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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ファンのことを「観葉植物」と呼ぶ百合アイドルユニット

「観葉植物のみんなー、アンコールありがとー☆」

「もう少しの間、一緒に楽しみましょう」


 アンコールによる最終パートが始まり、曲に合わせて唄い踊る。

 しかしそれもほんの僅かな時間、アンコールパートは短くあっという間に終わってしまう。


「というわけで、今度こそ本当の本当にお別れの時間となりました☆」

「けれど本日は観葉植物の皆さんとお別れする前に、とても大事なお知らせがあります」


 目線で合図し、相方のアリエちゃんと向かい合う。

 そして……。


「えーい☆」


 握った右の拳をアリエちゃんの左頬に叩き込む。

 一瞬静まり返った後にザワつく会場。

 観葉植物なんだから静かにしてなきゃダメじゃない、全く。


「女の子の、しかもアイドルの顔をキズモノにしちゃった。 これでもう責任取るしかないよね☆」

「安心してください、これはちゃんと打ち合わせ通りの内容なので」

「スタッフさんが止めに来ないのがその証拠だよ☆」


 その言葉で安心したのか、少しづつ静かになっていく観葉植物の皆。

 けれどもその数秒後、さっきとは比べ物にならない程の大きな歓声に沸いた。


「その反応はわたしの意図がわかったってことでいいのかなー、そうこれはプロポーズでーす☆」

「この返事は卒業のライブの時にする予定です、それまで皆さん応援をよろしくお願いします」


 その後最後の挨拶をして、その日のライブはつつがなくとは言えない波乱に包まれながら終了した。



「見てみろよエリア、昨日のライブのネット反応凄いぞ!」

「わたしがエゴサとかしないのプロデューサーさん知ってるでしょ、知らなくていいよ」

「『喧嘩別れするのかと思った』、『あんなプロポーズの仕方ある?』、『結婚バンザーイ!』とか色々」

「だから言わなくていいってば、派手にやっちゃったのは認めるけどさ」

「俺も上の許可取るの大変だったよ、企画書を見た社長の第一声が『正気か?』だったし」


 まあうん、その言い出しっぺはわたしだからプロデューサーさんが全部悪いわけでもないんだけど。


「でも社長さんがプロデューサーさんのことを『正気か?』って言っちゃう気持ちはわかるな、わたし達のデビューもアレだったし」

「オーディションに来たのお前達1組だけだったのはショックだったぞ、何がおかしかったんだ……」

「最初から付き合ってるのを公開してるカップルアイドルなんて企画どうかしてるに決まってるじゃん」

「ぐぬぬ、だがそこまで言うなら応募してきたエリアとアリエだって正気じゃないからな!」


 むむむ、確かにそれを言われるとわたしも反論できないケド……。


「まあそれでも、アイドルとしてここまで昇ってこれたことにはプロデューサーさんへ感謝してるんだよわたし達」

「何を言ってるんだ、2人がアイドルとして売れたのはエリアとアリエが可愛いからだろ」

「こらこらあんまり気軽に女の子へ可愛いなんて言っちゃダメだよプロデューサーさん、勘違いしちゃうから」

「それこそまさに何言ってるんだ、エリアとアリエがそんなことで男になびくような人間じゃないことくらい承知のしてるっての」

「なんだわかってるじゃん、わたし達はどうやったって男には口説き落とせないよ☆」

「オフの時にその『☆』を出されると少しウザいな」

「ひっど☆」



「ねえ、その頬って本当に大丈夫なの?」


 その夜自宅にて、2人で決めたこととはいえやっぱり気になる。

 

「大丈夫よ、アイドルとして最低限しか鍛えてない女の拳くらい大したことないわ」

「その返事は安心していいのかなぁ、アイドルとしては鍛え方が足りないってことだよね」

「逆にしたら大惨事になるから仕方ないじゃない、私が殴る側にはなれなかったわよ」

「そうだよねー、今年の戦隊ヒーロー番組にレギュラーで出演してるアリエちゃんに殴られたら大変なことになっちゃう」

「…………」


 何が気に入らなかったのか、無言で迫ってきたアリエちゃんに押し倒される。

 ちょっと目が怖い。


「えっと……?」

「今は配信中じゃないのよ、いつまで『アリエちゃん』呼びなのかしら?」

「ごめんごめん、沢山名前で呼ぶからね」

「じゃあ今からいっぱい鳴かせてあげるわ、私・の・名・前♡」

「……ひゃい♡」



「観葉植物のみんなー、今日まで応援してくれてありがとー☆」

「私達は本日をもって卒業します」

「でも、その前に☆」

「はい、3年前の約束を果たします」


 あの時のようにアリエちゃんと向き合い、左手を差し出す。

 そしてアリエちゃんの手によって薬指に指輪がはめられた。


「後ろの席の観葉植物さん見えますかー、アリエちゃんにお返事貰っちゃいました☆」

「勿論、私もつけていますよ」


 2人で左手を高く掲げる、薬指の指輪がライトに照らされ輝いた。

 観客席から一際大きな歓声が沸く。

 観葉植物なんて呼んできたけど、最後の最後で盛大に送り出してくれるのはとっても嬉しい。


「「ありがとうございます、2人で幸せになります☆」」

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