第三魔導
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「これはたべられる…これはだめ。これは…いいんだっけ…?」
夕暮れ時、森に食べ物を探している間にそんな時間になってしまった。身長が足らないので、落ちている木の実や、きのこを拾い、籠に詰める。
「こんなもんでいいかな。くらいしかえろう。またおこられちゃう。よいしょ。」
両手で籠の取っ手を持ちながら、やや籠の反対側に体を傾け、不規則なリズムで歩いて帰り始める。
「…つぎまちにいくのいつだろう。はやくつづきよみたいな…」
「おい、ミル。」
「…あ。レイド…」
木の陰から、少年が身を出し、ミルニィの前に立つ。ミルニィは髪を指でいじりながら目線を逸らし、頬を赤らめる。
「ど…どーしたの。もりにくるなんてめずらしいね。」
「……」
「あ!もしかしてレイドもごはんさがしにきたの?だったらさ!…ほらこれ!すこしならわけられるよ。とりすぎでミルもこまってたんだー、あはは…」
「……」
「…れ、レイドはまどうがじょうずでうらやましいんだ!わたしのてほんっていうか…いつかレイドみたいになりたくて…ねえ、ミルにもおしえてよ!いつもはみんなにじゃまっていわれておしえてもらえてないけど…ふ、ふたりっきり!でさ…ど、どうかな…」
「……」
レイドからは返事がない。ただ冷たい目で見つめてくる。表情からは何も読み取れない。
「レイド…?どうし_____」
「お前、魔導士目指すのやめろよ。」
「…え?」
「才能ないじゃん、お前。」
君にだけはそんなこと言ってほしくなかった。今までずっと君を見て魔導を頑張ってきたから。村長のおかげで抱いていたほんの少しの自信と自尊心は、粉々に打ち砕かれてしまった。
「……な……なん_____」
「アルグランテ魔導学校。」
「…!」
「目指しているのはそこだろう。全く…何考えてるんだか。あそこは魔導学校の中でも上の上。エリートしかいけないようなとこだ。そんなところに…魔導の先っちょすら理解できてない馬鹿が。何で行けると思うよ。」
「……きみがそんなにしゃべるひとだっておもわなかったよ…」
「そうか。だからなんだ?お前の考えは分かってる。」
「…わかるわけないじゃん。そんな______」
「特別支援制度。」
「…!」
「だと思ったよ。近頃、魔導士の志願者が少なくて大手の魔導学校がやり始めている制度。血統や、学歴は関係なく、帝都が観測している各町や村から一人限定で特別推薦できるってな。なんでも、実力があるものが血統なんぞで有象無象に埋もれて雑用に成り下がるのを危惧しての事らしいが…どこから知ったんだ。少なくともこんなド田舎で知れるはずもないが。誰の入れ知恵だ?」
「…き、きかれたっていうもんか______」
「ディールさんか。」
「…!」
「やっぱり…あの人の過保護というか贔屓というか…もうちょっとしっかり教育してくれないかな。特にこんな馬鹿なんかは特に。ホントに同じ年か?」
(さきにいわれちゃった…)
「…残念だが。この村から特別支援制度を受けるのは俺だ。いくらお前が頑張っても、席は譲れない。魔導なんて無駄な努力はやめて、銛の使い方でも覚えたらどうだ。」
レイドはそう吐き捨てると、暗い森に消えていった。何も言い返せなかった。いや、言い返せる実力がなかった。全てレイドの言うとおりだ。目を滲ませる液体を手の甲で何度か拭いた後、先程より重くなった籠を両手で抱え、ゆっくりと帰路に就いた。
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