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062 レストランフェス当日

おはようございます。二日続けての投稿です。

かなり急ぎ足で書いたので、可笑しなところがあるかと思います。

その際は申し訳ありません。

 今日は、二十月二十五日、生誕祭の日だ。前世で言う所のクリスマスにあたる。


 前日から準備を始めていたため、街全体がお祭りムードに包まれている。いつもの特訓も今日は早めに終わらせて、準備に取り掛かった。昨日の手紙の事は、帰って皆に報告したところ、新年祭を一緒に過ごせると思っていた為、アニータは盛大に駄々をこねてきた。


 いつもはそんな事を言わない分驚いたが、姉であるシャルロットが宥め、王都行きを許可してくれた。姉が許可するならとアニータもそれ以上駄々をこねなかったが、思う所はあるのだろう。


 行くメンバーは俺とティアナ、リリー、エルフィーの四人に、付き人としてラウラとソフィアの二人だ。これでも下級貴族なので王城には馬車で向かわなくてはならない。


 まあ、本来であれば、この生誕祭が終わった後すぐに王都に向かわなければ王都にたどり着けないだろうが、彼らは転移の魔法を使える。しかも同行するメンバーはレオンハルトが転移魔法を使える事を知っているので、当日の朝出発しても問題ないのだ。


 それよりも今日は生誕祭を楽しまなければ損というわけで、早速レストランフェスが行われる中央広場へ足を運んだ。


 レストランフェスが開始されるのは、午前中の日が昇ってから約二刻後、午前十時頃に開始予定だ。それまでは、慌ただしく厨房内で下準備の調理に取り掛かっている。合わせて反対側に設けている屋台は、既にお客さんで賑わいを始めて来ていた。


「レオンくんこの服どうかな?」


 少し照れながら問いかけてくるシャルロットを見て、一瞬心臓が止まったかのように反応するレオンハルト。シャルロットが着ているのは、メイド服だ。それもこの世界の給仕係が来ている様な服ではなく、前世のメイド喫茶で採用されている様な、ミニスカのフリルを沢山あしらった給仕係の服。これを作るためにプリモーロにいる仕立て屋のハンナにかなり無茶な注文をした。その分支払いに色を乗せ、ついでにアイデアも使用してよいと許可を出した。彼女ならうまく利用してくれるだろう。


 メイド喫茶のメイド服だが、これにもきちんとコンセプトを設けている。デザインは主に不思議の国のアリスと言う前世のお話に出てくる事をモチーフにした。だから、わりと可愛らしいデザインの仕様になっている。


 シャルロットは、これを着るのにかなりの抵抗があった様だが、他の女性陣が嬉しそうに受け取り女性陣のみで見せ合いっこしていたので、半ばあきらめたのだろう。


 エッダやアニータの分は勿論、ティアナたちの分もきちんと用意した。上級貴族の御令嬢たちにこの様な給仕係の恰好をさせても良いのかと悩んだが、嬉しそうにしていたので、そのままにしておいた。ローレたちにも渡したが、エッダやローレたち大人組は、ミニスカではなく敢えてロングスカートを採用した。彼女たちにはロングスカートにした事で奥ゆかしさが増したとシャルロットから教えられた。


 そのすぐ後にリーゼロッテから「シャルちゃんもあっちが良かったって言ってたけど、皆とお揃いの方にしたわ」ととてもハイテンションに語り掛けていたのを思い出した。


「ああ、すごくよく似合っている」


 言葉通り、シャルロットの容姿にメイド服はかなりに合っていた。服の色も黒ではなく淡い紫色にして髪の色に近いようにした。そうする事でより彼女の魅力を引き出せると思ったからだが、これは予想以上に良かった。


 それから何故か会話が無くなってお互い照れてしまったが、他の女性陣も続々と姿を見せてきた。


「お待たせレオンッ。ってレオンも凄く似合っているねッ!!」


「本当です。レオンハルト様、その・・・とてもよく似合って・・おります」


 リーゼロッテの発言の後に、エルフィーが顔を真っ赤にして、しどろもどろにレオンハルトを褒める。赤と橙色の生地に白のフリルであしらったリーゼロッテのメイド服に真っ白に青をトレンドにしたエルフィーのメイド服。


 続けざまに腰からスカートにかけて濃い茶色にクリーム色のブラウスっぽいメイド服を着たティアナと灰色と白でシンプルだがリボンで可愛らしく見せたメイド服を着るリリー。他の者たちも森の奥に居る時の様な黒みがかった緑のメイド服や赤と白が交互に来るようにデザインされたメイド服など様々だ。


「良くお似合いですレオン様」


「はい、その、レオ様もかっこいいです」


 ティアナとリリーも同じように伝えてくれる。シャルロットたち女性陣がメイド服を着ているのであれば、レオンハルトたちは執事服を着ている。それもかなりアレンジにアレンジを重ねた代物で、本職の執事の様な大人しい感じではなく、装飾などで派手さを出していた。


 色は、黒を着ているが、デザインはそれぞれ変えているし、シャツは白だが、ウエストコートは、灰色だったり深紅の色だったり、藍色だったりと異なる。


 ネクタイを付けている者も居れば、クロスタイやループタイにしている者も居る。ダーヴィトはその中で何故か蝶ネクタイを選んでいたが・・・。


「ありがとう。皆もいつも以上に可愛いと思うよ」


 突然の誉め言葉に一斉に顔を真っ赤にする。


 そんな集団が、レストランフェスの厨房付き屋台に入って行けば、皆そちらに目線が持って行かれた。これは、料理だけではなく服装などで目立ってお客を集めると言う作戦でもあった。


 因みに、冒険者ギルドに手伝いに来てくれる者にもメイド服や執事服は用意している。事前に誰が来るのか分かっていれば、服も用意が出来る。なので、生誕祭開催の一週間ほど前に依頼は打ち切りにしていた。打ち切りにしていたが、掲示板にはまだ張り付けられていた。


 これは、生誕祭と新年祭を同時に出してしまった為、二枚一組の様な扱いをされてしまったのだ。まあ此方としては問題ないのでそのままにしている。


 俺たちは、急ぎ屋台の準備を始めた。事前に作っておいたフルーツ飴を並べ、看板も立てかける。クレープに使う魔道具や焼きそばやたこ焼きを焼く鉄板を熱し始める。


 反対側でも屋台の準備を始めたのか、売る物はトウモロコシにココナッツジェルを塗って焼いた食べ物とココナッツジュースを売るお店の様だ。


 その右側に海鮮焼きを売るお店、左側にはパンにフルーツを挟んだものを売っていた。さながらフルーツサンドと行った所だろう。


「レオ?テーブルの準備終わったぞ?」


 クルトとユリアーヌが此方に戻ってくる。彼らと他にティモとアルミンにも手伝ってもらった。他のレストランフェス参加者も数人会場設営に人数を割いてくれたおかげで、予定より早く終わった。


「了解。シャル此処任せて良いか?少し会場に行って来る」


 レオンハルトは、自分がしていた作業をシャルロットに任せて、テーブルが並べられた会場に向かう。設営をした四人にもついて来てもらった。


 真っ白いテーブルクロスと花を飾るための木で作った容器とそれを挿す花。飾りを次々と渡して、皆でそれを準備する。すべて出し終えるとレオンハルトは、とある道具を取り出し高い場所にそれを括り付ける。これが夜になると明かりがついてイルミネーションの様になる。恐らく幻想的な空間を作り上げてくれるはずだ。


 予定の十時前に準備が完了したころ、商業ギルドの支配人ヴィーラントが顔を見せる。彼と共に午前中の警備にあたる領主が所有する私兵と出入りを管理する商業ギルドの職員が何人か来ていた。


「やあ、予定以上の賑わいですね。皆さんご苦労様です。今日と言う日を迎えられる・・・・」


 それから暫く良く分からない演説をして、十時になる頃に話が終わった。


 この生誕祭が生まれたきっかけなど話された時は、どうしようかと思ったぐらいだ。前に参加した時は、この様な場には居なかったので、演説を聞いたのは今日が初めてだ。


「では、これより生誕祭を開始する」


 ヴィーラント支配人の言葉を聞いて一斉に屋台での商売を始めた。


「いらっしゃーい。ナルキーソ名物のシュリンプの串焼きだよー」


「へい兄ちゃん。オークのステーキ串だよ。一本何と・・・」


 開店と同時に一気に掛け声で街中がにぎわい始めた。


「元祖ドネルケバブの生みの親が作った。新しい食べ物・・・ヤキソバとタコヤキは此処だよー」


 最近絶大な人気を生んでいるドネルケバブ。それの発案者が作る新しいメニューと言う事で既に長蛇の列が出来始めていた。


「こっちにヤキソバって言うの二人前。あとタコヤキって言うのも二人前くれ」


「お嬢ちゃんお手伝い偉いわねー?このクレ、クレープ?って言うのを一つ頂こうかしら」


 ライブクッキングと言うのもあって、人が人を呼ぶ。大量に作れるようにしていたがそれでも追いつかないぐらいの客が来るので、レオンハルトも焼きそばを焼く方に回る。


 レストランの方も既に八割近く埋まっており、此方は現在シャルロットたちで回している。


「シャル様、コース料理二つです。内容は・・・・」


 選択できるようにしていたのが好評で、此方も大人気となっていた。仲間たちと交互に休息を取りながら屋台を続けるレオンハルトたち。


 その頃、協会主催の炊き出しや商会たちが主催した市場もかなりの賑わいを見せ、その近くのお店も繁盛していた。冒険者ギルド主催の腕相撲大会は、午後からと言う事で腕に自信がある選手たちが、今か今かと待ち望んでいるらしい。これはそっち方面に遊びに行ったクルトやユリアーヌたちからの情報だ。


 領主の屋敷で行われるダンスパーティーは、夕方からなので、此方もそれまでの時間は、ゆったりくつろげれる環境を提供していた。


「ふう、一旦落ち着いたな」


 合間に休憩を挟んでいたのだが、気が付けば時間は既に夕方に差し掛かろうとしていた。


「シャルちゃん?そろそろ休んだほうが良いよ?レオンくん、エスコートしてあげて、此処は大丈夫だから」


「私たちが抜けると・・・」


 心配そうな表情で語り掛けるシャルロット。客足が少ない今だからこそ、次の準備が出来るのだが、それを他所に休んで来いと言われる始末。レオンハルトは、そんな彼女を見て手をつなぎ、屋台から出た。


「そうか、なら少しここを任せるぞ。シャル行こうか」


「・・・うん」


 二人は、小一時間程太陽が沈む夕焼けの中、屋台巡りを楽しんだ。


 夜になると、レオンハルトの作ったイルミネーションやライトアップしてくれる魔道具で、レストランフェス会場内が、一気に幻想的な世界に早変わりした。


 昼間はわりと一般市民が来やすいようにしたが、夕方以降は貴族やそこそこお金を所持している者がお客として来始めた。


 他のレストランフェス参加者の屋台も本格的に力を入れ始める。


「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」


 シェフの様な格好をした男性が、席についたお客にメニューの説明をして、それから何にするのか尋ねる。


「んーでは、―――――」


 料理の説明をした者のお店で提供している料理を注文していた。他のテーブルも同様に席に案内して、注文を取り始める。


 俺たちもランたちに注文を取りに行ってもらっていた。


「ご主人様?お客様がお呼びなのですが、どうしましょうか?」


 この忙しいのに誰だろう?


 皆に少し抜ける事を伝えて、呼び出された場所へ向かう。


「お客様?どうかされましたか?」


 黙々と食べる男女二人。女性の方は見た事が無いが、男性の方は何処かで見た事がある様な感じの人だった。


「ん?おっ!!来た来た、久しぶりだな」


 男性客が振り返り此方を見ると、そこには王都で武術大会に参加した際、魔族に襲撃され共に戦った勇者コウジ・シノモリの姿があった。いつもの鎧ではなく楽な服装だったので気が付かなかった。一年ぶりの再会で、彼は見違えるほど逞しくもなっていた。


「悪いな。忙しい時に呼び出してしまって・・・実は、な・・・」


 この一年で口調まで変わるとはと考えていたレオンハルトに、勇者コウジ・シノモリは話を続ける。


「この料理、祖国で食べた料理に似ているんだ。何処でこれを覚えたんだ?」


 うっ・・・。


前世での料理はこの世界に存在しないメニューが多い。しかし、勇者の様な元々此方の世界ではない人にとっては、懐かしいと同時に不思議でならない様だ。


「古い文献を漁っておりましたら、見慣れない調理方法がありましたので、それを参考にアレンジしたのですが・・・美味しくありませんか?」


「いや、逆だよ。最高に素晴らしい料理だった。ありがとう」


 多分、勇者コウジ・シノモリは俺が、別の世界の人間なのではないかと疑っていたように感じた。実際、そうなのだが・・・。一年前のガバリアマルス王国が消滅した時、勇者三人が亡くなった事も聞いている。絶大な力を持つ勇者ですら死に至る世界なのだ。そんな世界で彼女を守らなければならない状況を、勇者家業で危うくはしたくないのだ。


 勇者コウジ・シノモリと少し会話をして別れた。因みに彼と一緒に来ていたのは、先日お付き合いを始めたと言うアルテンブルグ公爵家の令嬢カサンドラ。公爵家と言う事で屋台から、ティアナたちを呼んできてもらうと、予想通り知り合いみたいだったので、少し会話をしていた。


 『念話(テレパス)』で厨房の応援要請があり、レオンハルトたちは後日会う約束をして、屋台に戻った。


 その後も忙しい時間は続き、落ち着きを取り戻した・・・と言うか、食材を全て使い切ったので、屋台を閉めた。かなりの数の食数を用意していたのだが、それでも売り切れたことに驚くも周りのお店も幾つか店じまいを始めていたので、丁度良い頃合だったのかもしれない。


 片づけ終わると、その場で解散して各々まだやっている屋台巡りに出かける中、レオンハルトとシャルロット、リーゼロッテ、ティアナ、リリー、エルフィーは領主ヴェロニカの屋敷へ向かった。


 店が終わったら来てほしい、と呼び出しを受けていたのだ。


 ダンスパーティーで静かに盛り上がっていた屋敷。本物の執事に案内されて、屋敷の中へ。


 すると、屋敷の中でも貴族たちや商会の会頭たちがパーティーを楽しんでいた。外は一般人に対して、中では地位のある者たちが集まってパーティーをしていたのだ。


「来てくれたんだね。良かったら君たちも楽しんでくれたまえ」


 領主のヴェロニカが料理を片手にお酒を飲んでいる所の様だったため、簡単な挨拶だけ済ませて、俺たちも生誕祭の夜・・・後夜祭的なものを楽しむ事にした。


 このような場所で踊った事が無いのだが、同行した女性たちと一緒に楽しい時間を過ごせたのは、ちょっとしたクリスマスプレゼントだなと思わされたのだった。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

引き続き執筆活動を頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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