続・相合傘したガール
私は燃えていた。
結局のところ、恋する乙女は余計な小細工なしに、ストレートにぶつかるのが一番良いと思うのだ。これまで数々の作戦を練っては失敗したけど、今日はシンプルに行く。
この相合傘におあつらえ向きの雨模様は、きっと神様が私の恋を応援してくれているのだろう。
下駄箱でのんびりと靴を履き替えている彼に、私は勇気を振り絞って声を掛けた。
「神崎くん、一緒に帰ろ?」
「ああ、吉田さん。もちろんいいよ。最近一緒に帰るの増えたよね」
「えへへ、そうだね」
彼と肩を並べて一緒に帰る。以前はこれだけで天に昇るような幸福感を味わえた。
私はさらに勇気を振り絞り、お気に入りの水色の傘を閉じた。
「吉田さん? なにやってるの? 濡れちゃうよ?」
彼は自らの傘をさっと私に差してくれる。
私は、その彼に身体を寄せる。
「……吉田さん?」
「前からね、神崎くんと相合傘したいと思ってたの」
「え……そうなんだ」
「うん」
彼は顔を赤くして言葉をつまらせていた。可愛い。
そのまま私と彼は歩いた。しとしとと降る雨が、彼の肩にあたって濡れていた。それを防ぐために、私はいっそう彼に身を寄せる。
橋を渡ると、以前私が踏み抜いたコンクリートロードに差し掛かった。道は未だに補修されずにいた。これも良い思い出だ。あの時の彼の体温は今でも忘れられない。
今日の私と彼は無言の時間が多いけど、いやな雰囲気ではない。心地よい沈黙だった。
しばらく歩くと、駅についた。屋根があるので彼は傘を閉じた。
いつもならここで別れる。私と彼は乗る電車が違うのだ。
私は別れが名残惜しくて、俯いてしまっていた。
二人で改札を抜ける。私は下り線で、彼は反対側の上り線だ。でも彼はそちらに行かず、立ち止まっていた。
そして彼が大きく息を吸ったのがわかった。
「あのさ、吉田さん。君に言いたいことがあるんだ」
「神崎くん……?」
今、駅のホームには私たちしかいない。だから彼の声もよく聞こえる。
彼は、私の目をまっすぐに見つめてくる。
彼の顔はほのかに赤らんでいた。きっと私もそんな顔をしているのだろう。
「俺って思ったことは結構すぐ言いたくなるタイプなんだよね」
「うん」
「それで、今まで吉田さんに対してなんとなく思うところがあったんだけど、今日までそれがなんだかよくわからなかった」
「……うん」
「でも、今日はっきりした。俺、吉田さんのこと好きだ」
「神崎くん……!」
彼の言葉を聞き、私は感極まって泣いてしまった。
でも、私も言わなくちゃ。
「私も、私も神崎くんのこと好き。ずっと好きだったの」
「……ありがとう。凄く嬉しいよ」
そう言うと、彼は私を抱きしめてくれた。
勇気を出して良かった。躊躇せずに相合傘をしてよかった。
私の恋は、最も幸福な形で成就した。
吉田さんの得たもの
・彼との幸せな生活