第五魔導
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「______ところで、ディールさん。おたくのミルはいつになったら魔導を使えるようになるのですか?」
「ん?ああ。んー…大目に見て今日だな。あいつの破滅魔導で村が壊滅するぜ。」
「真面目に答えてください。毎日あの子がイジメの対象になっている事を知っているでしょう?どうして"魔導を教えようとしない"んですか?あなたは生みの親でなくても育ての親でしょう?あの子の"会心魔導"は貴方でないと分かりません。毎晩何かを教えているかと思えば、あれは魔力の貯蔵量を増やす鍛錬ですよね。今の歳では意味がないと思いますが…他人の私たちでは手出しできないんですよ?」
「まーゆっくりやっていくさ。」
「…ところであの子はまた発熱ですか?貴方が傍を離れるストレスとやらで。貴方がエルグラントに行く度にですね。」
「ん!?んん。そうだな。まったく。どれだけ俺の事が好きなんだか。」
「…なにか怪しいですね。」
「な、なにがだ?ほれ、もう着くぞ。」
馬車に揺られ、一刻と少し。森に囲まれ、ぬかるんだ道を進めば、木々の間から、建物の一角が見え始める。外壁に囲まれる繁華街、エルグラント。商人や魔導士がよく訪れる場所であり、物品の貿易が盛んな街だ。ミルニィが住んでいる村は、近くに魔杖などの魔導器具の製造に使う鉱石等が豊富で、定期的にこの街に卸しに来ている。到着して早々、ディール以外の乗組員は積み荷を持ち、街へ歩いていく。
「では、私たちは取引所へ行ってきます。馬車の護衛、くれぐれもさぼらないように。」
「はいよー。がんばれー。…さてと、もういいぞ、ミル。」
馬車の荷台の端にある樽ががたがたと揺れ、荷台から落ちる。その拍子に蓋が外れ、中からミルニィがよろよろと顔を出す。
「うえ…よっちゃった。」
「大丈夫かよ…いい加減慣れろよ。もう怖いお姉さん達はいないぞ。存分に楽しんできな。おっと、これを忘れるなよ。」
ディールは懐からくたびれたマントを出し、ミルニィに着せる。
「もっとあたらしいのないの?スンスン…ちょっとくさいし…」
「前も言ったろ、そのぼろきれの方が物乞いに見られて都合がいい。ほれ、時間ねえぞ。」
「うん!ありがと!」
駆け足で去っていくミルニィを眺め、やれやれと息をつく。煙草に火をつけ、荷台に寄り掛かる。そしていつものように、昔を思い出していた。
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