107 クイナ商会
おはよう。こんにちわ。こんばんわ。
12月に入ってしまいましたね。今年も残りわずかとなりました。
忙しい時期だとは思いますが、皆さん頑張っていきましょう。
学園に通い始めてから二週間余りが経過し、その間俺たちは大きな問題に直面し続ける事となった。
「あの、宜しければ今度屋敷にお越しいただけませんか?お父様が、レオンハルト様に是非お会いしたいとおっしゃっていましたので」
学園にやってくると朝の授業が始まる前の僅かな時間、昼食後の一時の時間、放課後の呼び出しと事ある毎に女子生徒から声をかけられている。
しかも、その殆どは両親への紹介・・・即ち、婚約の話をする為の誘いであった。女子生徒からの思いなのか、親から言われての誘いなのかまでは分からないが、どっちにしても国王陛下が気にかけられる新たな上級貴族として成り上がったアヴァロン伯爵家と繋がりを持ちたいと言う他家。
俺だけでなく。ヨハンやユリアーヌたちにも声がかかっているらしく申し訳なく思う。レオンハルトや彼らがそう言う状況である問う事は、シャルロットやリーゼロッテたちにもその手の話が転がり込むが、其方は事前に対策をしているし、極力一人での行動を避ける様にしている。
男衆がいない時は、ティアナやリリーが同行する事で、下級貴族の男子生徒や一般生徒は手を出さない。問題は上級貴族の男子生徒だが、先にも言ったが事前に対策・・・詰まる所牽制しているので手を出そうとはしない。
流石に王都を支える中心的な四大貴族に歯向かう者はいないのだろう。
まあ、空気を読まない・・・いや、読めない連中もいたが・・・。
「ええ。機会がありましたらシャルやリーゼたちとお伺いさせていただきますね」
「あ、出来れば・・・」
消えそうな程小さくなる女子生徒の言葉を遮る形で、「すみません。この後商会の仕事がありますので」とその場を退散する。
向こうから見えなくなる位置まで移動すると深く溜息を吐いた。此処の所、毎日誘われる日々が続く。一度に数人から誘われる事もあるので、正直戸惑っていると言う表現が正しいだろう。恋愛は別に苦手ではない。だが、既に付き合っている女性がいる上、公にはまだ発表されていないが婚約者も数人いる状態だ。近いうちに宰相あたりに相談に伺った方が良いかもしれないと考えていると、前方に不機嫌そうな表情を浮かべるレーア王女殿下や仲間たち。
例外なのはシャルロットやエッダ、アニータに男性陣たち。エッダはダーヴィトと恋人関係になっている事もあり、ティアナたちとは立ち位置が違う。シャルロットはレオンハルトと相思相愛なのと前世の記憶を有しているため、見た目と異なって精神年齢は大人と言う事でそれなりの対応が出来る。アニータは、レオンハルトの事を本当の兄の様に思っているから時に気にした様子は見られない。
「お待たせしました」
申し訳なさそうに話すレオンハルト。アヴァロン伯爵家の屋敷から数台の馬車で登校しているので先に帰ってもらっても一向にかまわなかったのに誰一人として先に帰る者は居なかった。レーア王女殿下に至っては、帰る先も違うのでそれこそ残る必要性は無いのだが、レオンハルトが女子生徒から告白される事が気になって毎回残っている。
状況だけ見れば、「告白の呼び出しで王族を待たせると言うのは、どう言う了見だッ!!」と王城に勤める頭の固い文官たちから文句を言われそうだが、迎えに来る近衛騎士たちが上手く報告をしてくれているのだろう。
「いえ、今の方で何人目ですか?」
リリーが少しだけ不機嫌そうな顔で訪ねてくる。
「今日は、七人ですかね?これから帰宅する際中に話を振られれば増えるでしょうが・・・」
そう、レオンハルトは今日一日だけで既に七人の女子生徒から先程の様なお誘いがあったのだ。放課後はあまり残らない様にしているので今の一人だけだが、殆どの者は昼休みに話しかけてくる事が多い。
「馬車に乗ってしまえば誰も声をかけてこないと思うよ?」
ヨハンの言葉で、急いで帰り支度をするティアナとレーア王女殿下。レオンハルトは苦笑気味に急ぐ者たちの後に続いた。
ヨハンの言葉通り、その日は声を掛けられる事もなく帰路についた。学園前の門でレーア王女殿下は少し寂しそうにされるが、最初の頃に比べればだいぶ良くなってきているが、これ以上は難しいだろう。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
出迎えるフリードリヒたちに、着替えが終わり次第商店の方へ向かう事を告げる。自分たちで立ち上げたクイナ商会。基本的には新しく購入した奴隷たちが居る。流石に奴隷だけしか居ないお店だと不味いと言う事で、使用人の一人が代理の店主を務めてくれている。
主体はクリストハイトにしているが、彼もレカンテートの開拓で忙しい立場なので、彼の知り合いの者を二人ほど新規で雇用している。ディートヘルムとゲレオンと言う。二人ともクリストハイトの実家である商会と繋がりのある商人の子供たちで、家督は長兄が継ぐ事になっているため、声をかけてもらえてとても喜んでいた。
この二人の役職は副店主としているが、労働に対する対価は皆とほぼ変わらない。多少上乗せはしているけれど。
そのクイナ商会のお店は開店と同時に大繁盛気味で、かなりの賑わいを見せていた。
商業ギルドからは店舗拡大の打診もされているが、其方に裂く時間は今のところ取れないので、検討するとだけ伝えている。
人気商品は、液体石鹸のシャンプーやリンスと言った物とローレや他の奴隷たちが作った薬関連だ。此方も従来の陳列販売型ではなく、症状などの話を聞いた上で適した薬を提供するため、かなり人気がある。勿論常備薬としての効果のある水薬は陳列しているが、生理などの鎮痛薬だったり熱さまし薬と言った物は、相談を聞くスタイルだ。
前世でイメージしやすい所のドラッグストアで薬剤師がいないと販売できない薬と薬剤師がいなくても購入が出来る薬みたいな感じだろうか。
ドワーフたちもお店の手伝いをしてばかりで、リフォームや水洗トイレなどの販売や取り付けにはまだ至っていない。
三日に一回ぐらいのペースでレオンハルトも商会の方に顔を出しているが、レオンハルトが顔を出す時は、お客の数が通常時の五割増しになる。
レオンハルトに熱烈のファンが・・・とかではなく。先程言った薬関連でローレたちが手に負えない症状の薬の調合だったり、場合によっては診察などもしているのだ。
そのうち、国から病院を作れと言われそうで怖い・・・。
「いらっしゃいませ!!ってご主人様ッ!?」
「ご主人様、ご苦労様です」
一番に挨拶をする奴隷のローレ。それに続く様にルナーリアたちも挨拶をしてくる。
「こっちは気にしなくても良いから接客を続けて」
そう言うと、お店にいた従業員や使用人、奴隷たちは各々の仕事を再開する。そのまま、奥の部屋へと移動するとクリストハイトとディートヘルムが打ち合わせをしていた。
すぐさま此方に気づくと、頭を下げて挨拶を行う。その表情を何処か困った様な感じが見受けられたので、何かあったのかと事情を聞くと、商品の売れ行きが予想以上にあり、売り切れまじかの商品が幾つもあるため困っていたのだとか。
中でも、人気商品の一角である液体シャンプーやリンス、コンディショナーと言った物が飛ぶ様に売れ早ければ明日にもお店から商品が無くなるそうだ。これらの商品は、今の所安定して作る事が出来るのはレオンハルトとシャルロットの二人のみ。品質が落ちるがローレたちが如何にか三割ぐらいの確率で出来上がる。残りの七割は調合に失敗して商品にならない物が出来る状態だ。
「まだ、在庫はあるけど・・・予想していたよりも売れている感じだね?」
それこそ三日ほど前にもお店に立ち寄って今みたいに打ち合わせにレオンハルトも参加していたが、その時には在庫の事は一切口にしていなかったのだ。
「すみません。旦那様。自分が在庫の数を把握しきれていなかったのが原因です」
深々と頭を下げるディートヘルム。続いてクリストハイトも深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。今回の事はディーだけではなく自分も確認不足でした」
「いや過ぎた事は仕方がないし、売れ残るよりは売り切れる方が断然良いよ。在庫を少し多めに置く様にしておくよ」
そして、此処数日と言うか・・・毎日の売り上げが少しずつ伸びてきているのは、俺たちの商品を実際に購入した人たちが、実施しその良さを他の人に伝わって、王都内に広まったそうだ。購入者は若い平民の女性や女性の冒険者が多いそうだが、偶に男性も買いに来るそうだ。やはり良い香りがすると相手に与える印象も良くなるから、購入する男性は恐らく女性関連の為に使うのだろう。
後、大口で言うと貴族の奥様に命じられた使用人や娼館の雑用係の様な人が頼まれて大量に購入している。
「あっ。それと、これ試作品だから常連さんに渡して使い心地を聞いてみてくれないかな?」
そう言いながら懐から数本の瓶に入った液体を取り出す置く。半透明な液体の物や薄い桃色の物、黄緑色の物等様々。
色付きの液体を取り瓶の蓋を開けると・・・。
「これはっ!?とても良い香りがしますね?お花でしょうか?」
「はい、花の香りを楽しめる液体石鹸です。これはローズで、そっちはラベンダーですね。その桃色の液体石鹸はモースモの甘い香りで、こっちの黄緑色はレイモンのスッキリ爽やかな香りが楽しめますよ。この半透明の液体は洗顔の後に付ける化粧水です。女性が主の商品ですかね」
モースモは、前世で言う所の桃の種類でお酒として楽しむ愛好家がいる程美味しい食べ物で、レイモンは、前世で言う所の檸檬に似た食べ物です。酸味もあるので、この実が分かれる食べ物だが、香りは脳をすっきりさせてくれる匂いを漂わせているのだ。
それと、化粧水。これはシャルロットがどうしても必要だと言う事で長い年月をかけて改良に改良を重ねた商品だ。シャルロットが納得のいく代物なので、サンプルでお客の反応を見なくても良いのだが、購入してくれるか分からないので、サンプルを与えて効果を実感してもらい購入に促す作戦だった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字の訂正厚く御礼申し上げます。
今月は予定よりもたくさん投稿しようと決めていたのですが、一番ての今回の文字数が圧倒的に少なくて申し訳ありません。次回は今回分も含め頑張って文字を増やせればと思いますので、応援よろしくお願いします。




