01 世界との繋がり方
それは、とても、簡単で。
私は対象の頭に触れる。ただそれだけでいい。あとは相手が、勝手に死んでくれる。私は自らの身体を返り血で汚すことなく、対象を始末することができる。
私の手に流れる特殊な微弱電流は、絶縁体ですら貫通する。そしてこの微弱電流は、自分の意志では止められない。たとえ私が分厚い皮手袋をしていたとしても、殺意がなかったとしても、この手でヒトの頭に触れれば、そのヒトは簡単に死んでしまうだろう。
それが、何を意味するのか。
眠っている男の頭に、軽く手を置いた。途端に、安らかだった男の寝顔がぐにゃりと歪む。今頃、恐ろしい悪夢でも見ているだろう。
私は自分の荷物をまとめると、部屋から抜け出した。
背後から聞こえるうめき声は、やがて悲鳴となるだろう。彼がどんな死に方をするのか、……死に方を選択するのか、私には見当もつかないし知りたくもない。
自分が生きるためには、ヒトを殺し続けるしかない。
私がヒトなのか、ヒトと呼べるのかどうか、私には分からない。
私はヒトの偽物で、ヒトを殺す生き物だ。
……本当は、悲しかった。
ヒトを殺す事でしか、世界と繋がっていられない自分が。