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20 終わり
「お前が人を殺せなくなった時、その時がお前の『終わり』だ」
この言葉を、私は何度言われただろう。
人を殺せない私は、ただの化け物で、ゴミなんだ。
生まれた時からずっと、そう思ってた。
幸せなんて知らない。
普通なんて知らない。
知らない方が、いい。
だけど。知りたかった。幸せに、……普通になるのが無理ならせめて。
ターゲットと接触しては、話をした。
子供の頃の話、食べ物の話、初恋の話、ペットの話、仕事の話、恋愛の話……。
たわいもないような話をたくさん聞いて、その話と自分を重ねた。
自分がもしも普通の人として生まれてきていたら、どうなっていたのかって。
その作業がただ虚しさを広げるだけだということは、知ってた。
彼とも、たくさんの話をした。
私は初めて、自分のことを話した。
私は初めて、自分の存在を認めてもらえた。
嬉しかった。
だけど彼は、私のターゲットだった。
だから私は、彼を殺さなければならなかった。
だから。
私は、『終わり』を選ぶよ。