第一魔導
______薄暗い部屋。地下に通じる裏口を通り、足元が見えない階段を何分もかけて下ってきた。松明の灯りもろくに届いていないのだから当たり前だろう。荒廃した図書館。世に出回っていない魔導書がいくつも並べられている。どれも、扱いが難しい。実用性がない。代償の大きさで"人"には扱いきれないといった物ばかりだ。効率を重視した魔導の研究ばかりがはびこっているおかげで、先人達が知恵を絞り作り出してきた遺産が、今や埃や蜘蛛の巣で覆われ、時代に忘れられている。その部屋は感知した。今日も今日とて、悪意のない侵入者がやってくる、と。フードを深くかぶり、サイズが合っていないマントを床に引きずり、細い腕で体の大きさに見合わないランタンをぶら下げている。本棚はいくつも存在し、どれも一般的な建物二階相当の大きさがあった。大人でも、巨大な迷路であることは変わらない。しかし、その子の歩きには迷いがなかった。ある本棚で足を止めると、手慣れた手つきで梯子を使い、背伸びをしながら上段にある本を一冊、手に取る。
「…今日こそ覚えられるかな。いや、覚えないと。みんなを見返してやるんだ…!…どうかばれませんように…」
躊躇しながら本をめくり始める。あるページで手を止め、描かれている魔法陣を眺める。息の仕方、瞬きの仕方を忘れるほど、静かに見つめる。他のページはめくらない。身動き一つしない。その少女は、まるで部屋そのものであるかのように振舞っている。ランタンの灯が消えるまで、少女の世界が途切れることはなかった。
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