚約者など決まっていない為、絶好のチャンスでもあるのだ。
未成年の少年が下級貴族としてやっていくには些か不安な部分もあるだろう。普通は未成年に爵位を陞爵する事は無いが、今回の様な異例が全くない事もない。未成年だから経済力や貴族との縁、知識、人材、財力など不足要素は多い。
新設するお家によっては、すぐに破綻する事あり得る。だが、今回はその心配はないと言ってよい。レオンハルト自体、既に冒険者としてかなりの地位に上り詰めており、魔族と対等に戦えることから、実力が本物と証明もされている。
知識は、これまでにない新しい商品開発や料理方法など自分たちを優に超える知識を持っている事も知れ渡っている。
しかも、行商人としても成功を収め、不足しているのは人材不足と貴族間の縁ぐらいだろう。しかし、領地経営しているわけでもないので、人数もそれほど必要としておらず、数人の家臣と陪臣が居れば良い程度だ。
家臣は既に仲間たちがそういう目で見られているので、付け入るならば、彼らの家臣としての枠ぐらいだろう。
溜息しか出ないレオンハルト。すると彼の部屋のドアを誰かがノックした。
「失礼します・・・ご主人様どうかされましたか?」
先日まで調理で忙しくしていたエリーゼが、ベッドで項垂れるレオンハルトを見て心配そうに駆け寄った。
「エリーゼか・・・何でもない。少し考え事をしていただけだ」
心配かけまいと、その場で立ち上がる。それで彼女に何の用件で来たのか尋ねると、宿屋にヴィーラント支配人が訪れていると言う報告を受け、手早く支度を整えると、エリーゼと共に一階へ降りた。
「ヴィーラントさん、お待たせしました。昨日はご苦労様です」
生誕祭での今回の催し物。その立役者は、商業ギルドとなっている。実際に指揮してもらったり資金を用意してもらったりと期間が短い中で、良くあれだけの事をしてくれたと皆が思っている。
ヴィーラントからしてみれば、立役者は自分たちと言われても立案者は間違いなく彼らだと言える。そして、それが成功するための今後の見通しも含めて立案してくれたからこそ、商業ギルドは今回、表立って動こうと決意が出来たのだ。それが無ければ、例年通りの生誕祭になっていた事は間違いなかった。
生誕祭当日は、お互いに忙しく時間が取れなかったため、ヴィーラントはこうして、先に立案者であるレオンハルトに挨拶に訪れたと言うわけだ。
普通は、逆の様に思うかもしれないが、間違いではない。レオンハルトは未成年でありながら既に、貴族として陞爵している。一方、ヴィーラントはあくまでも商業ギルドのナルキーソ支部の支配人に過ぎない。
まあ、支配人と騎士爵当主であれば、どんぐりの背比べぐらいにしか権力がないのだが、それでも貴族社会として、貴族の方が地位が上になる。
「此方こそ、素晴らしい企画をありがとうございました。お休みの所申し訳ありませんが、レオンハルト様にお会いしたいと言う方を連れてきています」
そう言うと彼の横に立っていた小麦色に焼けた肌に白髪の中年の男性が一人立っており、その人が一歩前に出て挨拶を始めた。
「お初にお目にかかりますアヴァロン卿。私は、漁業連盟の代表をしておりますファビアン・バルトと申します。以後お見知りおきを」
「これは、ファビアン殿。私はレオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロンです。アヴァロン卿ではなく、レオンハルトと呼んで下さい」
まだ、アヴァロン卿などと呼ばれても振り向く自信がないレオンハルト。そろそろ意識しなくても反応できるぐらいにはならなければいけないが、貴族として振舞う機会が少なかったので、まだまだと言える。
「承知しましたレオンハルト様」
先程よりはマシかと考え、話を進める。ヴィーラントが既に宿屋の食堂にある一角を押さえていたため、四人はその席に移動し、三人が席に座る。エリーゼだけは、奴隷であり給仕係として働いているので、席に座る事は許されない。
真剣な表情のファビアンを見て、姿勢を改める。
「突然の訪問をお許しください。我々、漁業連盟は・・・・」
ファビアンからまず、漁業連盟とはどのような組織なのか説明を受けた。そこには、主に海に出て魚や貝類などを捕まえてくる人たちの管理をしているそうだ。
簡潔に言えば、商業ギルドと商人の様な関係だろう。漁業連盟は基本的に港がある街にしか存在しておらず、知名度が低いが、海に関してはかなりの知識を有した集団でもある。
今回、相談に来られたと言う事を聞き、その内容を尋ねると・・・。
「レオンハルト様が考えられたたこ焼きと言う物を是非、我が連盟でも商売させていただきたいと思いまして」
と言うのも、如何やら蛸や烏賊等は、食べ物として認識されていないらしく、海で良く採れてもそのまま破棄してしまう事が多かった。
一部では、それを魔物の餌にしていたと言う事も聞いた事があったが、本当にその程度の事。だが、今回生誕祭でレオンハルトたちが出したたこ焼きと言う物を知り、蛸を活用させる事が出来ると分かった。
しかし、既に作られたメニュー。それを黙って使うわけにも行かず、かと言って他の調理方法も思いつかないと言う事でたこ焼きの使用許可を伝えに来たのだ。
「・・・・話は、分かりました。ですが、たこ焼きを焼くのには専用の鉄板が必要になります。それに火加減や作り方も素人には難しい。それでも行いますか?」
当然、行うと言った場合でもただでは許可を出すつもりはない。行商人として活動を始めた頃は、教えるぐらい良いかと思っていたが、ローレたちから止められ、情報も売る事が出来ると教えられた。作り方は、ライブクッキングの様な感じで売っていたので、大まかには知られているだろうが、たこ焼きに使う液体が何なのかそこが分からない様にも思えた。
「許可を頂けるなら、時間がかかろうと道具は揃えます」
「では、レシピは商業ギルドで購入しましょう。彼らだけを独占させるわけにはいきませんし。商業ギルドであれば、直ぐに支払いも可能ですよ?」
流石、商業ギルドの支配人といった所だろう。それに、レシピを商業ギルドが購入する事で、それを公開し専用の鉄板だけ受注すれば、厨房付き屋台でレオンハルトたちがしたようにたこ焼きを売る事が出来るのだ。
今まで捨てていたような物が売れる漁業連盟。新メニューのレシピ公開で収益を得る商業ギルド。この場合、損をするのは自分たちなのではと考えるが、その場合、元祖○○と名乗って良い事、それに加えてナルキーソの漁業連盟から購入する魚介類を安く卸してくれるだけでなく、多少なら現物を収めてくれるらしい。商業ギルドからも、行商時の融通や買取価格に色を付けてくれるという話になった。
しかも、口約束ではなく書面上できっちり契約を結ぶ方法で、執り行う。
(此方としても、知っているレシピからどの様な独自のアレンジが加わるか・・・楽しみでもあるし・・・)
暫く考えたレオンハルトは、結論に至った事を話す。
「分かりました。レシピを商業ギルドに売りましょう。それとファビアン殿、他にどの様な魚介類が取れて破棄していますか?」
蛸や烏賊を破棄していたと言う事は、それ以外も破棄していた恐れがあると判断し尋ねる。
「それ以外ですと、シークリやガヌー、後はホシカシとかでしょうか」
知らない名前が挙がってきた事で、それが何なのか絵で説明してもらう。まあ蛸や烏賊も呼び名が違うと言うか魔物なので、先ほど挙げられた名前も魔物の可能性もあった。
魔物で名前が知らないのは、海の魔物をそこまで経験していないからでもある。
「シークリは、海底にいる黒い棘の塊です。魔物ではないのですが、無数にある棘には麻痺毒があるので、そのまま破棄しています。たしか、シークリが魔物化した名前は・・・」
「ガンガゼルラだな。猛毒を持ち全身を覆う針の様な棘を敵に飛ばす厄介な魔物だよ」
説明を聞きながら、描いてもらった絵を見て、思った事は・・・。
雲丹ッ!!
ただ、知っている雲丹とは少し勝手が違う上、此処は地球ではない。同じような生態で全く別の物と言う事もありえる。
現物を調べてみないと分からないが、雲丹であれば、これまた食文化が大きく動く事になる。
「ガヌーは、色々な種類が居るから一概には言えないが、殻に覆われた魔物。種類によって強さが変わるけど、この辺りで見かけるのは一番弱い種類だから今の所被害はないかな?ホシカシと言うのも海底に生息するヌルヌルした生物だよ」
やはり、名前と説明を聞いても理解できないが、合わせて書いてくれる絵でそれが何なのか判明する。
ガヌーは、前世で言う所の蝦蛄の事。ホシカシは、海鼠だと思うが、絵だけだと判断は出来ないので、結局の所実物を見ないと判断に困る。
だが、予想通り蝦蛄と海鼠であれば、これまた面白い事になる。海鼠は、酢が見つからないので、今の所乾燥させるしかないが、蝦蛄は蒸すと言う調理方法を教えれば、色々な料理を作ってくれるかもしれない。
「もしかすれば、三種類とも調理が出来るかもしれません・・・ただ、材料が不足しているので、そのホシカシについては、今すぐは難しいです。それと・・・」
蛸と烏賊の調理方法についても色々あると教えると、二人は目の色を変えた。
「それらも、レシピを教えてくれるのかね?言い値で買いますよ?」
流石に全てを教える事は出来ないので、簡単な調理方法だけ教える事にした。
「なるほどー。それだったら直ぐに調理できるかもしれないな?」
教えたのはたこ焼きを含めて四種類。一つは、蛸をぶつ切りにして、小麦粉などを付けて油で揚げる蛸の唐揚げ。もう一つは、同様の工程で作る烏賊の唐揚げ。最後は、屋台でお馴染みのイカ焼きだ。
そもそも食べる習慣がなかったのだ。ただ単純に焼いて食べるだけでも問題ないだろう。ただ、イカ焼きについては、専用のソースが無いので、此方は試行錯誤で作らなければならない。
醤油や味噌、酢などの調味料を制作するか、それに代わる代用品を早急に見つける必要が出てきた。
だが、作るにしても時間がかかりすぎる上に、そればかりに対処していられない。ゆくゆく対処しようと考えるだけにとどめておく事にした。これらが手に入れば、甘煮やみそ焼き、酢の物、生で食べれるようだったら、刺身なんかも食べれる。
四種類のレシピを売り、契約書を作ってお互いのサインを入れる。これだけでほぼ一日使ってしまった。何せ、レシピだけではなく作り方も教える事になり、レオンハルトたちは宿屋から商業ギルドに場所を移す必要もあったからだ。まあ、どの道契約書を書く必要があったので商業ギルドに移動する羽目になったのだが、その場で作り方を教える事になるとは思わなかった。
特にたこ焼きの生地となる液体の作り方の配合にかなり苦戦させられた。水の量を間違えて、半固形になったり、水っぽ過ぎたりして大変だった。
分量を書いてはいたが、きっちり計る物が無いので、凡その分量にしたのが原因だ。
これも何時か考えないといけないなーと思いつつも、優先順位的に低いので作るのは当分先になりそうではある。
商業ギルドを出ると空が赤く染まり日が沈もうとしていた。
馬車で来ていたレオンハルトは、エリーゼに一箇所寄ってほしい場所を伝える。エリーゼは、そのまま指示された場所へ向けて馬車を走らせ、十数分で目的地に到着した。
用があったのは、冒険者ギルドだ。
馬車を所定の位置に移動させ、二人で中に入る。
昨日の盛り上がりがまだ、継続されている様に賑わうギルド内。時間が時間だけに外に依頼に出ていた冒険者も報告に帰ってくる時間と言う事もあり、より中はごった返していたのだ。
今回、新年祭の際、屋台の手伝いに来てくれる者への報酬とギルドへ支払う金額を渡すためと冒険者たちに貸していた衣類の回収に来たのだ。本当であれば、屋台の近くにある場所で着替えが出来るようにしていたのだが、レオンハルトたちが領主の屋敷に行ってしまって返しそびれた様だったので、万が一を考えて此方に返すように指示を出していたのだ。
「依頼料は確かに受け取りました。今の所七名希望されている方がいますが、資料は見られますか?」
新年祭のお手伝いに来る冒険者の記録を見せてくれるらしい。とは言っても恐らく参加してくるのは前回同様のメンバーだろう。
受付の女性もそれが分かっているのか、少し困った表情をしていたので、変わらなければそのままで良いと伝える。それと、支部長に伝言を頼んだ。
「分かりました。レオンハルト様一行が、新年祭の時に王都に行かれるのですね。必ずお伝えしておきます」
「ええ、ただ全員で行くわけではありません。行くのは自分とティアナ、リリー、エルフィーの四人です。もし、急ぎの用件があったら、他の仲間は屋台でお店を出していますので、其方に伝えてください」
実際には四人ではなく六人なのだが、ラウラとソフィアは冒険者ではないので態々報告する必要はない。
用事を済ませたレオンハルトは、帰り際に何時もの様に依頼書をざっと目を通した。
(面白そうな依頼はなさそうだな・・・ん?)
ゴブリンやオークなどの討伐依頼から薬草採取、護衛、何かの手伝いと変わらぬ依頼の中で、あまり見ないタイプの依頼を見つけた。
「索敵魔法が使える者、急募って・・・何故、索敵魔法なんだ?」
考えていると、隣に居た体格の良く、二十代後半ぐらいの男性に声をかけられた。
「それなー。生誕祭で浮かれて、他の街に行く行商人や貴族を襲う盗賊の討伐への同行なんだろうぜ?割とこの時期なると、盗賊が出没やすいから、先に叩こうって事じゃないか?」
「なるほど。索敵魔法が無いと見つけにくいからな」
理由が分かれば、大したことではないが、それでは何故、盗賊討伐とかではなく、急募なんだろう?
それに索敵魔法でなくても例えば、獣人族を仲間に加えれば戦力に加えて彼ら独自の能力で探る事は可能なはずだ。そして、急募と言う言葉。盗賊討伐に行くのならば、急ぐ事自体は良い事なのだが、態々急募にする必要が何処にあるのだろう。
索敵魔法だけを求めると言うのがどうしても腑に落ちなかった。
男性は、レオンハルトが更に考え事をしている事を気にも留めず、隣にあった商人の護衛依頼の用紙を取るとそのまま受付に持って行った。
「その依頼が気になりますか?」
今度は、見知らぬ女性が声をかけてきた。年齢は十代後半だろうか、四人でチームを組んでいる様で、その一人の軽装の戦士の様な格好をした女性が声をかけてきたのだ。
頷くと、その女性もじっと眺めて、考える。
「んー・・・・何だろうね?」
考えた挙句、結局分からないのかよっ!!と心の中でツッコミを入れる。
彼女たちは、如何やら俺が一人で掲示板を眺めていたのが気になったようで声をかけてきたらしい。まあ、見た目は未成年だからな。新人ぐらいにでも思ったのだろう
「そうですね。よくわかりませんが、きっと重要な依頼なのでしょう。急募と記載されているし・・・あれ?」
あまり長居をしてもどうかと思い、女性たちに簡単な会話を行った後、その場を立ち去ろうと動くと、可笑しな事に気が付いた。依頼達成時の報奨金が、驚くほど高いのだ。
金貨三枚。日本円にして三百万円になる額を支払うと書いてあるのだ。
これは余りにも破格の依頼料。何故誰も取らないのか不思議でならないが。逆に金額が高すぎて誰も手を出さない可能性もあり得る。
「この金額は、怪しすぎるだろう」
気が付いた事を声に出して言うと、先程声をかけてきた女性がその依頼書を見て驚く。
「テーアッ!!これ、凄いよ。半端ない額が書かれているっ」
他の仲間に知らせて、マジマジと観察していた。
「うわーっ、これヤバい奴だよ?きっとッ!!」
「でも、本当だったら、貧乏生活から抜け出せるよっ」
「レギーナ。人生そんなに甘くないよ・・・いつも、美味しい話に騙されて、苦労しているのは私たちなんだからね」
四人の言い争いを横目に、更なる謎が深まってしまい。気にしていると・・・。
「これが気になりますか?」
次に現れたのは、冒険者ギルド、イリード支部の支部長だった。
「支部長?どうして此方に?それよりもこの依頼ご存じなのですか?」
「「「「支部長ッ!!」」」」
四人の驚きに目もくれず、会話を続ける二人。
「ええ知っていますよ。これは私の知人が出された依頼ですからね。出来ればレオンハルト様に受けていただきたいのですが」
依頼の詳細だけを簡潔に聞いた所、男性が話していた盗賊討伐ではなく、人探しをしてほしいと言う事だ。何でも支部長の知人の娘が、昨日から行方が分からなくなったらしい。
必死で探したのだが、見つけられず今日の昼頃に相談に来たそうなのだ。そして、知人と言うのが如何やら下級貴族の当主と言う事で、誘拐の可能性も考え依頼を決めたらしい。
特徴を聞いて、こっそりと街の中全体を『周囲探索』を使ってみたが、街の中からそれらしい反応はしなかった。と言う事は街の外に出た可能性も十分考えられるが、そうなってくると時間が足りなくなる。
支部長に外へ出ている可能性だけ伝えて、その場を立ち去った。
残された支部長は直ぐに門兵に問い合わせを行うよう職員に伝えて奥の部屋に消えていった。もう一方の女性たちは、冒険者ギルドの支部長と対等に話をしていた初心者ぐらいの少年が一体何者なのか不思議そうな顔で佇んでいた。
「エリーゼ。戻ったら新年祭の準備の手伝いをしてあげてくれ。それと、今日の事をシャルロットにも伝えてくれるか」
「承知しました」
今回、俺たちも新年祭に参加する予定でいたのだが、急遽王都に出向く事になったので、大々的な事は行わない事にした。レストランフェスの様な企画もないので、通常の屋台だけで済ますつもりだ。
メニューに関しても、実は生誕祭の前から話し合っていた物があり、芋を使ったフライドポテトやハッシュドポテトと言う新メニューを加え、たこ焼きと焼き鳥の四品を出す屋台で行くつもりだ。
行商としての日用雑貨や食料、衣類なども出そうとしていたのだが、此方を今回行わないようにしたのだ。
それにしても、折角無事に終えたと思った生誕祭で子供が行方不明になっているとは、予想もしていなかったので、大成功かと思えた今回の生誕祭も大成功と呼べなくなってしまったと心のどこかで残念な気持ちになった。
レオンハルトは、そのまま仲間たち合流をせずに、一人自室に戻り、夜遅くまで作業をした。エリーゼの報告を聞いたシャルロットたちは、レオンハルト同様に残念な気持ちになり、時間がある時は外へ探しに行く事になったらしい。それと誘拐犯の可能性もあるため、十分注意する事にした。特にローレたちは非戦闘員だ。守る手立てがないわけではないが、戦闘が行える者を同行するように注意しておいた。
此処まで読んで頂きありがとうございます。
残す所、後三日となりました。
そう言えば昨日から冬コミが始まっていますね。
今年も北山結莉先生の精霊幻想記のグッズが売られていますが、買いに行けないのが残念です。
昨年は、相方が行ったので、お願いして買ってきてもらいましたが、今回はお預けの様です(TOT)/
来年・・・来年こそは冬コミに行って満喫したいと思います。
それと、予定では大晦日と元日に投稿予定にしています。是非読んで頂けると嬉しいです。
それでは皆様良いお年をお過ごしください。