159 領地開発~最先端都市レカンテート~
あけましておめでとうございます。
昨年はありがとうございました。
本年も引き続き頑張って参りますので、よろしくお願い致します。
早速ですが、クリスマス前に投稿を考えていた話になります。
本業の方が慌ただしく執筆の時間が取れず、このタイミングになってしまいました。申し訳ございません。楽しんで読んで頂けると嬉しいです。
魔物の大群に各国が襲われてから半年以上が経過した。
あの時の爪痕は未だに各地に残っている。運よくレカンテートは、軽い魔物の襲撃があったらしいが、街に滞在していた冒険者たちで倒せる数だった。
大群の折にアルデレール王国で最も被害が大きかったのは、交易都市イリードだった。死者二十七人、重傷者二十人、あとは中軽傷者が参加した者全員で、無傷で終わったのはレオンハルトとシャルロット、アニータに治療に当たっていたエルフィーとその護衛のエッダ、シュラ族の五人だけだ。他のメンバーは軽い切り傷程度の傷を負っただけなので、、最も貢献しつつ最も功績を残したと言える。
合計討伐数は二万八十六体。内訳は省略するが、上位種や変異種の殆どは彼らが討伐していた。
三千体近くは町の冒険者たちの奮闘で倒した数だが、千体近くは逃走してしまった為、後日捜索と討伐の依頼書が冒険者ギルド内で大量に張られた。約八割は討伐されているらしいが、元々いる魔物もいるし、正確な数は分からない。
奮闘してくれた冒険者たちも軒並みにランクの昇格があったが、残念なのはレオンハルトたちのあまりに凄い戦闘に魅入られて、隙が生まれそこを魔物に襲われた駄目な冒険者たち。魅入られるのは仕方がないが、命のやり取りをしている場では、そう言う油断は禁物とギルド支部長からきつい説教があった者も数名いると小耳に挟んだ。
そう言えば、海隣都市ナルキーソも魔物に襲われたそうだが、時期が良かったためかそれなりに冒険者が滞在してくれたおかげで、一部外壁が破損した程度と、魔物の投石被害で城壁を越えた子供位の大きさの石が何発か街に入って、外壁近くの民家が半壊したそうだ。
ナルキーソの防衛に知り合いも数名参加していたそうで、王都で報告を受けた時に詳しく聞いた。
その時に防衛に参加していたのが、アーミーアント討伐時に共に依頼を受け、コンラーディン王太子殿下とアバルトリア帝国へお連れする際の護衛依頼を共にしたノーマン率いる赤い一撃、同じ護衛依頼を受けたエミーリエ率いる月の雫、討伐依頼を共にしたカスパル率いる影の牙だった。
影の牙は全体的にランクが一つ上がっているが、他は現状維持だった。それでもかなりの手練れたちなので、苦戦を強いられつつも撃退したとか。
魔物で一番脅威だったのは、レッドオーガらしい。口から火を吐いたり、火属性魔法に耐性があったりで色々厄介なのだそうだ。火を噴くってドラゴンか何かかと思ってしまう。
それと、今回の魔物の素材は七割近くを冒険者ギルドで買い取ってもらった。余りの量に扱いきれないと判断したからだ。残りの三割の内、二割はクイナ商会の製品として加工して売買する。最後の一割は、自分たちの装備として使う事にした。
冒険者ギルドでの査定額は、一度に払える金額ではないとの事で、四回払いとなった。
これだけで、かなりの財産だろうが、俺たちはその資金の殆どをレカンテートの運営費として計上した。
そして、遂にレカンテートの村が最先端都市レカンテートに生まれ変わったのだ。レカンテートの中央には、領主の屋敷に領主館、クイナ商会総合本店、アシュテル孤児院、アシュテル学園、領民たちが利用しやすい役場、商店街、旧レカンテート村の住民宅や移住してきた者の居住地、冒険者ギルドに商業ギルド等のギルド関係も参入してきているし、多くの商会もお店や飲食店を展開した。
クイナ商会総合本店は、レカンテートに本店を移動させ、更に巨大ショッピングモールの様な建物に変更した。形状としては、上が六階で、下が地下二階建ての大きな建物が二つ立っていて、西側の建物をウエストデパート、東側の建物をイーストモールと名付けた。二つの五階部分、三階部分は渡り廊下でつながっている。六階に至っては両建物が連結して一つの階となっている。この部分が総合本店の本部にあたる。
取り扱う商品は、国内でも最多の種類を揃えており、クイナ商会の服屋だけでも十以上の店舗を置いている。更に、仮店舗をイーストモールの一階と二階に設け、他の商会も店を構えれるようにしている。
流石に、これだけの規模を一つの商会が独占するのは良くないだろうし、クイナ商会総合本店ばかりに人が集まると言う事態を避けたかったと言う気持ちもある。
ウエストデパートの一階と二階部分にも飲食が行える場所を数多く出展している。此方は、クイナ商会のお店もあれば他の飲食店の人も店舗を借りて経営している。
どちらにも魔石を使った魔道具で上下の移動が行いやすい様、魔導エレベーターを作り設置している。空調設備や照明なども全て魔道具を使っているので、この建物だけでも人財産になる程の産物だった。
服屋だけでなく、生活用品に、薬屋、家具、リフォーム、飲食店、食料品店、各種調味料などここに来れば何でも揃ってしまう程豊富な所。
アシュテル学園も王都の王立学園の様な格式のある物ではなく、各々の専門的な知識を得たいと思っている者に教える。言うなれば専門学校や職業訓練校の様な感じを考えている。まあ、王立学園に通えない子たちには、基礎的な教育が行えるようにもしている。
そうして、レカンテートは以前の姿とは大きく異なる発展を遂げた。
しかし、生まれ変わったと称したが、未完成部分も沢山ある。中でも一大事業が、駅である。最先端都市レカンテート、交易都市イリード、王都アルドレート間で線路を設置する。更に王都アルドレートから東西南北の主要都市や辺境伯領の領地と繋げれば、恐ろしいレベルの辺境地から王都への往来が可能となる。
辺境伯領は大きな領地に街の発展もあるが、王都と辺境伯領の間の町などは、過疎化しやすいと言う現状がある。これを機に過疎化の軽減、地方の町や村の発展に繋がれば尚良いだろう。ただし、移動が容易にできると言う事は若者が都会に移動するなんて事態も考えられるので、今後どうするべきか考えていく必要があるだろう。
まあ、それは各領主たちが案を出し合わなければいけないところなので、口を出すわけにはいかない。
駅に関しては、レーア王女殿下とのお茶会の際に居合わせたご令嬢たちからも相談されているし、陛下や宰相に相談しても、快く快諾してくれた。
駅や線路については、これからの事業だが、後は大まかに完成している。空いている土地も随時建物が出来たり、整備されたりと色々と発展するだろう。
「あっ!?領主様」
「おおー領主様だ」
領民たちは皆、俺の事を領主様と呼ぶ。王都の屋敷に勤めていた者も皆此方へ移動させ、王都のクイナ商会も主要メンバーを引き連れてレカンテートに移住している。
執事や給仕係などは、領主様やご主人様ではなくお館様と呼び、レーアたち奴隷は今まで通りご主人様と呼んでいる。クイナ商会の者たちは若様か会頭と呼ぶようになっていた。
王都の方にも新たに雇用した者たちが屋敷やクイナ商会の王都支店を管理してくれている。屋敷の方は兎も角、クイナ商会は指示を出せるものが必要だろうとゲレオンが王都支部支配人に昇格して管理させている。総合本店の方はディートヘルムが支配人に昇格した。
クリストハイトは、執事として領地運営の仕事もあるので、掛け持ちでクイナ商会に新たな役職として総支配人の地位を渡した。総合本店と王都支部の二店舗しかないが、本店や各支店の支配人のリーダー的ポジションとなっている。
屋敷は、フリードリヒから信頼できる知人を紹介してもらい、更に執事や給仕係、その他屋敷の管理や生活に必要そうな人材も雇用した。
「こんにちは」
「りょーしゅさま。こんにちは」
「はい、こんにちは」
領民たちに声を掛けられ、いつもの様に挨拶をすると足元に四歳ぐらいの幼女が声を掛けてくる。それに答える様にレオンハルトは屈んで、幼女に挨拶を返した。
「領主様、娘が失礼を。お召し物が汚れてしまいます」
貴族用のロングコートを着ていたレオンハルト。幼女の為に屈むとどうしてもロングコートの裾が地面についてしまう。貴族の・・・それも、自分たちの住む領主様の服を汚したとあっては、何らかの処罰があるのかと恐れる母親。
「大丈夫。汚れたら洗えば良いですし、それにほら」
そう言うと、レオンハルトは魔法でロングコートの裾についた汚れを綺麗にして見せた。
魔法の袋から小包みされたお菓子を取り出し、その幼女に渡すと、嬉しそうに受け取って帰って行った。
「お帰りなさいませ。お館様」
「「「「お帰りなさいませ」」」」
屋敷に戻るとフリードリヒや他の給仕係が、出迎えてくれる。貴族だから移動時には馬車を使うのが一般的だが、レオンハルトは徒歩圏内であれば、普通に歩いて街中を散策する。フリードリヒたちもその行動について咎める事はしないが、出来れば馬車をと思ってしまうのは仕方がない。
それに、屋敷の門から屋敷までは馬車でも若干時間がかかる距離であるが、そういう所は転移魔法で一気に玄関まで移動するのだ。
なので、執事や給仕係が出迎えに間に合わないと言う事多々ある。今日は偶々、屋敷の門兵が事前に知らせてくれたから対応が出来た。
まあ、レオンハルトが門兵の一人と雑談をしていたから知らせる事ができたとも言える。知らせる方法は、固定式の通信魔道具を設置していて、それを使った。かなりの値が張る物をと思うだろうが、門兵の詰め所に設置している物は、屋敷のみやり取りが出来る物となっている。故に値が張る通信魔道具でも比較的安価な値段で買える。
まあ、彼の様に使う事はあまりない。魔道具を買うよりも兵士と馬を用意して早馬を走らせるほうが圧倒的に安いからだ。
前提として買えばと言う条件が付くが、レオンハルトは自作で作成しているので、材料費ぐらいで殆ど費用は掛かっていない。複数の通信魔道具を繋げなくても良い事を考えると、かなり簡単に制作できる分類に入る。
「お館様、お戻りのところ申し訳ありませんが、市役所の方で対処が難しいと連絡を受けております」
「どの部門からの連絡?」
市役所と言うのは、レオンハルトが考案した最先端都市の役場の事。此処でする作業は、戸籍の登録、土地の管理、仕事の斡旋、環境整備である。戸籍は何処の街・・・王都ですら行っていない内容で、戸籍管理をする事でどの位の住民が領民としているのか把握できる。
仮にこのレカンテート以外の町や村を与えられたとしても、同じように管理すれば人口増減の把握や規模、税等も徴収しやすくなる。税は人口だけでなく、天候や災害、獣害、魔物害等色々な点を検討して決められる。
これも、陛下に確認したら試しに行うよう言われている。問題なく運用出来たら他でも実用化させたいのだそうだ。新たな職業として雇用枠が増えるし、官僚たちの天下り先にでもなるのだろう。そのあたりは知らぬが仏。
「企画部門です。生誕祭の準備の申請で、窓口がかなり混乱しているそうです」
「そっちはシャルが対応していたでしょ?」
企画部門とは、生誕祭や新年祭、収穫祭など様々なお祭りを都市が一括で管理する部門だ。日頃はそこまで忙しくないのだが、イベント事が起こると一気に忙しくなる。特に今年は新生レカンテートとしての初めての事だから、担当者たちも分からないまま動いている。今は二十月の初旬、後三週間もすれば生誕祭になる。準備する時間も人でも足りない状況なので、同じ前世の知識を持ち、こういう事務的な事にも強いシャルロットを同席させていたのだが、それでも混乱が発生したようだ。
「シャルロット様は、現在、各商会との打ち合わせを行っております」
生誕祭で最も盛り上がるのは出店や露店だろう。商会が参入する場合もあれば、フリーマーケットの様に商人見習いや冒険者たちも店を出す。当然飲食関係者も珍しい料理などを出しているので、商会の打ち合わせにシャルロットが顔を出さないと言うのはあり得なかった。
「分かった。直ぐに向かうから馬車の用意を」
「承知いたしました」
フリードリヒは迅速に出発の手配を行い、俺は直ぐに屋敷を発った。
馬車に揺られる事十数分。市役所に辿り着くと、外にまで人が列を作っていた。列を崩すのは申し訳ないが、中に入らないといけないので、同行者たちに指示して道を譲ってもらい中に入る。
領主の指示に反発する者はいなかった。それどころか「これでスムーズに進むな」何て声もちらほら聞こえる始末。
「領主様っ!?どうして此方に?」
「シャルが抜けて、かなり混乱していると聞いたからな。今何が問題になっているんだ?」
担当者たちに聞いた所、同じ場所に複数の露店が出店する事になっているらしく、しかもそれが一ヶ所ではなく数ヶ所に及ぶ。二つの露店が一ヶ所だったり、四つの露店が一ヶ所だったり、かなり混乱しているらしい。
最初の段階から決まりを作っていたはずなのだが、如何やら担当者たちが個々に処理した事で露店の場所が重なってしまった。それに気づいたのは担当者たちではなく、準備の為に道具を露店の場所に持って行った人たちだ。自分が使うはずの場所で、別の者が準備をしていたら当然口論になる。
その者たちを筆頭にそう言う事態が次々に発生してしまい、こうして押しかけに来たことで問題が起こっている事を発見し、対処しようとしたら既に手が付けられない程彼方此方で重複している事が発覚したのだ。
ある意味早いもの順なのだが、誰が早かったのかも分からない為、どう決めたら良いのか、クレームに来ている人たちの対応なので人手不足に陥っていたと言うわけ。
勿論、その間に一般の申請者たちの対応もあり、それが滞って列が出来ていたのだ。
「まずは、状況を把握したい。アインス」
姿を隠していた護衛の者が、俺の合図と共に姿を見せる。
「動ける者たちを総動員して、現場の確認を頼む」
「承知しました」
アインスが再び姿を消す様にその場から立ち去ると、それに続く様に数人の者の気配も消える。
シュラ族であるアインス。魔族でありながら魔族側に就かない珍しい種族。魔族側に就かないからと言って人族や亜人族、獣人族側にも就かない。彼女らが忠誠を誓うのは自分を下した者だけだ。ただ下せばよいと言うわけでもなく波長らしい何かがあると聞いたが、それは良く分からない。どうも彼女らの感覚的なものの様だ。
当初は五人いたシュラ族もこの半年で数を増やした。
レオンハルトが、シュラ族と言う存在の意義を見つけたとかでシュラ族の隠れ里に足を運んで主を求めている者と勝負し全ての戦いでシュラ族を凌駕した。
十人ぐらいに増えれば良いと言う考えだったが、結局ついてきたのは十三人いた。名前を更にゼクス、ズィーベン、アハト、ノイン、ツェーン、エルフ、ツヴェルフ、フンダート、タウゼント、フィル、ヌル、パルプ、テルと命名し、それ以外のシュラ族もレオンハルトを主と認めたのだが、主の傍に居るのではなく隠れ里からの支援を申し出てきた。
ゼクスたちもアインス同様にドイツ語の数字を参考にしているが、フンダートやタウゼントは、十三や十四と言う意味ではない。百とか千とかの単位になる。十三以降の呼び方だとドライツェーンやフィルツェーン、フュンフツェーンとなりそう変わらない。まあ、フィルと言う名前はフィルツェーンから拝借しているが・・・。それと、パルプとテルは数字に関連した言葉から拝借している。パルプは半分と言う意味で英語だとハーフと言う。テルは数字の分数を示す際に使用する用語で、序数に照ると言う言葉を加えるのだ。例えば四分の一はフィアテルと言うのだ。雑学としてだが、四分の三とかになるとドライフィアテルと言う様で、ドイツ語の数字はやや日本人には理解しにくい言い回しである。相手からすれば日本も同じように思われているかもしれない。
性別は、圧倒的に女性が多い。男性はゼクスとズィーベン、フンダートの三人だけ、残りはすべて女性だった。隠れ里に残る者も比率としては女性の方が多かった。
それぞれの特徴として、ゼクスは、弓主体に戦う中距離タイプで、白髪の短髪。刺青の様な模様を身体や顔にまで刻んでいる。目つきが悪く、第一印象は典型的な不良と言える。見た目に反してかなり仲間思いで良く話をしてくる。
ズィーベンは、身長百九十を超える高身長で体格もがっちりしている。灰色に黄色のアッシュが入ったツーブロックの青年。武器は全身鎧を身に纏った武装姿。それは防具ではと言う質問が飛んできそうだが、彼は全身鎧を操り鎧だけの姿で戦闘も熟せる不思議な戦い方をする。とあるアニメで見た傀儡を操る人みたいな感じだ。全身鎧が更に化け物染みた見た目なのは製作者の趣味だろうかと尋ねてみたいところだ。
アハトは、ズィーベンとは対照的に身長が百五十に満たない位の低身長。桃色の髪に何時も兎耳の様な飾りのついたフードを被っている。武器は脚具で、蹴り技を主体とした接近戦タイプの戦いを得意とする。また、脚力が高い為、移動や跳躍と言った事も他の誰よりも優れていた。豪快な戦闘スタイルに反して性格は引っ込み思案と言う謎現象が此処でも発生している。
ノインは、青っぽい銀髪をボブカットした女の子。尖がり帽子を被ってアハトより少し大きいがそれでも小柄な体格をしている。武器は両手戦斧でかなり大きい。男・・・それもズィーベンの様な者が持つならまだしも、小柄な女の子が扱うには周りから心配されそうな感じがする。実際は、かなり力技で相手を追い込む戦法を好む様だ。
ツェーンは、ノインと同じ髪色だが、ノインと違いセミロングにゆるいウェーブが掛かっている。武器は両手槌で、小柄な体格から繰り出す一撃はかなり強力だった。実際にレオンハルトも力技で押されれば危ういとさえ感じさせられる程の実力を持つ。
エルフは、シャルロットたちよりもやや身長が高い女性。薄紫色の髪にやや目つきが鋭いが妖艶な見た目はより一層彼女の魅力を引き出している。扱う武器は刺突剣を両手に持ち連続刺突の達人。手数だけならリリーをも超える速度だ。
ツヴェルフは、大人しそうな容姿に魔女の様な装備を身に付けた少女。青緑色の髪は肩のあたりまで伸びており、若干毛先が外側にはねている。使用している武器は歪な形状の杖の様な物。シュラ族は分類上、魔族に該当するため魔力を人族よりも膨大に有している。そんな中でも彼女は特に魔力を使用する様で、杖の先から魔法を放ったり、魔力で出来た刃物で接近戦も行えたりできるオールラウンダータイプ。
フンダートは、燃える様な赤短髪の青年。ゼクス同様に目つきが鋭く。性格もやや大雑把な感じ。口調が少し喧嘩腰に聞こえるのは見た目もあって余計に感じるのかもしれない。武器は、ドライと同じく片刃の大剣だが、歪な形状のドライの武器とは異なり、何処か機械的な形状の大剣となっている。
タウゼントは、黒緑色の髪を後ろで結んでいる少女。見た目と違って攻撃的な性格をしているので、直ぐに誰かと戦いたがっているちょっと困った性格をしている。武器は両刃の大剣で、先端が何故か刺々しい形状になっている。シュラ族たちが使う武器は何故か、一癖も二癖もある物ばかりなのだろう。
フィルは、そんなシュラ族の中でもかなり普通で、個性的な部分が少ない美女。他よりちょっと引いていると言うか冷めていると言うか、淡々と話す姿がまるでエリート秘書と思わせる様な雰囲気を出している。武器は片刃直剣で、通常の直剣よりも刃の部分が長い。橙色の刃が唯一個性的な武器とでも言えるそんな存在。
ヌルは、シュラ族の中でも異質な存在。実力は隠れ里で最も強いと言わしめる存在で、見た目が色素欠乏症と言う事もあり、白き悪魔と同胞からも呼ばれている。武器は鉾を使い、敵をなぎ倒す接近戦タイプ。フィルとは違った意味で、他より一歩引いた立ち位置にいる少女。
パルプは、ヌルと同じく異質な存在。髪の毛の色が左右できっちり白と黒に分かれている。見た目だけで言えば不思議の国のアリスに登場しそうな見た目の美少女で服装もそれに近い、服も色も髪色に合わせてモノトーンで纏めている。武器は短杖で、ツヴェルフ同様に魔法を使って敵を倒す遠距離タイプ。彼女の白い部分は色素欠乏症との事だが、何故半分なのかは分からない。
テルは、活発的な少女。何処にでもいる体育会系の性格と見た目をしている。武器はレオンハルトが趣味で作成したトンファーに近い形状の物を使っている。円柱型のレオンハルト製と違い板状の物を付けた武器で戦っていた。扱いにくさは上がるが、防御面が強化され打撃力も重みが上がるの強くなっている仕様。
兎に角、かなり個性的な者たちが集ったのだ。
それにしても、珍しい色素欠乏症や特異体質の持ち主、異世界者などが、これ彼らと接点を持つと言うのは、ある意味で凄い確率である・・・が、寧ろ偶然ではなく必然だったのかもしれない。レオンハルトもシャルロットも転生者であり、神から直接恩恵を授かり、また未知の力も得ている。この世界の一部の者たちは、多少知っている事もあるがその全貌を認識できていない。ある意味では、彼ら二人が最も特殊な境遇・・・巡り合わせを持っていると言える。
こう言う諺がある・・・類は友を呼ぶ。今回はその言葉がしっくりくる。
まあ、話が長くなるからこれ以上の説明は改めて行うが、こう隠密の様な事をしてくれる者たちが増えた事でかなりスムーズに情報収集が可能になった。
アインスたちが調べている間に、此方は此方で行っておかなければならない事があった。クレームに来ている者たちへの対応と現状の配置の再配置。そして、止む追えず場所を変わる者たちへの次の場所の提供の為の場所確認。
地図上では限界があるが、アインスたちに任せている調査が次々に報告されてくるので、ある意味丁度良い早さでもあった。
「この場所は、二人使用する事になっている。話を聞いた限りでは、時間差で来ているので、早い人を優先しましょう。後からの人は、申し訳ないがこの辺りにどうしてもらう」
「今更、移動させたら相手が怒ってきませんか?」
「怒ってくる可能性はあります。ですが、重複しているのが後で分かれば、其方の方が怒る可能性が高いでしょう。それに新しい場所もそれ程、立地が悪いわけでもないですし、何よりも同じ系統の露店が近くにないので商売もしやすいと思いますよ」
縁日などで、良く同じジャンルの食べ物が売られていた場合、安い方か、何か魅力的な方に人は引き寄せられる。別にもう一つの方が高いとか魅力がないとかそう言うわけではない。けれど、比較するお店委が近くにあると言うのはお店側も色々オリジナリティを出さないと行けなかったりするので大変だ。
好敵手が居ないのは、競争相手がいないため張り合いがないと言う者も中に入るだろうが、居たら居たで問題になる。だから出来るだけ同じ系統のお店を話すような工夫を運営側が気を付けなければいけない。
シュラ族のエルフが姿を見せると掴んだ情報をレオンハルトに報告。それを聞き新たな指示を出すと再び姿を消した。
「次ですが、先程仕入れた情報では、現場で口論している二組を発見したそうです。此処と此方ですね。何方が使うようになっていますか?」
担当者が直に調べると二組とも重複しているようだ。如何やら屋台の設置時にバッティングしてしまったのだろう。クレームとして上がってこないと言うのは、バッティングしたばかりだからだ。
「では、此方の方は現状のままで、この方を此処へ設置しましょう」
「先に申し込んだ人を動かすのですか?それは不味いのではないでしょうか?」
「そうですね。ですが、此処の人と斜め前の屋台が同じ様な品を提供するので、先に申請していた人に移動してもらう方が、どちらにとっても申し分ないはずです。それにこの場所でなら・・・」
指し示す場所は、元々屋台を設置しない場所。そこに敢えて数ヶ所の屋台場所を設置して、その一角にその屋台を回すと言うのだ。
「そうかっ!?此処ならすぐ近くに落ち着いて食べられるスペースがある」
「そう言う事です。此方に小さい規模で構いませんので何か催し物を行えば、定着させる事も出来るでしょうし・・・何より人混みを好まない人にお勧めできます」
祭りなのに人混みが少ない場所をと言うが・・・常に人混みに居たいと言う人物は稀であろう。
そうして、次々に問題を解決して行くレオンハルト。暫くするとシャルロットもこの惨事を知り、直ぐに動いてくれたのであっと言う間に片付けていった。
最後の問題を終えると、担当者たちは揃ってレオンハルトたちに頭を下げる。自分たちが住む領地の領主・・・それも、新興貴族とは言え国王陛下に認められるような逸材に自分たちの失敗の尻拭いをしてもらったのだから・・・。
「頭を上げてください。今回は初めての試みです。失敗する部分があって当然です。その失敗をどう解決するか、今後どうするのが良いのか、それを学べたと言う事で十分プラスになったと思います」
人の記憶は、成功した時の記憶よりも失敗した時の記憶の方が、よく覚えている。だから、今回の様な失敗はレオンハルトやシャルロットは失敗だなんて解釈は一切していなかった。寧ろシャルロットは各商会たちとの話し合いの場に参加していなければ、此処まで大きくならなかっただろうし、シャルロットが怠ったから発生した案件でもない。偶々、タイミングが重なったと言うだけ。
経験を得たので次に生かせば良いだけの話なのだ。
そこからは、着々と準備が進められ、如何にか生誕祭当日には、何とかそれぞれの準備を終える事が出来たのだった。
何時も読んで頂き有難うございます。
感想や誤字脱字の報告もありがとうございます。
時間がある時に随時修正をして参りたいと思いますのでよろしくお願い致します。




