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050 再会

さて、前回に引き続き、まったり編です。

今回は、あの人に登場してもらいました。


忘れた頃にやってくるあの人。それと新しい要素を取り入れた人も居れてみたけど、

今後はこの人も使って行きたいと思います。


では、続きをどうぞ。

 王都の大通りに聳え立つ四階建ての建物、商業ギルドアルデレート本社。冒険者ギルドとは、少し似ている気もするが、建物の雰囲気は明らかに異なる。野心と威圧、豪快さの雰囲気の冒険者ギルドに比べて、野心と明るさ、賑わいと言う似て非なる雰囲気を商業ギルドから感じ取れた。


 商業ギルドの雰囲気はレオンハルトたちが拠点としていた海隣都市ナルキーソで経験していたので臆する事は無くその扉を開いた。


「はーい。七十三番の方、お待たせしました。此方へどうぞ」


「六十一番ッーーー。店のお金また納め忘れかッー!?」


「はい。新商品の登録ですね。お待ちください直ぐにお調べいたします」


「あのーまだ順番はこないのかいなー。こっちは店空けてきているんだけどー」


 中に入った途端、色々な窓口から賑やかな声がたくさん聞こえ始める。この雰囲気は流石にナルキーソでは体験していない。これがアルデレール王国で最も繁盛している商業ギルドと言う事なのだろう。


「あら?僕たちどうしたのかな?お父さんかお母さんのお手伝い?」


 直ぐ近くにある総合受付の様な案内係をしているお姉さんに声を掛けられる。


 その姿が、一瞬だけ前世の受付でシャルロット・・・いや、窪塚琴莉の同僚と瓜二つの顔つきをした人物に驚く二人。髪の色や瞳の色は此方の世界らしくカラフルな物であるが、髪と瞳を黒に変えると全く同じに見えてしまう。


「ん?」


 総合受付のお姉さんが不思議そうな顔をしていると、それに気が付いた二人は慌てて此処に来た目的を伝える。


「ギルドの加入ですか?加入する事は出来ますが、加入金が高いのと維持費もそこそこのお金がかかるから余りお勧めはしませんよ?」


 商業ギルドの職員なのに加入を勧めないと言うのは、可笑しな話に聞こえるかもしれないが、これは相談に来ていた人物を見極めての対応だ。普通にお店を開いている人でも、売り上げの何割かをギルドに納めなければならない。それに会員の維持のお金。売り上げが少ないとお店の維持もままならなくなる。そう言ったリスクが、商業ギルドに属すると必ずと言って良い程ぶち当たる壁となっているのだ。


 中小の商会や個人店舗は特にその傾向が強い。


 そこでどれぐらい粘り続けれるか、ヒット商品を生み出せるか、良い物を卸す事が出来るか、その伝手を捕まえられるかなどで、商会や個人店舗が大きくなれるか決まってくる。


 しかも、多くの商会は後ろに大手の商会の協力を得ていたりもする。


 しかし、総合受付のお姉さんは、後ろにそんな大物を控えているようには見えない上に、伝手もなさそうな子供に加入できても維持できないと踏んでの注意だ。


「資金面も維持も問題ありません。これでも冒険者をしていますから」


 レオンハルトとシャルロットは、持っていた冒険者ギルドのカードを提示した。


「え?何でこんなにランクが高いの?名前は・・・・レオン、レオンハルト様ッ!!」


 流石に知らない者はいない様で、その名前を聞いた者は慌てて此方へ顔を向ける。レオンハルトと言えば、今年の武術大会未成年の部の優勝者にして、勇者や騎士団長と共に上級魔族を相手に勝利を収め、その報酬として騎士爵の位を授かった。今最も王都で名を知らしめている人物だからだ。


「も、申し訳ございません」


 急に謝罪を始める総合受付のお姉さん。謝罪には、プライバシー保護を怠り、周囲に知られてしまった事、それと実力及び経済力に問題が無い彼を見誤り、お勧めしないと話してしまった事だ。


「直ぐに係りの者を・・・・・」


「個室に御案内しなさい」


 お姉さんが持ち場から離れようとした時、他の受付の奥の部屋から中年の男性がお姉さんに指示を出した。


「テッサ。君も部屋に来なさい」


「は、はいッ」


 中年の男性に言われるがまま、総合受付のお姉さんは俺たちを連れて、奥の部屋へ通された。中には更に一人の男性が座っており、このギルドで一番偉い雰囲気を出していたが、その男性にレオンハルトとシャルロットは見覚えがあった。


「あれ?エドゥアルト様?」


 そこに居たのは商業ギルド代表のエドゥアルト。レオンハルトは魔族襲撃後の謁見時に商業ギルドの代表と顔を合わせた事があったのだ。


「いやー久しぶりだね。レオンハルト君・・・いやレオンハルト様、シャルロット様」


 明らかに自分たちよりも年下の彼らに敬意を払う。年齢的に言ってもまだ未成年の子供に敬意を払う事は普通の大人でも難しいはず、しかも相手は貴族の子供ではなく、孤児から成りあがった子供だから、余計にその傾向が強い。


 しかし、幾ら孤児の子供でも今は貴族の爵位持ち、そこら辺に居る大人よりも立場が上の存在なのだ。だから、エドゥアルトの対応は間違っていないし、その切り替えも見事な物だ。


 にこやかに笑う彼に対し、冷汗をかきそうな感じの受付のお姉さん。案内をする様に申し出た男性は、エドゥアルトの横に立ち見定める様な眼差しで此方を見ている。


「お久しぶりです。エドゥアルト様が居るとは思いませんでした」


「あはは。此処は僕の仕事場だからね。居る事の方が多いと思うよ。そうそう、彼らを紹介しておこう。彼はこの商業ギルドアルデレート本社の管理者をしてくれているロベルト君ね。そして、この部屋に案内してくれた女性がテスタロッサ君だ。彼女はまだここに勤めて一年ぐらいの新人だが、真面目で優秀な子だよ?」


 商業ギルドは、各街にある支社と此処本社の支配人と言う役職の人物を立てている。これが冒険者ギルドでいう所の支部長と同じ扱いだ。では代表と言うのはどの立ち位置なのかと言うとアルデレール王国内すべての商業ギルドのトップと言うわけだ。国ごとにそれぞれ代表となる人物を立てる。そして、重要な事があれば代表たちが話し合って商品の物事を決める。


 ただし、冒険者ギルドと違い、全世界でのギルドのトップは存在しない。冒険者ギルドにはギルドマスターと呼ばれる人物が居るが、商業ギルドはあくまでも(あきな)い。その為、トップと言う考えは薄く。物事を最終的に決めるのは多数決によるところが大きい。


 それでいいのかと思うが、それで回っているので問題はない。


 紹介された二人はその場で軽く頭を下げる。テスタロッサと呼ばれた総合受付のお姉さんは、何処か緊張した様子だった。確かに、職員となって働き始めてまだ一年程。新人の域から出ない彼女が、自身の上司とトップに呼び出されるのだから、気が気ではないはず。


 青褪めた表情をしていると、支配人のロベルトが口を開く。


「テッサ。此処へ貴方を呼んだのは、他でもなく彼らに対してとった行動についてだ」


 それから、暫くはロベルトからの注意を言われる。まあ、厳しい発言に思えるかもしれないが、注意されたのは対応の事ではなく。正体を軽はずみで口にした件だ。どのギルドにも言えるが、個人で得た情報を無暗に他人に教えてはならない決まりがある。


 そうしなければ、信用と言う物を失いかねない。それが商売に携わるものであれば尚の事、注意しなければならないからだ。


「うん。ロベルト君の言う通りだからテスタロッサ君には、レオンハルト様の専属の担当者になってもらおうかね?」


 ん?専属の担当者?


 よく分からない・・・・単語が出てきたので、尋ねる。


 専属の担当者と言うのは、俺たちが商売を行う際の手助け、月一回の商売の売り上げの一割を収める計算やその他支払いの援助。後は、価格調整の助言などである。


 専属の担当者が付くのは基本的に、実力のある商会や有名な老舗。後は大商会などにしか本来宛がう事はしないらしい。


「・・・・え?えええええええッ!!」


 大声で驚くテスタロッサ。新人と呼べる段階で専属につく事はまずありえない状況で、しかも専属につく相手が、今最も知名度を持ち、貴族の仲間入りをした人物。国王陛下や宰相、教会の御偉い人に王都の重鎮たち、しかもあの勇者や騎士団長までが彼の存在に注目している。


 その彼の専属ともなれば、注目するのは当然。まだどうしたいのかの具体的な事は聞いていないが、間違いなく大事になる事に変わりはない。


 これから始まるであろう地獄に絶句する。


「ははは・・・。よろしくお願いします」


 苦笑いをしながら彼女に挨拶をする。


 テスタロッサは、レオンハルトからの言葉にかなり落ち込み気味で返答していた。そこを更にロベルトに注意されていたので、彼女が不憫に思えてきた。


「さて、そろそろ本題に入ろうかな?今日はどういった御用ですか?」


 エドゥアルトの問いに、そう言えばと思い出したテスタロッサ。


「代表、レオンハルト様は、ギルド加入の申請に来られたようです」


 レオンハルトに対してエドゥアルトが問いかけたのだが、何故かそれをテスタロッサが返答すると言う事態。ロベルトも当然これから説明しようとしていたレオンハルトも誰一人として口を開かない。


・・・・・あれ?・・・・ひょっとして?


 やってしまった。


 これは、その凍り付いた場面で誰しもが考えた一言。だが、それぞれ言葉は同じでも込められている意味は違った。


 エドゥアルトとロベルトは、空気が読めず代わりに返答してしまったテスタロッサに対して、呆れと怒り。レオンハルトとシャルロットは、この後の悲劇が目に浮かぶために彼女に対して、また怒られるのかー可哀そうにと言う哀れみ。そして最後に当の本人は、自分が返答する場面ではなくレオンハルトが答える質問だったと後悔すると言った意味。


 まあ、誰もが予想していたようにテスタロッサはロベルトから厳重に注意された。代表と貴族の会話に許可なく代弁したからと言う事で。


 その後、彼女が代弁した通りギルド加入の手続きの為に訪れていたので、書類に必要事項を記入し、それをカード化してもらう。この商業ギルドカードがあれば、何処でも商業ギルドで手早く買取が出来る上、割引や上乗せもしてもらえる。


 冒険者ギルドも同じだが、扱う品では商業ギルドの方が高く買い取ってくれる物もあるのだ。


 一通り説明を聞き、お店を開くのか商会を立ち上げるのか尋ねられ、行商をメインで行う事を話す。一瞬、戸惑いを見せる商業ギルドの三人。しかし、イリードの商業ギルド、支配人のヴィーラントから情報を得ているエドゥアルトとロベルトからしたら、それでも良いかと考え直す。


 それ程彼らの(もたら)した商品は、大ヒット商品となっていたからだ。主にドネルケバブや王都の商会、ヴァルテンブルク商会にレシピを売ったマヨネーズの製法。マヨネーズは王都で爆発的な人気商品となり、ヴァルテンブルク商会は一気にその名を轟かせるほどに成長している。


 出店ですらドネルケバブなる商品を売るのだから、行商でも(さぞ)かし此方の度肝を抜いてきそうな気がしてならない。


「本当に行商しかされないのですか?折角、貴族になれたのですから、商会でも立ち上げましょうよ?」


 テスタロッサは、レオンハルトに商会の立ち上げを促す。商会が安泰になれば、自分もお給金が上がると踏んでの言葉。安泰になるまでにかなりの労力が必要になる事を一切考えていないのだろうかと疑問に思ってしまう。


 寧ろ、出会った時の対応は何処へ行ったのかと聞いてみたくなるほどに、彼女に対する評価が少し低下してきていた。


「商会は今の所考えていませんが・・・・まあ、そのうち立ち上げるかもしれません。その時はテスタロッサさんに頑張ってもらいますよ」


 どちらが大人なのかと問いたくなるが、実際レオンハルトの方が精神年齢はかなり上だ。それにこの程度は社交辞令に過ぎない。


「レオンハルト様、それほど気にされなくても良いです。テッサには後できつく言っておきますから」


 また怒られると急にテンションが下がったテスタロッサ。


(ああ、分かってしまった。この人、受付をさせれば出来る人だけれど、それ以外が出来ない系のポンコツな人だ)


 え?どこがポンコツって?


 そりゃあ・・・・受付している時とまるで別人のようにダメダメ感が見てとれるから。


 その後、テスタロッサが書類を持ってきて、俺たちはその場で必要事項を記載。最優先で登録をしてくれた事もあり、あっと言う間に商業ギルドのカードが出来上がった。お店や商会の場合は、これに加えて証明書が発行されるらしい。


 レオンハルトは、ギルドカードを受け取るとエドゥアルト代表、ロベルト支配人、テスタロッサと別れ、商業ギルドを後にした。


「代表・・・・これは、我々の業界に新たな風が吹くかもしれませんね」


「ああ、彼らは冒険者が本業ではあるが、それでも商業ギルドに大きな嵐を(もたら)してくれるだろう。その為の専属をつけたのだから」



 レオンハルトたちやテスタロッサが退出した部屋で、商業ギルドの代表と支配人は、今後の事を話し合い、いずれ来るであろう革命らしきものに何時でも対応できるよう細かい打ち合わせを夜遅くまで開かれるのであった。


 商業ギルドを出たレオンハルトとシャルロットは、このまま仲間の元へ向かうため、歩いていると先程のテスタロッサの事について話し始めた。


「彼女、足立さんに似ていたな」


「うん、私も凄く驚いた。髪の色と目の色を変えるだけで、あそこまで印象が変わるんだと考えさせられたぐらい」


 足立と言う人物は、前世での伏見(ふしみ)優雨(ゆう)窪塚(くぼつか)琴莉(ことり)が務めていた会社の受付嬢の女性と瓜二つだった事だ。その人物は琴莉の後輩にあたり、新入社員の時に琴莉が彼女の教育係をしていたので、彼も良く知る人物となっていた。


麻耶(まや)ちゃん。今も元気で頑張っているのかな?」


 麻耶(まや)と言うのが、足立の下の名前で、フルネームは足立(あだち)摩耶(まや)。歳は出会った時が二十二歳。それから二年ぐらいは経っていて、自分たちが命を落とす頃は二十四歳ぐらいだった。


「そうだな、(れん)も今何してるのかな?」


 (れん)とは、二階堂(にかいどう)(れん)と言い、優雨(ゆう)の会社で共に働いていた人物で、同期でもあり、社内では最も親しい存在だった。


 過去の人物に似た人を見てしまった事で前世の記憶が、かなり鮮明に思い出されてしまう。戻れない過去ゆえにとても悲しい気持ちにさせられてしまった。


「あれ?レオンにシャル?」


 悲しい気持ちで落ち込みかけていた二人に突如、声を掛けられ慌てて顔を上げた。


 見覚えがあるがその頃の姿とはかなり変わっており、若干大人びた雰囲気を出すブルーノが、目の前に立っていた。


 孤児院に居た時に良く面倒を見てもらっていた人物。孤児院を出る時に商人の道に進むと言って、レカンテート村に行商に来ていたオスカー・シュトライヒの元で働きに出ていた。弟子入りみたいな感じで最初は行商に同行していたが、半年ほどすれば行商に姿を現さなくなり、来なくなった頃から少しずつイリードのお店や他の街のお店の手伝いに駆り出されているとは聞いていた。


 数年合わなかっただけで、彼はすっかり少年から青年に変わっていた。


「ブルーノッ!?久しぶり、どうして王都に?」


 年上なのに口調が軽いのは、孤児院の先輩と言うよりも義理兄と言う感覚と年上の友達感覚が強いせいでもある。まあ、そもそも孤児院で丁寧語や敬語何て言葉は教わらない。丁寧語は若干教わるが、それよりも文字の読み書きが主流となっているので、覚えても簡単な言葉だけ。


 レオンハルトは、イリードやその周辺の町や村で商売をしているはずの彼が、王都に居る理由を尋ねた。


 (おおよ)その目星はついており、観光・・・・と言うか武術大会の観戦若しくは、商売に来ていた。それか、王都のあるお店に用事があった。実際に王都にお店があるかは分からないけれど。


 最後は、これまでの経験を元に独立と言う線もない事もないが、それは限りなく低いと踏んでいる。成人していると言っても王都でお店を構えるには経験が圧倒的に足りないからだ。


「ん?ああ、王都に来たのは師匠の指示だよ?何でもある人物に預けている荷物を受け取ってきてほしいと言われたから来ただけなんだけど、まさか君たちに会えるとは思ってもいなかったよ」


 師匠とは誰なのか尋ねてみると予想通りの返答が返ってくる。ブルーノは、オスカーの元で働きながら、イリードから王都にかけて直進上にある小さな宿場町のお店を任されているらしい。未だに弟子として働いているが、別の孤児院から同じように弟子に来た者を部下として共に働いていて、今はその者にお店を任せているらしい。


 イリードから王都にかけて来る道のりはレオンハルトたちが未だに通った事が無い道だったためお店を知らなった。


「これから商業ギルドに顔を出して、受付に居るテスタロッサさんから、品物を受け取るんだけど、その後一緒にお茶でもどうかな?」


 テスタロッサと言う名前を聞き、どこか遠くを見つめる眼差しでブルーノを見た。


 受付としては、まあまあの対応をして彼女が、代表たちの前では見事なまでの空気の読めなさを発揮するポンコツお姉さん。


 突然そのような目線で見られたことに不思議がるブルーノだったが、改め直して尋ねて来たので、お茶をするのは問題ないとだけ伝えた。


「それだったら、リーゼちゃんたちも誘って孤児院の同年代の同窓会をしよっか」


 シャルロットの提案に俺も頷くが、ブルーノは「ドウソウカイ??」と頭を悩ませていた。


 こっちの世界にない言葉は極力避けていた二人だが、先程まで前世の事を振り返っていた影響が出てしまい。ついうっかりそれを言葉にしてしまった。


「まあ、簡単に言えば同じ学び舎で学んだ者たちが卒業後に集まる事って意味かな?」


 孤児院は、学び舎なのかと尋ねられると返答に困る処ではあるが、その説明で納得した様子を見て安心する。


 取り敢えず集合場所を決めてから、ブルーノに用事を済ませてくるように伝える。その間にレオンハルトたちはリーゼロッテたちを迎えに行く事にした。リーゼロッテとアニータは、ローレたちと馬車の使い方を聞きに行っている。迎えに行った時にダーヴィトに事情を説明し、ローレたちを任せる事にする。ヨハンたちは冒険者ギルドかその周辺に居るはずなので、魔法で探す事にした。


 こう言う時って、前世で使っていた携帯電話の様なものがあると便利だなと考えてしまったのは、前世の事をまだ引きずっていたからかもしれない。


 四半刻程でレオンハルト、シャルロット、リーゼロッテ、アニータ、ユリアーヌ、クルト、ヨハンのメンバーに加えブルーノが合流し、アシュテル孤児院の出身だった者たちが、集まり思い思いに昔話に花を咲かせた。


 他の仲間たちを見たブルーノは、最初かなり驚いても居たが、昔から一緒に居る事が多かったメンバーと言う事もあって、直ぐに納得していた。


「ん?最近アンネ先生に連絡していなかったと思う。そうだね、お店に戻ったら一度手紙を書いておくよ。皆にも会えたことは伝えておく」


 近くの飲食店で、ふと昔の者たちに会ったかとクルトが尋ねるとブルーノは、真っ先に育ての親であるアンネローゼの事を話す。お店を持っているため、俺たちの様に度々、訪れるのが難しい事もあって孤児院を離れてからは、オスカーと一緒に行商をしてレカンテート村に訪れた時が最後らしく。手紙もお店の手伝いの時には偶に書いていたが、今は全然と言う事の様だ。


「それと、オリバーとルーカスの二人には半年ほど前にお店に来てくれたよ。二人とも冒険者として頑張っているそうで、今頃は(エフ)ランクに昇格しているかも」


「しているかも?」


 (エフ)ランクとして活動しているとか、(エフ)ランクに昇格した。と言うならばわかるのだが、しているかもと言う事は半年前までは(ジー)ランクだったと言う事。


「そう、お店に来た時が何でも昇格試験を受けにイリードに向かっている途中だったみたいで、それからどうなったかまでは聞いていないけど、二人ならきっと大丈夫だと思うよ?」


 まあ、(エフ)ランクの試験はそれ程難しい試験ではない。普通に受けてパニックにならなければ数年経験した者は通って当たり前の試験。


 寧ろ次の(イー)ランクの昇格試験から難しくなる。


「それよりも皆も冒険者になったんだよね?どれぐらい強いの?昔から頭が一つも二つも抜け出ていたからランクも高いと思うけど、ひょっとしてオリバーたちと同じぐらいのランク?」


 頭が二つ抜け出ているのに、オリバーと同じと言われるとどういう事なのだと反論したくなるが、実際この世界で僅か十一、ニ歳の子供が(イー)ランクに達している事もかなりすごい事ではある。だが、彼らはその上のランクをすでに取得していた。


 実際には(ディー)ランク、(イー)ランク、(エフ)ランクの混合編成ではあるが、それでも異常と言えば異常な事だ。


皆F(エフ)ランク以上のランクではあるよ」


 きちんとした事は伝えず、上手く躱したシャルロット。別に秘密と言うわけでもないが、説明が面倒ではあるので、濁した言い方で終わる。


「そうなんだー。みんな強いから直ぐにオリバーたちを抜かしてしまいそうだね」


 いやーすでに抜かしていますとは流石に言えないレオンハルトたち。


「そう言えば、王都に凄い子供が居るそうだね。今日王都に着いたばかりだから詳しくは知らないんだけど、魔族を撃退したっていう子供もいるぐらいだから、世界って広いよねー。・・・ん?どうしたの?」


 気まずそうにするレオンハルトたち。ブルーノの話にある魔族を倒したのは、目の前のレオンハルトたちで、しかも魔族の中でも上級魔族と呼ばれるかなり厄介な相手を相手にした。


 流石にブルーノもその子供がレオンハルトたちだとは結び付かない上に、今日王都に来たと言う事もあり、情報収集がそこまで出来ていなかった。辛うじて、王都から戻る商人や冒険者から王都が魔族に襲われたという情報と王国が誇る王国騎士団や勇者がそれを撃退。そしてその場に子供も一緒に戦っていたという程度のもの。


「いやーあの凄まじい魔族を見たら、ちょっとなー」


「そ、そうだねー」


「えーあれ倒したのレオッ!?んーーんー」


「アニータは何を言っているのかな、あはは」


「??」


 リーゼロッテが急にアニータの口をふさぎ、誤魔化すように笑う。それを見て、シャルロットもレオンハルトも苦笑していた。アニータは急に口をふさがれた事で、少し苦しそうにもがく。


 普通、何かあると察する部分ではあるが、ブルーノはそれに気が付かずに不思議そうな顔をしていた。


 その後、何とか誤魔化して切り抜けると、この話題は危険と判断したシャルロットが、話題を変える。


「ところで、王都には来た事があるの?」


「んー。初めてだよ。折角王都に来たから観光とかしてみたかったけど、明日には王都を発つ予定なんだよね。だから、今日皆に会えてよかったよ」


 それからは、他愛もない話で盛り上がり、久々に孤児院メンバーだけで昔話に花を咲かせたのであった。


 後を任せたダーヴィトたちが合流するタイミングで、話を切り上げ、ブルーノとはまた会おうとだけ約束して別れた。











 王城のとある場所では・・・・。


「そうか、彼らは出発の準備を始めていると」


「はい、うちで雇っている私兵が偶々、彼らを目撃しまして、馬車の購入や操作方法、手入れの仕方などを学んでいたそうです」


 この国の国王陛下であるアウグストと宰相として国を支えるエトヴィン。王都を支える四大貴族の一つ、ラインフェルト侯爵家の当主リーンハルト候が、揃って話し合いをしていた。


 しかも、今いる場所は王城の中でも入れる者が限られている部屋だ。彼らの様な上級貴族の中でも選ばれた貴族当主しか入る事が許されていない、そう言った部屋。


 主な使用要件は、国の大事に関わる件の事前打ち合わせなどに用いるが、今はとある人物について話し合っていた。


「うちの娘が聞いたら、騒ぎ出しそうですね」


 少しだけ困り顔で話すエトヴィン。それに頷くアウグスト陛下とリーンハルト。この三人は現在、同じ悩みを持つ共有の父親でもある。


「しかし、知らせなければ・・・・・暫く話もしてもらえないかも」


 リーンハルトは、我が娘リリーに嫌われたくないが、話してしまえば間違いなく。何かが起こると感じ取る。それも自分自身にとってはあまり宜しくない方向に。


 嫌な方向に進むが尊敬されるか。良い方向に進むが嫌われるか。これは父親ならかなりの確率で通る娘との試練と言えるだろう。


 アウグスト陛下もエトヴィンもそれを想像できてしまう為、表情が一気に青褪めてしまった。この試練はリーンハルトだけではない。この場に居る全員が同じ思いを抱いている。


「それは―――――。なら、まずは――――――」


 三人は、ではどうするか?をそれぞれ決意し、覚悟を決めた。


自国よりも娘の扱いに悩まされる姿は、流石に誰にも見せられない。この部屋で話をしたことが、ある意味一番正しい使い方だったのかもしれない・・・・。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


さて、そろそろ新しい舞台にストーリーを持って行きたいですね。


ストックが無いので、来週までに頑張って仕上げます。(送れたらすみません)


再来週は、休日出勤した分の代休を取ったので、休み中にストックを用意したいと思います。

では、今後ともお願いしますねー。

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