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無銘の神童と有銘の乙女~無能と呼ばれる俺を、最強の少女たちが独占したがる理由~  作者: まめだいふく
第2章:摩耶島合同合宿・三強激突編

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第21話:三強集結、嵐の合宿


 特注の浮遊リムジンが摩耶島のプラットフォームに静かに接地し、重厚なハッチがプシュリと音を立てて開いた。


 南国の熱気を孕んだ潮風が車内に流れ込み、迅の黒髪を揺らす。


「――お帰り、迅くん。待ちくたびれたよ。君が来るまでの間、僕の脳内シミュレーターは一億回以上、君との『再会』を計算し直していたんだ」


 タラップの先で待っていたのは、八咫工科の至宝、静だった。


 白緑色のサイドポニーを潮風に遊ばせ、白衣の裾を翻す彼女の瞳には、昨夜の侵入時よりもさらに濃密な「渇望」が宿っている。彼女の腰に備わった新型の星導デバイスが、迅の姿を捉えた瞬間にピッピッと高い電子音を鳴らし、支持率の急上昇を告げた。


「静……。朝からその不気味な笑みはやめろ」

「ひどいなぁ。これでも最大限の歓迎の意を表情筋に演算させているんだけど?」


 迅が冷淡にタラップを降りると、すぐさま左右から「防壁」が形成される。


「静さん! 昨晩はよくもやってくれましたね。我が鳳凰寺の規律を汚したこと、万死に値します。……迅様、この女のデタラメな計算に惑わされてはいけません。合宿中の身辺警護は、この私が完璧に遂行いたします」


 氷華が銀髪をなびかせ、静を射抜かんばかりの視線で威嚇する。その隣では、恋火が今にも火を噴きそうな勢いで食ってかかった。


「そうよ! アタシを浴室に閉じ込めた罪、その体で清算させてやるわよ! 迅、この島はアタシの故郷にも近いんだから。アタシが案内してあげる!」


 上陸早々、三者三様の独占欲が火花を散らす。


 だが、その光景すらも、島中に配置された数千のドローンによって全世界へリアルタイム配信されていた。



『――ふふ。上陸早々、最高にエロティックなボルテージだわ。視聴者たちの興奮が、島のエネルギー回路を焼き切りそうよ』



 空中に浮かぶ大型モニターに、千早の艶然たる姿が映し出される。



『さあ、選ばれし猛者たち。まずは合宿の拠点となる「第一聖域・翠嵐(すいらん)閣」へ向かいなさい。……そこに、貴方たちが心ゆくまで「共鳴」できる、唯一無二のプライベートルームを用意しておいたわ』



 千早の指し示す先。島の最高地点にそびえ立つその建物は、和洋折衷の贅を尽くした建築物でありながら、その実態は「愛」という名の狂気を観測するための巨大な実験場であった。


 迅は、左右で腕を奪い合う氷華と恋火、そして前方を歩きながらも執拗に視線を送ってくる静を伴い、逃げ場のない「檻」へと足を踏み入れた。


 翠嵐閣の最上階。案内された「特一号室」の扉が開いた瞬間、氷華と恋火の思考は完全に停止した。


 そこには、十人以上が余裕で横たわれるほどの、暴力的に巨大な「王様サイズのベッド」が、部屋の中央で圧倒的な存在感を放っていたからだ。


「……ふふ、驚いた? これこそが科学の粋を集めた、生体エネルギー増幅器ベッドだよ」


 静が、白緑色のサイドポニーを揺らしながら、慣れた足取りでふかふかのシーツの上に腰を下ろした。


「部屋はここ一つ。寝室も一つ。当然だよね。支持率を効率よく稼ぐには、二十四時間、君たちの『共鳴』を世界に晒し続けなければならない。……あ、ドローンはあそこの死角に三機。シャワー中も寝顔も、全部バッチリ解析されるから安心して」

「安心などできるわけがありませんッ!!」


 氷華が、銀髪を逆立てて叫んだ。その頬は、今にも発火しそうなほど真っ赤に染まっている。


「鳳凰寺の令嬢として、そして規律局長として、迅様と……その、添い寝などという破廉恥な行為を配信されるなど……! しかも、不知火さんや静さんと相まみえてなど、不潔、あまりにも不潔です!!」

「ア、アタシだって不本意よ! 迅と寝るのは、その……もっと、二人きりで、こう……っ!」


 恋火も、腕を組んでガタガタと震えながら、視線をベッドの上で泳がせている。しかし、二人とも拒絶の言葉とは裏腹に、足は一歩も部屋から出ようとはしない。むしろ、誰が迅の「隣」を勝ち取るかという殺気が、静かに、だが確実に室内の温度を押し上げていた。


「無駄だよ。この部屋の電子錠は、四人の生体反応がベッド上で一定時間検出されない限り、解錠されない。……千早理事長の命令だ。『朝まで、密着して過ごしなさい』ってね」


 静の言葉は、最後の一線を越えるための免罪符となった。


「……仕方がありません。迅様の純潔を守るため、そして規律を維持するため、私が『壁』となります。……迅様、こちらへ。左側は、私が死守いたします」


 氷華が、凛とした表情を取り繕いながらも、指先を震わせて迅の軍服の袖を掴む。


「ちょっと! 左が氷華なら、右はアタシ様に決まってんでしょ! 迅、あんたも何か言いなさいよ!」


 恋火が反対側の腕を抱え込み、その豊満な胸をこれ見よがしに押し付ける。支持率計エンゲージメーターが、物理的な接触の熱を受けてアラートを鳴らし始めた。


「……やれやれ。じゃあ、僕は迅くんの『正面』を貰おうかな。心音を直接、鼓膜で解析したいから」


 静がベッドの中央で寝そべり、手招きをする。


 三方向からの、愛という名の暴力。支持率という名の鎖。迅は、深く溜息をつくと、腰の『黒鉄』を壁に立てかけた。


「……五月蝿い。寝るぞ」


 迅が短く言い放ち、ベッドの中央へ横たわる。


 その瞬間、三人の乙女たちが、飢えた獣のように迅の肉体へと群がった。


 巨大なベッドに迅が横たわった瞬間、それは「添い寝」という名の略奪戦へと変貌した。


「……ふふ、捕まえた。迅様の左腕は、わたしが占有いたします」


 氷華が、躊躇いながらも迅の左腕を自身の胸元へと引き寄せた。銀髪が迅の肩に広がり、清楚な香りが鼻腔をくすぐる。だが、その瞳に宿るのは慈愛ではなく、他の女を一切寄せ付けないという「氷の独占欲」だ。


「ちょっと! 抜け駆け禁止よ! 迅の背中はアタシ様が守るんだから!」


 恋火が反対側から猛烈な勢いでしがみつく。背中に押し付けられる、柔らかくも熱い体温。彼女の吐息が迅の耳元をかすめ、支持率エンゲージは限界を超えた異常数値を叩き出し続ける。


「二人とも、非効率だね。……迅くんの体温を最も正確に測定できるのは、ここだよ」


 静が、あろうことか迅の胸元へと潜り込んできた。白緑色のサイドポニーが迅の顎をくすぐり、彼女は自身の耳を迅の心臓の位置にぴたりと当てる。


「……聞こえる。計算式を狂わせる、鋼の鼓動。……ああ、迅くん。もっと、僕をバグらせてよ……」


 三方向からの圧迫。柔らかな肉体の感触と、狂気にも似た熱量。


 世界中に配信されているドローンの前で、彼女たちはもはや羞恥心すらも「迅を独占する」という欲望の薪にしていた。


 だが、その喧騒を断ち切ったのは、迅の冷徹な一喝だった。


「――いい加減にしろ。五月蝿くて眠れん」


 その瞬間、室内を凄まじい「威圧プレッシャー」が支配した。


 アークシェルという補助輪を一切介さない、迅の魂そのものが放つ物理的な殺気。


「っ!?」

「……あ……っ」


 氷華も恋火も静も、その圧倒的な力に喉を詰まらせ、身体を硬直させる。


 死を予感させるほどの鋭い覇気。しかし、それは彼女たちにとって、恐怖であると同時に、これ以上ない「悦楽」でもあった。最強の男に屈服させられるという快感が、彼女たちの脊髄を震わせる。


「……動くな。朝まで、そのままでいろ」


 迅が短く命じ、瞳を閉じる。


 殺気に当てられ、呼吸を整えることすら許されない極限状態。しかし、迅の体温に直接触れているという事実に、彼女たちは次第にトランス状態へと陥っていく。


「……はい。迅様の仰せのままに……」

「……あんたがそう言うなら、大人しくしてあげるわよ……」

「……支配されるデータ……悪くないね。おやすみ、僕の特異点」


 嵐のような騒動は、迅の圧倒的な武威によって幕を閉じた。


 翌朝まで、ドローンは「微動だにせず、一人の男に寄り添い続ける三人の乙女」という、世界で最も贅沢で危うい静止画を配信し続けることになる。


 こうして、摩耶島合宿の初夜は、支配と屈従の静寂の中で更けていった。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字など御座いましたらコメント下さい。


「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです

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