12.悪夢
好きよ、ディノーバ将軍
ライザックって呼べよ
好きなの、ライザック様の事
どのくらい?
殺してほしいくらい
結婚したいとかじゃねえのか
結婚、してもいいの?
俺はしたい
私も
お前がお嫁さんな
じゃあライザック様がだんな様ね
「……なんだこれ」
とりあえず今すぐ忘れ去りたい。
何度寝台に身を沈め、目を瞑ろうとも夢にうなされて起きる。
見る夢それぞれが様々な意味で忘れたいものばかり。
身体を起こす。
窓の外は既に漆黒に包まれている。
……今なら。
今なら、近衛の詰所に行っても誰もいないのではないか。
やるべきことはたくさんある。
仕事も山積みにしてきたままだ。
「……行くか」
立ち上がると、シャツが寝汗で湿っているなんてものでは無いことに気がつく。
ため息をついてシャツを脱ぎ捨てる。
コンコンッ
ドアのノックでそちらを見る。
「しょ、将軍。ロジエです……あの、起きて……いらっしゃ……い、ます、か」
かなり小声で扉の向こうから話しかけているからか、畏縮しきっているのか、聞き取りづらい。
「起きてる、……なんだ」
ドアを開けると、ロジエが息をのむ。
と、言うよりも叫び声を飲み込んだように見えた。
「す、すみませんお休みのところ……あの、夕飯はどうしますか?」
「あぁ、まだそんな時間か。……俺の分はいい。悪いが下げてくれ」
よく見ると、ロジエの陰にワゴンがあった。
夕飯をここまで運んでくれたらしい。
ロジエは肯くとそのままワゴンの中から瓶を取り出す。
小ぶりで、中身は見えない。
「了解しました。……これ、王女様からです。」
夕飯は下げてもこれは下げないように言われたのだろう。
「ああ。悪いな」
「いえ、じゃあ自分は失礼します」
一礼すると、ロジエはワゴンを押して部屋から離れて行った。
「……蜂蜜漬け?」
中に入っていたのは果実の蜂蜜漬け。
「なんで、これを姫さんが?」
その疑問に答える者は居なかった。