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130 勇者VS騎士団長VS魔族殺しの英雄

おはよう。こんにちは。こんばんは。

今日の投稿が遅くなってしまいすみません。

「さて本題に入らせてもらおうか」


 俺たちは陛下から召喚状を貰い、全員で王城を訪れた。その際に会議室へ通されたのだが、その場にはエトヴィン宰相やリーンハルト候以外の人物が座っていたのだ。勇者コウジ・シノモリたち彼らは王命を受けて各地を巡り魔王軍の調査を行っており、今日は久々に帰省した来たようだ。勿論、これまでの調査結果の報告をする為に来ている。


 俺たちが会議室に来てから勇者がこれまでの事を報告していたり、遠距離連絡用魔道具を献上したり、ちょっとした雑談もしたりしていたが、此処でアウグスト陛下が俺たち召喚した理由を語り始めた。


「夏季休暇の間、アヴァロン卿には幾つかの国へ出向いてもらいたいのだ」


 近隣諸国の代表たちとやり取りをして、一度魔王軍に対しての見解を共有しておきたいのだそうだ。


 これは、アルデレール王国だけではなく、アバルトリア帝国の皇帝陛下も賛同しているし、友好国の代表たちからも手紙でそう言う事が書かれていたそうだ。


 ああ、確かに大国であったガバリアマルス王国が、魔王軍・・・それも十二魔将が直接攻めてきた事で滅んだらしく。かの国を超える戦力は殆どないと言える。精々、ローア大陸でかの国と同等の戦力を有しているとすれば元五大大国、今は四大大国と言われる東のアルデレール王国とアバルトリア帝国、西のエクレシア神聖国、南のフォルメニアス共和国である。


 この四大大国よりも二段落ちるがそこそこ力のある国が、幾つかあり有名所で言えばリズベルト連合国、魔導国家エクィトゥム、ブランシャール王国、獣国ヴェリトラ、ウーベリカユラ公国等だ。どの国も四大大国には劣るが、戦力としては申し分ない。


 巨人殺しの英雄セルゲイ・サフノロフが以前いた国が獣国ヴェリトラで、今はリズベルト連合国にいる。かの隻腕隻眼のヴォイド・グレイスと言う人物もリズベルト連合国で生活をしている。


 流石に、ローア大陸全土の国が集まる事は現実的に厳しい・・・と言うよりも、国同士で争いをしている国や争いにまでは発展していない物の牽制し合っている国も少なくはない。


 アルデレール王国のあるローア大陸の東の国々は国同士の争いが少ないと言うのも、大国であるアルデレール王国とアバルトリア帝国が隣国として存在するため、他国が争おうとする状態ではない。加えて言うならば、滅んでしまってはいるがガバリアマルス王国も大陸の北部にはあったが、正確に言えば北東部なので、アバルトリア帝国と離れすぎているという感じが無かったのも争いが少ない要因だろう。


 過去は、大陸内でも最も激戦する場所だったと書物には記載されていたが・・・。


 アウグスト陛下が言うには、最初にアバルトリア帝国へ赴き、その後西方面に移動してイースラ小国、ベルクァント森林国へと向かい。更にそこから南下してガーフィスト連邦共和国を訪れる。その後はアルデレール王国へ戻ると言う流れで頼まれる。要注意しなければならないのはベルクァント森林国でこの国は七割近くが森に覆われた特殊な国家。


 また、アルデレール王国とアバルトリア帝国への国境の様に聳え立つマウント山脈の様にベルクァント森林国にも似たような場所が存在する。


 魔の山であるマウント山脈に似た魔の森ミストリア大森林。


 ローア大陸の有名な魔の森の一つで、魔物の脅威はそれほど高くないが、自然影響力が冒険者や旅人に牙をむく。似たような風景と深い霧に覆われ、方向感覚が狂い最悪の場合、魔の森から出られなくなる事もある。大自然の迷路なのだ。


 そんな危険な場所に?と思うだろうが、レオンハルトたちは広範囲の探索魔法が使える上に転移魔法もある。加えていうならば、エルフ族も身内にいる。エルフ族は森の中で迷う事がなく種族としての特殊能力があるそうだ。まあ、エルフ族でも人によっては迷子になるらしいが、これは特殊な例だろう。


 あと、魔の〇〇が付くような場所には、未開地も多くこういう場所に遺跡や迷宮(ダンジョン)と言った場所が見つかる事もある。まあ、遺跡や迷宮(ダンジョン)は、魔の森や山以外にも普通の場所にあったり、街の地下にあったりするから一概には言えない。


「ええっと、夏季休暇だけで廻れる距離ではないのでは?」


 疑問に思った勇者コウジ・シノモリは、国王陛下に尋ねる。彼の言う通り、これだけの場所を訪れるとなると、夏季休暇の間ではどう考えても三つ目の国を訪れるのが限界だろう。しかも順調に進むことを前提条件としての計算になる。


 普通に考えれば・・・。けれど、レオンハルトたちであればかなり短縮することができる。一度訪れたことのある場所へ転移できる彼らからしたら、国境越えなどの手続きを考えても一日でアバルトリア帝国の帝都アバルトロースを訪問できるのだ。


 しかも、帰りも転移を使って一瞬でアルデレール王国へ戻ってこられる。


 知らなければ勇者コウジ・シノモリの様に疑問に思う所だろう。陛下としては、更にその先の国々にも訪問してほしいと言う気持ちがあったが、流石にそこまですると夏季休暇だけでは足りなくなることは明白。なので、今回は此処までの移動という事にしたのだ。


「彼らには、特殊な移動手段があるから、恐らく問題ないだろう」


「そうだったのですか。確かに我々も馬車に風属性魔法を付与して、速度を大幅に上げているからな。そういう何らかの方法があるのであれば可能なのでしょう。ちなみにどのような移動方法か聞いても?」


 此方に視線を送る勇者に、俺は陛下の方へ顔を向けて確認をすると、構わないだろうと言う感じで頷いたため、俺は転移魔法の事を話した。


 勇者コウジ・シノモリ一行でも使えない転移魔法。一応、彼の持つ聖装武器である聖剣ジョワユーズにも超短距離転移を行う事が出来るが、彼自体が聖剣のまだその領域にまで使いこなせていない。


 音の聖装武器・・・音を使った攻撃が行えるだけでなく、それに関連する事もある程度は出来る。そして音の速さは、毎秒約三百四十メートルと言われ、使いこなせばその速度で動くことが可能なのだ。まあ、肉体的な負荷に限度があるため連続使用はできないし、転移魔法と言うよりも瞬間移動に近い高速移動なので、長距離より戦闘等に向いている。


「凄いじゃないかッ!!転移魔法があれば行きたいところへ行けるし、先ほどの遠距離連絡用魔道具も併用すれば、緊急時にすぐに駆け付けることもできる」


 まあ、どこにでも行けるわけでもなく。一度行ったことがあり、転移魔法を発動する時にその場所を明確に思い描かなければ転移できない。距離に応じて消費する魔力も上昇するので、並みの魔法使いでは連続使用する事すら出来ない。効果は絶大なのに魔力消費量が高すぎて使えない魔法の一つ。まあ、転移魔法を使用できる者がまず限りなく少ないのだけれど。


「そうだな。あまり、他国に知られたくはないが、連絡をすぐに取れる手段は確保したいところだ」


 各国に通信用の魔道具はあるが使用範囲に制限の為、他国へ急ぎの連絡しようとすれば、伝書鳩の様な物を飛ばすか、通信用魔道具で何ヵ所か経由して連絡するしかない。


 それらを一切無視する遠距離連絡用魔道具は、やはり異常な性能と言わざるをえない。まさに国宝級の魔道具と呼ぶに相応しい。


 だからこそ、アウグスト陛下たちはどうするべきか悩む。


「陛下?何でしたら、別の魔道具を用意しましょうか?」


 レオンハルトの言葉に全員が振り向く。また何か飛んでもない事をやらかすのでは・・・と言う考えが脳裏によぎる。


「声ではなく、手紙を届ける魔道具です」


 思っていた程の事ではないことに、何故かその場にいた一部の者たちは胸をなでおろした。手紙を届けるなど二つ先の街までなら伝書鳩の様な事をする魔物が居るからあまり意味がない気もすると思うアウグスト陛下やエトヴィン宰相たち。


「これなんですが・・・魔道具、写鏡(うつしかがみ)です」


 遠距離連絡用魔道具を制作する過程と言うか、理論構成中に出来た副産物。二つで一組の物で、小さな手鏡となっている。


 魔力を流せば、もう一つの手鏡と共鳴して、鏡同士の空間がなくなり、此方側の手鏡から物を入れると向こう側の手鏡から入れた物が出て来ると言う仕組み。本当に小さな手鏡なので丸めた手紙や小さな小物ぐらいしか送る事ができないのだ。


 コストはそれほどかからない・・・と言うよりも、どちらかと言うと魔法付与を行っているので空間魔法が使えれば手鏡の費用ぐらいで済む。これまで出回ってこなかったのは付与する難易度が魔法の袋などの空間拡張とは異なり場所と場所を繋げると言う想像(イメージ)が構築できなかったからだ。まあ、根本的に空間同士を繋げるという発想がほとんど出てこなかったとも言える。


「・・・・それは、何か・・・・制限はあるのか?」


 言葉を失う者たちに、手紙や小物ぐらいの小さな物しか送れないと言う欠点以外に欠点らしい欠点はないと説明した。本当は手鏡を大きくすれば生物であろうと物であろうと送れないことはない。がそこはあえて説明しない。


 それこそパワーバランスが崩壊する上、手鏡ぐらいであれば付与できるが、サイズが大きくなるにつれて付与の難易度が比例するように難しくなった。


 かなり練習したり、もっと想像(イメージ)の構築の熟練度を上げたりすれば、出来るようになるだろうが、レオンハルトが現在作れるサイズで手鏡の八倍ぐらいが精一杯だった。


 他にも付与が出来ない要因がありそうな気もしたが、転移魔法の方が使い勝手が良いし、偶然できた副産物でもあり、結局魔法の袋の肥やしとなった魔道具の一つである。


「とんでもない物を作りおってからに・・・」


「送れる物の制限があるうえ、二つで一つなので使い勝手も悪いじゃないですか?」


 レオンハルトの言う事も一理あるが、それでも画期的な物・・・遠距離連絡用魔道具がなければ、盛大に驚いていたことだろう。


 話し合いを続けた結果、写鏡(うつしかがみ)の魔道具を各国の王族へ渡すことになり、渡す際にアウグスト陛下が一筆したためた封書も一緒に渡すことになる。写鏡(うつしかがみ)も四カ国分と言う事で合計四組必要となるが、うち半分は手元にあるので残りの半分を再度作る事になった。


 費用は王国が負担してくれるそうで、一組当たり金貨五枚と言う事になった。日本円にして五百万円・・・四組で金貨二十枚、二千万円相当になる。驚愕の値段に驚いたが、これはクイナ商会で一般販売しないようにと言う意味も込められていた。


 今回のレオンハルトが他国へ訪問する件は、レオンハルト以外には冒険者として依頼を出す事になった。更に国の重要案件と言う事で、この依頼を達成した暁に全員の冒険者ランクをA(エー)ランクに引き上げるそうだ。


 レオンハルトは既にA(エー)ランク相当・・・それ以上の実力を持っているとされているが、彼は未だにB(ビー)ランク止まりなのは、仲間のランクを揃えようとしているから。


 レオンハルト以外なのは、レオンハルトは貴族当主としてこの案件を受けるためだそうだ。コンラーディン王太子殿下がアバルトリア帝国を訪問する時も貴族当主ではあったが、護衛と言う側面の方が強かったため、冒険者として動くことになった。


 まあ、別に冒険者としてではなく貴族当主として同行し、仲間たちは私兵と言う形でもできなくはなかった。あの時は別にどちらでも良かったとも言える。


 話し合いも終わり、それぞれが部屋を退出する。


 俺たちも屋敷へ戻ろうと王城内の通路を歩いていたら、とある人物から声を掛けられた。


「アヴァロン卿。もう帰られるのですか?」


 別の通路からひょっこり現れた騎士。他の騎士より圧倒的な雰囲気を放つ彼は王国騎士団一番隊隊長であり、騎士団団長のアレクシスだった。その背後に数人の騎士が同行しており、何かあったのだろうかと足を止める。


「ええ、陛下との話も終わりましたので、屋敷に戻ろうかと。それより、何かありましたか?」


 レオンハルトがアレクシス騎士団長へ話しかけると、何を思ったのか「良い事を思いついたッ!!」と言わんばかりの表情になり、明るい声で返答をした。


「これから、勇者殿が騎士団の訓練所を見学する事になっていまして、よろしければアヴァロン卿たちもどうですか?」


 その話を聞くと少しだけ興味があったが、他の人もいるのでどうするか考えていると、ユリアーヌやクルト、ダーヴィトの三人が見に行きたいと言ってくる。特にユリアーヌはこういう戦闘訓練を好むことが多く、クルトやダーヴィトは頭を使うよりも身体を動かす方が良いと言う肉体系の考えの持ち主なので、こういう事には非常に前向きである。


 問題は女性陣だよなと思っていたところ、彼女たちも構わないと言う表情で合図してくれたので、お言葉に甘えて少し訓練を覗かせてもらう事にした。


 予定変更に伴い、王城に勤める使用人へ使いをお願いした。お願いした内容は、御者を任せているエリーゼたちに少し寄り道をするから待機するようにと言う事。別にしなくても構わないのだが、彼女たちが待ちぼうけをするのは可哀そうだろうと思い頼んだのだ。


 それから、来た道を少し戻り、騎士団長の後を追うように進むと王城の外へと出てしまった。日頃利用している入口とは反対の辺りにある出入口、正面の出入り口と違って豪華さのかけらもない、本当に身内のみが利用する場所だった。


 外に出てから少し歩くと、大きく開けた場所と騎士団の待機所のような場所が現れる。


 開けた場所では既に数十人の騎士たちが訓練をしていたり、体力作りをしたり、模擬戦のような事をしている一団もあった。


 模擬戦に参加している人を見ると、先程別れたはずの勇者コウジ・シノモリが数人の騎士との模擬戦を行っている最中で、既に騎士たちは虫の息状態だ。


 よく見ると、既に数人が地面で伸びている。


「勇者殿が模擬戦に参加しているのか?」


 騎士団長が現れた事でその場にいた騎士たちが動きを止める。模擬戦を行っている騎士は勇者との戦闘中なので動きを止めなかったが、それ以外の者は騎士団長に挨拶をしていた。


「団長。ええ、勇者殿と一閃交わしたいと団員たちが申しもしたので」


 いの一番に答えたのは、騎士団長が隊長を務める一番隊の副隊長アメリア・クロイツだ。その横には四番隊副隊長のジェシカ・アルムスターの姿もあった。彼女はアメリア同様女性騎士ではあり、幼少期からの付き合いもあって互いに用事がない時など、一緒に訓練に参加したりしている。


 二人とも綺麗系ではなく可愛い系に容姿が優れているから、他の騎士たちからの人気も高い。綺麗系の女性騎士も多く在籍しているが、騎士職と言う出で立ちの為か少々あたりがきつい雰囲気を出している。それが良いという一部の騎士たちもいるが、全体的に見れば少ない方だろう。


「それにしても、複数の騎士を相手に圧倒するとは・・・。以前にも増して力を付けたようですね」


「ええ。恐らく隊長クラスで如何にか足止めが出来るかと言う所ですね。本格的な相手となると団長ぐらいしか止められないと思います」


「でも、アヴァロン卿でも相手取る事が出来そうですよね?一人で魔族と討伐する実力者ですから」


 アメリアの発言を聞いてジェシカがレオンハルトならと視線を向けながら話をしてきた。同程度の実力なのは知っているが、どの位同じレベルで戦えるのか気になる団員たち。


 それを見兼ねたアレクシス騎士団長は、レオンハルトに模擬戦をしないかと誘う。


「おっ?でしたら、自分も参加しても良いですか?」


 話に割り込んできたのは、先程まで騎士数人と模擬戦を行っていた勇者コウジ・シノモリである。彼が来た場所を見ると、模擬戦の苛烈さからか、参加していた者は一人残らず地面に倒れていた。


 数人の騎士を相手にしたばかりだと言うのに疲れた様子を一切見せないその余裕差が、この場の誰よりも強いと証明していた。


「え?って事は三人による模擬戦の乱捕り?」


 騎士の一人が口を開いた事で、騎士たちの期待感は上昇する。世界を救うとされる勇者、王国最強の騎士、底のしれない英雄。そんな三人が模擬戦とはいえ戦うのだ。誰も興味が無いと言う事はあり得ない。


 気が付けば、周りに押される形で三人の模擬戦が決まる。流石に騎士団内だけで留めておけないと判断したアレクシス騎士団長は、アメリアにこの件の承諾を陛下にとって来るよう指示し、その間に準備を進める。


 実力の高い三人がこの場所で、戦えば周囲に被害が出かねない。なので、王城の敷地内にある教練場を使う事にした。敷地内にこのような場所があるのかと言うと、極稀に貴族同士の決闘に使われたり、他国の来賓が来た際に互いの同行者の演武を披露する場として使われる。もちろん、国王陛下に騎士団の日頃の訓練の成果を見せる場として年に一回、技の披露をしたりしている。


 教練場の結界魔法を起動させ、閲覧席の安全を取り終えると、国王陛下に報告に向かわせたアメリアが戻って来る。


「陛下より『三者の模擬戦を許可しよう。但し、余が到着するまで試合は開始するな』とのお達しです」


 アレクシス騎士団長は、その言葉を聞いて陛下が見に来るのだと推測する。アレクシスの読み通り、その数分後に複数の大臣や宰相、王太子殿下にレーア殿下、シルヴィア殿下、ローゼリア殿下たちを引き連れてアウグスト陛下がやって来る。


「団長の力を見せ付けてやってくださいッ」


 陛下たちとは数段下にある応援席のような場所で、先程勇者にボコボコにされた騎士が、仇を取ってくださいと言わんばかりの勢いで声を大にして言う。


「コウジ様ーッ!!やっちゃってください!!」


「レオン様―ッ!!頑張ってーッ!!」


 勇者コウジ・シノモリを応援する勇者の仲間たち、一部女性騎士も応援に混ざっているが、やっちゃってくださいって・・・()っては駄目でしょ!?殺すという意味ではないのかもしれないが、そう聞こえてきそうなニュアンスだった。


俺の方も仲間たちが応援してくれている。レーア殿下たちも声を出して応援したいのだろうが、立場的に出来ないと分かっているのか祈る様に手を組んでいた。


 エトヴィン宰相やラインフェルト候は、娘たちが大声でお応援している姿を見て、複雑そうな表情をしている。上級貴族の令嬢としての自覚が・・・・けど、将来夫になる者を応援したいと言う気持ちどちらも分かるからこそ複雑な心境に至っていた。


「ギャラリーがこれほど増えるとは・・・なんだか大事になってしまったな」


 アレクシス騎士団長の言葉で、二人とも苦笑していた。


「では、お三方。準備は宜しいでしょうか?」


 審判役にアメリアが模擬戦開始の合図を行う。


 既に抜剣済みの二人と異なり、レオンハルトの刀はまだや鎖に納められていた。レオンハルトは居合の構えをしているのに対して、二人はそれぞれ中段の構えと、剣先を地面に向けた下段の構えをしている。


「では、はじめっ!!」


 合図と共に三者が同時に動いた。この模擬戦で一応ルールを設けられている。放出系の魔法は禁止。魔法の使用は身体強化系や防御系のみ、勇者の持つ聖装武器や騎士団長の持つ魔装武器の能力の使用は一部を除いて禁止。後は、相手を死に至らしめる攻撃や後遺症が残る攻撃は禁止となる。敗北条件は、気絶や動けなくするなどの戦闘不能状態か、降参するかだ。


 三人とも身体強化を施しているためほんの一瞬で、三者が激突した。居合の体勢から抜き放つ最速の斬撃がアレクシス騎士団長を襲う。アレクシス騎士団長は、認識するよりも早く身体が反応しレオンハルトの初撃を防いだ。


 ッ!?重いッ!!


 身体が先に反応したのは、これまで積み重ねてきた経験とたゆまぬ努力、直感によるものだ。


 そのまま、剣で受け流すと反撃に転じる。


 そんな二人の攻防に割って入る勇者コウジ・シノモリ。剣でアレクシス騎士団長を、体術による蹴りでレオンハルトをくらわせる。


 両者とも勇者コウジ・シノモリの攻撃を紙一重で躱すと互いに攻撃を勇者に向けた。


 乱戦による乱戦。三人しかいないが、激しい攻防が幾重にも繰り返される。


 観戦している陛下や宰相、騎士たちはそのあまりにも高度な戦闘を目に、ただただ見ている事しかできなかった。当然、レオンハルトの仲間や勇者の仲間も同様である。


 剣術と体術の激しい応戦に変化が生じた。まず初めにレオンハルトが勇者の回し蹴りを受けて後方に吹き飛ばされる。


 身体を上手く捻り難を逃れるが、レオンハルトが離れた事で、アレクシス騎士団長と勇者コウジ・シノモリの二人が一対一(サシ)で戦闘を継続している。


 剣閃と剣閃がぶつかり火花が散る。金属音と共に衝撃波が周囲に広がる。鍔迫り合いになり、両者が譲らず均衡状態になった時、吹き飛ばされていたレオンハルトが二人の元に移動し、互いの剣の衝突している所を目掛けて、刀を振るう。切り上げた事で両者の剣は弾かれ、アレクシス騎士団長と勇者コウジ・シノモリの体勢が崩れた。


 間髪入れず、レオンハルトは片手を地面にブレイクダンスでもしているかのように回転蹴りを二人の顔目掛けて繰り出す。


 結果、二人ともまともに受けて、アレクシス騎士団長は地面に倒れる。勇者コウジ・シノモリは如何にか受け身を取り、直ぐ起き上がったと思えば攻撃に転じた。


 今度は、レオンハルトと勇者コウジ・シノモリの二人の攻防が繰り広げられる。そんな事をしているとアレクシス騎士団長も立ち上がり、二人の攻防に加わる。


「セイッ」


「シッ!!」


 激しさを増す三人の攻防。驚くべき事なのは、未だに身体強化のみで技らしい技を誰一人繰り出していない。


 三人が同時に斬撃を出した事で、三人の鍔迫り合いが発生。その瞬間、激しかった動きが止まり、互いに押し込めようとする。


「「「「「ウワアアアァァァァーーーーーーーーーッ!!」」」」」


 教練場に歓喜の声が響き渡る。

いつも読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字、感想などいつもありがとうございます。

頂いております内容は近いうちに修正いたします。

今後ともよろしくお願いいたします。

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