2.膝枕
お気に入りありがとうございます!
今回は短いです。
………………のヤロウ……!!
あの時ほど私は人を消したいと思った事はない。
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「ライザック様は、お仕事をされてるんですね。」
姫様、そんな可愛い顔して首をかしげないでください。
男はみんなオオカミです。
腹が立って仕方がないのに、この状況下を力づくでどうにかすることもできない。
「アルティアライン様、こちらに兄上がッ……!!」
……いいところに来てくれました、アルバート様。
「……ミラさん、ポネーさん…。」
そんな、何で止めてくれなかったんだ、みたいな顔しないでください。
「……私はお止めいたしました。」
そもそもなんで書庫に行って帰ってきたと思ったら、ディノーバ将軍の頭を膝に乗せてるんですか、姫様。ってか、なんでなに気持ちよさそうにされてるんですか将軍。
アルバート様にさっさと回収されていってしまえ。
「……冗談はここまでにします。ディノーバ・ライザック閣下、陛下がお呼びです。至急執務室まで」
「!……わーった。じゃな、姫さん。また来んぜ」
ディノーバ将軍はアルバート様と一緒にポネーの開けた扉から出て行こうとする。
よし、これで平和になる。
心の中でほくそ笑みながら、侍女らしく礼をして二人が通り過ぎるのを待つ。
「あんたも、またな。」
驚いて思わず振り返ると、二人はもう扉を過ぎた後だった。
一番近い位置に居たポネーも聞こえなかったようだ。
……分からない。分からない、人。
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「んで?……用件は?」
「あぁ、例の件ですよ。こちら側につく貴族は全員納得したようですが……どうやら、反対派ではあの方が一番面倒ですね。」
どうやって懐柔しましょうか?、と弟は半分面白そうに、半分面倒くさそうにこちらを見た。
「あぁ……先代の弟君……今は公爵だったか?頭の固い爺さんそのものだよなぁ……。」
めんどくせ、と呟くとアルバートは苦笑した。
「誰が聞いているともわかりませんから、廊下で言わない方がいいですよ?」
「それ言ったら、例の件なんていうもん自体話に出すなよ。人の気配もないし、ってかここミシェルの部屋の近くじゃねえか。……大丈夫だろ?」
多分、と付け加えながら、あくびをする兄にアルバートは思い出したように手に持っていた本を差し出した。
「そうそう、はい、これ。頼まれてた本です。でも、兄上が仕事以外に本を読もうとするなんて。……しかも恋愛小説だし。」
弟がこの本の作者の作品をすべて持っている事は知っていた。だから、すぐに用意してくれるとは思っていたが……。
「まぁな、ちょっと。……別に急ぎでもなかったんだけど。悪いな。じゃ、貸りてくな。」
「いいえ、最近……あれ?もしかして、そういうことですか?兄上。」
しまった。アルに貸りるべきではなかったか。ライザックは瞬間的にそう感じた。
この弟は周りの空気を読むのが恐ろしくうまい。
そして、相手の腹の内を悟るのも。
「……まぁ、いいじゃねえか。なんでも。」
何とかその場の空気を流そうとする。
「えぇ、いい傾向です。上手くいってくださいね。僕も彼女なら大賛成です。」
にこにこと自分より前を歩く弟を苦い思いで見る。
……いい弟だよな。全く。