117 その正体は・・・
おはよう。こんにちは。こんばんは。
本日はバレンタインデーですね。
土日は普段休みなのですが、今日は突然?というかこの日に仕事が入ってしまって、出張です(泣)
と言うわけで、そんなに文字数をかけませんでしたが、良ければ読んでやってください。
この洞窟での捜索を終え外へ出ようとするレオンハルトたち。何かの痕跡が残されていないか神経を研ぎ澄まして探していたのにも拘らず、洞窟内部の事にしか注意が向いていなかった一行。出口に近づくにつれ、ある事に気が付いた。
「・・・?地面が揺れている?」
微かに感じる揺れ、最初は小さな地震でも起こっているのかと思ったが、その振動は地震の揺れとは違う。まるで・・・・。
「戦闘?」
リリーの言葉で、急いで『周囲探索』を使用するが、何も感じられない。普通に考えれば問題がなかったようで安心できるのだが、今回は違い敵だけでなくシャルロットたち待機組も含めて外の気配を何一つ感じ取れないと言う事だ。それはつまり待機組に何かあったと言う事。
レオンハルトも一応、外の事を気にかけ人員を多めに残し、何かあればシャルロットが『念話』で知らせてくれる事になっていた。捜索する洞窟内部についてもそれ程深くはなく、事前に魔法で調べて獣や魔物は発見できなかった為、内部に入ってからは『周囲探索』を狭い範囲でしか使用してこなかった。それが、外の異常事態を発見するのが遅れる事になった。
けれど、ふと疑問に思う事もある。この場所は出入口よりまだ距離がある。にも関わらず、地面の揺れのみで戦闘による音は一切聞こえてこない。この揺れ具合ならば何かしらの音は聞こえてきてもおかしくはない。
現状『周囲探索』で情報が掴めない以上、『念話』で状況を確認する必要がある。
直に『念話』でシャルロットに声を掛けるが、彼女に声が届いた感じはしない。
これまでにない事態にレオンハルトは三人を捕まえると『短距離転移』で外に出る。
ッ!!
外に出た瞬間『周囲探索』を使用すると、先程何も感じなかった反応が今度はしっかり敵味方を感知する。
シャルロットとアニータは敵らしきものを牽制し、ヨハンは魔法防御に努めており、ティアナとエッダは負傷している様でエルフィーの治療を受けている。
前衛で敵と交戦をするユリアーヌとダーヴィトだが、今まさにダーヴィトが敵の攻撃をもろに直撃して体制を崩され、追撃を受けようとしていた。
咄嗟にリーゼロッテたちを離すと再度『短距離転移』でダーヴィトと敵との中間地点に飛び、身体を上手く回転させながら蹴りる。強烈な右足から繰り出す回し蹴りはタイミングを計ったかのように向かってきた敵にクリーンヒットさせた。
正体不明の敵はそのまま後方に吹き飛ばされ、森の奥に消える。
実際に逃げたわけでも消えたわけでもない。単純に森の奥に行った事で視界から見えなくなっただけである。
ん?
他の者と同じく手応えの無さに疑問を覚える。
「助かった」
ダーヴィトは、尻もちをついた姿勢から立ち上がり、足元に転がる盾を拾う。
「大丈夫か?それよりアレは何だ?」
初めて見る魔物らしき生物と今の攻撃の手応えの無い違和感。神の恩恵で得たこの世界の知識の情報にもあのような生き物は無かった。
「わからない。突然現れて襲ってきたんだ。最初は子供の様な姿をしていたが、今はあの有様だ」
子供・・・。
洞窟の中で見つけた足跡、一つは遺体となった人物のものでもう一つは子供の大きさの足跡だったが、その足跡の持ち主は洞窟内部では発見できなかった。
王都からそれほど離れていないとはいえ、街の外には獣や魔物が存在するし、当然この森の中も同様だ。子供の亡骸が見つけられなかった以上、生きて可能性もあるにはあるが幸運に恵まれない限りは無事ではない。
普通の子供であれば・・・・だけど。
子供の姿をした魔物の様な何か。レオンハルトの中で一つの仮説に行き当たる。これだけの情報があるのだ。他の者もその考えには直ぐに行き渡った事だろう。
『念話』でシャルロットに指示を飛ばす。仮説が正しければ、間違いなくいるはずだ。シャルロットには、戦闘に参加せず全力の『周囲探索』で特定のものを見つけてもらう。同じく捜索しているであろう冒険者や普通の冒険者、ゴブリンなどの魔物もすべて度外視して一点の情報を掴むだけの超範囲の探索をさせる。
突然のレオンハルトからの突飛押しもない指示に戸惑うが、彼を信頼しているが上に直に弓を降ろし、集中する。
「エッダとアニータ、ヨハンはシャルとエルの護衛。他はシャルたちを中心に円形状で警戒態勢を取れッ。俺は奴を狩る」
「レオン。悪いが俺もアレと戦うぞ」
「オレも参加するぜっ。洞窟でちまちましていたから、身体を動かしたくてな」
ユリアーヌとクルトは武器を手に此方へやってくる。
二人の顔を見て引き気はなさそうだと判断したレオンハルトはその言葉を聞き入れ、残りの者に警戒する様に指示を出す。
とは言っても二人抜けてしまったので、警戒態勢は円形と言いよりも東西南北と言う感じだ。ダーヴィトとティアナ、リリー、リーゼロッテの四人だけなのだから。
ゆらり・・・。レオンハルトによって吹き飛ばされたそれは、何事もなかったの様に現れる。
半人型の形態から半液体化になり伸びる様に襲い掛かってくる。
「せいッ!!」
ユリアーヌの横薙ぎで敵の一部を上下に分断。それに続く様にクルトが間合いに飛び込むと双剣で細切れに切り刻む。
半球体の身体の半分ぐらいが本体から斬り飛ばされる・・・・が、ものの数秒で斬り飛ばされた一部は本体である身体に吸収された。
「なんだ!?全然斬った感じがしない?」
「気をつけろ。俺たちが只管攻撃してきたが、決定打は一度も与えられていない」
死なない?ふとそんな予感が脳裏に過る。
魔法の結果を尋ねても同じで、シャルロットやユリアーヌたちが居たのにも関わらず、此処まで苦戦させられた理由は、絶対的な防御力があるわけでも、人害な攻撃力を備えているのでもなく、単純に倒せなかったから。
一方向からの攻撃だと意味がない事を学習したのか、三方向から身体を伸ばして攻撃してくる。ユリアーヌやクルトの前に入り込み三方向からの攻撃を全て細切れに斬り刻む。
神明紅焔流抜刀術『篝火』。居合の領域内に進入した敵を任意で斬り刻んでいく初伝の技の一つ。初伝と言っても極めれば無類の強さを発揮する。この技だけに限らず神明紅焔流の技は極めれば秘伝や奥義に並びたてる技ばかりだ。
この『篝火』も技術指南書では、最も極めた者が使用した際、瞬きの間に数百の斬撃を繰り出したと記されている。俺が稽古している時で師範クラスが十数回の斬撃を繰り出していたので、技術指南書に書かれていた人物は相当の強さを持っていたのだろう。
まあ、今は神明紅焔流に関わる過去の偉人たちよりも目の前の敵に集中しなければならない。
クルトの双剣の斬撃より数段早く斬撃の回数も多い。また、それだけに留まらず再生される前に本体へも攻撃を加えるべく間合いを詰め神明紅焔流剣術の技を二種類使用してさらに細かくする。
賽の目状にバラバラになる。
此処まで細かく斬ったからには、すぐに再生するなよ・・・・。
しかし、レオンハルトの願いは届かず、正体不明の敵は小さくなってしまった身体をかき集める様に集合させて元の形に戻る。
「させない」
完全に再生する前にクルトが連続で斬り付ける。それに続く様にユリアーヌも槍でそれを滅多刺しにする。
愛刀を一度鞘に戻し、深く呼吸をする。
(畳みかけるっ。神明紅焔流抜刀術奥義肆ノ型『迷企』―――ッ!!)
奥義を使用する体勢からいきなり何かが地面から生えてきて、その何かはレオンハルトの右足首を掴んだ。
「くっ!?伍ノ型『珊底羅』」
奥義の型を途中で変更し抜刀からの神速の連続斬りである抜刀術奥義肆ノ型『迷企羅』から下段や足元等、下方向への攻撃を得意とする抜刀術奥義伍ノ型『珊底羅』を使う。
中途半端な姿勢で技を放ってしまった為、『珊底羅』の威力は通常の五割減といったところだったが、地面に隠れ潜んでいたそれは物の見事に両断した。
こ、これは・・・。
間違えなく奴ら・・・・。魔族が絡んでいる事が証明された。レオンハルトの攻撃で両断されたのは、人族を改造して作った人造魔物スクリームと化していたそれの腕。斬られた事で何かしらの動きがあると思っていたが、如何やらこの一体だけの様だ。
「魔族が潜んでいるッ。全員警戒レベルを最大にしろッ!!シャルどうだ?」
「もう少し待って・・・・いたっ!!三時の方角、距離八千」
八千・・・と言う事は約八キロメートル先にそれらは居た。その距離になるとレオンハルトでも発見するのに相当集中しなければ見つけられない。幾ら魔法があるからと言って砂場で一粒の砂金を掘り当てるような物。
シャルロットが言い終えた直後に数体のスクリームが地面から湧き出てくる。そしてその中の一体は、額に謎の水晶が埋め込まれていた。
ッ!!
急に『周囲探索』が使えなくなったシャルロットは、レオンハルトに『念話』でその事を伝えようとするもこれも使用できない。
「レオンくん。索敵系の魔法が―――」
「ああ。こっちも同じだ。如何やらあれが原因みたいだ」
洞窟内で特定の魔法が使えなかったのは、あの額に水晶が埋め込まれているスクリームが洞窟内の地面か壁に潜んでいたからだろう。
洞窟を出て使用できたことを考えると、効果は絶大だがそれを及ぼす範囲がそれ程広くない事。けれど、もしアレが複数いて一定間隔で攻めて来られると、此方としてはかなりの苦戦を強いられるはずだ。そもそも効果時間や特定の魔法の使用を封じる魔法の種類の制限の有無等分からないことだらけである。
人型人工魔物スクリームを始め、嵌合体魔獣色々な魔物や猛獣を掛け合わせてと言うよりも合わないパズルを無理やり組み込んだ感じの魔獣、今回のスライムの様な身体を子供の形にしてスクリームや嵌合体魔獣の様な強さは無いにしてもそこそこの冒険者では苦戦を強いられるぐらいは強いソレ。最も厄介なのは前者の二種類に比べて倒し方が不明と来たものだ。
魔族は、こう言う化物を作る研究が盛んなのだろうかと疑いたくなる。実際には人工生物研究を魔族全体が進めようとしているのではなく。一部の者たちだけが前向きに研究しているだけ。ただ、一言加えるならば魔族側にも変化があったと言う事で、その研究を進める背景には一人の人物が深く関わっているのだが、今の彼らはそれを知る良しはない。
一度態勢を整えようとすると・・・。
「レオンはそのまま行って、こっちは私たちで何とかするから」
「皆は必ず俺が守って見せる。だから行くんだっ!!」
リーゼロッテとダーヴィトに言われ、足を止める。ユリアーヌとクルトの方を見ると其方も「任せろッ」と言って二人でスライムの様な謎の生物に攻撃をしていた。
「わかった。頼むぞッ!!」
俺は、身体強化魔法で肉体を強化し、シャルロットが示した方角に向かって飛んだ。『転移』を使用せずに風属性魔法『飛行』で向かったのには、敵の位置が凡そでしかないと言う事。実際に発見したのはシャルロットでレオンハルトは、シャルロットの言う方角を確認しようとしたら使用できなくなったから。
ある程度、離れてしまえば『周囲探索』が使用できるし、距離的にも『転移』を使っても『飛行』で移動してもそれ程時間は変わらない。地上を進まなかったのは、他にもスクリームがいるかもしれない上、魔物や獣を相手にする余裕が無いから。
(この辺なら・・・使用できるな。居た・・・目撃した数と一致する)
『周囲探索』で捉えた魔族は三体。何かの実験だろうか手元の紙に何か記載しているようだった。
そう言えば、昨日「第二段階モ成功シタヨウダ」とか報告にあったっけ。その後の言葉から察するに現在は第三段階の実験か別の実験をしていると言う事。
何の実験か知らないが、これ以上好き勝手にさせる事は出来ない。
魔法で此方が探知できたように、向こうも此方の存在に気が付いたようで、取り巻きの二体が臨戦態勢をとる。
数秒後、レオンハルトは魔族のいる場所にたどり着き、先制攻撃を仕掛けた。魔族は、エルフの様な姿をしているが、これまでであって来たエルフとは異なり、肌の色は褐色で髪は銀色をしている。耳はエルフと同じ形で人族より耳が長い。初老といった見た目の男性。魔族側のエルフ族でダークエルフと呼ばれる者たち。取り巻きらしき二体の魔族は鬼人族と恐れられる戦闘が物好きな魔族の一族。
額に一本または二本生やしており、皮膚は青っぽく、髪は紺色の短髪。研究の為の隠密を強いられているからか金属製の鎧ではなく革鎧を身に付けている。
レオンハルトの攻撃は、目つきの鋭い額の角が二本の鬼人によって防がれる。
「へえー面白そうなガキだな?」
「グムドー殿は、そこにいてください。いくぞ、ガドス」
「ああ?ゲドラこいつは俺様が仕留めるぜ?」
レオンハルトと魔族との戦闘が今始まった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字の報告もありがとうございます。
新作の進捗具合は、やっと一話分(約1万文字)が2種類と行った所です。
もっと書き溜めてから投稿しますので、しばしお待ちください。




