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124 進級試験?④

おはよう。こんにちは。こんばんは。

そろそろ次の話にしたいところですねー。

 王立学園に通う高等一年の冒険科の進級試験を受けている時、とあるグループが点数稼ぎに早まって王都周辺の雑木林に入っていった。


 試験内容にあるゴブリン二体を討伐し、その討伐部位を持ってくる事となっていた。魔物の討伐だけではなく。薬草採取も内容にあり、内容に書かれている事をクリアすれば、良いだけのもの。ただ、試験は満点の状態から始まり、減点方式で例えば、集団(グループ)活動ではなく単独(ソロ)活動をしていたとか、チームワークが悪いとか、誰かに自分の試験をさせるという行為をした者は、その都度減点していく。単独(ソロ)活動は減点の対象にはなるが、減点の点数は高くない。逆に自分勝手な行動をする者などの減点の点数は大きく引かれる。


 これを、満点で通過できる者は殆どいないが、減点だけでなく加算点も存在するため、減点されても満点になる者がいるのだ。ただ、満点を超える結果となっても満点で打ち止めなので意味がないが、大幅な減点がある者に同じく加算点が付けば、持ち直す事も可能だ。


 加算点の対象となりやすいものは、採取できちんと目利きしているか、獣の血抜きやその時の周囲の状況の把握、指定された魔物数以上の討伐などである。


 加算点に目が眩んで無茶をする者は、減点対象ともなっているため、狙い過ぎて加算点よりも減点の方が上回る場合(ケース)も毎年数例発生している。


 そして、今回雑木林に入って行った冒険科の生徒は、自分たちの力を過信し、もっとたくさん狩れると証明するために侵入したのだ。


 その結果、どうなったかと言えば、最初の内は順調に出てくる魔物を皆で狩っていたが、気が付けば魔物の罠にかかり、多くのゴブリンたちに包囲されてしまった。


 生徒たちが次々に倒れていく中、もうダメかと諦めたその瞬間。


 二人の冒険科の生徒が、救援に駆けつけてくれる。


 一人は、高等一年でマドンナ的存在のティアナ・カロリーネ・フォン・フォルマー。フォルマー公爵家の令嬢で、冒険科でもトップクラスの実力を兼ね備えた少女。魔族殺しの英雄と同じチームに入っており、彼女自身剣も魔法も優れていると為、非の打ち所がない一人だ。


 もう一人は、イルメラと言うエルフの少女。冒険科でもトップ連中には一段落ちるが、それでもその実力は他の生徒を圧倒させる腕の持ち主。弓と魔法を主に戦闘をするスタイルで、探索や索敵、運動神経も優れている。また、エルフと言う事からか森などでの戦闘に優れている。


 そんな二人が、取り囲まれた彼らを助けるために、戦闘を開始した。


「す、すごい」


 生徒の一人が、漏らす声にその場にいた生徒たちは同意見と言わんばかりに魅入られる。


「ボサッとしないで、貴方たちも応戦するのよ。ティアナさん。正面に恐ろしい気配を感じます気を付けて下さい」


 囲まれていたアルニムたち生徒に声を掛け、戦闘に参加させる。この状況を少しでも良い方向にしなくては、私とティアナだけでは厳しいと判断した。それに、此方にものすごい勢いで迫る何かも確認してしまった。


「援護します。<敵に当たるは必中の矢>『誘導(リモート・)する(アロー)』」


 略式詠唱である程度、自由自在に操れる魔法の矢を放つ。その効果によって放たれる矢は、常識の軌道を逸脱した様に軌道を変えて、敵を射抜く。


 それも一本一本放つ手段ではなく、三、四本を一度に放つ方法で弓を引く。一度に放つ矢はそれぞれ別のゴブリンやホブゴブリンを射抜く。


 ホブゴブリンは ゴブリンの上位種ではあるが、分類上はそれ程強くはない。程度で言えば、一段階上ではあるが、冒険者で例えるならば初心者から初級者になったぐらいの差でしかないのだ。けれど、生徒からすればそれは強者との差でもある。


 そんなホブゴブリンを易々と倒せる彼女(イルメラ)


(彼女の射撃能力は凄いわね。シャル様には劣るけれど、一般の生徒に比べれば一段上回っているわ)


 次々のゴブリンたちを相手にする二人。イルメラの言葉通り、ティアナの正面にこの集団を率いているゴブリンの長が現れた。その名も・・・。


「ゴブリンコマンダーか?まだ、若そうだけど苦戦しそうね」


 ゴブリンコマンダー。ゴブリンの上位種に当たり、集落(コロニー)を作ってまとめる事の出来る程厄介な相手。ホブゴブリン並みの大きさで、ゴブリンアーチャーやゴブリンメイジ、ゴブリンソルジャーと言ったゴブリンを指揮する上位個体。コマンダー自体も格闘術に秀でており、非常に厄介と言われる魔物だ。


「アカツキ流大剣術『砲鎚(ほうつい)』」


 周辺にいたゴブリンの頭上を飛び越え、真っ直ぐに大剣を振り下ろす。狙うはゴブリンコマンダーの眉間。集団で襲って来る魔物を討伐する際の基本は、集団の(ボス)を倒す事だ。(ボス)を倒されれば、自分たちには勝ち目がないと悟って逃げる。


「グギャギギッ!!」


 しかし、ティアナの技はゴブリンソルジャーによって阻まれる。


 イルメラも他の生徒を援護しながら、咄嗟に三本の矢を構えてゴブリンコマンダー目掛けて射るが、それをもゴブリンソルジャーが防いだ。そして、今度は此方の番と言わんばかりにゴブリンコマンダーがイルメラの方角に手を向けると、背後にいたゴブリンアーチャーやゴブリンメイジが一斉にイルメラのいる場所目掛けて攻撃してくる。


 不用意に顔を出せない状態になり、『誘導(リモート・)する(アロー)』で敵の迎撃を行う。


「こ、こっちにくるなー」


 十分な援護が出来なくなった事で、生徒たちが次々にゴブリンに追い詰められる。援護をしようにも此方も既に一杯一杯で、対処が出来ないと焦っていると。突如、突風がゴブリンたちのいる場所で発生する。


 イルメラは何が起こったのか分からない様だが、ティアナは何が起こったのか確認しなくても分かった。


 突風が巻き起こった中心に学生服に身を包んだ少年が、芸術品の様な湾曲した片刃の剣を低い姿勢から掲げていたのだ。


「悪い、遅くなった」


 凛とした声にイルメラや生徒だけでなく、ゴブリンたちも動きを止めており、ハッと慌てたように動き始める。だが、既に彼の周辺にいたゴブリンは、動くと同時に身体がバラバラに崩れ落ちる。


「ひッ!?」


 バラバラになったゴブリンの死骸に悲鳴を上げる生徒たち。しかし、そんな状況でも彼・・・魔族殺しの英雄と言われる少年、レオンハルトは涼し顔で次々に(ゴブリン)の首を斬り飛ばしていった。


「ティアッ!!コマンダーは任せるぞっ。イルメラさん、残りの矢はどの位です?」


 あっと言う間にこの状況を一気に覆し、更にそれぞれに指示を出したり、確認を取ったりして来る。自分は、他の人より経験があると思っていた・・・けど、彼の場数の前では私も彼らもほとんど変わらないと思い知らされる。


「矢筒が残り一つです」


 足元には既に二つの矢筒が転がっており、中に入っていた矢は全て撃ち終えて空っぽの状態だ。一つに大体二十本ぐらい入るので四十本近く使用した事になる。


 腰にぶら下げた矢筒から三本、矢を取り出すとゴブリンアーチャー目掛けて弓を引く。ゴブリンアーチャーは現在、突如現れたレオンハルトに対し、一斉攻撃をしていたので、イルメラの行動を監視していなかった。


 レオンハルトは、無数の矢が飛び交う中、その全てを斬り落とし後ろにいた生徒たちを守っている。


 狙うは、ゴブリンアーチャーの側頭部。動かない敵などただの的でしかなかった。次々に放つ矢は狙い通りの辺りに命中する。数が減った事で、レオンハルトも余裕が出来る。とは言ってもレオンハルト自身は常に余裕の状態ではあったが、他者が見れば余裕が出来たと錯覚できるほど攻撃の数が減る。


 最後の矢を撃ち終えると、何処からともなく矢筒が二個イルメラ目掛けて飛んできた。素早く受け取りゴブリンたちから死角になる木の裏へ移動する。


 受け取った矢を確認すると、かなり良い出来の矢が揃っており、使うのを躊躇ってしまったが、その反面使った時の感触を味わってみたいという衝動にも駆られるのだった。










(無事に受け取れたようだな・・・さて、此方も皆を避難させるか)


「ティア、周りの敵にも注意しろッ!!俺は皆を少し避難させる」


 そう言って、地面に座り込む者に声を掛け、地面に倒れている者を担いで、来た道を戻る。


 ティアナの実力であれば十分対処できるだろうし、イルメラの援護もある。彼女の実力は知らなかったが、此処での戦闘を見ても大丈夫だと思えるだけの技量があった。


 飛来する矢を刀で防ぎながら、誘導すると正面から別の気配を感じ取った。魔法で確認したところ講師の一人が事態を知り、救援に来てくれているらしい。


 ゴブリンの集団からある程度距離をとった所で、負傷した者の処置を行う。各々が持ってきた水薬(ポーション)を飲むか、患部にかけるだけだ。聖魔法である治癒魔法は、教会関係者位しか使えない。そもそも魔法との相性と言う事もあるが、治癒魔法の知識を公に広めない為らしい。


 皆が使えれば、教会や治療院に来る患者が少なくなってしまう。治療代は、彼らにとって貴重な収入源でもあるのだから。ただ、元治療院の出であったり、独学で学んだりする者もいる。レオンハルトやシャルロットの様な存在もいるため、例外が多いのもまた事実。


 一通りの治療を終えると、まだ戦える者はこの場の守りに就いてもらい。俺は、急ぎ二人の元に戻った。避難の時は護衛する者が居たから、急ぎ足ではあるがゆっくりした速度で、今は誰も居ない為、かなりの速さで移動する。


 レオンハルトがティアナたちと合流する事には、八割以上が倒されて、残りの二割を相手にしている所だった。


「大丈夫そうだな・・・さて、雑魚の相手の続きでもするかな?」


 近くに居たゴブリンを次々に瞬殺する。ティアナは、ゴブリンコマンダーをあと一歩の所まで追い詰めており、周囲にいたゴブリンソルジャーやホブゴブリンは既に屍と化していた。イルメラもゴブリンメイジやゴブリンアーチャーを殲滅し終え、ホブゴブリンやゴブリンの掃討をしている。


 レオンハルトが渡した矢筒に入っている矢が、想像以上に使いやすかったのか、命中率が段違いに上がっている様で、ほぼ一発で仕留めている。


「お・・・い。これは、お前たちが?」


 ゴブリンをすべて倒し終え、討伐の証明部位を剥ぎ取っている所に講師が救援に到着した。冒険科主任講師のエーヴァルト・バンベは、その惨状に息をのむ。この場を見て学生が対処できる域を超えていると考えたからだ。


 けれどこの場には、魔族と互角以上に渡り合え、勇者コウジ・シノモリやアレクシス騎士団長と同等の力を示す人物がいる事を思い出すと納得したのか、視線を此方に向け「良くやった」と褒めてくる。


 ただ、実際はティアナやイルメラが殆ど対処したのだから、その事実を知ってもらうため、訂正の説明をすると、驚き暫く一人で何か呟いていた。


 討伐部位以外も全て回収し終えると、避難させた学生たちの元に戻り、彼らと合流してから雑木林を出た。


 雑木林の入口で待っていた二人とも合流し、エーヴァルトに事情を説明すると、彼は学生たちを連れて学園に引き返した。


 後で、どうなったのか話を聞いたら、かなり怒られたようで、点数も減点が多すぎて殆ど一桁と言う点数になったそうだ。残っていた一人も注意と減点を受けたらしい。結果を知っているだけに、彼も被害者なのだろうが情報を隠そうとした事で減点の点数も大きくなった様だ。


 俺たちは、エーヴァルト講師や問題となった学生たちと別れ、再び学生の動向を観察しに動いた。流石に、それ以降おかしなことをする者は誰一人いなかった。


 冒険科の点数だが、評価として手伝う事になった学生たちが上位を独占したのだが、その中でも満点を出したのは三人で、ティアナとイルメラ、そしてレオンハルトだ。


 ティアナはゴブリンコマンダーの討伐が最も点数が高く、イルメラも多くのゴブリンを倒したことが評価された。レオンハルトは、状況を良く見て、避難させ治療を行ったと言う部分が評価されたのだった。


 その後の試験も無事に終わり。レオンハルトが苦戦していた貴族科の試験も如何にか合格する事が出来た。やはり一番苦労しただけに、受けた試験の中で一番点数が低かった。


 この場の誰よりも貴族としての地位を持っているのに、貴族科の点数がいまいちなのは頂けない。次同じ様な事があれば、もう少し余裕のある点数にしておかなければと考えた程だ。


 それで、どうなったかって?


 当然、全員無事に進級試験を突破し、この春から高等二年になるのであった。成績もトップ集団を独占する形となり、全員が(エス)クラスになったのだ。高等三年になるヨハンも(エス)クラスらしいが、クルトは(エー)クラスになったらしい。同様にエルフィーたちもエルフィーが(エス)クラスで、アニータが(エー)クラスと言う事。


 余談にはなるが、アシュテル孤児院の子供たちも学園希望者は、試験を突破しこの春初等部や中等部に入学予定。


 順調な、一年の始まりを感じつつ、それぞれの教室へ向かう。その途中三人の人物に遭遇した。


「お久しぶりですレオンハルト様。お会いできる日を楽しみにしておりました」


 満明の笑みを浮かべる美少女。此処にいるはずもない人物たちが居て、レオンハルトだけでなくシャルロットたちまで固まってしまう。


 幸先の良い一年かと思えば、波乱の一年の予感もしてならないレオンハルトであった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

また、誤字脱字のご報告もありがとうございます。

先週は、殆ど出張で執筆をする時間が出来ませんでした。スミマセン・・・。

取り敢えず、書ける時に書いておく様に頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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