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103 編入試験

おはよう、こんにちは、こんばんは。nahatovallです。

早速、昨日とある話題の映画を見てきましたよ。すごく楽しかったです。

あと満月も綺麗でした。ハロウィンで満月は四十六年振りだとラジオで聞いたな・・・。

 アンネローゼや子供たちが王都に来て早二週間が経過。最初の頃は子供たちが王都に足を運んだ事で歓喜のあまりはしゃぎすぎて、それに振り回される大人たちや使用人がかなり疲れていたが、流石に一週間も経つとそれなりに落ち着いてきている。まだ、屋敷の敷地内に出る時は大はしゃぎをしているが・・・。


 そして、俺たちは揃って王立学園に足を運んでいる。


 数日前にエトヴィン宰相から編入試験の日程が決まったとの連絡があり訪れたと言うわけだ。


「君たちが編入試験の希望者だね?私は此処の学園長のダニエル・ブロムベルクだ。理事長は他に居るが理事長を除けば事実上の長となる。本来は編入試験の立ち合いは行わないのだが、国王陛下の推薦の者となると無碍にも出来ないからね。よろしく頼むよ」


 四十代半ばぐらいの白髪交じりの青みがかった髪にオールバックのヘアースタイル。武術に秀でていると言うよりも学問に秀でている感じの人だ。


「今日は実技試験と筆記試験の試験官を紹介しよう。そこにいる体格の良い試験官が、実技試験の武術の試験官を務めるホルスト・ウンケルで、隣の女性が魔法の試験官を務めるウラ・アドルフだ。反対側にいる眼鏡をかけた女性が筆記試験の試験官を務めるフリーダ・ブランクだ」


 紹介された試験官はその場で軽い会釈をするだけで、その後の編入試験の流れをフリーダが引き継ぎ、説明が始まった。


 最初は簡単な質問事項を記載し、その後筆記試験、実技試験と言う流れになるそうだ。質問事項には、魔法が使えるのかどうかとか、使える場合は魔法の種類などを記載するようになっている。武術も使う武器の種類だったり、編成時のポジションだったりで、後希望する学部も記述する場所があった。


 貴族科や冒険科、商科など大雑把な部分で、試験合格後に自分自身で受講科目の選択を行うとの事。あくまでも試験の目安で使う様だ。例えば、冒険科を希望した場合は、実技試験の点数が大きく作用するし、商科を選択した場合は筆記試験の点数が大きく作用する。


 筆記試験は各三科目あり、それぞれに半刻の時間が設定されている。問題は科目毎に四十五問あるそうだ。入学試験よりも編入試験の方が、内容が難しくなっていると言うのも説明された。陛下の推薦とは言え此処は他の者と同じ対応の様だ。


 実技試験は、その者の能力を見るものなので、勝敗は関係ないらしいが、勝てる方が点数は高くなるとの事。まあ、普通は勝てないそうで、試験官の実力は冒険者ランクでいう所の(ビー)ランク相当に匹敵するし、他の教員も平均で(シー)ランクはあるそうだ。


 筆記試験の試験官は一足先に試験場所に向かい。実技試験の試験官二人が質問事項の用紙を回収して、試験場所に誘導してくれた。


 二人の試験官は会場に着くとそのまま別の場所へ移動し、俺たちは案内された場所に入る。


「外観からも思ったが、すごくしっかりした造りで、内装にも拘っているのが分かるな」


 そう、この学園は王城の次に大きな建物として王都に君臨する。白塗りの壁は清潔さを感じさせられるし、屋根も青色の光沢のない金属板が華やかさを出している。全部で五階建ての建物で、各階に青色の枠のアーチ窓が設置している。南国風リゾートを印象付ける様なデザインだった。本舎と呼ばれる建物の他に幾つもの建物もあり、建物の規模だけでなく敷地面積でもかなりの広さを有していた。


 アルデレール王国にある学校は、この王立学園しかないので、国内に在住する者で学園希望者は此処に来るしかない様だ。遠方から来る者の為に学生寮もあるそうだ。


 学生寮を利用するのは、王都に屋敷が無い下級貴族で財政に余裕が無い子息女や同じく王都に家が無い平民たちが利用している。王都に屋敷や家がある者は家から通うが、王都に家があっても学園まで距離が離れている生徒は、学生寮を使用している。貴族たちは馬車で通学したり、近くに小さい家を作ったりする者も居る。ほとんどが、卒業して空き家になった家を購入する場合が多いそうだが。


 取り敢えず、指定された席に座り筆記試験の注意事項の説明が開始された。先程も伝えたが試験は一科目半刻あり、それが全部で三科目ある。科目毎の試験の間には十分間の休憩時間があるそうで、試験は終わった者から退出してよいそうだ。だが、再度入るにはその科目の試験が終わってからになるそうで、それまでは隣の別室にて待機するようになる。


 当然、他の者の回答用紙を覗き見たり、不正行為が行われた場合は失格となる上、魔法による不正も出来ない様に特殊な魔道具が用意されている。魔道具名は、魔法無効化の砂時計で、一定範囲内の魔法の発動を無効化にする効果がある。別名、魔法無効化領域(マジックキャンセラーフィールド)同じ王都にある武術大会で使用されるコロッセオの古代聖遺物(アーティファクト)を元に作られた魔道具だ。正し、効果時間は砂時計が落ちるまでのようで、再使用には大量の魔力を注ぎ込む必要があり、魔法無効時間は最大で約三刻との事で六時間は無効にできる代物。


 厳重な監視下の中で筆記試験が開始される。


(さて、最初の科目は・・・計算か、って事は数学か?あれ?思っていたより簡単な問題ばかりだな?)


 レオンハルトは、問題を読み解きながら即座に頭の中で計算して答えを記入する。前世で高校生まで通っていたのであれば誰でも解ける様な問題ばかりだった。


 基本的には四則演算で事足りる問題ばかり。


 数字と記号の問題ではなく、文章で記述しているので、読み解いていく必要はあるが、それでも一つの問題に凡そ二十秒もかからない程度の問題。


 例で例えるならば、乗り合い馬車に定員が十人。最初の停留所で五人乗り、その後一人下車して三人乗車。次に五人下車するとそのまま走り出して、次の停留所で四人乗り込んだ。今馬車に乗っている利用者人数は何人か?と言う感じの足し算や引き算を連続して計算する問題や商人向けの利益の計算として掛け算や割り算と言う問題も出ているが、その程度の事。


 後は、最終問題当たりの五問は少し難易度が高く。一桁や二桁計算ばかりだったのに対して急に四桁の計算が出てきた。まあ、この程度は前世で使用していた計算式を書いてすぐに答えを導き出した。


 十五分程度で全てを記載し終えたレオンハルトとシャルロット。


 試験が終わった事を伝えて会場を出る。その後十分ぐらい経過してティアナ、リリー、エルフィー、ヨハンが終わり、それから五分後ぐらいにユリアーヌとリーゼロッテ、エッダが退出した。最後の面々であるクルト、アニータ、ダーヴィトもそのすぐ後ぐらいに終わり全員が退出した。所定時間の半分程で全員が退出した事になる。


「全く早く終われば良いってものではないのだけれど・・・え?」


 筆記試験の試験官フリーダは、ふとレオンハルトの答案を見ると、分かる限りでは全て正解していた。慌てて他の者の答案も確認すると、レオンハルト以外にシャルロットが満点。エルフィーとヨハンが二問間違えており、ティアナとエッダが三問、リリーとリーゼロッテ、ユリアーヌが四問、アニータが六問、クルトとダーヴィトが七問間違えているだけだった。


 一番点数が悪い者でも四十五問中三十八問正解している。正解率八割強と言う驚愕の数字をたたき出していた。


 余りの高得点に開いた口が塞がらないフリーダ。続いて行われた歴史の筆記試験、地理の筆記試験においても八割から九割近い合格点を全員がたたき出しており。全ての科目で満点をたたき出したのはレオンハルトとシャルロットの二人のみ。次点でヨハン、ティアナ、エルフィー、リリー、ユリアーヌ、リーゼロッテ、エッダ、ダーヴィト、アニータと続き最後はクルトだった。


 アニータの順位が下なのは年齢的な事もあるが、クルトが最下位なのはあまり勉強が好きではないから、勉強させても覚えていなかったのだろう。それでも、普通の学生に比べれば遥かに高いのも事実だった。


 最後の筆記試験を終えた後、フリーダは慌てて学園長のダニエルの元に駆け込んだ。


「学園長ッ!!すみませんが、この試験の結果をご覧になってくださいッ!!」


 ノックもせずに入った事に余程の事があったのだと渡された回答用紙を確認する。そこには、高得点ばかりの回答用紙で、編入に来た者たちが高い水準の知識を有しているのが分かった。


「この問題ですが、皆さん四半刻以内に全員試験を終わらせてしまいました。それと此方のお二人に関しては、別格だと才能をお持ちです。このお二人、全科目満点の上、各試験全てを四半刻の更に半分の時間で終わらせていましたッ!!」


 満点を取得する天才と呼ばれる逸材は過去にも存在した。だが、二人同時にそれもこの短時間と言うのは、かなり珍しい状況だった。


「陛下が推薦する元孤児と言う事だったが・・・余もや、これ程の逸材だったか」


 ダニエルは、深刻な表情で考え始める。そして、これから彼らの実技試験が始まる事を思い出し、急いで学園長室を出た。


 向かう先は、レオンハルトたちが実技試験を行う会場。筆記試験の時は空き教室を使用したが、実技試験は学園内にある訓練場の一つを貸し切って行われる。当然、編入試験の日は、学生たちは試験会場に立ち入ることを禁じられている為、居るのは試験を受けに来た者と試験官たちだけである。


 その試験官はと言うと、現在レオンハルトと一戦交えていた。


「ぐっ・・・何だ、この力はッ!!」


実技試験の武術を担当する試験官ホルスト・ウンケルは刃が潰された両手剣を盾代わりにレオンハルトの高速斬撃を凌いでいる。防戦一方と言った方が正しいかもしれないが、誰が見ても圧倒的に押されているのは試験官の方であった。


 レオンハルトは、身体強化の魔法を使っているわけでもなく。単純な自分自身の力量で戦っている。だから、彼にとってみればこの程度の戦闘は仲間たちと行う乱捕りとさほど変わらない感覚だった。


 流石に押されてばかりでは試験の意味が無く、彼の力量を見る事が出来ない。仕方なくホルストは、両手剣を破棄し、腰に身に付けていた二本の短剣を抜いて応戦する。一撃の重さを持つ反面機動力がない両手剣よりも、一撃の威力は落ちるが、斬撃の速さと手数を長所とする短剣。


 二本の短剣で一本のレオンハルトの武器を凌駕しようと考えたのだが、その考えは甘かった。二本の短剣の攻撃を全て受け流した上で反撃の斬撃を繰り出す。


 ッ!!


 二本で役不足だった事を思いするが、試験官としての意地が無意識に体術まで使って相手を倒そうと動いてしまった。


(まずいっ!!)


 焦るホルスト。レオンハルトの頭部左側面を襲う様に放たれた回し蹴り。大人たち誰もが当たると思った瞬間、レオンハルトの身体が一瞬ぼやけ、ホルストの蹴りは空を切った。


 倒れ込む様に放った一撃が、空振りに終わりホルストはそのまま地面に倒れる。そして、一瞬呆けてしまった隙をレオンハルトが刀で試験官の首筋に当てて、にっこり笑う。


「一本ですね?」


 実力を見る所が、全く実力が分からなかったのだ。此処まで完敗だと試験官も悔しがる気持ちすら沸かなかった。


「ああ、実技試験は此処までとする」


 勝敗は然程関係ないが、やはりこの結果は最高点を上げても良いレベルと判断した。


「文句なしの合格だ。レオンハルトの実技試験の成績はAだ。それ以上の成績を上げたいぐらいだったぞ」


 実際はA、B、C、Dの四段階評価。なので、最高得点はAしかないのだが、ホルストとしてはSの評価を上げたくなる程だったと言うわけ。


 その後、接近戦としてティアナ、リリー、リーゼロッテ、エッダ、ダーヴィト、ユリアーヌ、クルト、ヨハン、エルフィーが実技試験を行い、遠距離戦としてシャルロットとアニータが試験を行った。接近戦は試験官との一対一(サシ)の勝負で、遠距離戦は目標物を如何に早く正確に撃ち落とすかを競う試験らしい。


 簡単に言ってしまえば射的ゲームみたいな物で、的が出てきた所を撃つと言うだけ。動いたりしないし、きちんと狙いをつければ誰でも当てる事が出来る。


 基準は的の真ん中に如何に早く命中させたかと言うのと、動かない代わりに角度があり狙いにくい場所もある。


「なんだッ!?この成績は・・・!?」


 ホルストだけではなく。その場に居合わせた教員皆が驚き呟く。


 ユリアーヌは勝てはしなかったが引き分けの結果に終わり、リーゼロッテ、ティアナ、リリー、ダーヴィト、クルトは最後の最後に降参して負けた。因みにホルストは全力に近い戦闘を行っているため、皆ホルストに負けない実力は備えていると言う結果が分かった。


 ヨハンは元々魔法使いなので武術は基礎的な事が出来る程度、エルフィーも回復が主なので護身程度しかできず、健闘するもあっさり攻撃を受け流されていた。二人が使用したのはスタッフと言う魔法使いが良く使用する杖だ。その杖を棒術としても使えるので、それで戦ったのだ。


 シャルロットとアニータは、レオンハルトに次ぐ驚きを見せた。シャルロットは、驚異的な弓術の腕を披露し、的のど真ん中を全て命中させ、その射抜く速さも一流の者たちを遜色なく。アニータは使用する魔導銃の珍しさから驚きが凄かった。


 流石に実弾を披露できないので、魔法を撃ち出す銃だと説明して魔道具魔法無効化の砂時計の魔法無効化領域(マジックキャンセラーフィールド)を解除してもらった。


 魔導銃の魔法以外の魔法を使用しない様に魔法の試験官ウラ・アドルフに厳重にチェックする事になった。


 アニータはシャルロットの様に全弾命中と言うわけにはいかなかったが、五割強がど真ん中の命中で二割強が的に当たった。命中は、シャルロットに劣ったが、速さだけ見れば同等の連射と言える。


 武術の実技に関しての成績は、エルフィーとヨハンはCと評価され、アニータはB、残りの者たちはAと言う結果に終わる。


 これだけで、十分編入試験を突破できる成績を収めているが、武術の実技の後には魔法の実技試験がある。魔法の実技試験は魔法が使える者が限定されるため、ユリアーヌ、クルト、エッダ、ダーヴィト、アニータは不参加。試験を受けるのは、レオンハルトにシャルロット、リーゼロッテ、ティアナ、リリー、エルフィー、ヨハンの七人である。


「そ、それでは、始めにティアナ様お願いします」


 ウラ・アドルフは、近くに居た者から順に魔法を披露してもらう事にした。ティアナの得意な魔法は上位の雷属性魔法である。他にも光属性や風属性、僅か火属性も使えるが最も使うのはやはり雷属性だ。


 無詠唱で魔法を完成させると、両手から迸る雷が彼女(ティアナ)の意思で放たれる。雷属性魔法『(サンダー)(ランス)』の上位魔法『稲妻槍(ライトニングランス)』の発動で的に向かって、轟音とまばゆい閃光を迸りながら飛んでいった。


 的に当たる瞬間周囲を電撃が襲う。無詠唱で見せるにはかなり高度な魔法である。以前、魔族が王都を襲撃した時に援軍で来た王国騎士団の精鋭たちが使用していた魔法『(サンダー)(ランス)』の威力を凌駕する。まあ上位なのだから当然とも言える


 続く様にリリーが次に的に向かって魔法を放った。彼女(リリー)の得意魔法は、氷属性魔法で、他に水属性、風属性、闇魔法が使用できる。ティアナが魔法で作る(ランス)系に刺激を受け、氷属性魔法『(アイス)(ランス)』の上位『氷結槍(コールドランス)』を使用した。此方も着弾後に周囲に氷の結晶が出来、相手を氷漬けにしてしまう魔法だ。


「・・・・・」


 二人連続で上位魔法を無詠唱で放つと魔法の試験官であるウラは、無意識に自分の頬をつねって現実かどうかを確かめた。


 他の者たちも同様の反応を示す。


「これって(ランス)系の魔法を使うの?」


 リーゼロッテは、前の二人に習って炎の槍を作り出した。火属性魔法『(ファイヤー)(ランス)』の上位『火炎槍(フレイムランス)』。効果は前の二つと同じく着弾後に業火が相手を焼き尽くす魔法である。


 三つあった的は、ものの見事に破壊されていた。燃えカスになったり、粉々に砕けたり、氷漬けになったりと・・・。


「リーゼちゃん?別に(ランス)系でなくても良いのよ?」


 シャルロットに言われて、「そうだったんだー」と軽いノリで返事をするリーゼロッテ。彼女にとってもこの程度の試験は、退屈なのかもしれない。まあ、彼女の場合は魔法よりも身体を動かす方が好きの様だし。因みにリーゼロッテの得意魔法は火属性魔法で、他にも土属性や風属性が使える。光属性も初級レベルなら使えるが、中級以上は現在特訓中。


「いや、面白いかもしれないよ?」


 試験官たちが新しい的を用意している間にヨハンが何か思いついたようで話しかけてきた。


「面白いとは?」


「いや、僕たちって魔法属性の種類が豊富でしょ?だから、総合的に見ても優ってならないかな?今の成績でも十分編入試験は合格していると思うし・・・」


 ヨハンは、編入試験の合格はほぼ間違いない状態で、後は形式だけの試験に近いと考えた。実際にレオンハルトたちも同じ考えを持っている。で、此処で一つ合格が確定している状況で試験を受けるのであれば、此方の優位性を見せておくのも手ではないのかと提案してきたのだ。確かに成績優秀者にはある程度の免除はあるかもしれない。俺たちは冒険者としても活動をしているので、緊急時には呼び出される事もあるだろう。そう言う時にある程度の権力があれば、助かるかもしれない。


「なる程ね。わかった、それで行こう」


 エルフィーは、聖魔法が得意でそれ以外も光属性魔法や水属性魔法も使えるが、今回は聖魔法の(ランス)系を使う事にした。聖魔法は主に治癒や補助が主体だが、アンデット系の魔物やレイス系の魔物には聖魔法の攻撃が、効果があるので一応攻撃魔法も存在する。


 余談だが、アンデット系は聖魔法が最も効果的だがレイス系は効果が高い。レイス系に最も効果があるのは光属性魔法で、アンデット系に光属性魔法は効果が高いと言われている。また他にも火属性魔法も同様にアンデット系には効果が高いが、此方はアンデットから漂う異臭が更に強くなるので近距離からの使用は好ましくない。


 エルフィーは聖魔法『(ホーリー)(ランス)』の上位魔法『神聖槍(セイクリッドランス)』を使い、ヨハンは水属性魔法『(ウォーター)(ランス)』の上位魔法『水晶槍(クリスタルクリアランス)』を使う。シャルロットは風属性魔法『(ウィンド)(ランス)』の上位魔法『爆風槍(ブラストランス)』を使用、レオンハルトは敢えて土属性魔法『(ストーン)(ランス)』の上位魔法『岩石槍(ロックランス)』を使用した。


 雷属性、氷属性、火属性、水属性に風属性、土属性、聖魔法と七種の魔法を見せる事が出来た・・・いや、言葉が違うな。見せてしまったと言う方が正しいだろう。


 高威力の魔法に加え、無詠唱による魔法の発動。発動から打ち出すまでの速さ。どれをとっても並みの魔法使いでは出来ない芸当。


「魔族殺しの英雄にその仲間たちか・・・底が分からない連中だ」


「魔族殺しの英雄って(ビー)ランク冒険者でしょ?あの高い実力も頷けるわね・・・」


「陛下が彼らを推薦していた本当の理由が分かったわい。勇者コウジ・シノモリ様に騎士団長率いる王国騎士団その二つに続く第三勢力として考えておるのかもしれんな?」


 学園長の考えに周囲に見学に来ていた教員たちは驚愕の表情を示す。勇者や騎士団長クラスの勢力を学園に預けると言う事になるのだから、詰まる所その者たちの教育をしなければならず、場合によっては自分たちの立場も危うくなるかもしれないのだ。


 けれど、全ての試験に対してこれまでに無い様な好成績を残しているので、不合格にする事も出来ないのも事実。学園長は止む無く彼らの編入を許可する事を決めた。


「皆ご苦労であった。文句なしの成績故、この場で合格を言い渡す」


 落ちるつもりはサラサラなかったレオンハルトたちだが、合格が決まると言うのは嬉しい物だった様で、皆一同に喜んでいた。


「・・・ところで、皆の実力が我々の予想を遥かに超えておってな。どれ、普段どのような練習をしているのか少し教えてもらえないか?」


 学園長の申し出に少し考えるレオンハルトだったが、先程のヨハンの言葉を思い出して、魔法だけでなく武術もある程度の力量を見せた方が良いと判断して了承した。


「わかりました。ユーリ、ダヴィ、クルト準備してくれ」


「え!?まじで?三人だけかよ。だったらヨハンも入れて四対一でしようぜ?」


 クルトの申し出に異論はなく了承し、エルフィーに試験場所内に結界を張ってもらった。魔道具魔法無効化の砂時計の魔法無効化領域(マジックキャンセラーフィールド)を引き続き解除してもらっている。そうしなければヨハンが参加する意味がなくなってしまう。


「三対二で大丈夫でしょうか?」


「いえ。三対二ではなく四対一です。レオンくん一人で四人と戦うのです」


 ウラは、シャルロットの言う言葉が理解できなかった。あくまで多少の力量差はあったにしても同レベルの者たちだと認識しているのだ。


「いつもは、此処にリーゼちゃんたちも加わりますので厳密には何時も十一対一の戦闘をしていますよ。そして、未だに勝ったことはありません」


 訓練なので勝ち負けの概念はないのだが、それでも十一人を一度に相手をして勝てないのだからどれ程の実力差があるのか、一番よく分かっているのは十一人の方だった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字の報告ありがとうございました。これからも精進いたしますのでよろしくお願いいたします。

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