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109 レオンハルトの考え

おはよう。こんにちは、こんばんは。

この一週間の冷え込みがかなり身体にこたえますね。

体調管理はしっかりと。

 今日はクイナ商会を開店して初めて閉店している。その為、レオンハルト一行に加えて、使用人や奴隷たち、従業員たちや孤児院代表としてアンネローゼが一同に集まっていた。


 これだけの人数が集まるとなると流石に圧巻とも言える人数で、如何にか屋敷で最も広い部屋の更に机を除外して簡易的な長椅子を設置して如何にか全員が座れる状態となっている。


「今日は皆朝から集まってもらってすまない。どうしても今後について皆と一度話し合う必要があると思いこう言う形で、場を設けさせてもらった」


 司会進行役として集まってもらった理由を説明する。今回の話し合わなければいけない議題は三つ。


 一つ目は、先日よりクイナ商会の集客数が大幅に増加し、毎日行列が出来る程のお店になっている事、これを何らかの対策を打たなければ大きなトラブルを起こしかねないし、現に素行の悪い冒険者が暴れそうになったり、重病人が倒れてしまうと言う事案が発生している。


 二つ目は、レカンテートの発展とそれに伴う対応だろう。現在は、レオンハルトがあそこの領主として就任する前の計画を進めているが、都市計画を現在ドワーフたち含め使用人や主だったメンバーで、大急ぎに立案中。建築が開始されていない場所や初期段階の場所は一時取り止めているし、半分以上建築が進んでいる所はそのまま建築を続けてもらっているこの世界の基準で取り敢えず町の増改築を進めていくと、規模が大きくなった時に必ず不具合が出てくる。それに、出来れば住みやすい街を作りたい・・・と言うか自分が住むならこう言う街が良いと言う私情がかなり盛り込まれた街を考えていた。けれど、レオンハルトやシャルロットが考える街は、前世の世界を参考にして作るため、今の世界の数倍先の技術や知識を用いていくつもりでいる。


 三つ目は、一つ目と二つ目に内容が被る部分で、クイナ商会の店舗を巨大化するにあたり、計画を進めていく中で従業員の確保として、孤児院を活用してはどうかと言う提案だ。


「レオン君、確認なのだけれど・・・子供たちは、希望すれば学園へ通えるようになっているのよね?」


「ええ。入学試験を受ける必要がありますが、そのあたりの費用は当家で負担しますよ」


「学業と仕事の両立があの子たちにできるのかしら?」


 昼過ぎから夕方に掛けて授業が終わり、そこからお店の手伝いをするとなると、予習や復習をする時間が殆ど確保できなくなる。それだけではなく、冒険者として考えている者は課外演習や冒険者としての活動も続けていかなくてはいけない。


 平民が王立学園に通うと言うのは、学園生活での資金をある程度自分たちで工面しなければいけない。それが冒険者ギルドでの依頼報酬だったり、孤児院の子供たちの様に何処かで働いてお小遣いだったりを稼ぐしかない。


 平民が学園に通わない理由は結局のところ資金面の問題で通えないと言う事だ。レオンハルトは孤児院の子供たちの学園に係る費用は面倒見るつもりでいる。


 ただし、これには条件も当然発生する。


 レオンハルトが費用を負担した子供たちが卒業時にレカンテートで職に就くか、王都のレオンハルトが所有する職場に勤めることになる。冒険者になりたい者は、レオンハルトが考えている訓練に参加することが条件だ。


 冒険者にだけ訓練に参加すれば免除と言うが、冒険者はランクが上がり高ランクの依頼を受けてくれるだけで、冒険者ギルドも潤い得られる。そして、冒険者ギルドも各街に拠点を設置している関係上、領地に収益の一部を収めなくてはいけない。完全に免除されるのは教会関係の建物だけなのだ。冒険者が活動し、素材を冒険者ギルドや商業ギルドへ売る。そこで得られた素材は、加工され武器や防具、便利な道具に薬、様々な物として販売される。販売されるとそれを求めて人が集まり、人が集まると冒険者関連の依頼の需要が増える。


 つまり、好循環のシステムが生まれると言うわけだ。


 アンネローゼの疑問も分からなくもない。けれど、これは普通に考えた時の意見だ。要は授業に参加し、遅れず優秀な成績を収められる勉強とお店の手伝いの両立を果たせれば位良いと言う事。


「出来る出来ないと言われれば、普通は難しいでしょう。ましてや従業員の一員として在籍してもらうなら余計に」


 誰もが静かにレオンハルトの言葉に耳を傾ける。


「難しい。けれど、それは今まで通りの考え方をした場合は、と言う事です」


 レオンハルトの考える部分は、両立をしようとするから無理が発生し、出来る者と出来ない者を線引きしてしまう。両立以外だと片方にのみ集中するこれは、根本的に裕福でなければ出来ない。となれば、一本化すればよい事だけの事。


 つまり、授業で教わるような内容を予習、復習を兼ねて仕事に盛り込むと言う発想だ。だが、普通そんな事をすれば、お店の方が経営出来ない。


 けれど、考えてみてほしい。この学園の授業はどういうスタイルなのか。この学園で学ぶ内容はどういう事があるのか、このクイナ商会が取り扱っている商品はどういう物なのか・・・と言う事を。


 要は、従業員として働きはするが、実習や研修の様なものとして捉えると言う事。薬学に関して専攻する者には、ローレやルナーリア、フェリシアたちが行う水薬(ポーション)作りや体力回復水薬(スタミナポーション)等の生成や生成前の薬草について学べる。


 商人を目指す者は、ディートヘルムたちについて、仕入れや算術を学ぶ事が出来るし、鍛冶師や大工、細工を目指すならドワーフのベルトとブラムたちから指導してもらえる。魔道具は今の所作れる人がいないので、レオンハルトかシャルロットが面倒を見る事になるが、魔法関係だったらアンネローゼがいるしフェリシアやシルフィアたちもいる。


 一般教養であれば、フィリベルトがいるし、使用人たちからも教えてもらえる。まあ、これに関しては労働中ではないが・・・。あと、同じ分類として冒険者であれば、ランたちと一緒に稽古やユリアーヌたちと依頼に出て、ノウハウを教えてもらえる。


 一般教養と冒険者は、従業員とは別の視点になるので置いとくとして、後は使用人や治癒士、料理人、縫製などは、これからそのジャンルを開拓するので、そうなればそう言う事を働きながら体験できるのだ。


 治癒士は、基本教会のみに伝わる知識故、教会所属の治癒士以外はいないとされているが、別に居ても構わない事は、事前にエクスナー枢機卿に確認している。エクスナー枢機卿曰く、治癒魔法や治療の知識を独占しているわけではないが、今まで教える機関がなく教会でも等しく教える事が出来ないからしてこなかっただけの様だ。


 そう考えると、エルフィーは修道女(シスター)見習いではあったが、あくまでも仮の立ち位置で、今は冒険者として共に活動している。


 ただエクスナー枢機卿より、治癒魔法が行える治癒士が、大量にいるとそれはそれで教会側の収入源を奪う事になるので、ある程度は抑えて欲しいそうだ。


 そのうち、うちから育った治癒士が教会に配属されるかもしれないが、まだ先の事なのでおいおいと考える事にする。


「クイナ商会のお店の事ですが、集客率ですが日に日に増えております。二店舗目を検討した方が良いと打診します」


 クリストハイトは、お店の売り上げが掲載された書類を持って話をする。彼は優秀だけあり、売り上げだけでなく来日の人数や大凡の年代、性別、購入の売れ行きリストも作っており、その報告を受ける。


「レオン様、王都は広いので複数のお店を出してもあまり支障はありませんよ?資金や従業員の事でしたら、お父様に相談いたしますが?」


 ティアナの言う事も一理ある。現に商業ギルドからも同じ事を言われている。資金の事は流石に自分でどうにかしなければならないが、従業員は集めてもらえる。その場合、面接をして選んで行くがこれがまた面倒。


 ティアナ以外にリリーやエルフィーも同じ様な発言をした。


「愛されているねー」


 茶化すアンネローゼ。貴方も四大貴族の御令嬢でしょうにと内心突っ込みながら、話を先に進める。こう言う事を真っ先にやりそうなクルトは、集客率のあたりから頭を抱えて考えていた。


 仲間や使用人、従業員に奴隷たち皆の意見を聞きながら話し合いは続く。


「此処まで決まった事をまとめると、王都に新しく店舗を開設。ただし、お店は今より大きくする。二つ目、レカンテートの都市開発にクイナ商会の本店を建てる。王都の新設するお店と今あるお店は支店扱いにする。三つ目、今あるお店は新しいのが出来たら、診療所として扱う」


 本店をレカンテートにする案は、フリードリヒとクリストハイト、ディートヘルムたちだ。王都に新たにお店の計画は、ほぼ満場一致で、診療所の事はシャルロットとエルフィー、アンネローゼの提案。薬局の様なものも併設しておくと良いかもしれない。新設のお店はドラッグストア感覚で、今のお店は専門店的な感じ・・・とは言え、従業員の知識不足が問題にはなるだろうが。


 あとは、レカンテートの孤児院だけでなく。王都の孤児院にも協力をしてみてはどうかと言う案が出る。これは、アンネローゼとリーゼロッテ、フリードリヒで進めてもらう事にした。


 また、子供たちを働かせる上で、職がつける様指導体制も整えていく事が決まる。


 レカンテートの都市開発案も大まかな図面を引いてもらっているので、今建てているものを生かしながら、新たな建築を進める。


 前世の知識があるのが自分とシャルロットの二人だけなので、指示が上手い具合に出せないのが難点ではあった。


「新しいお店の規模はどうする?場所とか押さえないといけないだろうし」


 一応、デパートの様なものが出来ないか考えているが、そんな物を直ぐに用意もできないし、色々段取りを踏まなくてはいけない。商業ギルドに相談して、場合によっては援助と考えなければだし、アウグスト陛下やエトヴィン宰相にも、相談する必要があるだろう。


 お店が大きくなればその分問題も山積みになる。


 取り敢えず、今提示できる案を幾つか出すだけ出しておく事にした。


「大きなお店の中に色々な専門店を独自に管理するか、今のお店をより大きくした感じにするか」


 大型百貨店と言うこの世界には異例の手法。前世もないので、イメージがつかない様だ。そこにシャルロットが、光属性魔法をアレンジして、立体的な大まかな設計図を出した。


 そんな設計図よく出てきたなと感心するが、前世に何度も一緒に行った事のある大型百貨店をそのまま使ったようだ。


「こ、こんな物が・・・本当に可能ですか?」


 皆が皆驚く中で、ドワーフたちやクリストハイトたちは、それを眺めながら何か呟いていた。恐らく各々でどう作るか、採算が取れるかなど考えていたのだろう。


 暫く他の人の質問に対処していたら、考え込んでいた者たちが、「これなら行けそうだ!!」と叫んだ。


「ご主人様、宜しいでしょうか?」


 奴隷たちが皆此方に視線を向ける中、代表してローレが尋ねてくる。一つは、奴隷である彼女たちの解放を考えているのかどうか、もう一つは奴隷の中でも幼い者たちの教養は可能なのかと言うことだ。


「ローレたち、最初の奴隷は解放しようと思っていたけど何かあるのか?」


 ローレ、ルナーリア、エリーゼやラウラたちの奴隷解放は、時を見て話すつもりだったレオンハルトは特に気にした様子もなく語る。


「出来れば、奴隷解放はおやめ下さい。確かに意図せず奴隷になったものも中にはおられますが、今は皆ご主人様の奴隷に誇りを持っています。それに今後も奴隷が増えていくのであれば尚のこと、そのままの方が宜しいかと」


 ローレの言い分は、新たに来るかもしれない奴隷、その奴隷の面倒を見るのも先輩奴隷の方が適しているそうだ。身近にお手本が居るといないでは大きく変わるし、この主人は奴隷を高い確率で解放してもらえると分かると、それを狙った性格の悪い奴隷も現れやすくなるとか。


 そこまで考えてきなかったレオンハルトは、ローレの言い分を受け入れる事にした。望まぬ奴隷は可哀想だが、望まね解放もまた、同じなのかもしれない。状況に合わせて行けばいいだろう。


 それと、教養についてはそのつもりで居るし、希望するものは例外なく何らかの技術を習得させてあげると伝えておいた。


 朝から始めた話し合いは、一度昼食の時間を設けた後に再び行われ、話し合いが終わったのは太陽が沈み、空が薄暗くなり始めた頃だった。


 長時間拘束してしまったのは申し訳なかったけど、かなり話し合いができた事で、方向性も決まり、それを遂行するためのある程度の計画も決まった。


「では、これで解散とする。皆今日はゆっくり休んでくれ」


 レオンハルトは、終わり挨拶を終えると執務室に移動する。今日話し合った内容を粗方まとめておきたかったのだ。


「旦那様、此方が届いておりますのでご確認下さい。おそらく、パーティーの招待状だと思われます」


 会議のまとめを四半刻程で終え、身体を伸ばしていると筆頭執事のフリードリヒが、十数枚の豪華な封筒を渡してくる。どの封筒も宛名は自分宛で、裏面には各貴族の蝋印が押されていた。


「パーティーの招待状?お茶会ではなくて?」


 偶に貴族からお茶会の招待に関する案内が届くが、十数枚が届く事はこれまでになかった経験だった。多くて二、三枚が何故こんなに届いたのだろうと不思議に思っていると。


「生誕祭が近いですからね。貴族の方々は、この時期から準備で忙しいのだと思いますよ」


 え?生誕祭って、貴族はパーティーを開く物なのか?疑問に思い尋ねてみる。


「下級貴族が当日に開く事はないですね。少なくとも生誕祭の十日ほど前に開く事が多いと思います。上級貴族は、生誕祭当日かその前後で開かれる事が多いです。まあ、当日は王家も開いたりするので、当日に開こうとする上級貴族は少ないはずですが・・・」


 想像以上の情報に頭が追いつかない。そんな事がある事を知らないから、これまでは一切参加したこともないし、開催したこともない。


 去年は何をしていたのか考えると、去年は貴族ではあったがどちらかと言うと冒険者としての活動が主体で、領地もなかったから海隣都市ナルキーソでレストランフェスを開いていたと思い出す。


 実は、去年他の貴族たちは、彼に招待状を送るか考え、調べると冒険者として王都に滞在していない事が多いとわかり、招待状を送らなかったのだ。いや、正確には送りたくても送れなかったと言うべきだろう。当時の彼らは、屋敷を所有しておらず、住所不定だったのだ。


 今年は、上級貴族の一角に加わっただけでなく領地も得て領主になっている。それに王都に王都に屋敷もあるので、去年招待出来なかった貴族たちや彼と言う存在とどうにか繋がりを持とうとする貴族がこぞって招待状を送ってきたのだ。


「フリードリヒ、ひょっとして・・・」


「はい、開催日が重なっていない様でしたら参加された方が宜しいかと、それに伯爵家としてパーティーを開催された方が宜しいかと思います」


 やっぱり・・・。


 項垂れるレオンハルト。生誕祭まではまだ日数もあるので、準備する時間はあるが先の会議の内容をまとめないと行けないし、実行できる内容に作り替えなくては行けない。それに加えて生誕祭のパーティーまでとなると、気が滅入る。


 皆、パーティーの招待状を出したと言う事は、呼ぶ貴族のリストアップも終えていると言う事。大急ぎでしなければとフリードリヒに声をかける。


「既に招待状を送るリストは作成済みです。内容も作っておりますので、後は最終確認と日時、会場を記載すれば完成します。リストと内容をご覧になりますか?」


 頷くと直ぐにリストと招待状を一枚持って来た。この仕事の早さに自分も見習わないと言う気持ちになるが、今回の事はそもそも知らなかったので、動きようもない。


 リストを確認するとフォルマー公爵家やラインフェルト侯爵家、シュヴァイガート伯爵家、エーデルシュタイン伯爵家の他にも有数の貴族家の名前が連なっていた。エクスナー枢機卿の名前も記載されている。後は、親しい間柄のヴァイデンライヒ子爵家やフロシャウアー男爵家もあるし、ヴァンフリート子爵家やアルベルト伯爵家なども記載がある。彼ら家や息子たちには、アヴァロン伯爵に勤めている使用人の面接の際に大変お世話になった面々だ。あと、クイナ商会として大手商会の会頭宛てにも送る様になっていた。


 貴族以外では、大手の商会の会頭や貴族とは違う権力を有する者を招待する場合もあり、レオンハルトは、商業ギルトや冒険者ギルドの代表も招待リストに名前があった。


 ただ、知らない貴族の名前もあって聞いてみると、ティアナやリリー、エルフィーの実家の関連の貴族家だと言う事が分かった。ヴェルナー伯爵家やクラルヴァイン伯爵家、アーベライン辺境伯家、アイレンベルク辺境伯家で、アーベライン辺境伯は王国南部を管轄するアルデレール王国に僅かに四人しかいないうちの一人で、レカンテートも元々は辺境伯様の指示の元ヴァイデンライヒ子爵が治めていたのだ。


 今回はれてヴァイデンライヒ子爵領から外れ新たにアヴァロン伯爵領となったが、結論から言うと、アーベライン辺境伯領の一部である事に変わりはなかった。


 同様にアイレンベルク辺境伯領は、王都の西部を管轄している大貴族の一角。直接の面識はないが、ユリアーヌたちが一時期拠点としていた商業都市オルキデオで領主と面会していたらしい。


 流石にマルプルク侯爵家の名前は記載されていなかった。彼を誘うのは、百害あって一利なしだろうから。名前が記載されて居たら、フリードリヒに削除するように言っていただろう。


「ベーレンドルフ男爵家にも招待状を出しておいて、あそこの息子とはクラスが一緒で何かと助けてもらったからさ」


「承知しました。他に追加された方が良い方はおられますか?」


 思い当たる人物は、概ねリストに載っていたので日程の打ち合わせをする。


 被らない様にしなくてはいけない。とは言うが、アルデレール王国には数多くの貴族があるので、全く被らないなんて事はスケジュール上出来ない。現に届いている招待状も同じ日時の物もあれば、日にちだけ同じで時間は午前と午後に分かれているものもある。


 此方としては、縁のある公爵家や侯爵家などと被らない様にする必要があり、届いている招待状から生誕祭の三日前に決まった。王城のパーティーが生誕祭当日で、フォルマー公爵のパーティーは前日の午後、ラインフェルト侯爵家のパーティーは生誕祭の翌日の午後、フォルマー公爵家と同じ日の午前中にエーデルシュタイン伯爵家のパーティーがあり、その前の日にシュヴァイガート伯爵家のパーティーが午後から開催予定となっていた。


「内務大臣のパーティーも参加できそうですので、よろしくお願いします。外務大臣は日程がフォルマー公爵家と重なっていますので、挨拶文をご用意しておきます。当日は私かクリストハイトに手紙を持って参ります」


 参加出来るか、出来ないかは当日の返答で良いそうだが、返事に余裕がある時は出欠席のお知らせを送るそうだ。出席の場合は、招待状に記された人数は入れる。大体は、家族一行と言う記載が一般的らしい。不参加の時は、事前にお知らせを送り、当日は使用人に参加出来ないかわりに手紙を届けさせるそうだ。後、参加できない謝罪として粗品・・・と言うのは可笑しいが、何か品を添えるのだとか。


 上級貴族の場合はその品を割と豪華にする必要があるそうで、フリードリヒ曰く貴族としての財力の一遍を見せる見えと言う事らしい。


 品で言えば、パーティー主催者も来られた来賓たちに帰り際にお土産を渡すらしく。これも物によっては喜ばれたり、ちょっと残念そうな表情を示すのだとか・・・貴族って本当に面倒だなとつくづく思う。


「軍務大臣も参加は難しそうですね。日程的には良いのですが、王都ではなく自分の領地で行うようです」


 王都でやるか、領地があれば領地で周辺の領主を呼んでパーティーをすると言う貴族もいる。子爵家が準男爵家や騎士爵家を呼んだりして、良い言い方だと親交を深める。悪い言い方だと派閥の強化とかになる。


「そうですねー。軍務大臣と同じ日に教会も何か出し物をするようです。エクスナー枢機卿から招待状ではなくお知らせが届いておりますね」


 そこには、王都の孤児たちや教会に勤める司祭や修道女(シスター)たちが普段と違って豪華な炊き出しをする。時々する貧しい者への無料の炊き出しではなく。低賃金で購入するスタンスのもの。


「おや?ヴァイデンライヒ子爵も領地でパーティーを開くようですね。此方の豪華な手紙は?」


 レオンハルトが蝋封を開けて流し読みで次々読む中、読み終えた手紙をフリードリヒが仕分けしながらスケジュール調整をしていたら、アルデレール王国の王城から招待状並みの繊細な色使いをした薄黄色の手紙。


「アバルトリア帝国の皇族からみたいですね」


 フリードリヒは直ぐに記載されている内容を確認する。これまでの招待状や手紙もそうだが、読む前に一回一回所有者のレオンハルトに読む許可を貰っている。


 そこには、生誕祭のパーティーの案内状と一通の手紙があった。内容は、招待状ではなく案内状の理由で、招待状は来てくださいと言う主張が強く。彼は他国の貴族でもあるからして来いとは命令できない。


 ただ、レオンハルトは王国としても帝国としても何方にも爵位の授与が行われているのだ。だから、帝国側も案内状と言う形で招待状もどきを送ったと記載されていた。他にも手紙には、ガバリアマルス王国の生き残りの王族のその後の様子についてやレオンハルトに攻撃を仕掛けてきた息子の謝罪もあった。如何やら彼は、その後皇帝などの主要メンバーで話し合いを行い。最終的により重い罰を受ける事となった。 


 帝国の生誕祭も王国と同じ日程なので、参加が難しく招待状ではないが、不参加の返答を出す事にする。使用人を帝都まで使いを出すわけにもいかないので、冒険者ギルド経由で届けてもらう事にする。


 その辺りの事務的な手続きは、執事たち使用人がしてくれるので報告を聞くだけにした。


 クイナ商会や学園生活に加えて、生誕祭の準備に追われるレオンハルト。


 まずは、会場を屋敷で行うとして、装飾をどうするのか、自分たちと来客用の食器しかないのでパーティー用の食器の用意、提供する食事や飲み物の手配等々。猫の手も借りたいぐらい忙しい毎日。


 パーティーについての客観的な意見をアンネローゼ、ティアナ、リリー、フリードリヒにしてもらい、飾りつけやテーブル、椅子などを購入する。テーブルクロスは貴族御用達のお店で購入し、ハンナの所でパーティー用のドレスを仕立ててもらう。ハンナのお店は、元々は染物で、両親が仕立て屋だったが、レオンハルトが援助し、シャルロットたちがアイディアを提供して商品を作った事で、今は商業都市プリモーロでも一、二を争う仕立て屋になった。布の制作から色染、衣類作成まで全ての工程をハンナのお店で行えるようになっている。


 俺はあまり派手な服は好まないのだが、全く飾り気が無かったら貴族としての品質を疑われると言う事で、上品且つ洗礼されたデザインをシャルロットに考えてもらい注文する事になった。俺には持ち合わせていないデザインの知識を(ヴァーリ)から恩恵を貰っているだけあった。全員分新調してもらうが、仕上がるのはかなりギリギリになりそうとの事。


 食器は、屋敷を改修した時に作った物を大量生産する事になり、レオンハルトの持つ魔力をフルに稼働させた。ドレスデンクリスタルやマイセンクリスタル、ウェッジウッド、バカラ等。


 そう言えば、ドワーフたちも来たことだし、工房を用意して硝子細工が出来るようにするのも良いかもしれない。


 食べ物は、一応案はあるが・・・出来れば、早めにパーティーを開く貴族の所で少し研究をしてから決める事となった。


「ご主人様、これ位の箱でよろしかったのですか?」


「ああ、ありがとう。そこにある物を入れて、贈り物が出来るようにしてくれるか?」


 現在は、来られた者にお土産として渡す物を準備している所だ。お土産の中身は、大量に作ったヴェネチアングラスのワイングラスのペアとスパークリングワインの五百ミリリットルを一本入れている。ペアグラスも色を朱色と群青色、黄色と翡翠色、薄い青白色と薄赤紫色の三種類。箱を開けてみないとどのペア色になっているか分からないが、数は均等になる様に用意している。


 予定基準よりも四倍近く魔法で作ったので、いざ不足したとしても対処可能だろう。


 スパークリングワインは、炭酸ガスを多く含んだ湧水を見つける事ができ、そこから炭酸の飲み物を試行錯誤中。コー〇とかファン〇とかが先に作れるかと思っていたが、これには多少時間がかかっており満足のいく物が完成していない。同時進行で進めていたスパークリングワインが最も良い出来だった。他にもそのままソーダ割りとしても使えるので、お酒のレパートリーが増えている。


 前世ではお酒は成人となる二十歳からと言う決まりがあり、レオンハルトの今の年齢では飲むことが許されない。しかし、この世界の成人の年齢は十五歳で、加えて未成年だからお酒を飲んではいけないと言う明確な決まりはない。ただ、お酒は嗜好品の一つなので、子供が頻繁に飲むのは難しい為、飲まない子供が多いのだ。


 レオンハルトとシャルロットは精神年齢で言えば十分、成年の域にいるが普段はあまり飲まない様にしている。今回の試飲で久しぶりにお酒を口にしたぐらいだ。


「こんなものかな?フリードリヒは居るか?」


「御用でしょうか?ご主人様」


「何か特別な用があった訳ではないのだが、明日の日程を聞いておこうと思って」


 明日から、下級貴族のパーティーが行われる。レオンハルトも明日以降は、関係を持ったことのある貴族の御屋敷のパーティーに招待されているので、その確認を行った。


「明日は、午前中にレクラム男爵家のパーティー、午後からヒルデブライト男爵家のパーティーに参加する事になっておりますね」


 レクラム男爵とヒルデブライト男爵、どちらもアーベライン辺境伯が管轄している王国南部の領地を任されている貴族だ。


 レカンテートの都市開発化が進めば、周辺の街との交流も必要になると言う事でフリードリヒが参加の返事をしていた。他にもヘルテン準男爵家やガームリヒ騎士爵家からも招待状が届いていたが、どちらも南部の貴族ではないと言う事で、まずは南部の貴族を優先させた。


「同行者は、シャルロット様とエルフィー様です」


 男性陣は行かないのかと質問されそうだが、男性陣はレオンハルトの代理として、他の南部の貴族の所に顔出しに行く事になっている。


「リーゼロッテは、ヨハンと一緒だったかな?」


「はい。ティアナ様とユリアーヌ様、リリー様とクルト様、リーゼロッテとヨハン様、エッダ様とダーヴィト様の組み合わせでございます」


 フリードリヒにお礼を言って下がらせる。


(出来るだけ、どう言う風に進行をするのか見ておかなければな・・・)

いつも読んで頂きありがとうございます。

残り、二週間をきりましたね。休みの日は大掃除に追われる毎日です(笑)

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