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114 王家の生誕祭②

おはよう。こんにちは。こんばんは。

今期のアニメは見たいものがってついつい執筆の手が止まってしまいます。

さて今回も、生誕祭の話となります。

 王家が主催する生誕祭パーティーが始まって彼此四半刻が経過する事に漸く伯爵位の当主たちが国王陛下や王族の方々へ挨拶する順が巡ってくる。特に決められている事ではないが、公爵家を筆頭に侯爵家、各大臣、辺境伯家、伯爵家、子爵家、男爵家と続くのが習わしで、例えば伯爵の地位にいて大臣を務める者は、大臣の方として挨拶をする様だ。侯爵家の者が大臣の地位だと侯爵家の順番に来る。何ともわかりやすくて誰が誰なのか覚えるのが大変な仕組みだ。


「おう。今度は其方たちか」


「はい、此度パーティーにご招待して頂き誠にありがとうございます」


 皆、同じ内容の事を口にしていたので、最初の挨拶は皆同じなのだろう。此処からは二言、三言陛下と雑談をして、退席するのが通例。ただ、話をするのは主に陛下とのみ。王族の方々と会話をするのは、その者と王族との関係具合によって違う様だ。


 俺は、シャルロットとリーゼロッテの三人だけで挨拶に来ている。ティアナたちは自身の実家の挨拶の時に同行していた。ユリアーヌたちは列には並ばないが、少し離れた位置で待機しており、その場で片膝をついて忠義を示すだけ。


 一介の冒険者でレオンハルトの仲間兼アヴァロン伯爵に使える家臣でもあるので、前に出て直々に挨拶をすると言う事は出来ない。


 リーゼロッテは、実家であるエーデルシュタイン伯爵家に同行しないのは、血縁者であっても当主の孫と言う地位と彼女自身がそう望んだからだ。急に上級貴族の令嬢だと言われても孤児院で育ったような物なので貴族としての自覚が中々ついて行かないのだ。


 エーデルシュタイン伯爵家の当主のテオ夫妻も孫娘の負担になりたくないと言う理由で、リーゼロッテの願いを聞き入れた。


「其方たちのパーティーも実に楽しませてもらった。それだけでなく、此方の急な願いを聞き入れてくれた事も感謝する」


「ありがたき幸せ」


 急な願いとは、料理の事。まだ、陛下たち王族は口にしていないが、他の貴族たちは食べており、その姿を見て皆幸せそうに食していた事から、頼んで良かったと思っているのだ。


「本当に君には驚かされてばかりだよ」


 陛下と俺との会話に入ってきたのはコンラーディン王太子殿下、彼とはアバルトリア帝国へ訪問した際に殿下の護衛として同行した経緯がある。


「ふふ。そうですわね。娘のレーアを救っても頂きましたし」


 王太子殿下に続いてアマーリエ王妃も話に加わってきた。


「驚かせるつもりはありませんでしたが、申し訳ありません」


「責めているわけではないのだよ。君は本当に素晴らしい働きをしてくれていると思って褒めているのだよ」


 褒めているのかと言う疑問は残るが、そのまま話を継続しようとすると王太子殿下の隣に座るレーア王女殿下が声を掛けてきた。


「レオンハルト様は本当に素晴らしい方ですわ。貴方様の様な人にお会いできた事、神様に感謝しなくてはなりませんね」


 神・・・。神ってヴァーリの事だろう?まあ、(ヴァーリ)の手違いでこの世界に来る事になってしまったのは事実だが、感謝はしたくないな。


 ただ、気持ちとは裏腹に流石に王家の前で(ヴァーリ)を侮辱する発言は出来ないので、笑って誤魔化す事にした。何か言えばそれはそれでボロが出そうだったので。


 陛下だけでなく王族の方々とも会話する事になり他の者より少々多めの挨拶の時間となった。流石にこれ以上は良くないだろうと区切りの良い所で、挨拶を終わらしてテーブルの方に戻る。


 因みに王族の方々が開いているパーティーは立食タイプで、好きな物を自分たちと同じようにコーナーを設置。そこへ自分で採りに行くスタイルの様だ。時々、執事や給仕係(メイド)たちが会場内を数種類の飲み物をグラスに入れお盆で持って歩きながら、使用済みのお皿を回収していた。


 その飲み物は、飲みたい物があったらお盆から自由にとって良いみたいだ。前世でこういう場面を海外映画のパーティーシーンで見たなと思いつつ。一つ拝借して飲んでみる。


「うわっ美味しい。何の飲み物だろう。お酒だと言う事はわかるけど・・・」


 見た目も風味も赤ワインみたいなのに、渋みが無くほんのりフルーティーな味のお酒。何の種類なのか尋ねてみると蜂蜜酒に数種類のベリー系を混ぜて寝かせるハニベリー酒と言う名前らしい。風味が似ていたのは、葡萄に似た果物も入っているからだ推測する。


 執事に教えてもらい、言われてみたらフルーティーさの中に仄かに酸味も感じられた。


 お酒は普段から飲まないレオンハルトだが、自分たちのパーティーを機に多少知っておかなければならないと言う事で、どのパーティーでも少しは飲むようにしていた。貴族の話の中の一つとしてお酒の事について話題になる事もあり、そうなると話について行けないのだ。


 未成年で飲酒は禁止されていた前世と異なり、この世界はそこまで厳しく言われる事が無い。成人になるのも二十歳から十五歳と五歳も差があるのだ。レオンハルトたちはもう少しで十三歳になる。そうなると成人まで後二年と間近でもあった。


 食事がある処を見ると一ヶ所だけ賑わう場所があった。ソフィアが担当している三種類の品だ。


 男性陣はカルパッチョやパイシチューに、女性陣はプリンにご執心の様で、一人で大丈夫かなと思ったら、王城の料理人が手助けに来ていた。年齢は、俺たちと変わらない位の女の子。他の者たちと料理服が違ったので聞いてみたら、王城の厨房に勤務する見習い料理人だそうだ。彼女以外にも複数人いると言う事が、後日ソフィア経由で知った。


「流石はレオンハルト君の所の料理人だね。あれだけのメニューがあるのに、あの場所に人が殺到しているようだよ」


「ああ。私も彼の料理を食べた時は、骨身に染み渡るかのようだったのを今でも思い出す」


 シュヴァイガート伯爵家の当主、ハイネスと我が国の国教で国内最高権力者でもあるエクスナー枢機卿が語り掛けてきた。


 二人に挨拶していると、如何やらエクスナー枢機卿の奥さん・・・エルフィーにとって祖母に当たる人物も来ているそうだが、今はソフィアの所にデザートを貰いに行っているらしい。ハイネスの奥さんもそれに同行し、エルフィーは少々困った表情を浮かべながら同行して行ったのだそうだ。


 三人が戻って来るまで雑談していると、見知った顔の人たちが次第に自分たちの所に橋を運んできた。


 少々困ったのは、最初の頃クイナ商会でワイングラスの販売をお願いされる様な事や妹や娘を嫁にどうか等といった事が多かったが、フォルマー公爵やラインフェルト侯爵が現れてからは、そう言った人が一気に来なくなった。


 流石に王都を管理する四大貴族たち現当主陣やエクスナー枢機卿、大臣も数名居る中に飛び込んで来ようと言う者は居ないだろう。


 そんな集団に割り込んでくる人物が四人。アウグスト国王陛下にアマーリエ王妃、コンラーディン王太子殿下、レーア王女殿下である。つまり、レオンハルトの周りにはアルデレール王国のトップや重鎮たちが勢揃いした状態なのだ。


「何やら楽しそうな話をしておるな?余にも聞かせてくれぬか?」


「へー興味深い話だね。僕にも聞かせておくれよ」


「お兄様がよろしいなら、私も知りたいですわ」


「ふふっ。皆はしたないですわよ?」


 陛下たちも加わり、ますます近づきにくい集団が出来上がってしまった。そう言えば、レーアと王妃の手には三種のプリンを載せたお盆を大事そうに持っていた。よく見ると王太子殿下もカルパッチョのお皿を持っていたし、陛下もパイシチューを片手にやって来ていた。


 普通の貴族ならば誰しもが羨む光景。フォルマー公爵家や他の貴族の令嬢が戻ってきた所で、陛下は少々小声で話し合始めた。


「この後、例の発表を行うのでな。皆、しっかり頼むぞ」


 またしてもレオンハルトの知らない所で、何かが進められていたらしい。


 陛下がそう言うと皆の顔が引き締まったように感じられた。そして、陛下たちは先程座っていた場所の移動し、声を張り上げる。


「皆、今日はよく来てくれた事。余は嬉しく思う。そして、一つ此処で皆に発表しようと思っていた事があってな。アヴァロン卿、前へ」


 陛下に言われて俺は急な事で立ち尽くしているとフォルマー公爵が後ろから優しく声を掛けてくれて軽く押してくれた。


「陛下の横の辺りまで移動したら良いよ」


 言われるがまま、陛下の横に移動すると、事情を知らない貴族たちは何事だろうと不思議そうに考え込む。


「皆も知っている通り、彼は一年前の王都襲撃の立役者。魔族殺しの英雄、レオンハルト・ユウ・フォン・アヴァロン伯爵だ」


 すると、歓迎してくれているかのように皆が拍手してくれる。


「彼は、以前にも余の娘レーアの命の恩人でもあって、それを機にこの度二人は婚約をする事になった。二人の門出に皆も祝福してくれ」


 先程よりも大きな大歓声が会場内に轟いた。何人かの貴族は目に見えて残念そうな表情を浮かべており、その者たちは今日このような場で縁談を持ち出してきた貴族たちばかりである。


「レーアは第一夫人ではなく、第二夫人として嫁ぐ。因みに第一夫人は、そこにおるシャルロット嬢だ。彼女の生い立ちは孤児ではあるが、彼女の数多の才能をもっていてな。恐らく神に愛され神子であろう。そんな彼女を差し置いて第一夫人になろうと言うのは難しいので、第二夫人の座に収まったと言うわけだ」


 そこまで言い終えると、半数以上の者が唖然として、残りの者は驚愕の表情を示していた。因みに神子とは、神に愛され子と言う意味で、普通の者たちよりも色んなことに秀でている者を指す言葉だ。


 ただ、人より少し秀でているぐらいでは神子とは呼ばれない。判断基準はないが、多少高いではなく、圧倒的に才能の保有とそれを扱いきれる能力を有している者を呼ぶのだ。


 そして、神子と言う存在を認めるのは王族のみである。


 これで、シャルロットは神子と言う圧倒的な地位を獲得した。貴族とは異なる地位なので、どちらかと言うとレオンハルトの魔族殺しの英雄と同じ様な王族に認められた二つ名みたいなもの。けれど、陛下が言ったように神子と認められた者は、ある意味王族と同等の存在に扱われる。よって、シャルロットが正妻の地位に来る事を誰も止める事が出来なくなった。


 更に集まってもらっている貴族たちに新たに畳みかけるが如く、フォルマー公爵家のティアナ、ラインフェルト侯爵家のリリー、シュヴァイガート伯爵家のエルフィー、エーデルシュタイン伯爵家のリーゼロッテもレオンハルトと婚約者になった事を発表したのだった。


 リーゼロッテに関しては、アンネローゼの娘と言う認知もしている。認知する事で、彼女は正式に貴族と言う立場を手に入れたのだ。これは、事前にアンネローゼと話し合いで決めていた事でもある。


 アンネローゼは、このパーティーには参加していない。


 いきなりレーア王女殿下とアヴァロン伯爵との婚約。神子と言う存在。六人もの婚約者の発表。王女殿下が第二夫人と言う地位。この状況を飲み込むのに少し時間を要するが、落ち着いてきた頃には四つの意見に分かれた。


「王女殿下や公爵令嬢が相手では、うちの娘だと勝負にならないな。妾なら、大丈夫か?」


 全体の約三割がこの様な思想を抱き・・・。


「美姫と呼ばれるレーア王女殿下に、神子として認められたシャルロット殿。巷では聖女と言われ始めているエルフィー嬢。他の三人も同様に・・・」


 英雄と呼ばれる事だけはあるなと感心する者たちが約二割。婚約について賛成する者たちが約四割で残りの一割が・・・。


「陛下、彼は元孤児の者ですぞッ!!お考え直しください」


 反対する者たちだ。彼らが反対する理由は、様々だが皆似た様な理由である。婚約者として名を挙げた美少女たちを自分の倅と結びつけたかった者や王族との繋がりを強固な物にしようと考えた者。あとは、そんな成り上がりの者を認めたくないなどの理由である。


 良い国であろうとこう言う私利私欲に動く者は、少なからず出てくる。こう言う者たちは大きな犯罪や横領の罪で裁いているが、減る様子は一向に見られない。


 その先導に立つのがマルプルク侯爵だ。学園で息子のサンドロが彼女たちを手籠にしようと考えていた下衆な奴の実父。


 裏であくどい事を色々してきていると噂もあるが、調べても何も出ない事や見つかっても軽犯罪程度のことばかり、彼はこう言う危険に関する事に非常に敏感な様で、調べが来る前に証拠を隠滅してしまったり、逃げ延びたりするのだ。


 サンドロと同じく、彼女たちの誰かを自分の子供と結び付けたかったのだろう。


 狙いは恐らく、レーア王女殿下かティアナのどちらか。二人は侯爵よりも地位が上という事で、婚約出来れば更なる実権を握れると考えていたのだろう。


 親が親なら子も子だな。


 そんな事を思っていると。


「彼の人となりを見せてもらってからの判断だ。それに、娘たちが望んでいる事でもあるので、是非祝福して欲しい」


 陛下の言葉で、九割近くの者が拍手で祝福してくれる。


「レオンハルトよ。余の期待を裏切らぬ様励むのだぞ」


 その後のパーティーは、生誕祭を祝いのもではなく、王女殿下たちの婚約を祝う形となった。正式な婚約パーティーは年明けに行うそうだ。これは、皆の前でもその時に話していたので、大事になりそうな予感がする。


 無事・・・。とは、言い難いがどうにか、王家主催の生誕祭パーティーを終え、今は仲間たちと最初に通された部屋に待機している。パーティー終盤の・・それこそ皆に色々聞かれた疲労が蓄積され今、高級な造りのソファーで安息をとっていた。


 この後、国王陛下から仲間たちと共に呼び出しを受けているので、皆で待機している。


「ご苦労様です。宜しければ此方を」


「ありがとうエル。ありがたく頂くよ」


 エルフィーから温かい飲み物を受け取り口にする。飲み物の正体は紅茶で使用しているのはハーブを使っているようだ。疲労軽減の効果があるらしく、香りだけでもリラックス効果が得られる紅茶。


「それにしても、まさか今日婚約発表をするとは思ってもみなかったな」


 未だに実感がわかないレオンハルト。以前よりその話は聞いていたし、シャルロットの剣を含めて条件を飲んだのだが、いざその時になるとやはり実感がわかなかったのだ。


「私は嬉しいです。漸くレオン様を婚約者として話す事が出来るのですから」


「私も同じ気持ちです。レオ様との本当の事を隠すのは、何処か後ろめたい気持ちでしたので」


 ティアナとリリーの発言にエルフィーも頬を染めて頷く。


「あーエルちゃん赤くなってるよ?」


 持ち前の明るさでその場の空気を和ませるリーゼロッテ。すると、ドアの向こうから話し声が聞こえ始めた。


 ノックの音が聞こえたので、ラウラに戸を開けてもらうと近衛騎士団の騎士が一人、部屋の中に入ってくる。


「国王陛下がお待ちです。どうぞこちらへお越しください」


 俺たちは、初対面の騎士に誘導されて陛下たちが待つ会議室へ足を進めたのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字の報告もありがとうございます。対応できていなくてすみません。

ボツボツ頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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