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018 アーミーアント討伐部隊~後編~

久々の投稿になります。

宜しければ読んでやってください。

全話修正も行っております。宜しければ他も呼んでやってください。


 レオンハルトたちが戦っている場所よりかなり離れている場所から、念願の赤色の煙が上空に撃ちあがったのを目撃する。


 それは即ち、女王蟻(クイーンアント)を討伐したと言う事だ。今回、冒険者ギルドからの依頼はアーミーアントの討伐が目的ではあった。しかし、実際に戦闘を熟していくうちにその数の多さに女王蟻(クイーンアント)がいるのではないかと言う予測が話に出た。


 一応、その可能性があると言う事はこの依頼を受ける前に予想していた者も少なくはないだろう。毎年この時期になると大量発生して、討伐部隊が組まれその時に女王蟻(クイーンアント)が倒される場面も多々ある。


 今回はその女王蟻(クイーンアント)の討伐の知らせを心待ちにする者が多い。現にそれを目撃した者は、その喜びを身体全体で表現するように喜んでいる。ただし、それも一瞬の事、すぐさまその喜びから戦闘状態へ意識を異動させる。


 知らせのおかげか、冒険者たちの疲労や焦りが減少し、士気も一気に高まりを見せた。


 赤色の煙が上がる少し前――――。


 森の中で一部開けた場所にたどり着いた。


 その場所には、五つものアーミーアントの巣があり、大きさと言い守りに出ているアーミーアントの数と言いこれまでの物とは大きく異なっている。


「あの場所から大きな反応が一つあります」


 シャルロットは、魔法で探索した結果を他の三人に伝える。大きな反応と言う表現をしたのには、巣の中が入り組んでいるのと範囲を優に超える広さを持っていた事もあり、正確に判断できなかったからだ。精度を落とし範囲を広げた結果分かった事だが、それでも此処に女王蟻(クイーンアント)がいると判断できるだけの何かを捕らえる事は出来たのだ。


 しかし、続けるように語られたのは、五つの巣の入口は巣の中でつながっており、またその五つとは別の場所にも入口がある事が分かった。


 この五つを封じたとしても、別の出入り口から女王蟻(クイーンアント)に逃げられる可能性が高いと言う事。


「どうするのシャルちゃん?確実に仕留めないと・・・・」


「プランは二つ。この四人で個々の巣を破壊するか、若しくは仲間を呼んで巣を破壊するかだけど・・・・仲間を呼ぶのはあまりお勧めは出来ないかな?」


 シャルロットのプランを聞き、リーゼロッテともう一人の冒険者はその意味を理解できた。しかし、荷物持ちとして参加していたもう一人の冒険者にはその意図する意味が理解できていない。


 どちらのプランを選ぶにしても四人にそれぞれの役割が与えられる為、理解していないのは困る。そこで、もう一人の冒険者が手短にプランの意味を伝えていた。


 四人で巣を破壊する場合、この場にある五つの巣を誰かが担当、残りはそれぞれ別の場所にある別の巣穴に向かいその穴を封じる事。当然、それぞれが負う危険性は高い上にこの場を担当する者は更に危険度が増す。しかし、短期決戦で勝負が付けられるため囮となっている冒険者たちの負担をかなり減らす事が出来るのだ。


 もう一つのプラン、捜索に出ている他の二つのグループと合流する場合、此処の場所と別の場所の三箇所の巣穴にそこそこの人数で対処できる事。しかし、待機する者とそれぞれの方向に探しに行く者に分かれるため結局は単独行動になるし、合流するまでにどれほどの時間を費やすのか分からない。また遅れるだけ囮の冒険者たちにさらなる負担をかけてしまうと言う点だ。これまでのアーミーアントのかなりの群れが囮の場所に向かっている上、激しい戦闘やその血の臭いで別の魔物を誘き寄せているだろうと考えると全滅はないだろうが、それに近い事が起こる可能性すら考えられるのだ。


 シャルロットとリーゼロッテは短期決戦を望んでおり、もう一人の冒険者は援軍を希望している。多数決で言えば短期の流れか同数による話し合いとなるが、話し合いをしても決まらない事も分かっている。話し合いをするぐらいならば、探しに行った方が早いかもしれない。話し合いの結果、援軍を呼ぶに決まればそれこそ時間の無駄使いでしかないからだ。


 荷物持ちできていた冒険者は、もう一人の冒険者の話を聞き、正直決断できないと言った表情をしていた。彼からすればどちらも選択したくないのであろう。


 考えた末、出した結論はこのまま四人で攻めると言う選択肢だった。


「僕ではあまり役に立てないかもしれませんが・・・・」


「いえ、無理な事をしてくださいとは言いません。ですが、かなり危険な事には違いありませんが・・・・・それは、皆さんも同じでしょうから」


 シャルロットは、子供でありながらも大人顔負けの対応をする。まあ実際は前世の時も合わせれば完全に大人なのだが、それはレオンハルトとシャルロットの秘密なのでみんなが知る由もない。


 そこから、五つの巣穴に誰が対応するのか、別にある三つの巣穴の位置。どういう作戦で行くのか等を手早く伝える。


 シャルロットとリーゼロッテは、既にどうするのが一番良いか二人が話している合間に大筋を決めていたのだ。


「私が此処の五つを押えます。リーゼちゃんは、一番遠くにある巣穴に、残りの巣穴を二人にお任せします。それぞれ此方と此方へ向かってください」


 地面に簡単に絵をかき説明して行く。弓がメインのシャルロットがこの場に残ると言う事を知り二人が驚く。この場合、リーゼロッテかもう一人が担当した方が良いと考えていたからだ。しかし、シャルロットの全力を知っている者は此処ではリーゼロッテだけだ。そんな疑問が上がっても可笑しくはない。


 リーゼロッテがシャルロットの意見に賛同し、そのまま準備に入る。


 作戦はこれまでと同じだが、一つ違うのは眠り玉、毒と使用した後は、巣穴の入口を素早く塞ぐことだ。これまでは入口が一つだけだったので風とかで奥まで送り込む事が出来たが、今回は眠り玉の煙や毒などが別の入口へ流れてしまう可能性があるから、入口を一つにする作業が居るのだ。


 人が入れるほどの入口をどうやって塞ぐのか、それは巣の入口にある物を仕掛けると言う作戦だ。そのある物とは――――。


 小麦粉だ。


 小麦粉なんかをどうするのかと疑問に思うかもしれないが、大量の小麦粉を入り口付近で撒き散らし、点火させる。するとどうなるかと言えば小規模ながら爆発させる事が出来るのだ。この現象を粉塵爆発と言う。


 シャルロットが何故この様な情報を知っているのかと言うと、半分は恩恵による知識だが、もう半分はレオンハルトに孤児院時代に教えてもらった事があるからだ。


 今回は、即席爆弾として利用する。


 魔法の袋から大量の小麦粉が入った大袋を取り出すと、風属性魔法を応用して数十キロの小麦粉を片手サイズの球体にまで圧縮それを合計八つ作った。簡単には壊れないようにしているが、地面に叩きつければ割れてしまうその程度の強度に作っており、毒を巣穴へ入れたら圧縮した球体を巣穴へ投げつけると言う手はずだ。


 しかし、それだけでは粉塵爆発は起こらないので、圧縮用にしている風魔法が吹き飛ぶ際に空気を振動させ火種が出来るようにも細工している。此処まで細かい魔法となれば、普通の魔法使い所か王宮に勤めている様な魔法使いでも難しい魔力操作と現象を起こすための知識が必要だ。


 爆発させるタイミングはある程度同じタイミングにしなければ、失敗に終わる可能性もある。巣が大きいと言う事は、入り口だけ眠り効果や毒効果が表れて、奥にいる者にはそこまで影響しない可能性がある。爆風で入口を壊すだけでなく、それらの効果を奥に届かせる意味もあるのだ。別の出入口を塞がなければ爆風によって其方へ煙などが逃げてしまう可能性があるからだ。だから、作戦上かなり難しく


 全員の協力が必要不可欠なのである。


 準備が整いそれぞれの目的地へと向かう。


 シャルロットの示す通り向かった場所には苦労することなく巣穴を発見できた。各々は巣穴の中に眠り玉を投げ込みしばらく様子を見る。外で見張りをしていたアーミーアントも穴から出てくる眠りの効果がある煙を浴び、姿勢を維持できなくなってくる。投げ込んでからの時間を数え、既定の時間に達した時には外にいたアーミーアントはすべて深い眠りについていた。


 そして、次の行動を行うべく巣穴に近寄り毒を設置してゆく。


 一方シャルロットの方は、五つの巣穴を同時に対応していた。方法は簡単で、その森が開けている範囲すべてを魔法の力で眠り玉の煙で覆いつくしたのだ。味方が居なくなったことで力を出す事が出来、力技で対処したのだ。毒も同じように対応する。


 そして、再び時間を数え、決めていた時間が来ると初めに追加の毒を入れ、そして、小麦粉が圧縮された風の球体を巣に投げ込んで、全速力でその場を離れる。


 離れている時に拍子抜けの様な小さな鈍い破裂音が起こり、こんなもんなのかと振り返ると白い煙が上空へ噴き出すように小麦粉が飛散。そしてそのすぐ後に爆発が起こった。


 量が多かったためか、粉塵爆発の規模が大きく巣穴を閉じるどころか、吹き飛ばして陥没させてしまっていた。


「・・・・・・・はあ?」


 リーゼロッテを含む三人は、場所が違うのにも関わらず同じ様な表情で同じ様な言葉を発していた。それ程とんでもない出来事だったのだ。


 五つの巣穴も中々すごい事が起こっており、巣の入口は何処にあるのか分からず、焼かれた地面から熱気が立ち込めていた。普通であれば女王蟻(クイーンアント)が倒せたのか確認する事すらできないのだが、シャルロットは魔法で死んでいるかどうか確認し、ピクリとも動かない女王蟻(クイーンアント)の存在を捕らえた。死因はわからないが、毒か爆発による熱風のどちらかだろうと推測した。


 と言うより、恐らく後者の方ではないかと考えている。シャルロットも爆発の規模が此処まで大きい物とは予想していなかったのだ。


 倒した事を確認して、赤色の煙でレオンハルトたちに討伐の知らせを行ったのであった。











「はあはあ―――今の・・・爆発音は、リーゼ・・・・いやシャルか?」


 満身創痍の状態のレオンハルトは、横薙ぎの一閃で二体のゴブリンと一匹のアーミーアントを片付けながら、今しがた聞こえた音の出所を推測する。


 この音や地響きは、戦っている他の冒険者たちには感知できていない。感知するだけの余裕がないからだ。


 気が付いたのは、中央の一夜砦で手当てをしていた冒険者たちだった。何事かと外を眺めると赤色の煙が天へ上るように色を染めていたので、何が起こったのかすぐに理解した。


 この囮作戦の原因となった女王蟻(クイーンアント)が討伐されたと言う合図だ。


 補佐をしていた冒険者は、戦っている冒険者たちにその事を伝え、それがまるで伝染するように他の冒険者へも知れ渡る。


「よっしゃーーーーこれで終われるーーー」


 長い激戦を生き延びた冒険者たちはその嬉しさを一瞬だけだし、残っている魔物を倒すため、これまで以上に戦いに力を入れた。


 暫くするとアーミーアントの増援も数が尽きたのか、現れなくなり残党として残っている数体のゴブリンやヴェロキレイオスもあっという間に全滅させた。


「生き残れたな」


 この惨状を目にしながらしみじみに語るノーマン。それを聞きカスパルは簡単に返事をして地面に座り込んだ。他の冒険者たちは前線で戦っていた者は地面に座り込むか倒れ込むかして、補佐として動いていた冒険者は、手当てがいる者の場所へ向かい手当てをした。


 ノーマンもカスパルのように座り込みたかったが、気がかりな事を確認するため森の方へ向かう。


「彼は無事だろうか?」


 気がかりとは壁の外で戦っていたレオンハルトの事だ。ノーマンが武器交換の折に未だに壁の外で戦闘を行っていると聞いてから、既に半刻以上経過している。命の危険を感じたら壁の内側へ避難するようにしていたが結局彼は現れなかった。壁の外で命を落としたか生き抜いたかの二択しかないのだ。


 生き抜いていたとしても無事ではないだろうと予想しており、倒れてるようだったら壁の内側へ運び込もうと決意していた。


 しかし、壁の外へ出てみれば、内側にいるよりも明らかに少ない数の魔物の死体しか転がっておらず、一人その死体を回収するレオンハルトが居た。


「中も片付きましたか?」


 かなり疲れているのだろう。表情が暗く、この場所を生き抜いた力強さも今は感じられない。だが、それでもノーマンはレオンハルトの様子を見て驚愕する。


 戦闘で負った傷が重症とまでは行かないにしろ、かなり傷だらけなのだ。頭部からは大量の出血をした痕に顔には無数の切り傷、左腕には大きな裂傷、背中も治療はしているようだが無数の傷があり、右側の腹部にはアーミーアントに切り裂かれた大きな裂傷があった。どれも応急処置程度の治療を済ませて行動していたのだ。


 ここまでの状態で、良く壁の外で戦えたと驚愕していたのだが、実はノーマンが来る前はもっと酷い状態だった。


 左腕は二箇所骨折しており、そのうち一箇所は複雑骨折。肋骨は四本折れていて、腹部にはアーミーアントの顎が突き刺さったり、ゴブリンの持っていた粗末な槍で突き刺され数か所の穴が開いていた。背中にもナイフが突き刺さって居たりしたが、戦いが終わってすぐに水薬(ポーション)と治癒魔法『中級治癒(ハイヒール)』で治していたのだ。顔色が悪いのは失った血の量が多かったため貧血気味なのと魔力の使い過ぎで魔力欠乏症を起こしかけていたからだ。


 水薬(ポーション)でもう少し治療しても良かったが、シャルロットが戻ってきたら『中級治癒(ハイヒール)』を掛けてもらおうと考えたため、(たちま)ち動くのに支障がない程度の治療で済ませていた。


 魔法の袋に次々と倒した魔物の死骸を入れて行く。


「中もさっき片付いた。今は皆疲労で倒れている。それよりも・・・・・一体どれだけ倒したんだ?」


 外の魔物の死骸が少なく、その上回収して回っている所を見ると今見ている量よりも明らかに多い事は理解できた。そして何よりどれだけ押し寄せてきたのか、それが非常に気になっていた。


 正確な数を数えていた訳ではないが、ある程度の数は分かる。特に魔法の袋に入れている魔物の死骸は、魔法の袋の効果により何が何個入っているのか頭の中に浮かんでくるから、その数を大まかに伝えればよいのだ。


「んーざっと五百前後かな?」


 レオンハルトは嘘の答えを伝える。別に取り分を誤魔化そうとかそう言った意図は全くない。ただ、倒した魔物の数はアーミーアントだけでも四桁に近い数字で、それに加えゴブリンやバンタムオーク、ヴェロキレイオスなどの魔物の死骸も追加されると確実に四桁に達する数の死骸があったからだ。


 一人で千近い魔物を倒したと言えば信じてもらえない可能性すらあり得ると思い誤魔化す事にしたのだ。


「―――ご、五百ッ!!」


 やはりと言うような反応にもう少し少なくした方が良かったのかと考えるレオンハルト。ノーマンはその数に驚きを見せたが、よくよく考えればもっといても可笑しくはないと考え始める。絶え間なく襲って来るアーミーアントとの戦闘は三刻近くあったのだ。壁の中へ侵入してくる魔物の数を減らす構造にしていた中での戦いでも二百近い死骸が転がっているのだ。外はこれの五、六倍は居たのではないかと思えたからだ。


(数十人で二百近い魔物との戦闘・・・それに対して一人で五百、いや恐らくその倍はいたと思われる魔物を相手取った彼は、一体どれほどの力を秘めているのだ?)


 ノーマンは底が見えぬレオンハルトの実力に疑問を持ち始める。


(支部長は彼らを推薦していたし、冒険者なり立てで(ジー)ランクと言っていたからそれなりに実力者なのだろうと認識していたが・・・・・確実に俺たち(ディー)ランクよりも上の実力を持っているな)


 だが、幾ら此処でレオンハルトの実力を考えていても何も始まらないため、彼の手伝いを行う。


 壁の外にいる魔物を粗方回収し終える頃にアーミーアントの巣を破壊して回っていたメンバーが戻ってくる。


 女王蟻(クイーンアント)が倒されてからかなりの時間がすでに経過しているのにも関わらず合流が遅れたのは、シャルロットとリーゼロッテが他のメンバーが倒した巣も含めて巣穴の中にいたアーミーアントの死骸を回収していたからである。


 距離的にお互いかなり離れていたが、黄色い煙が打ちあがるたびにシャルロットは、その位置を『周囲探索(エリアサーチ)』で確認し覚えていたのだ。その正確な位置をリーゼロッテに伝え、別行動で回収していた。


 合流するとシャルロットは、レオンハルトの傷を見てすぐさま『中級治癒(ハイヒール)』で残っていた傷を癒し、回収した死骸をすべてレオンハルトの持つ魔法の袋へ移した。


 魔法の袋から別の魔法の袋へ移動させる時、わざわざ中身を出して入れると言った行動はしなくても良い。魔法の袋同士の口を合わせ、送りたい側が何を何個送るか考えるだけで受け取る事が出来るのだ。ただし、このやり方が一般的と言われれば一般的とは言いにくい点ではある。何せかなりの数をあっと言う間に移動させる事が出来るメリットの反面、デメリットとして、死骸の状態が簡潔にしか分からないためだ。


 要するに視認するよりも格段に状態把握が出来ないと言うデメリットがあるのだ。


 どう言う事かと言えば、アーミーアントの死骸でも首が落とされている物からかなり切り刻まれている物まで、一緒の認識としてアーミーアントの死骸損傷中度と言う感じに認識して入って来るのだから。大きさもまちまちで、大、中、小の様な感じで認識してしまうからだ。


 仲間内だからこそやりやすい受け渡し方法でもある。


 受け取った物は、女王蟻(クイーンアント)一匹、アーミーアント三百二十二匹、女王蟻(クイーンアント)を倒した後に遭遇した魔物が諸々含めて三十体程度。これから壁の内側の回収を行うのと初日に倒しているものが、荷物持ちとして同伴している魔法使いの所持する魔法の袋などに入っているためわからないが、夜戦の時と現在だけで軽く二千弱程の魔物を倒した事になる。


 魔力がある程度回復すると再び、一夜砦を魔法で修繕しその場で一泊する事にした。


 今日の戦いだけで疲労で動けない冒険者が何人かいるための処置でもあった。今回の戦いで命を落とした冒険者は回収して回っている時に他の冒険者が遺品を集め回収し、遺体は丁重に弔ってあげていた。


 死者五人。夜戦の時も合わせれば、二十人近くの死者を出していた。これはアーミーアントの討伐としてはかなり最悪と言ってもいいレベルの数値だ。ただし、倒した数を考えればかなり被害は少ないと言える。ギルド側からすれば判断に困る状態であるのには間違いがない。


 シャルロットの魔法により回復したレオンハルトは、現在数人の冒険者と共に夜の見張りを行っていた。


「レオンハルトは王都の武術大会には出ないのか?君なら優勝も出来てしまうレベルだよ?」


 一緒に見張りを行っていた冒険者が、不意にレオンハルトに声をかけてきた。


 武術大会。言葉通りならば武術を競う大会なのだろうと言う事は理解できるが、それ以外は分からず冒険者に尋ねた。


 冒険者の話によると毎年冬の下月(しもつき)に王都で開催される、己の力を示す大会で、武器の使用は何でもあり、特殊な魔道具により死に至る事はないようだ。魔法の使用や魔法による身体強化系、魔道具の使用など全面的に禁止されている。とは言っても特殊な魔道具の効果の一つに魔法使用禁止する効果があるようなので使おうとしても発動しないようだ。


 それと、水薬(ポーション)系などの使用も試合中は使用禁止されている。純粋に技と技のぶつかるためだけの大会の様だ。それと、魔法は禁止だが魔法ではなく純粋な技による効果は有効のようで、簡単に言えば飛ぶ斬撃や拳圧によるものなどである。しかし、このレベルに達するにはかなりの修練と技術が必要な為、使える者はそう多くはない。


 後は、十五歳未満の未成年の部と十五歳以上の一般の部とあり、どちらかと言えば未成年の部の方が盛り上がるそうだ。これは、一般の部にも言える事だが、上位に残れば王宮の近衛兵や貴族などの私兵として雇われたりする事もあり、必死で戦うため見ものだと言う。ただ、一般の部はかなりの実力者は既に騎士や近衛兵、私兵などになっているか、冒険者として生活しており困った生活をしていないため、あまり参加しない。参加するのは職を探している者か名を売ろうとする者、力試しに参加する者などでそれなりに楽しめるらしいが、やはり未成年の部と比べると盛り上がりに欠ける様だ。


 男の話を聞き、少し行っても良いかと思える程度には興味を持ったレオンハルト。


 因みに、優勝した場合は国王陛下から直々に王城へ招待され、上流階級が集まっているパーティに参加できるそうだが、それは正直お断りしたい内容だ。


「さて、そろそろ見張りの交代の時間だな。ちょっと起こしてくるから此処を頼むな」


 そう言って男の冒険者は、立ち上がり次に夜番をする冒険者が寝ているテントへ向かった。


「静かだなー」


 漆黒の夜空に浮かぶ月や星々を眺めながら呟く。このあたりの魔物は日中に粗方倒してしまい。今は、虫の奏でる音と風で木々が揺れる音しか聞こえないのだ。


 そして、そんな自然の奏でている音楽を聴いていると後方から数人の気配を感じた。


「おう。交代の時間だ」


 現れたのは、ノーマンだ。それと彼の仲間の冒険者とさっき一緒に見張りをしていた冒険者だ。ノーマンと仲間の冒険者に見張りを代わってもらい、そのまま自分のテントへ向かい朝まで起きる事無く眠りについた。


 翌朝、皆が起きるよりも早く目が覚め、外で顔を洗った後はいつもの様に訓練を開始した。軽くランニングやストレッチなどをした後は、素振りをする。剣道の様な素振りではなく。実践を想定した素振りだ。素振りと言うよりもどちらかと言うと仮想の人物をイメージしてその人物と戦う感じだ。いつもイメージする人物は決まっていて、前世で師匠であり祖父でもある人物だ。


「せいっ。やあっ。はっ」


 自分でイメージした人物にも拘らず、一撃も与える事が出来ない。剣術だけでなく体術なども織り交ぜて挑んでいるが、やはり結果はいつも同じである。


 (ようや)く日課が終わった時には、シャルロットとリーゼロッテが訓練の相手をしてもらうための準備をしていた。他にも数人の観戦者がいたようで、訓練だと言うのに拍手をする者やなるほどと言いながら感心する者などいた。


 シャルロット、リーゼロッテの稽古をした後に試合を見学していた白銀の牙のリーダー、ダニーが歩み寄ってきた。


「いやー朝から良い物が見れたよ。所で、君たちはいつもあのような訓練をしているのか?」


 ダニーの問いかけに答える。


「そうか、訓練は毎日しているからこそ身につくものだからね。それと、戦い方と言い昨日の戦術と言い。誰かに教わっていたのかな?」


 レオンハルトは、この時になって初めてダニーが何を聞き出そうとしているのかを悟った。


 戦術の種類が多ければ、自分たちに有利に事を進める事も出来る。一般的に使われる物はあるが、そこからどう自分なりにアレンジをして行くのかが重要になるのだ。しかし、今回の作戦・・・基、戦術は(ディー)ランクである自分でさえ思いつかないような代物だった。


 落とし穴などの罠や魔物の侵入する数を減らすやり方、本陣を囮にした遊撃。どれ一つとっても魔物相手に使うような作戦ではなかったからだ。


 誰かが言った。戦場は人数や力量だけでなく、場の状況を支配した者が勝つのだと、それを(ことごと)く身に染みた戦い方だったのだ。


「戦いの基礎や勉学は、私のお母さんに習ったのよ」


 レオンハルトがどう答えようか悩んでいるとリーゼロッテが先に答えた。


「なるほど、君のお母さんはさぞかし、名のある冒険者だったんだろうね」


「お母さんの名前はアンネローゼって言います」


 リーゼロッテも聞かれていない事まで話したりするはずもないので、そのまま彼女に任せる事にする。俺もシャルロットも外見は子供だが、精神は大人であるため会話からの情報のやり取りは問題ない。特にシャルロットは、前世が受付嬢と言う事もあり、他人の行動や言葉から色々な事を察する事が出来る。そういう意味では俺よりも格段に上である。


 だから、ある意味でリーゼロッテに良い経験をさせようと身を引いたのだ。


 他の冒険者たちはリーゼロッテの発言に少し、いやかなり驚いた表情をした。


 その理由が分からなかったが、驚いている冒険者の一人が(おもむろ)に口を開く。


「あ、あのアンネローゼってひょっとして・・・・血氷の魔剣士の異名を持つアンネローゼですか?」


 血氷の魔剣士久しぶりに聞く言葉に一瞬誰だっけと考えてしまったが、初めてイリードの街へ行くときに馬車に乗せてくれた商人オスカー・シュトライヒが口走った言葉だと思い出す。


 アンネローゼがかなりの実力者で冒険者の間でもそれなりに名前が知れ渡っているのは知っていたが、此処まで驚かれるのも意外と思えた。


 レオンハルトたちは知らないが、アンネローゼが当時冒険者として活躍していた頃、アーベライン辺境伯領最強の冒険者集団がアンネローゼの在籍していたチームだったのだ。チームが解散して十年近く経過しているにもかかわらず、冒険者の間では今尚尊敬される存在たっだのだ。


「その人で間違えないですけど・・・・先生の事ご存じなのですか?」


 当時有名だったが、今はそこまで知られていないだろうと踏んでいたレオンハルトと違い、シャルロットはアンネローゼに実力がどれほどの物なのかいまいち理解していなかったため、普通に疑問に思い訪ね返す。


「このあたりに住んでいる俺たち世代の冒険者は皆知っているぜ。何せあのチームは痺れる様な凄さがあったからな」


 突如会話に参加してくるノーマンとカスパル。如何やら二人もアンネローゼの事を知っているようだ。


 それから、朝食の時間にアンネローゼたちが活躍していた時の話や異名に至った経緯を教えてもらった。


 特に異名に至った経緯を聞き、今のアンネローゼからは考えられないような事をして付けられており、驚いてしまう。時に厳しく時に優しいアンネローゼが、冒険者時代。魔法で作りだした何十本の氷の剣を自在に操り、魔物を斬り捨てていたらしく。最後は魔物の屍と魔物の血で赤く染まった赤い氷の剣を操るアンネローゼが居たそうで、そこから付けられ始めたのだと言う。血氷の魔剣士の前は、氷結の剣士や氷華の赤き麗人など様々な呼ばれ方をしていたそうだ。


 異名なんて付けられたくないなと思うレオンハルトたち三人ではあったが、少なからず近いうちに異名を付けられるだろうと予測する(ディー)ランクの三人。


 朝食を終えると、荷物を片付けイリードに戻るため歩み始めた。


 結局、イリードの街につくまでに数回の魔物との戦闘があったが、あの戦いを生き抜いた者たちだけあって何も臆することなく返り討ちにした。



 







「よっ。悪いけど、依頼完了の手続きをしたいんだが・・・・それと、支部長はいるか?依頼の報告をしておきたいんだが」


 無事にイリードの街にたどり着いた討伐部隊は、休むことなくそのまま冒険者ギルドへ足を運んだ。そして、ノーマンとカスパル、ダニー、レオンハルト、シャルロット、リーゼロッテ、ダーヴィトにエッダ、その他各チームの代表が受付の列に並び、自分の番が来たら、皆を代表してノーマンが受付の女性と話をした。


 冒険者カードと依頼を記した用紙を取り出し、それを受付の女性に渡す。


「支部長は、居ると思いますけど、・・・・ちょっとお待ちください。別の物に確認に行かせますので、ロッテ悪いんだけど支部長に森の異変について報告にノーマンさんたちが来ていると伝えてきて・・・・・すみませんお待たせしました」


 受付の女性に声を掛けられたロッテと言う内務の仕事をしていたギルド職員は、慣れた様子で奥の部屋に消えて行った。


 その間に魔物等の証明部位の提出や狩った魔物の買取をするかと尋ねられたが、数が数だけに一度支部長に知らせてから買い取りをする事になる。


 何の説明もなしに千以上の魔物の死骸を提供されても、ギルド側も困ってしまう。


 数は伝えなかったが、割と数があると言う説明だけで、納得したようでそのまま依頼完了の手続きを始めた。因みに、用紙を渡した後に女王蟻(クイーンアント)の頭部だけは完了の証拠としてギルドへ提出していた。


「・・・・・これで、依頼は完了になります。後で参加した方々も冒険者カードの提出を促しておいてください。では、もう少しって戻ってこられましたね」


 受付の女性は、戻ってきたギルド職員と話を始める。そして、二言三言話して直ぐに此方へ戻ってきた。


「お待たせしました。支部長がお会いになるそうです。人数が多いので上の会議室をご利用ください。ロッテ案内をお願い」


 最初に訪れたメンバー以外・・・外で待機している冒険者たちは、ノーマンたちが話をしている間に依頼完了を冒険者カードに記載する事となった。


「無事に帰ってきた・・・・とは言えない様だな」


 冒険者ギルドイリード支部の支部長ギルベルト・オーレンドルフは、先に会議室で待っていたようで、徐に無事を祝福しようとしたが、彼らの表情から残念な事があったのを悟り、少しばかり険しい表情になった。


 ノーマンを始めとする冒険者たちが支部長へ今回の出来事を一から報告した。


 初日に死者が二人も出てしまった事。夜に魔物同士の戦闘に巻き込まれて、みだりに乱れた夜戦を繰り広げた事。アーミーアントの数が例年以上に多く、また広範囲に分布してしまっていた事。囮作戦でアーミーアントとの総力戦を繰り広げた事を話した。


「・・・・・・アーミーアント相手に総力戦って、死んだ者には悪いが囮作戦での死者が少なかったのは、作戦そのものが良かったんだろうな。それで結局、アーミーアントはどれだけ倒したんだ?例年より多かったんだろう?」


 例年であれば巣は五つ程度だが、今回はその倍以上あった。しかも数は例年だとニ、三百程度だが今回は軽く千を超える数を倒している。


 一瞬、その数どう説明するか悩んでいると。


「アーミーアントは大体千三百ニ十二匹。ヴェロキレイオス七十六体、ジャイアントセンチピード四匹、ゴブリンやバンタムオークなどが合わせて、えぇっと・・・・百九十一体ですね。女王蟻(クイーンアント)も頭部以外は回収していますよ」


 平然と報告するレオンハルト。これまで正確な数を他の皆にも伝えていなかったため、その場にいた者もその数の多さに目が飛び出しそうな表情で驚いていた。


 ギルベルトもその数に圧倒されたが、持ってきたのは幼少期からあり得ない出来事を散々してきたレオンハルトだ。これぐらいしても不思議ではないかとすぐさま再起動した。


 誰が、五歳児の子供が熟練の冒険者でも倒すのが困難なギガントボアを単体で撃破する者が居るのか?その後も時々、獲物を狩っては冒険者ギルドで買取をしていたが、どれも駆け出しの冒険者の域を超える代物だったり数だったりしているのだ。しかも、ごく最近にナルキーソで駆け出しの冒険者がマウントゴリラを各個撃破出来るのだろうか?


 普通はあり得ない状況を平然とやってのけるのが、彼らなのだから今回の数も彼らなら出来るか程度のものになってしまった。


「そんなに回収していたのかっ!!」


 仲間のダーヴィトが、皆の代表みたいに突っ込みを入れてくる。そもそもかなりの数が彼の持つ魔法の袋へ収納されているのだろうと言う事は、知っていたがそれ程の量が入る事にも驚いてしまう。


 魔法の袋は所有者の魔力量に応じて収納量が変化する。彼ほどの域になると魔力がかなり高くなければ不可能である。


「その数を買い取るとなると・・・かなりの時間が必要になるぞ?」


 ギルベルトは、買取の際に魔物の死骸の状態や鮮度、大きさ、量など様々な観点から査定をするのだが、その数を査定するのにまず時間がかかると言う事。そして、量が多くなればその分準備する金銭も多くなってしまう。その準備にも時間がかかるとの事だそうだ。


 これが一人に払われる物であれば、金貨や白金貨などを準備すれば済むが、今回は参加者で納得のいくように配分する必要がある事からある程度細かい硬貨を用意しなければならないからだ。


 取りあえず査定を早く始めなければ買い取ってもらったお金を分ける事すらできない。


 それと、余談ではあるが今回の依頼の報酬を予定していた報酬の額よりも多く支払ってくれることになった。


 何でも、これだけの冒険者が亡くなってしまったのには、少なからず冒険者ギルド側にも責任があるとの事だ。緊急依頼だったからと言えばそれまでなのだが、それでもイリード支部の支部長ギルベルトは自身も元冒険者と言う事もあり、そのあたりに何も思わない事はないからだ。


 レオンハルトたち一行や他の冒険者たちが素材などの買取の為に部屋を出て行き、残ったのは支部長とノーマン、カスパル、ダニーの四人だけだ。


「・・・・・それで、あの子たちはどうだった?推薦してよかっただろ?」


 沈黙を破ったのは、この場で最も権力を持つギルベルトだ。その表情は、先程までの真剣な表情とは裏腹に何処か子供の悪戯が成功したみたいな表情で三人に尋ねる。


 彼の言葉に先程よりも更に真剣な表情でお互いの顔を見て頷く。


「彼らを今回の依頼に参加していただいた事は、俺たちにとって非常にありがたかったと思います。何せ彼らが居なければ依頼を成功させる事すらできず戻ってくるか、若しくは俺たち三人を含む参加した冒険者すべてが死んでいたはずです」


 ノーマンが三人の代表として話したが、他の二人も同意見だと言う表情で見守っていた。


 それに続く様にレオンハルトたちが今回の魔物の九割近くを倒し、一人一人が(シー)ランク以上の実力を持っている事も包み隠さず伝えた。


 冒険者たちは基本、自分よりも優れた才能を持っていたり、良い武器や防具、アイテムなどの所持、恵まれた運などがあると僻んだり妬んだりする。酷い時は本人たちに聞こえる様に陰口をたたいたり、揶揄(からか)う、脅すなどもするのだ。最も彼らがそう言った負の感情を示しやすいのが、女性関係である。


 綺麗な女性を何人も連れていたり、それこそ男女の関係を持っていたりしたら、真っ先にそう言った視線を浴びせられる。


 しかし、そんな感情を全く出さず素直にレオンハルトと言う少年たちを認める三人。そういった相手を貶めるようなことは元々しない三人ではあるが、仮にそう言った感情を持ち合わせていたとしても同じ結果になっていたであろう。


 それだけ、力の差があったと言えるからだ。


 まあ、そもそも素行が悪ければ(ディー)ランクには基本上がれない。酒場で飲んだくれ、尚且つ暴言や他の冒険者を脅したりするような冒険者に誰が仕事をお願いしたいものか。確かに冒険者ギルドは冒険者に仕事の斡旋をしているが、その仕事に見合った人物にしか依頼をお願いしない。


 ゴブリンなどの魔物討伐は多少問題が出てきても良いが、商人や更に上の貴族の護衛をするとなれば、大問題である。だから、素行の悪い者はそういう護衛などが出来ないランクにしかいる事が出来ない様になっている。


「しかし、彼らは・・・何と言えば良いのか。簡単に言えば異常です。支部長の昔の仲間が戦い方を教えたらしいですが、それでもあれ程の強さはそうそう身につくものではないと思います」


 討伐後に聞いた彼らの戦いを教えてくれた者、このあたりにいる冒険者は皆その人物が在籍していたチームに憧れや尊敬を示していたが、そんな人物が戦いを教えただけであれほど強くなるのだろうか?むしろそうであるなら、ぜひ自分たちにも教えてほしいレベルだと言いたそうな表情をする。


 ギルベルトは、わざとらしく咳ばらいをした後レオンハルトたちの事を語った。当然、彼らのすべてを知っているわけではないし、知っていてもすべてを教える事はしない。知らない所で自分たちの情報を話す事は信用に関わる。なので当たり障りのないレベルを話す事にした。


「レオンハルトたちは、確かにアンネローゼから魔法の使い方や戦い方、それに座学なども教わっているが、だからと言ってあの子たちの様な超の付く実力者は出来ない。単純にあの子たちが天才の域に達している。これは戦い方を教えたアンネローゼから言われた言葉だ」


 アンネローゼが教えるのは、基礎がほとんどで才ある者は、基礎以外も教えたりするが、それでもほんの一部だけだ。その才を開花させるか、閉ざすかはその人次第だ。そんな中、レオンハルトたちに教えたのは基礎中の基礎、もっと言えば最初の一歩を教えたぐらいだ。それがあそこまで才能を開花させるのだから、天才と言う他ならない。


 そこまでの情報は与えなかったが、それでも調べればすぐにわかる程度の事は彼ら三人に教えた。


(それにしてもこの三人でもあの子たちの実力の差がここまで開いているとなると、少し考えた方が良いかもしれんな)


 ギルベルトは、内心レオンハルトたちの実力を過小評価していたため、その評価を改める事にした。過小評価と言っても、普通から考えれば完全に過剰評価と言える評価だったが、それでも過小評価と捉えてしまうのだから逆に言えばどれだけレオンハルトたちが強いのかと突っ込みたくなるレベルだ。


 それから暫くして三人も部屋を退出し、買取場所やそれで待つ冒険者たちと合流した。


 買取の方はまた後日来てほしいと言われ、忽ち緊急依頼分の報酬だけ受け取り解散した。


 レオンハルトたち三人は、参加した冒険者から生還の打ち上げをしようと誘われるが、その打ち上げを断った。


 理由は二つあり、まだ買取場所で魔物の死骸を魔法の袋から出す作業があるのと、これからどうするか話し合う必要があったからだ。


 これからどうするか何て、普通はそこまで急ぐ案件ではない。明日・・・・明後日考えても差し支えないのだが、今回は臨時でチームを組んでいたダーヴィトとエッダをこのまま継続するか、しないかを決めなくてはならないからだ。そんな話を皆の打ち上げの場で話せば、我先にと押し寄せてくる者もいるだろうと考えての不参加。


 その読みは正しく、もし参加してその様な話を持ち出せば、その打ち上げにいた冒険者皆から誘いを受けていたのだが、結局不参加を示した事でそれは現実にならなかった。


 まずは倉庫へ案内してもらい。そこへアーミーアントの死骸を二百匹とヴェロキレイオス二十体、ジャイアントセンチピード一匹、その他の魔物を三十体程度出す。


 倉庫に入りきらなくなることはなかったが、これ以上出しても査定に追いつかず鮮度が落ちたり、他の冒険者が持ってきた魔物の置き場が無くなったりするからだ。


 その後は、打ち上げをしている酒場とは違う。少し静かな飲食店へ足を運んだ。


「すみませーん。注文良いですか?」


 壁際に貼られたボロボロの羊皮紙。そこに書かれている品を眺めながら次々と店員に注文する。女性たち三人は、小食と言うか食べ過ぎない様に調整していたが、レオンハルトとダーヴィトはお構いなしにたくさん注文する。


 久しぶりのきちんとした料理だ。たくさん食べたいと言う欲求には勝てなかった。討伐に赴いていた際は、貧しい食生活と言うわけではなかったが、それでも味付けが大雑把になって居たり、肉を焼いただけや日持ちする硬いパンだったりと少し不満があるレベルだった。


 自分たちだけならば、魔法の袋や魔法(マジック)(バック)等に入れている出来上がった料理や作るにしても各種調味料や道具も粗方揃えているので色々な料理が可能であるが、流石に討伐メンバーを補おうとするとしんどい部分ではあった。


 注文をしてから直ぐに注文した飲み物が出てくる。この場にいる五人皆まだ未成年の為お酒の類は一切注文していない。辛うじてダーヴィトが来年、成人を迎えるが別に未成年がお酒を飲んではいけないなどと言う決まりは全くない。しかし、それを律儀に守る五人。


 出された果実水を手に取り一先ず乾杯を行う。それから料理が次々に運ばれそれを皆で分けながら食べる。


「ところで、ダヴィとエッダはこれからどうするんだ?」


 料理が半分以上無くなったあたりから今後の話題を振るレオンハルト。因みに、現在食べているのはレオンハルトとダーヴィトの二人だけ。シャルロットたちは、早々に食べるのを終え、彼らの食べっぷりを眺めていたのだ。


 これからどうするのか。ダーヴィトたちはこの臨時で組んでいた時間が終われば一旦ゆっくり街で過ごそうと考えていたが、これといって何かしたいとか言うのはなかったのだ。


「良かったら俺たちと一緒に来ないか?」

投稿が遅くなってしまって申し訳ございません。

リアルでバタバタしてて、漸く此方に手が回るようになりました。

これから徐々に投稿をして行こうと思います。


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