111 アヴァロン伯爵家の生誕祭パーティー②
メリークリスマス!!
本年も皆々さんの支えで100話を越えました。
来月はもう少し余裕をもって執筆できればと考えています。
「「「「かんぱーい」」」」
レオンハルトの屋敷で現在、生誕祭のパーティーが開かれている。
「これは美味しいー。これは何て言う飲み物だね?それにこのグラスも見事な細工だ」
透明度の高い不純物が一切混ざっていない硝子。更に、乾杯用のグラスは、チューリップ型のワイングラスを採用し、どのグラスも統一されたフォルムが更に硝子細工の技量の高さを物語っていた。
「これはひょっとして硝子かい?」
フォルマ―公爵が、乾杯用のワインを一口飲んだ後、ワインを見ながらワイングラスも確認して感想を口にする。
フォルマ―公爵やラインフェルト侯爵、シュヴァイガート伯爵たちの席は上座の位置にいる。なので、乾杯の挨拶をしたレオンハルトとの位置はかなり近い位置にいた。最も一番良い席のテーブルは誰も座っていない。
「硝子ですね。自分たちで用意したのでどこのお店にも売っていないものです」
硝子は貴重な代物で、普段は硝子に似た別の代用品を使ったり、鉄製などの貴金属を使ったりする。銀の食器などが割と一般的だろう。平民たちは木を削って作った食器類が基本多い。平民でも裕福な家庭は銀食器を持っていたりもする。
「この屋敷の内装と言い、この貴重な硝子の加工技術と言い、本当に君には驚かされてばかりだよ」
笑いながら言うフォルマ―公爵。普段から驚かされてばかりだが、生誕祭のパーティーでも驚かされてばかりで、内心では「またか・・・もう、驚かないぞ」と思っていた。
「そんなことはありません。今回乾杯用に用意したワインは、ナルキーソの北部にあるマウント山脈、その近くの村で作っていたものです」
レーア王女殿下を助け送り届けた村の近くにある別の村。そこは、葡萄の様な果物を生産しており、そこで採れる葡萄に手を加えてワインを作っていた。貴族たちが普段嗜むワインもこの葡萄に似た果物を加工したものになるが、この村で作るワインは、葡萄の他に柑橘系のもので香り付けとモースモの果汁を加えて作っているオリジナルのワインなのだ。数量が少ないので、あまり数が確保できないのだが、たまたま今回のパーティーで一杯ずつ振舞える程の量を確保できたのだ。
「これは、美味しい。うちも今度購入できるか話をしてみるかな」
フォルマ―公爵たちとの話を一段落終え、他のテーブル席を見ると、他でも同じようなことが起こっていた。
「このワインはどこで手に入れたのか?」「このワイングラスはどこで購入したのか?」「是非、当家にも売ってほしい」「なんだね・・・このサラダと一緒にある食べ物は?」「このポタージュスープは飲んだ事がない味がする。けど、なんと上品で優しい味なんだ」等々。
そんな声が彼方此方に聞こえてくる。
「皆様、本日はビュッフェスタイルを取っております。彼方からサラダ類、肉類、魚類、軽食類、飲み物にデザートとなっております。メインディッシュは後程、各テーブルにお届けいたしますので、ごゆるりとお楽しみください」
すると、「貴族を動かすとは何様かッ!!」とでも言われるかと内心ドキドキさせられていたのに誰一人不満を漏らさず、急ぎ足の様に素早く料理のある場所へ足を運んだ。
「アヴァロン卿ッ!!これは何という料理なのだっ!!」
お皿に大量に盛り付けた料理を、一番に手をつけた人物が大声で叫ぶ。
「タルナート卿、少しは落ち着いたらどうだ?」
「これはシュトルツ卿。見苦しい所をお見せ居ました。ですが、これを食べたら貴殿も同じことを口にしますぞ」
タルナート卿は、王城にて内務大臣を務めるヴァルター・ニクラス・フォン・タルナート子爵で、大臣もこのパーティーに参加している。大臣の中で唯一来られなかったのは、軍務大臣のアロイジウス・ギュンター・フォン・アスペルマイヤー侯爵だけだ。
欠席者は居ないと言うが、彼にも一応招待状を送っており、来られない事は聞いている。彼の所に勤める使用人か代理人は今の所まだ来ていない。レオンハルトはパーティーが開始されてから玄関口へ足を運んでいないので知らなかったが、丁度挨拶をしていた頃に使用人が来て小包を渡して帰って行った。
シュトルツ卿は、タルナート卿と同じく大臣の任に就いている人物で、内務大臣と違って外務大臣として他国とのやりとりを行っている。貴族としての地位は、レオンハルトと同じ伯爵位を承っている。
タルナート子爵に勧められるがまま、同じ物を口にするシュトルツ伯爵。
んッ!?
一口食べた後のその表情だけで、先程のタルナート子爵と同じ表情をした。先程、注意した手前自分も同じことをするわけにはいかないが、これが何なのかどうしても聞いてみたいため、此方に視線を向けた。
「アハハハ、ええっと、それはランドバードのむね肉のカラアゲです。其方のマヨネーズを少しつけるとまた違う味が楽しめますよ」
そう。二人が食べた料理は肉料理が並ぶ場所にあるカラアゲを持ってきていたのだ。それと肉料理の所で給仕をしていたリタと、ミリアム、ミアの三人が担当している。三人の誰が言ったのか分からないが、カラアゲだけを持って行こうとした二人にマヨネーズを勧めたのだろう。お皿の端にマヨネーズの入った小皿が一緒に置いてあったのだ。
「マヨネーズ?この白い物か?」
恐る恐る口にすると、先程の衝撃より数段激しい衝撃が全身を駆け巡る。二人の姿を見た周囲の者たちも興味を示し、各々で試す。
軽食の並ぶ場所には海隣都市ナルキーソで流行中のケバブも用意している。ナルキーソでの噂を知る者は、ケバブにも手を出していた。
「さすがレオンハルト君だね。料理でも驚かさる物ばかりなのに、このグラス・・・さっきの乾杯用とはまた一風違った造りをしているし、細工が細部まで作り込まれていて、更に美しい」
ラインフェルト侯爵が夫人と共に料理を盛りつけたお皿とワイングラスを片手にやって来た。お皿にはフライドポテトや緑色のトマトと黄色いトマトにモッツァレラチーズみたいなチーズを交互に置いたカプレーゼモドキ、バケットを斜めにスライスし、それを土台にちょっとしたポテトサラダやツナサラダ。調理したトマトなどを盛りつけたブルスケッタ等を取っていた。
飲み物は赤ワインでどの種類かまでは分からないが、十分堪能している様子だ。これまでに参加したパーティーと比べて格段に貴族たちの表情が明るかった。
肉料理の場所には、他にも焼き鳥やローストビーフ、ソーセージ、カラアゲ、チキンナゲットなどを用意している。魚料理には川魚のカルパッチョやフィッシュフライ、刺身を炙った炙り刺身。醤油があれば最高なのだが、残念ながらまだ入手どころか作るための諸々もない。急ごしらえで焼き塩を使う。
野菜は、基本的に色々な種類の野菜を生で食べるか、複数の食材を混ぜたアレンジサラダを作るぐらい。他にポテトサラダモドキなどだ。軽食は、主に一品料理を置いている。天ぷらやキッシュ、なんちゃってピッツァ、ケバブ、フライドポテトやポテトチップスなど。ポテトチップスはお菓子だろうと言われるだろうが、お菓子と言う考え方が無いこの世界では、食材がジャガイモに似たカトーフェルを薄くスライスして上げているので、一応料理扱いしておいた。
飲み物とデザートだが、飲み物は基本果汁ジュースか水、お酒だろう。お酒も定番中の定番エールや飲みやすさが売りの果汁入りのお酒、ワイン、シャンパンと言った物。デザートはケーキやプリン、果物の盛り合わせ、アップルパイみたいなものだ。
「ご主人様、お見えになられたそうです」
他家と話をしていると、丁度きりの良い所で声を掛けてくる。その言葉を聞いたレオンハルトは、会場内を後にして玄関口まで大急ぎで移動するのだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
また、訂正をしてる方々感謝の念だけです。
最後の投稿予定日は大晦日。時間は未定です。よろしくお願いします。




