第八話:VSソード①‐暑苦しい!動き回りすぎ!あとダサい!
ネ:「仮面ラ〇ダー龍騎が一番面白い!!」
マ:「いや、仮面〇イダー電王こそ最高のライダーだ!!」
蜜:「サイクロン!ジョーーカーー!!」
神:「変~身ッ!Vスリャアア!!」
貴:「ア~、マ~、ゾ~~~ンッ!!☆」
ア:「俺はシャドームー〇が好き」
姿を欲する
名を欲する
力を欲する
才を欲する
位を欲する
我は産まれながらにして王座へ登る者
故にすべてを持たず産まれたり
強者を切り付け、弱者を切り捨て
追うもの腹を裂き、追われるもの背を裂く
草木は我を神と崇めよ
人々は我を王と知れ
牙持つ者は我を恐れよ
他国の王は我を憎め
我は産まれながらに登る者
故に我は
今だ姿を持たず
───────────-
同日。
十二時を過ぎ、そろそろ空腹に耐え切れなくなってきたマイとネコマタはファミレスへ向け、広い歩道を若干早足かつ慌てずに歩いていた。
雑居ビルや大型デパートなどが大量に建ち並ぶこの街には当然ファミレスも多い。ちなみにこの街、公園は勿論、図書館、遊園地、市民プール、オペラ座まで何でも揃っている。夏休みはどこにも行かず、この街の内だけで遊ぶ人の方が多いくらいだ。
「まあ、確かに飽きない街ではあるかな~」
「…ネコマタ、何その姿」
マイは横のネコマタの意見を無視し、聞いた。
「ん? 何って変化しただけだけど?」
そう、今のネコマタは黒猫の姿ではなかった。
俗に言うチャラ男。ネックレスとピアスを付け、赤いジャンパーを羽織ってジーパンも着用。黒髪をオールバックにしていかにも悪ぶっている感じだった。
「別にもっと地味に変化出来るけど…こっちの方がよりかっこよく見えるぜ!」
確かに顔も悪くないが、マイはこんなチャラい男の横に一秒たりともいたくなかった。理由は、
「暑苦しい! 動き回りすぎ! あとダサい!」
です。
「そこまで言う…。あ、ここじゃね?」
ネコマタ(人間バージョン)は人だかりの先のファミレスを指差した。
「お~、流石人気のファミレスだな! 仕事中の警官もサボって食べに来てるぜ。いや、この時間はお昼休みなのか?」
「いや違うだろ…。明らかに仕事の真っ最中だよ…」
何やら事件が起こっているらしく、警察は野次馬を下がらせたり、無線で連絡を取ったり、外で店員らしき人から事情聴衆をしていた。
ゾクッ、と。その時、嫌な予感がした。
「…蜜子は!?」
「蜜子? マイちゃんの友達?」
マイの学校で一番の親友、羽蝶 蜜子〔ハチョウ ミツコ〕。彼女はここでバイトをしていたはずだった。もしかしたら何か事件に巻き込まれたのかもしれない。
「蜜子!!」
マイは慌てて走り出す。外にいなさそうだから、ファミレスの中かもしれない。
「え!? マイちゃん俺放置!?」
ネコマタは人だかりが苦手である為、人を押し退けて行く事が出来なかった。
マイは走り続け、途中、警官がマイを見つけて止めようとしたが、あっという間に警官の制止を振り切ってファミレスの内へ飛び込む。
「蜜子!? 大丈夫!?」
その中に、
「あ! マイちゃんだ!! 何で来たの!!?」
蜜子はのんきにテーブルに座っていた。
「っておい。…大分余裕だね。事件に巻き込まれたのかと思ったよ」
「アハハ!! 心配してくれてありがとね!!」
マイはしゃがみ込んで安堵する。蜜子の事を本気で心配していたからだ。
蜜子は店内で事情聴衆をされていて、警官は今は席を外していた。マイはキョロキョロと周りを見回し、蜜子に何が起きたのかを聞いた。
「うん!! お客が店内でナイフを持って暴れててね!! それをあそこの三人が撃退してくれたの!!」
「…?」
ファミレスの一番奥のテーブルを見ると、誰か三人座っていた。長い白髪の男に金髪の子供、そして頭に角が付いてるジャージの青年の三人だ。
「凄く強かったんだよ!!」
蜜子の方に顔を戻す。
…なんだかまた別の嫌な予感がする。というより寒気がする。そして、予感は的中した。
「そこの君、ちょっといい?」
マイの後ろから聞こえた。最初、警官が戻って来たのかと思ったが、そこにいたのは違う人間だった。
白い、異質な空気を漂わす男がそこにいた。
「えっ!? いつの間に!?」
男は間違いなく奥のテーブルにいた白髪の男だった。五メートル程の距離を一瞬で移動して来たのか?
そして更に、白衣を着た男は聞き捨てならない事を言った。
「つかぬ事を聞くが、その腕輪は『天界』製?」
「っ!?」
マイは額から汗を垂らす。もしやと思い、一応聞いてみた。
「あの、…あなたのお父さんってもしかして」
「大神様〔オオカミサマ〕だよ?」
「やっぱりかッ!!」
このあっさり感、間違いなく親子である。
男はマイの体を上から下へと凝視し(いやらしい意味ではありません)、納得したように何度も頷いた。
「ほうほう…。って事はお前が『神様代行』か。オーイ!! アラストル、貴乃華〔タカノハナ〕、『神様代行』見つけたぞ!!」
奥のテーブルの二人を呼び、気づいた二人はこっちに歩いて来た。
「おい神之上〔カミノジョウ〕、女じゃねえか。神様代行って…ほら…筋肉隆々の覇気出しまくってる感じじゃないの?」
ジャージの青年は白い男、神之上にガッカリとした顔で聞いた。
「アラストルよお…そんなターミネーターみたいな奴いるわけねえだろ。親父がランダムで決めたって言ったっしょ?」
「だからてめぇはアラちゃんなんだよ♪ ん? ほら、自分は筋肉大好き野郎って言ってみ♪? おい♪」
「…貴乃華は殺す」
金髪の少年まで出て来た。マイは混乱し、このファミレスの内だけ外国になったように思えてきた。
「ねえ、この人達ってマイちゃんの知り合いだったの!?」
蜜子がマイに相変わらずでかい声で聞いた。
…捜してた神様の息子ですなんて、言えるわけない。
「…そ、そう! 知り合いだよ! 久々に会っちゃったなー。お話ししたいからちょっといい?」
慌てるマイに蜜子は笑顔で、
「いいよ!! 話しておいでな!!」
マイは三人を連れ、別の場所で話す事にした。
…それにしても、神様の息子は置いといて、変な名前の二人である。貴乃華なんて名前は何処かの元横綱を連想する名前だし、アラストルとは悪魔の名前である(これは何時の日かネコマタに聞いた)。一体この二人は何なのだろうか…?
───────────-
ファミレスから離れ、ネコマタとよく会う雑居ビルの路地裏に三人を連れてきた。
「神様代行、ここで話すのか?」
神之上がぼやく。
「いいから! …え~、アタシはあなたのお父さんからあなたを連れ戻せと言われました」
「……あのクソ親父め…、俺様を連れ戻すのに神様代行を差し向けたな…」
わずかに眉をひそめ、憎たらしそうに呟いた。
「なので、どうか天界にお戻りいただけないでしょうか?」
マイは使い慣れない敬語で、なるべく丁重に言った。が、
「断る。俺様は地上界でやる事があるからな」
神之上は断固拒否した。
マイはここで交渉を諦める事も出来るが、引き下がる訳には行かなかった。給料アップの為である。拒否されるのも想定内…。落ち着いて対応すればいい。
「…では、そのやる事をやれば戻ってもらえますか?」
そう、自分が解決してしまえばいいことなのだ。出来る事なら協力しよう。
「うむ、即座に戻ってやろう」
「でしたら、アタシがお手伝い致しましす。何をすればいいのですか?」
「世界征服」
「出来るかアアアアッ!!」
落ち着けるわけなかった。
対応出来るわけなかった。
子供の夢みたいな事を言い出してつい笑いそうになった。
「少年かっ!? 海賊王を夢見るような少年かっ!? それがしたくて家出したの!?」
敬語を忘れ、乱暴に怒鳴った。
「そうだとも。本気で世界征服を目指してる。俺様なら可能だ!」
本当に少年のような輝いた目をして熱弁する。…頭のネジが飛んで粉砕してるのかとマイは疑った。
残りの二人はコイツをどう思っているのかと、黙ってるアラストルと貴乃華の方を見る。
「あんた達もなんか言いなって! 本気の目をしてるよコイツ…!」
すると、アラストルはキョトンとした顔で、
「…何でだ? 世界征服なんて楽勝だろ…?」
何の疑いも持たずに言った。
「………は?」
「それにな、俺は神之上側なんだよ。お前なんかに賛同しないし、神之上がやるってんなら協力するまでだ」
「ボクも同じだよ♪ 神之上が壊せって言ったら壊すし、潰せって言ったら潰すもん♪♪」
…コイツら正気か? だんだんこの三人が怖くなって来た。
「とにかく、俺様達は世界征服を達成するまで戻らない。…だが、その前にもう一つやらないといけない事がある」
「………?」
神之上はマイの目を見る。冷たく、貫くような、世界を俯瞰する神のような視線で。
「神様代行が後々邪魔になる。君、消えるか死ぬかしてくれ」
その言葉を聞き、マイは神之上が敵だと理解した。力ずくで天界に連れて行かねばならないと理解した。
「…世界征服は本気で、アンタがアタシの敵って事は分かったよ。…で? アタシは消える気も死ぬ気もないけど?」
「なら殺すまでよ。…アラちゃんと貴ちゃんが」
「やっぱりか…」
「ワ~イッ♪♪」
二人が前に出て来た。
「二対一はキツいだろうから、どっちと戦うか選べよ。スポーツマンシップみたいなもんだ」
神之上は何もせず、偉そうに選択肢を迫った。
「…疲れてるから戦いたくない」
マイは昼間、暴走族を壊滅させてきたばかりだった。しかも何も食べてなく、相当疲労していた。
神之上は口元を吊り上げ、
「戦わないなら、俺様達は即座にテロを起こすが?」
…コイツらが何をするか分からない。戦うしかないようだ。
正直、金髪の…貴乃華とか言ったか? この子とは戦いたくない。可愛すぎる。どストライクだ。となると…、
「…黒ジャージ、アンタだ」
アラストルを選んだ。
「……女とやってもなあ…。モチベーションが下がるぜ…」
が、本人はやる気がなさそうだった。一方貴乃華は、
「ねえねえ神之上♪? ボクはどうするの♪? 暇だよ~★」
「う~ん…暇つぶしにビルでも壊すか!」
とんでもない事をしようとしてた。
「ちょ、待ってよ! アタシが戦ってる間に何しようとしてんの!?」
「だって暇だしさあ。そっちに危害加えないから安心してよ」
まずい…。テロが起きようとしてる…。焦るその時、
「はい! 良いところでネコマタ参上!!」
バッ!と。空からネコマタ人間バージョンが降りてきた。
「ネコマタ!? 何処から!?」
「いきなりどっかに行くなよマイちゃん。って事で、そこの金髪小僧!! 俺が相手だぜ!!」
…いきなり来てカッコつけてもねえ…。
「ヤッター↑ じゃあ向こうでやろ♪?」
「おう! …ん? 向こう?」
「ドーン♪!」
ドーンッ! と。腹を蹴られ、ネコマタは路地裏の奥へと吹き飛ぶ。
「じゃ、行ってきま~す♪!」
貴乃華は元気よくネコマタの元へ駆けて行った。…相手じゃなくてよかったかも。
「じゃ、俺様も行くわ。アラちゃん、後はシクヨロ」
更に、神之上も奥へ行ってしまった。そしてアラストルと二人きりになった。
「………………………」
「………………………」
何故か気まずい……。
しばらくして、アラストルがやる気のない目でマイを見た。
「…仕方ねえか。ほら、どっからでも来い」
アラストルは特に構えず、仁王立ちの状態で先手を譲る。
「……その剣は使わないの?」
アラストルのズボンにはチェーンとそして、二本の鞘に収まった剣が両脇に提げられていた。が、アラストルはそれを触れる事すらしない。
「ぁあ? いいんだよ別に。本気出す必要も無いだろ?」
「…………あっそ」
完全にナメられてる。
マイは右手を前に出し、手首の腕輪を剣へと変える。変幻自在、質量無視の剣、『メタモルフォーゼ』。
「へえ…、いい剣だな」
アラストルはマイの剣だけに感心した。
「じゃあ先手を打たせてもらうけどいい?」
メタモルフォーゼを両手で握り、腰の位置で構える。一方、アラストルはいまだ構えようとしない。
「はいはい、いいよ。とっとと──」
ビュンッ!と。アラストルの胸へ突きを繰り出す。
わずか一センチ、当たる寸前のそれを、
「危ねッ!!」
アラストルは身をよじって避け、マイを蹴り飛ばす事で回避した。
「ぐむっ!!」
地面を転がりながら即座に立ち上がったマイ。今度はメタモルフォーゼをアラストルに向け伸ばした。
弾丸の如く、メタモルフォーゼは一瞬にしてアラストルの鼻先まで迫る。だが、
「…ッ」
上体を反らし、前髪がわずかに斬れるだけで剣を避けた。
「…見えてる?」
アラストルの目は間違いなくメタモルフォーゼを捕らえ、ギリギリのようで確実に避けていた。反射的にではなく、自覚的に避けていた。
「………」
アラストルは斬られた前髪を触って、
「……いいねえ! 強いじゃん!」
顔が凶暴な笑顔に変わった。
「ハハハハ! 神様代行をナメてたみてえだな! 悪かった!」
そして、右手で左腰の柄を、左手で右腰の柄を掴み、ゆっくりとその細身の剣を引き抜く。
「現時点を持って、俺はお前を敵と認識する。名は何だ?」
「……高上 舞〔タカガミ マイ〕」
「よし、俺はお前の名前を覚えた。…あーでもなあ……」
アラストルは左手の剣を引き抜くと共に、
「頑張ってくれねえと記憶に残んねえかもな?」
勢いよく前方へ投げ飛ばした。
「え!?」
剣は棒立ちのマイの脇を通り、そのまま後ろに飛んでいった。
「は、外し…」
「よそ見すんな」
マイが前に向き直ると、アラストルは右手の剣を突き出し、矛先をマイに向けていた。そして、剣先から青白い光が生まれる。
「『雷伝〔ライデン〕』」
瞬間、青い電撃が真っ直ぐに飛んだ。
雷のように眩しく光るそれはまさに電光石火。マイの目には突然光の線が現れたとしか思えなかった。が、
「っ!!」
嫌な予感がしていたマイは電撃が放たれる直前に横へ転がり、かろうじて直撃を免れていた。
「…避けれる!」
剣を構えなおし、反撃のために走り出す。二人の距離は差ほど離れていない。七、八歩ほどで接近できる。
「ハァアッッ!!」
メタモルフォーゼを振りかぶる。
だが、マイは気づかなかった。アラストルは少しも焦っていなかった事に。避けた電撃が投げた剣に当たり、バチバチと青白く光っている事に。
「油断すんなよ、高上ィッ!」
マイの後ろの剣から青白い電撃が放たれ、マイの背中に直撃した。
「ガッ! 、、アアッ!? 、、」
猛烈な熱さと痛み。血液が沸騰するような感覚と、筋肉が無理矢理に引き伸ばされるような感覚。眼球にも毛先にも爪にも、すべてに激痛を感じ、言葉にならない吐き気が襲う。マイはその場で倒れ、痙攣したように震える。
「……ゥ、…ゥアッ、、ッ…」
アラストルはマイを通り過ぎ、投げた剣を拾いあげ、
「全然ダメだな…。やっぱ名前忘れるかも」
呟いた。
「…ク、クソッ!」
マイはメタモルフォーゼを支えにして立ち上がり、アラストルを睨みつけた。
「……アンタ、能力者なの?」
電撃を喰らったマイはアラストルに言った。アラストルはそれを鼻で笑う。
「ちげーよ。俺の元々の力だ」
「そんな訳無い…! 人間の力じゃないでしょ!?」
異能力でなければなんだと言うのか。身体からあれ程の電撃を放出する人間なんて聞いたこともない。
「んなことどうでもいいだろ? それよりほら、構えろ。神様代行がどれだけ強いかもっと見せろ」
アラストルは二本の剣を交差させ、その凶暴な笑顔を見せる。
「高上 舞、お前と戦って、俺はもっと強くなる。潔く俺の踏み台になりやがれッ!!」
「……なる訳無いじゃん。アンタ達のガキみたいな夢、アタシがぶっ壊すッ!!」
戦い、激化中。
ネ:「ウルトラマ〇タロウが一番好き」
マ:「ウル〇ラマンメビウスが好き」
蜜:「ウルト〇マンマックスだな!!」
神:「パワード」
貴:「ティガ」
ア:「ゴモラだな」