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第七話:VSヤンキー‐いや…これ煮干しじゃん


ネ:「新キャラだしすぎじゃね?俺が目立たねえぞ…」


神:「いいじゃないか新キャラ!何が悪い!?」


マ:「かろうじて言うなら、新キャラって事を前面に押し出してるのがウザい」


貴:「ボクそんな事してないもんっ!ね、アラちゃん?」


ア:「お前の喋り方自体が媚び売ってるだろ」



 五月三十日の日曜日。天候、晴れ。

 中間テストも終わり、いつもなら午前中は家でだらだらと過ごすはずだった高上 舞〔タカガミ マイ〕だが、今日は違った。

「じゃあよろしくね、ネコマタ」

「…よろしくねじゃないでしょマイちゃん」

 誰もいないカヤノキ公園のベンチにはマイとネコマタが仲良く座っていた。マイはズボンにワイシャツとゆう、どちらかと言えばメンズのファッション。

「なんで? 魚もおごってあげたし…」

 そんなマイはベンチに寄っ掛かり、尻尾が二本の黒猫妖怪ネコマタを見た。ネコマタはマイの右隣りで行儀よく座っている。

「いや…これ煮干しじゃん。これでどう飢えを満たせと?」

 ネコマタとマイの間には煮干しが五匹並べてあった。ちなみにここ最近ネコマタはなにも食べていない。

 ブチッ。

「ふっざけんなやああああああっ!! 猫おちょくんの大概にしいやコラアアアアアッッ!!」

 その煮干しを蹴散らし、そのぷにぷに肉球でマイにつかみ掛かっり怒鳴り付ける。

「ちょっ、やめ…いたたたたっ!! 爪! 爪が首に刺さっ─」

「こっちはなあ、餓死寸前なんじゃい。死にそうなんじゃい! おごるとか言っといて煮干しってお前…!? これで生きろってか? 一ヶ月煮干し生活か? 鬼畜にも程があらあぁっ!!」

 今までの不満が大爆発を起こし、喉が枯れるまで叫びまくった。ネコマタにとっては命が掛かっているので冗談では済まなかったらしい。言いたい事を全て吐き出し、ぱっと手を離して座りなおす。

「ぜえ…はあ…ぜえ…。とにかく、いきなり神様捜し出せって言われてもすぐには無理!」

「神様じゃなくてその息子ね…。アタシは人捜しとかした事ないからネコマタを頼りにしてるの。お願い!」

 手の平を合わせてペこりと頭を下げる。ネコマタは少し考え、

「……わかった、調べてやる」

「ホントに!? サンキュー!」

「ただ~し!!」

 ビシッと、小さい手でマイを指さす。

「食い物よこせ。一ヶ月分は食いだめしたい」

 …正直、今現在のマイはあまりお金を持ってないので魚一ヶ月分はきつかった。

「むむ~…、ファミレスとか行ければいいけど…猫だしなぁ…」

 ペットオッケーな店は大分増えてきたが、この街のどこにあるかマイは一軒も知らない。どうしようかとマイがそう考え込んでいると、

「ふっふっふっ。マイちゃん、忘れちょるぜよ」

 ネコマタが気持ち悪く笑い始めた。

「俺が変化の達人だとゆうことをな! 人間に化ければどこでもオッケー!」

「………また変な動きして終わりでしょ?」

 久々のマイの冷た過ぎる視線。ネコマタは前回も出来るとか言って何も変化無しだったので、疑うのも当たり前である。

「その目をやめろ…。最近やっと忘れてきたのにまた夢に出て来るだろ…」

 額から冷や汗が一滴たれた。ともかく、ネコマタは妖怪である。それゆえに妖術も使える…とか自分で言っていた。

「大丈夫、今度はちゃんとやるぜ。試しに軽~く変化を見せてやろうぞ!」

 ベンチの上からピョンと飛び降り、少し離れてマイの方に向く。

「人間かキングギ〇ラかクロスボーンガ〇ダムか浜崎あ〇みか、どれに化けたらいい?」

「…普通に人間で」

「…つまんねっ。え~、では! まず…」

「……………」

 期待はしてないけど一様見る。

「…鼻毛を抜く。以下略!!」

「短っ!!」

 ぷちっ、と。鼻毛を一本抜く。すると、

「ぐぉおおオオオッ!!」

 ネコマタから白い煙りが取り巻き始め、あっという間に見えなくなった。

「な、なにいぃい!!」

 あまりにいきなりだったので立ち上がり、戸惑うマイ。そして、

「ネ、ネコマタ?」

 心配するマイの目の前で、ゆっくり煙りが薄くなって来た。

「…ふうっ。マイちゃん、これが俺の変化の術の一つだ」

「こ、これが…!?」




「そう、Xb〇x360だ!」




「せめて生物になれやああああアアッッ!!」

 マイはバキリッと、思いっ切り踏み潰した。

「ウブォアアッ! …き、貴様もP〇3派か!? 俺は認めん、認めんぞお!!」

「聞いてねえよ! アタシは人間に化けられるかどうか見たかっただけなの!!」

 無機物に化けられる事には驚いたが今は必要ない事だ。

「…食べたくないの?」

 腕を組み、破壊されたXb…もとい、ネコマタに聞いた。

「わかった! わかったから食べさせて!」

 ネコマタの必死な眼差しに、マイは思わずため息をつく。

「はあ…。じゃあ、変化したらファミレスに行こ?」

 そして、つい許してしまった。…なんだかんだ言っても仲はいい一人と一匹である。

「よし行こう! 一度ドリンクバーってやつをやりたかったんだ!」

「ん~、じゃあ美味しいジュースの配合教えてあげる」

「なぬっ、それはいいな! 待ってろ、すぐ済ますから…」

「はいはい…」

 誰もいない公園で、マイとネコマタは楽しく会話していた。

「とりあえず、…蜜子がバイトしてる所に行ってみよっかな?」

 そんな事を考えていた時、

「よう嬢ちゃん、何してんの?」

「…?」

 気がつくと、十五、六人くらいの男達がマイを取り囲んでいた。革ジャンを着ていたり、ピアスを付けまくってるようすから、ごく一般人ではなさそうだった。

「…あの、なんですか?」

「べっつに~? ここらでたむろしてたら女子高生がいたから話しかけただけだし?」

「……朝から公園でたむろって…、そしてベタな展開…」

 男達はマイにゆっくりと近づく。


 そして……。




───────────-




 たくさんあるファミレスの中でも一番人気の店がある。

 広さもメニューの多さも店員の態度も申し分ないこの店のドリンクバーコーナーに変な三人組がいた。

「…あれ? おい、コーラ出ねえぞ? 店長呼べ店長」

 一人はガタイのいい青年。黒いジャージ姿に剣を二本携え、何故か頭から小さな角が二本生えている。

「ふっふふ~ん♪ オレンジと~、カルピスと~、ウーロン茶と~、コーラ多めに混ぜて~…て、コ、コーラが出ないっ★!?」

 一人はタキシード姿に大きな赤いリボンが首に付いているのが印象的な金髪の子供。

「コーラ、コーラ。おい、貴乃華〔タカノハナ〕、アラストル、持ってくの手伝え」

 一人は背の高い美形の男。白いシルクのような長髪に白衣を身につけ肌も白い。そんな白過ぎる男は十杯のコーラが入ったコップを抱えていた。

「お前かよ!!」

 アラストルと呼ばれた青年がツッコミを入れた。

「神之上〔カミノジョウ〕のバカッ★ ボクの分が無いじゃないか~…↓」

 続けて貴乃華と呼ばれた子供が神之上と言う男を睨みつける。

「俺様は喉が渇いたのだ。だからコーラ十杯を飲む。異論は聞くが認めませーん」

「ぐぐぐぅー、神之上なんてコンソメスープだけ飲んどけ★!」

「アイスティーとセットのガムシロップだけ飲んで虫歯になれ!」

「頼まないでも来る水だけ飲んでお腹破裂しろ★★!!」

 二人の言い合いは止まらない。

「そこの馬鹿二人! 後ろ詰まってんぞ!」

 アラストルは込みはじめたドリンクバーコーナーから離れ、先に一番奥の窓際の禁煙席へと戻った。座り、意味もなくメニューを開く。

「…やっぱ肉がよかったかなぁ…」

「こちら、サラダになります!!」

「うおっ?」

 瞬間、横からでかい声がしたと思うと、ウェイトレスが注文したサラダの皿を持って立っていた。茶髪を邪魔にならない程度に切り揃え、フリルの付いた可愛らしい服(人気の理由の一つ)を着ている。ぎこちなく皿を置く感じから、どうやらバイトを始めたばかりである事が分かった。

「ど、どもっす」

 ウェイトレスがサラダの皿をテーブルに置く前に受け取る。

 ウェイトレスは駆け足で厨房に戻った。…よくあんなにやる気出せるなぁと、少し感心してしまう。

「ハゲ散らかせ☆#!!」

「身長五センチ縮め!!」

 ウェイトレスと入れ代わるように神之上と貴乃華が戻って来た。

「そこの馬鹿二人止めろ、目立つだろが」

「だってこの白髪が…↓」

「だってこの金髪が…」

「いいから!」

 言い合いを止め、貴乃華はアラストルの隣に、神之上は向かい側に座った。

「…水飲み過ぎて死ねアラちゃん……↓」

「…餓死しろアラストル……」

「文句あんなら目を見て言え!! おい! 聞いてる!?」

 結局三人ともうるさかった。

 待ってる間暇なので、アラストルは神之上の計画、世界征服について聞く。

「…で、これからどうする? やっぱ問答無用で壊しまくるか?」

「落ち着けアラストル、ちゃんと考えてる。まずやる事があるんだ…」

 神之上はコーラ一杯を一気飲みし、真剣な顔で言った。

「やる事?」

「うん……」

 そして、テーブルの上で手を組み、答えた。


「『神様代行』って奴がいる」


 アラストルは首を傾げ、貴乃華も単語の意味が分からなかった。

「天界で処理仕切れない事件を代わりに解決する地上人の事なんだけどさ…。『世界の歪み』の影響を受けた奴とかあっという間に倒したりするらしい」

 アラストルはピクッと反応する。

「……ハハァ! いいねぇ、つまりそいつが邪魔なんだろ?」

 凶暴な笑顔を浮かべ、腰の剣に触れる。体は待ちきれんばかりに武者震いしていた。

 アラストルは根っからの喧嘩屋である。強いと聞いて我慢など出来る訳がなかった。

「だったら俺が倒す。そんな大層な名前してんなら、それ相応に強いんだよなぁ?」

「ん~。強いのは確かなんだけど、親父が適当に決めたらしいんだよ」

「親父って言うとつまり……」

「大神様〔オオカミサマ〕だよ」

 あっさりと言った。

 そう、この神之上は天界人であり、全知全能なる大神様の一人息子なのである。

「まったくあのクソ親父、自分の仕事が忙しいからって地上人にまで迷惑かけるとは…」

 忌ま忌ましく呟き、コーラを二杯一気飲みする。そんな神之上に貴乃華は、

「ねえねえ♪ 神様…ダイコウってつまりさあ、地上人が神様になるって事♪? 地上人じゃないといけないの♪?」

 と、いろいろと混ぜたジュースをストローで飲みながら聞いた。

「あ~何て言うかなぁ。地上に調査しに来る天界人は一般的に『天使』って呼ばれるんだけど、そいつらは直接地上に干渉出来ないんだよ」

「カン…ショウ↑?」

 コップの中の氷を指で転がしながら、

「人が幻に触ることが出来ない、または幻が人に触る事が出来ないのと同じ事だよ。で、地上に唯一干渉出来るのが神様ってわけ。天使が報告し、神様が然るべき処置をとる」

「ふんふん♪」

「さらに、神様はその力を他者に移す事が可能なわけ。そして地上人に神の力を与えた。そいつが『神様代行』。神様の代わりに仕事をする存在って訳」

 コーラを空のコップに移す。

「ちょっと待て、だったらその天使に力やればいいだけじゃん?」

 アラストルが横槍を入れた。しかし神之上は即答する。

「天使自体も力が大きいんだよ。だから、ほんのわずかな力を与えただけでも容量満杯だから意味がない」

 氷が詰まったコップにコーラを入れる。コーラは氷の隙間に入り、すぐにいっぱいになった。

「だから、大きな器に小さな力しかない地上人に白羽の矢が立った。説明終了!」

 満杯のコップを手に取り、氷ごと飲み干す。説明を聞いて、

「へえー♪凄い凄い★!!」

 ぱちぱちと拍手する貴乃華。

「なるほどぉ、神様の力か…楽しそうだな!」

 より戦いたくなったアラストル。

「てか俺のナポリタンまだ!?」

 バンッ、と。テーブルを叩く神之上。その時、

「…ん? 何か騒がしい…」

 入り口の方からざわざわと声が聞こえる。

「行ってみる♪?」

「ぁあ? めんどくさいだろ……まあ、ちょっとだけなら」

 三人はテーブルから離れ、入り口へ足を運ぶ。すると、

「暴れないでくださいっ!!」

「ぁあんだとぅ!? 客に向かってなんだそぅルゥィェアッ!!」

「わかってねえな茶髪の嬢ちゃん! 俺達はここらで有名なヤンキーなんだぜえ!?」

「舐めたらあかんでやんすよ!!」

 茶髪のウェイトレスがスキンヘッド、リーゼント、モヒカンの三人の男に絡まれていた。

「あ、さっきのウェイトレスじゃん」

 アラストルは冷静にそれを傍観する。…ベタにも程がある展開だった。

 スキンヘッドの男はポケットに右手を突っ込み、何か取り出した。

「いいのかあ? いいのかあ!? 俺っちのナイフ捌き見たいのかぁあぅルル!!」

 銀色のバタフライナイフがひゅんひゅんと宙を舞う。

「出たっ! タクマ君の『剣の舞い』!! これを見て生きてた奴はいねえぜ!!」

「さすがでやんす!惚れ惚れするでやんす!!」

 どうやらリーゼントとモヒカンはこのタクマ君の取り巻きらしい。…『剣の舞い』って……。

「…え、えっと~」

 茶髪のウェイトレスはリアクションに困っていた。

「うぅるあ、うぅるあ! まだまだ早くなるぜえぃイヤフッ! ……いっ、手ぇ切った…」

「「タクマ君ンンンンッッ!!」」

「………………」

 なんだ、ただの馬鹿か…。

「あれ、神之上は★?」

「ぁあ? …あれ?」

 周りを見回すが神之上が見当たらず、いつの間にかいなくなった。


「ちょいと待ちなあ!!」


 すると、人込みの真ん中から声がした。

「…忘れてた。あいつ、ベタな展開大好きだった」

 アラストルの思った通り、神之上はヤンキーの後ろに立ち、これでもかと言う程の決め顔で登場していた。

「なんじゃあぃいや! いま絆創膏ばんそうこうはっとる最中じゃあいィヤゥ!」

「そのウェイトレスから離れな、このぼんくら三人組…。それ以上はこの俺様が許しておかねえ!!」

「…………………」

 ヤンキー三人組もウェイトレスも周りの人も、神之上を見てぽかんと口を開ける。まあ、こんな変な外国人っぽい人を見たらそりゃあなるに決まってる。

「…頭大丈夫かぃい?」

「タクマ君に喧嘩売るとは、なかなかいい度胸してるぜ!」

「日本語通じるでやんすか?」

 ヤンキー三人組はガンを飛ばし、神之上を取り囲む。それに対し、神之上は余裕の笑顔を浮かべていた。

「ふっふっふっ、俺様の恐ろしさが理解出来てないようだな。…アラちゃん、貴ちゃん、や~っておしまい!」

 自分でやらないのかよ…。仕方なくアラストルと貴乃華は謝りながら人込みを分けて前に出た。

「あらほらさっさ…」「あらほらさっさ♪」

 アラストルは剣の柄を握り、貴乃華はピョンピョンと軽くその場でジャンプする。更に二人が出て来て周りは更に困惑しているようだ。

「な、ななっ、なんじゃいわるぇえエイヤッ!! 外人のお仲間さんかぅうわルウェイ!!」

 たじろぎながらナイフを振りかざす。が、もちろん二人はそんな物は怖くも何ともない。無視してアラストルがスキンヘッドのタクマ君に言う。

「まあそんな所だ。で、てめぇら強いのか? ここらでは有名なんだろ?」

 アラストルは何時でも剣を抜けるように柄に手を置き、笑っていた。

「……ギ、ギャハハハハ! あ、当たり前だこるぅアィ! おい、教えてやるぅういエィ!」

 タクマも他人任せだった…。リーゼントとモヒカンのヤンキーが言われて前に出る。

 リーゼントの男はポケットに手を入れると、中から黒いスタンガンを二つ取り出した。

「俺は『ダブルスタンガン』の異名を持つ男、油板 多紀〔アブライタ タキ〕!」 更に、モヒカンの男は鉄パイプを背中から出した。

「おいらの名は耶金 山一郎〔ヤガネ ヤマイチロウ〕、人呼んで『鉄パイプ魔人』でやんす!」

 そして最後に、スキンヘッドがバタフライナイフを片手に、

「そしてこの俺っちいぃ、『バタフライマスター』ことぅ、北十字 拓麻〔キタジュウジ タクマ〕だああウルッ!!」

 言い切り、三人それぞれ決めポーズを取って見せた。


 沈黙


「…聞こえなかったならもう一度ぅ。俺っちは」

「聞こえたよッ!! てかうるせえよッ!!」

 周りに代わってアラストルが怒鳴った。ヤンキー三人は明らかに残念な顔になったがそれが無性に腹が立つ。

「つまりあんたら戦えるんだろ? だったら来いよ。そこのリーゼント! 取りあえずてめぇからな」

 アラストルは油板を指差した。

「え!? …こ、この野郎…!」

 油板はビクッと驚いたが、すぐにスタンガンを前に突き出し、突撃の構えをとる。

「じゃあボクはそこのモヒカン君だね♪ さあ来いっ♪♪!」

「モヒカン君って…おいらの事でやんすか!? …こ、子供だからって、許さないでやんすよ!」

 鉄パイプを振り回し、貴乃華に近づく。

 流石にこの緊迫した空気に客や店員が、「警察を呼べ」やら「逃げた方がいい」やらざわざわと騒ぎ出し始めた。

「ギャハハハハゥ! いいのかよ外人さん。お仲間さんがピンチだずぅえイ!」

 ナイフを神之上に向け高笑いをする拓麻だったが、

「ピンチ? 誰が?」

 神之上は心配する様子もなく、冷静だった。そんな時、

「死ねッ!!」

 油板はスタンガンを突き出し、

「食らえッ!!」

 耶金は鉄パイプを振り下ろす。

 それぞれの相手の下へ襲い掛かる油板と耶金。ところが、二人は逃げるどころか、


「…なんだそりゃ?」


 アラストルは素手でスタンガンを真っ正面から受け止め、握り潰し、


「ドーン♪!!」


 貴乃華は蹴り上げでパイプを木の枝のようにへし折った。


「「………あれ?」」

 一瞬で自慢の武器をあっさり破壊されてしまった。

「う、うわ!」「ひいっ!」

 油板と耶金は素早く後ずさりして拓麻の後ろに隠れる。そんな拓麻も体を震わしてビビっていた。

「て、てめぇるあ! 何隠れてやがるルル!!」

「無理だってタクマ君! スタンガン触って平気だったんだぜ!?」

「鉄パイプを蹴りで折るなんて化け物でやんす!!」

「…………ぅう」

 アラストルと貴乃華はまだまだ余裕と言わんばかりにストレッチをし、神之上はウェイトレスと喋っていた。

 慌てふためき、戦意が喪失したヤンキー三人組は入り口へと、神之上たちの動きを気にしながら横歩きで近づく。

「こ、今回は手ぇ怪我してたし、このぐらいにしてやるるゥ! だがなぁ、今度はもっと仲間を呼んでボコしてやるからなァイヤ!!」

 そして、負け惜しみを言うだけ言うとドアを乱暴に引き、ヤンキー三人組は駆け足で逃げて行った。

「捨て台詞までどんだけベタなんだよ…」

「ワ~イ♪ 勝った勝ったあ♪」

「皆さん! 不良はこの俺様、神之上が撃退いたしました!」

 しばらくして、周りから拍手喝采が沸き起こった。

 神之上たち三人は人に囲まれながらテーブルへと戻って行く。その間、拍手の音はしばらく止まなかった。


「さて、そろそろ『神様代行』襲撃するか!」




───────────-




「クソッ、クソゥッ! 俺っち達がここまでやられるとはぅぅ!」

「タクマ君、とにかく今は逃げようぜ…? あいつら絶対人じゃねえよ」

「警察もすぐに来るでやんす! 調子に乗りすぎたでやんす!」


 北十字、油板、耶金の三人は道をひたすら走り、この時間仲間がたむろしているであろうカヤノキ公園へと向かっていた。北十字はとある暴走族の頭であり、暴走族の仲間は彼の命令には絶対である。

「このままじゃ済まさねえぞぅ…。仲間集めたら即やり返す!」

「タ、タクマ君、本気かよ!?」

「あぁ本気だよぃェア! 俺っちに手ぇ出した事、後悔させちゃるルルぅ!!」

 そんなこんなで公園に到着。

「よっしゃああぅルィエア!! てめぇるあ、集まりやが……るぇえ?」

 集合を呼びかけた北十字だったが、彼の目の前にはとんでもない光景が繰り広げられていた。


 十五、六人はいるであろう暴走族が、一人の女子高生と一匹の黒猫にボコボコにされていた。そう、“されていた”のである。


「こっちは腹が減って腹が立ってんだよ! やるならやるでルーキ〇ズとかク〇ーズゼロぐらい頑張れよ!! 特に小栗〇君ぐらいね」

 しかも猫が喋ってる…。

「いや、市原隼〇も凄かったよ! かっこいいよルーキ〇ズ!」

 しかも女子高生が剣持ってる…。

「…………なんじゃこりゃああああアアア!!??」

 理解不能の北十字は天高く絶叫した。その声を聞き取ったマイは、

「むむっ! 増援か!?」

 テンション上がり気味の為、公園に来た三人組を即敵と決め付けた。

「『メタモルフォーゼ・金槌』!!」

 即座にマイは変幻自在の剣を巨大なハンマーに変える。そして、一直線に三人に向かって走り出した。

「ま、待て! 待ってくださいィィ!!」

「俺達は関係ないぞ!」

「そうでやんす!」

 必死にマイを止めようとするが、マイはまったく聞く耳を持たなかった。もう逃げても間に合わない。ハンマーを真横に振り、ヤンキー三人組をいっぺんにたたき付ける。


「喰らえこの腐れ外道ぐぅあああッッ!!」


 三人まとめて空高く宙を舞ったのは、言うまでもなかった。




───────────-




「いや~、いい汗かいた。なんかお腹すいたの忘れちゃったなぁ」

「じゃあファミレス行かなくていい?」

「いや、それは別の話しだぜ」

「…………………」

「やっぱお腹減ってきたかもしれ……マイちゃん?」

「なんか、アタシの出番が少ない気がする…」

「…俺も。そんな気がする」

「………………………」

「………………………」

「食べに行くか!」

「そうだな!!」



蜜:「アタシがいたのわかったかな!!?」


拓:「いや、俺っちの活躍に目が行っててわかんなかっただるるるぅウエエィヤッッ!!」


油:「あの『剣の舞い』の美しさに度肝抜かれたに違いないぜ!!」


耶:「流石でやんす!素敵でやんす!!」


ネ:「それを見ての感想は?」


蜜:「汚い」


拓:「ッ!?」



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