128 商業ギルドは大忙し!?
おはよう。こんにちは。こんばんは。
最近、日中が夏みたいに暑くて困ってしまう今日この頃。
皆様をどの様にお過ごしでしょうか?
さて、今回は商業ギルドの話にしてみました。
クイナ商会王都仮本店にて、リニューアルされたシャンプーやリンス等といった商品が再販されて数日が立つ。その間、商業ギルドはあり得ないほど忙しい日々に追われる事になった。
「アンジー、例の報告書をすぐに用意して」
「テッサ。支配人が呼んでるよー」
「ありがとうジュリー。リュー此処任せるね」
テスタロッサは、同僚のジュリエンヌから此処商業ギルドをまとめる支配人ロベルトの所へ向かう様に言われ、先々週から部下になったアンジェルとリュディヴィーヌに指示を出して支配人室に向かった。
今までは部下がいなかったテスタロッサ。今回部下が付いたのは、彼女自身が昇格したからでもあるが、それは彼女自身の力と言うよりも専属担当として対応しているクイナ商会の会頭レオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロン伯爵が居たからである。
クイナ商会は立ち上がって間もない商会なのにも拘らず、その知名度と勢力は既に上位に伸し上がる様な勢いを見せ、専属担当者であるテスタロッサは激務に追われていた。そこへ更に追い打ちをかけるような出来事が数週間前に直接申し出があり、一人では流石に限界だろうとテスタロッサを昇格させて、部下を二人つけてくれる事になった。
しかもこれを打診したのがアヴァロン伯爵だと言うのだから、こうなるだろう事は予想していたのだろう。まだ成人にもなっていない子供ながら、数知れない功績を収める人物だけあって、どれ程先を見据えて射るのか恐ろしく思えた。
天才って言葉は、彼の為にあるのかもしれない・・・。
支配人室に来ると上司であるロベルトは、げっそりとした様子で書類をチェックしていた。無理もないだろう、テスタロッサ以上に激務に追われるロベルト。ここ二日は碌に家にも帰っていないらしい。
「テスタロッサ。これをクイナ商会の者が来たら渡してくれ」
一枚の羊皮紙を受け取るテスタロッサ。
「これって、まさか・・・」
そこに書かれていたのは、ロベルトに来た注文が届いた大口の取引相手。支配人でもあるロベルトも一時期何か所かの商会の担当をしていた事があった。無論、彼だけではない此処で働く半数近い者には専属担当や、担当が付いている事が多い。
専属担当と担当の違いは、言ってしまえば一商会のみの担当か、複数の商会の担当かの違いだ。一商会のみの専属担当になる商業ギルド職員の数は少ないが、テスタロッサ以外にいない訳でもない。トップクラスの大きな商会には必ずと言って良い程専属担当者が付いている。
ロベルトへ連絡が来ている案件の大半は、貴族が経営者として立ち上げた商会が多く。問い合わせ内容が、商会としてではなく会頭個人で購入を希望している所ばかり、それと言うのも基本他の商会で作った商品を買い取り、自分たちの商会で売ると言う行為は禁止されている。
それは商業ギルドに加入する者は絶対に守らなければならにルールだ。しかし、先日の様な模倣品の販売は禁止されていない。果たして転売と偽物どう違うのかと言う部分があるが、それでも転売は禁止で模倣品はあり、けれどそこにも暗黙のルールのような物がある。似せて作っても良いが、全く同じにしてはいけない。偽って販売してはいけないと言うもの。
偽って販売と模倣品・・・・同じではと疑問に思うかもしれないが、模倣品は例えば今回のクイナ商会のシャンプーを似せて○○商会のシャンプーとして売る行為。偽って販売と言うのは、クイナ商会のシャンプーの模倣品をクイナ商会のシャンプーとして、全く別物を売りつける行為だ。
用は勝手に名前を使って偽物を販売する行為の事。粗悪品によるクレームが、購入したお店ではなく大本のお店に流れ込んでくるからだ。
まあ、クイナ商会以外のお店で、クイナ商会の商品を置く事も条件を満たせば可能ではある。これは商会同士できちんと話し合い契約がなされればと言う条件だ。契約が結ばれれば、代理販売や委託販売と言う形で商品が置ける。
ロベルトの羊皮紙には契約関係が一切ないのは、代理販売や委託販売をする余裕がクイナ商会にはないから・・・。それを大きな商会の会頭たちも理解しているからそう言う話を持ちかけようとはしない。ただ、自分たちで使いたいから知り合いを通じて購入できないかと言う催促が行われている。
まあ、商会が大儲けしてくれると言う事は、その分売り上げの手数料をギルドに納めなくてはいけないので、商業ギルドとしてもある意味大儲けさせてもらっている。
良くも悪くも何かをやらかしてくれる事には変わりないクイナ商会だった。
「本日お越しになった際にお渡ししておきます」
「すまない。それと、これは口頭で伝えてほしいのだが、例の模倣品を売っていた店が偽って販売していた事を認めたというのは知っているな?それ以降、個人経営の二店舗が同様の事をしたので、事実確認を取っている。もしかしたら何らかの事があるかもしれない事を伝えておいてくれ」
最初の一件は、その模倣品の経緯があり裏を探っていると、かなりあくどい商売にも手を出しており商業ギルドとしても看過できない為、騎士団へ報告。然るべき処遇を与えた。今回の二店舗は、最初の時と似ているが此方は前のタイプを似せて作ったまがい物。中身もシャンプーやリンスではなく、香水らしい・・・。香水入れるにはちょっと使い勝手悪いような・・・。
兎に角、支配人の話が終わり再び事務所に戻る。
「せんぱーい。これ仕事量多すぎますよ」
部下で後輩でもあるアンジェルが書類の束の前に挫折していた。無理もない。私もあの量の書類を裁こうと考えただけで憂鬱になりそうだ。
「テスタロッサ先輩、すみません。アンジーに早く片付ける様言っているのですが・・・」
リュディヴィーヌは申し訳なさそうに謝罪する。アンジェルとリュディヴィーヌは同期で入社した若手。アンジェルは私と同じ人族だが、リュディヴィーヌは人族とエルフ族との混血、ハーフエルフと言われる種族になる。
今年で二年目の彼女たち。去年は別の先輩の元で担当受付としていろいろ学んできた彼女たち。急に専属担当・・・それも、三人で対処しなければならない様な商会に割り当てられ、当初はかなり困惑していた。
ああ、私もあの方に粗相をした後の対応ってこんな感じだったのかな・・・今も、あまり変わらない様な気がするけど・・・。
「アンジー、頼んでおいた報告書は出来ているの?」
「それなら出来ていますよー」
項垂れながらも仕事はきちんとしてくれる優秀な部下。
アンジェルから受け取る報告書。それは、他の街にあるクイナ商会のお店の売上報告書だ。急に三店舗も増えた時は、赤い涙が出そうになった。しかも、三店舗ともその街では有名なお店と言う事で、売り上げが急上昇している。
急上昇している理由も画期的な商品を作り出しているから。商業都市プリモーロのハンナのお店は、他のお店よりも数多くの染物を行っており、品質に関しても高品質と言われている。彼女の両親が営む衣類店もお店の改装以降、お客が増え、しかも服もこれまでにないような商品が数多く出ている。交易都市イリードのトルベンのお店は、カタナと呼ばれる新しい武器を唯一作れる職人で、その見事な刀身は美術品かと思わせる出来栄えで有名になった。今では国王陛下にも献上していると聞いた事がある。
報告書を見ていると、受付にいた職員から声を掛けられた。
「テッサ。お客さん来たわよ」
「ありがとうございます。直ぐに行きます。アンジー、リューちょっと行ってくるね」
クイナ商会の従業員が今日の売り上げの報告に来たのだろう。あのお店は、他の所に比べてきちんと報告してくれるので正直助かる・・・量さえ気にしなければだけど・・・。
「お待たせしました。――ッ!?」
私の前に訪れたのは、クイナ商会の会頭レオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロン伯爵だった。
あまりにも突然の事で、一瞬固まってしまった。
「アヴァロン様、支配人に用事でしょうか?」
彼が来る時は、大体支配人に用がある時だ。だから、支配人へ伝えに行こうとすると・・・。
「ああ、今日は売り上げの報告書とお金を持ってきました」
支配人に用事があった訳ではなく、私に用事があって来た様だ。粗相をしない様に構えるとぎこちない動きになってしまった。
伯爵様から「大丈夫?」って心配されてしまったーッ!!
平常心、平常心、落ち着いていつも通りに・・・粗相がないように・・・。
「だ、大丈夫です。ちょっと疲れが出てしまったのかな」
何故に!?疲れてしまっているなんて言ったのかー。これだと伯爵様の商会の仕事量が多すぎッ!!って遠回しに言っている様なものじゃない。てんぱり過ぎでしょ!?
「あはは、何だかスミマセンね。あ、これ今日の報告分です」
「あ、ありがとうございます。今日はディートヘルムさんやゲレオンさんではないのですね」
何時もは、この二人かローレと言う人族の奴隷の方が来たりするのだけれど、何故会頭自らと思い訪ねてみた。
「お店の方が大繁盛していてね。商業ギルドに行くのも難しい様だったから」
そう、今の時間にクイナ商会が閉店したから来ているのではなく。もう半刻もしたら商業ギルドの日勤業務の定時、就業時間が来るからだ。基本的には、ほぼ休みなく開けているが日勤業務を終えると夜間業務に入れ替わる。
夜間業務は、ある程度の事は日勤業務と同じだが、担当者がいなかったり、規模自体は縮小しているので待ってもらったりする。
一度、中間報告を入れる事で、翌日に大量の仕事を持ち込まない様しているが、きちんと守る商会の方が少ない。
中間報告をせずに自分たちのお店を閉店して、売り上げの計算。そこから、報告書を殴り書きで記載し、夜間の職員に渡す。翌朝担当者は、昨晩に届いた書類の確認や金銭の確認に追われる。
「そうなんですかー。では後程、確認させてい」
「せんぱーい。これどうやって計算するんですかっ!?」
テスタロッサがレオンハルトと話をしている時に、突然割り込んでくる女性。何時も来る人であれば謝罪をして許されるだろうが、今は上級貴族の当主でもある人物が来ている。アンジェルの行動は流石に不味い状況だ。
「も、申し訳ありません。ほら、貴方も直に謝罪する」
「申し訳ありません」
テスタロッサの指示通りにアンジェルは直ぐに頭を下げた。先輩である彼女がこんなに慌てる態度は余程の人物が来ていたのだと認識させられたために。
「ああ、気にしなくて構わないよ。それよりその手にある書類ってうちの商会の報告書だよね?何処か分からない所があった?」
アンジェルは、分からない部分を先輩であるテスタロッサではなく。あろう事か商会の会頭に直接訪ねたのだ。
「あー確かにこの部分はわかり難いですよね。此処はこう計算するんですよ」
丁寧に教えるレオンハルトの姿を見て、怒っているわけではなさそうと安心するテスタロッサ。それにしてもレオンハルトの教え方が自分よりも遥かに上手な事に驚き、テスタロッサ自身もレオンハルトの計算の方法を聞いていた。
「この数字は、何処から来ているんですか?」
ついには、彼女自身も分からない事をレオンハルトに直接訪ねてしまう。
「ここは、此方の数字を入れるんですよ。そうすれば計算が楽になるでしょ?」
気が付けばテスタロッサとアンジェルは、レオンハルトから算術のコツを聞いており、アンジェルが中々戻ってこない事を不思議に思ったリュディヴィーヌが、表に顔を出す。
「アンジーッ!?帰りが遅いと思ってみきくれば・・・貴方って人は」
アンジェルが抜けた間も真面目に後処理をしていた彼女は、かなりご機嫌斜めと言う感じで現れる。そんな様子を気にも留めずにアンジェルは、教えてもらった計算式を早速用いてその場で分からなかった個所を計算していく。
「これは一体?」
「リュー。ごめんね。アンジーが珍しくすごく勉強しているのよ」
「勉強・・・ですか?」
リュディヴィーヌは、その光景を見て顔を引きつらせる。報告書を持ってきたクイナ商会の人と話をしておいたはずのテスタロッサ。その彼女に助けを求める・・・業務から逃げたアンジェル。業務から逃げたはずの彼女が今目の前で真剣な眼差しで業務に取り組んでいる。しかも、報告書の見方をお客・・・それも商会の会頭であるレオンハルトから学んでいるというあり得ない光景。
「アヴァロン様の教え方がとても分かりやすいのよ。私も色々教えてもらった」
テスタロッサは、彼らの専属担当者になって以降、死に物狂いで勉強をした。その甲斐あってか、商業ギルドの中でも算術が得意な者たちのグループに入るぐらいの地位となる。けれど、そんな彼女でも改めて教わってしまいたくなる程、レオンハルトの算術はすごかったのだ。
彼からしたら、義務教育課程のレベルなので、たいした事ではないがこの世界の水準だと義務教育程度でも恐ろしいほど出来る人と言う扱いになってしまう。
そっとアンジェルの下に近寄り、彼女の計算を覗き込むと、テスタロッサの言いたい事がリュディヴィーヌにも理解できてしまった。
「此処の計算式、間違えているよ。一日の売り上げが・・・」
アンジェルの計算式を見ていたレオンハルトが、すぐさま計算間違えを見つけ、やり方を説明する。後ろで聞いていたリュディヴィーヌでも今の指摘に全く気が付くことが出来なかった。
気づけば、テスタロッサたち三人がレオンハルトから教わると言う謎の構図が出来てしまい、四半刻が経過した頃・・・。
「おや、まだ仕事していたのか・・・・って、おいっ!!レオンハルト様に何をさせているのだッ!!レオンハルト様、この度はうちの職員が、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
支配人のロベルトが、深々と謝罪する。本日の日勤帯での勤務が既に終わり、支配人としてこうして、部署の確認に回ったりする。彼自身も少し気分転換も兼ねている所があるが、部下を労わる事はする。
「構いません。此方の書類がわかり難かったり、計算でややこしい所があったのは事実ですから、以降改善するようにしておきます」
それから暫く算術を教えてからレオンハルトは、商業ギルドを去って行った。支配人から言付かっていた物も帰り際に渡す事が出来た。
流石に、伯爵当主で商会の会頭であるレオンハルトに、長時間拘束して自分たちの仕事を教えて貰うと失態は、彼が許してもギルドとして示しがつかない。
三人には、厳重注意をしてから業務を終えさせる。後で聞いた話だけれど、支配人自ら後日、商会を訪れて謝罪をしたらしい。
後は、レオンハルトから教えてもらった四日後ぐらいから、報告書の記載方法が変わり、ギルド職員の負担が大幅に減った事は言うまでもなかった。
商業ギルドで働くとある職員二人。
「情報があったのはこの店か?」
「ああ、ロベルト殿も人使いが荒いぜ。王都中のお店をしらみつぶしに調査せよとか」
「文句を言うな、俺たちは高い給金を貰っているんだから、それなりに仕事をしないと」
深緑色の短髪にザ・真面目と言った感じの青年と橙色に赤色のメッシュは入ったチャラい感じの青年の二人がある店の近くで話し合っていた。
彼ら二人は、商業ギルドの調査部に所属する職員で、主な仕事は取り扱いが禁止されている商品の売買や、売上金を誤魔化していないか下調べをする。あとは今回の様に他の商会のオリジナル商品を契約など躱さずに真似て作った偽造品や模倣品の確認などを行う。
受付嬢たちが表の顔であるならば、彼ら調査部は裏の顔と言う感じだ。
ザ・真面目と言う感じの青年は兎も角、チャラい感じの青年は調査部で大丈夫なのかと思うだろうが、この部にいる者は皆秀才と呼ばれる一段でもある。
地頭が良いのは勿論だが、それぞれ独自の才能に恵まれている。ザ・真面目の青年は、レオンハルトたちが現在通う王立学園の卒業生で、首席で卒業をしたという逸材。もう一人は、鼻が効くと言うか・・・直観力がずば抜けて高い。
特に、本格的な調査を行う時、相手が見られたくない事や誤魔化していたお金の隠し場所などをすぐに見つけてしまうのだ。後は、腕もそれなりにある。Dランク冒険者と互角に渡り合える程だから、凄い。
「クレヴァー。先に入るから、店員の動きに注意しておいてくれ」
そう言うとチャラい青年は、店に向かって歩き出した。クレヴァーと言うのが真面目な青年であり、今お店に向かったのはバティスと言う名前の人物だ。
バティスが店内に入って数分。模倣品と思われる商品について店員に確認している時、会計カウンターの近くに居た店員の表情が少し曇るのを見逃さなかったクレヴァー。
何か知っていると睨んだ彼は、店員の行動を伺う。
(何かを持って裏へ回ったな。裏口へ回ってみるか)
クレヴァーの予想は見事に的中し、先程の店員が複数の男と共に例の商品らしき物が入った木箱を抱えており、裏に停めている馬車へと急いで積み込んでいたのだ。
「おい、そこで何をしている?」
ッ!!
突然声を掛けられた店員と男たちは、身体を一瞬硬直させた。急に声を掛けられれば数人いるうちの誰かはそう言う行動になるだろう。けれど、全員が一瞬でも硬直したと言う事は、疚しい事をしていると知っているから、そうなってしまった可能性が高い。
その証拠に、店員は持っていた木箱を男の一人に渡して積み込みを続ける様に指示し、手ぶらで此方にやって来た。その表情は笑顔だったが、それは裏では完全に笑っていない笑顔。
完全なる黒だな・・・。
クレヴァーがそう判断すると目の前に来た店員が何かを話始める。
「道にでも迷われたのですか?この先は特に何もありませんし、今荷物の整理をしていますので通れません。ご迷惑おかけしますが・・・」
「その荷物の中身は何でしょうか?」
「え?」
とぼけた顔をする店員にもう一度同じことを尋ねる。
「これは、間違った物が納品されていましたので、返品する手筈を整えている所です」
自分たちは知らぬ存ぜぬと言う風を装う彼らを睨みつける。店員は、睨まれた事で後ろに一歩下がってしまった。その隙を見逃さずにクレヴァーは、店員の横を素早く抜けて、木箱の方に向かうが、運び込んでいた男の一人が道を塞ぐように立つ。
「これ以上は、先に勧めねえぜ?ええ、あんちゃんよー」
男たちは、店の店員と言うよりもスラム街を根城にしている様な素行が悪い冒険者たちの様だ。簡単に言ってしまえば、街中にいる盗賊って感じのガラの悪そうな者たち。
「悪いが、中を確認させてもらう」
油断している所を鳩尾に一撃入れる。立ち塞がる男は崩れ落ちる様に地面に横たわると、そのまま歩みを続けて、近くにあった木箱に手を伸ばす。
クレヴァーが中身を確認すると、先程店内にいた店員がバティスに説明していた模倣品と同じ物が大量に入っていた。クイナ商会の目玉商品の一つで、模倣品の被害にあい容器をこれまでのものとは全く別の物に切り替えた商品。彼らが持っていたのは、旧容器の模倣品だったがこういう風にクイナ商会の大きな波に乗ろうとするお店が後を絶たない。
模倣品はそれ程きつく取り締まれないが、彼らの商品にはこっそりクイナ商会認可商品と言う記述が書かれた違法行為をしている。クイナ商会が認めていればそれも問題ないが、彼らは何処の商会やお店にも許可を出していない。
彼らの名前を使って商売をしたと言う事で、その後バティスとクレヴァーの二人はお店を閉鎖し、商業ギルドへ連絡して仲間を呼び、店員たちを拘束し事情聴取を行ったのである。
その後も彼らの様な調査部の頑張りに寄り、アルデレール王国内でのクイナ商会の商品の模倣品が出回る事が無くなったのは、レオンハルトたちが夏季休暇に入る少し前の事になるのであった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
次回は、夏季休暇に突入させようかと思いますので、是非読んで下さい。
おれも・・・夏休み欲しい・・・




